ポラクス・マルフォイは陰キャを極めたい   作:於涼

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ある意味主人公無双の回。


9話 僕は水族館デートをしたい。

楽しかったクリスマス休暇はあっという間に終わり、僕はドラコに引っ張られて泣く泣くホグワーツに戻った。

 

ほとんどの生徒が寝静まった真夜中。すっかり夜更かしの癖がついてしまった僕は談話室でやり残した"闇の魔術に対する防衛術"のレポートを書いていた。テーマはゴーストについて。今回ばかりは素晴らしいものが書けるだろう。

 

静寂の中、突然ゴロゴロと音を立てて石の扉が開く。

 

「ダメだ、あそこはダメだ!」

 

情けない悲鳴を上げながらソファに倒れ込むドラコ。

顔は青白いを通り越して真っ白だ。

 

「罰則お疲れ様」

 

震えるドラコにとりあえずココアを出してやる。

試験が近づくこの頃。森の門番ハグリッドのはた迷惑なドラゴン事件に変にちょっかいを出して、ハリー達諸共ドラコは罰則をくらい"禁じられた森"に行かされていた。

 

まったくご苦労な話だ。"禁じられた森"といえば不審者、猛毒キノコ、猛毒クモ。それから途中からは巨人までも住み着く、危険生物なんでもごされの僕が行きたくない場所トップ3にランクインする所だ。

裏山は入っては行けません、レベルではない。なんで学校の敷地内にあるんだ?

 

「出たんだ、ポラクス。森でユニコーンの血を吸う化け物が……!!」

 

よっぽど疲れていたのだろう。それだけ言ってドラコは気絶するように寝てしまった。

 

 

化け物、その正体はクィレル教授と彼に取り憑く"例のあの人"。『賢者の石』を巡る物語は着々と進んでいる。

 

 

「ドラコ坊やは随分と恐ろしいものを見てきたのね」

 

いつの間にやらリャナンシーは僕の横に腰をかけ、ドラコが飲み損ねたココアを手に取っていた。

 

「私ね、このあいだハリーとロンが内緒話しているの廊下で聞いちゃったの。4階の廊下の奥ではこわーい三頭犬が何か大切なもの守ってるって!

ポラクスはこのこと何か知ってる?」

 

リャナンシーはココアを幸せそうに飲みながら、そのクリッとしたブラウンの瞳をパチクリさせる。

 

「友達が1人もいない僕がそんなこと知るわけないだろ」

 

素っ気なく返すが、何が面白いのか彼女はクスクスと笑う。

 

「なるほど、『賢者の石』ね。へぇー」

 

「……開心術か」

 

"開心術"。相手の胸に隠された真意を見透す高等魔法。この魔法がある限り、魔法界で個人のプライバシーが守られる日は永遠に訪れない。

 

「愛しい殿方の心を読むぐらい朝飯前よ。ねえ、夜のデートに『賢者の石』を見物に行かない?

私、それを見てみたいの!」

 

手を合わせてお願いのポーズ。おそらく100年以上は生きてるだろうババアが何してるんだ。

 

「何がしたい、君はいったい何だ?」

 

「私は私。恋の妖精(リャナンシー)よ。

本当にただ見たいだけ、何も企んでなんていないわ」

 

そうニッコリ微笑む彼女に僕は「分かったよ」と答えて教科書を閉じた。

まったく、得体のしれない妖精だ。

 

 

ゴーストの姿となった僕は念の為フードを深く被り4階の廊下をリャナンシーと共に目指す。

 

廊下では噂の三頭犬が待ち構えていた。僕を映した6つの目はどれも困惑している。ゴースト相手にどうすべきかは流石にしつけられていないらしい。

 

ウロウロする三頭犬の足元で僕は力を抜き、スっと床を通り抜ける。侵入者対策の罠が続くが、今の僕には意味をなさない。

 

ひたすら足を進めるだけで1番奥の部屋、『賢者の石』が隠された部屋に辿り着いた。

 

「おかしいわ、何も無いじゃない!!」

 

良かった、まだこの部屋には無かったのか。何もしないと言うが、何しでかすか分からないリャナンシーにあまり『賢者の石』と関わらせたくない。

リャナンシーの言う通り石畳が続くだけの部屋だ。

 

ブーブーと不満を言い続ける彼女を適当になだめ帰ろうとした時、背後からコツコツと足音がした。

 

「おや?先客がいたとは驚きじゃ」

 

しわがれた声。それを聞いただけで僕は泣きたい気持ちになる。

 

現れたのはこのホグワーツ魔術魔法学校現校長、今世紀最も偉大な魔法使いと謳われるアルバス・ダンブルドアその人だった。

 

犬の散歩でもしているかのように後ろに大きな鏡を浮かせて鼻歌交じりにやって来る。

 

「君は見かけないゴーストだの。お隣のお嬢さんは妖精かな?」

 

「ええ!恋の妖精、リャナンシーよ」

 

「ああ……それは素敵じゃ。恋とは良いものだ」

 

愉快そうに笑うダンブルドア。そしてキラキラさせたブルーの瞳を僕に向けてくる。

 

「失礼じゃが君の名前は?」

 

「シグナスです。ずっと隠し部屋に閉じこもっていたものですから顔を合わせるのは初めてですね、ダンブルドア校長」

 

できるだけ声をうわずらせてみる。かなり苦しい誤魔化しだけど、普段の僕は全然声を出さないからポラクスとバレることはない筈。ああ、けどドラコとは声もかなり似ているからな……。

 

「ほうほう、やはりホグワーツは何年過ごしても新しい出会いがある。仲良く散歩している中ー…」

 

「散歩じゃなくてデートよ!」

 

「失礼、デート中悪いがこの鏡を置かせて貰ってもいいかの?」

 

と言ってダンブルドアはその大きな鏡を部屋の中心に置いた。確か、これは『みぞの鏡』。人が心から望むその人の姿を映し出す魔法道具。

 

覗き込んだリャナンシーは嬉しそうに飛び跳ねる。

 

「まあ、珍しい鏡じゃない!ああ、見える……私とシグナスが結婚式を挙げている姿が!!」

 

「なんてものを見ているんだ!!」

 

本気でコイツが気持ち悪い。

 

「現実となったら是非わしもその式に招待してくれんかの?ゴーストと妖精の結婚式とはそうそう見れるものじゃない。

あと……後学のためにたずねたいのだが、ゴーストにもこの鏡には何か映るのかね?」

 

「ええ、まあ。僕にはこの妖精がいない実家でゴロゴロしている姿が見えますよ」

 

参考になった、と言って笑うダンブルドアに僕は愛想笑いを返すしかなかった。

 

ああ、ドキドキなんてものじゃない。魂の底から震えるこんなにも恐ろしいデートはそうそう無いと僕は思った。

 

 

 

 




・アルバス·ダンブルドア
最も偉大な魔法使いと名高いホグワーツのお茶目な校長。とにかく真意が分かりずらい老人。原作終了後でもその考察は難しい。けど、ハリポタの登場人物らしく良い意味でも悪い意味でもちゃんと人間らしさがある。

二次小説では悪役として書かれることが多い彼ですが、この小説では特別に嫌な人物にするつもりはありません。ただ、スリザリン寮所属の主人公達視点なので少し批判的な描写にはなるかもしれません。
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