死神ワールドに転移したが全力で米花町を脱出する 作:伝説の類人猿
「だけどねぇ一郎君……僕はこれまで刑事をしてきた訳だけど、どう考えても理由も無しに監獄へ送るのは無理だと思うんだ。まして何かと事件解決の実績のある君だとなおね」
「いやあれ大体コナンのせいであって俺の実力じゃないんで。せっかくの非番なのに俺のために時間割いてくれたのはホント申し訳ないんですけど俺にも譲れない一線はあるんです」
なんのかんのと俺はシャングリラ(独房とも言う)への片道切符を手に入れるために苦心して説得を試みているのだが現状を鑑みるにあまり状況は好ましくない。
残念なことに灰原に手を出す前に高木刑事がきたので確定犯罪ではないが未遂ということでなんとか監獄に入れてもらえないだろうか。
……なんてことを主張しながらどうにか警視庁までは無理やり移動することができたのだがその先が続かない。
結局夜になっても俺を監獄まで連れて行く素振りすら見せないのでこれは本格的に犯罪者になる準備をしなければならないだろう。
「じゃあ犯罪者になるんで覚悟しておいてください」
「冗談でもやめてくれよ!君普段から色々と頭のネジがぶっ飛んでるのに変なところで真面目だからホントにやりそうなんだよ⁉︎」
「冗談でもないし本気です。俺は監獄に入って余生を健やかに過ごしたいんです。それとも入監料を払えば入れてくれるんですか?」
あっ月々の家賃も必要なら言い値で買おうじゃないか。これでも金持ちだし札束で頬を叩いてやる。
「そんな金の使い方をしようとするのは君ぐらいしかいないと思うよ……。はぁぁ…せっかくの休みだったのに……」
「むっそこを攻められると罪悪感が……。……はぁ、仕方ない。ただでさえ高木刑事には普段から迷惑をかけてますし今日のところは諦めて留置場で妥協します」
「いやいや一郎君、さも反省しているように見せかけてるけど全く反省してないよね。妥協も何もないと思うよ」
いいじゃん留置場くらい。ここって天下の警視庁なんだしもっとこう器の大きいとこ見せたほうがイメージアップに繋がるって絶対。
ほら利点しかないでしょこの考え?
「公的機関への市民の参入だと思えばイメージアップになると思いますよ」
「うん、どう考えてもイメージダウンだからね?まかり間違っても無罪の市民を理由も無しに拘束できないから」
「じゃあやっぱり犯罪を犯せば…………いや流石に冗談です。ループしそうですしね。取り敢えずお詫びの小切手あげるんで好きな額言ってください」
しょうがない。高木刑事も疲れてるだろうし俺は未だにヘリの墜落によって大穴の開いた我が家へ久々に帰るとしよう。下水道を使って。
臭くなるし最悪迷うけど割と使える緊急避難ルートだったりする。臭いけど。
あっそういやなんだかんだと灰原にも迷惑かけたしお詫びの品でも買うか。
こうやって誠意を見せれば俺の性犯罪者への道に協力してくれるかもしれないしね!
「い、いやそんなの受け取れないよっ⁈第一安心したまえ、僕はこう見えても高給取りだからね!」
「いやまぁそれは確かに認めますけど自分不労所得が毎日数千万円単位で入ってくるんで適当なところで使わないと貯まる一方なんですよ」
「うらやましいなぁ!コンチクショー‼︎」
これでも株とか物件とか持ってるからね。
なお米花の物件はほぼ全てが過去に殺人事件が発生しているため値が下がっている……と思いきやもはやここではそれぐらい当たり前のことなのでそんなことでは価値は下がらない模様。
やっぱ頭おかしいわこの町。
まぁともかくとしてどうせ断るとは思ってたし適当な金額書いて後で無理やり渡すか。
310万くらいでいいかな?ほら語呂合わせが高木刑事の好きな佐藤刑事だし。
あっまてよ?そういや公務執行妨害でも犯罪になるんだっけ?
どうせ警視庁にいるんだしものの試しで暴れてみるか?
「その顔はまた何か企んでる様子ね一郎君。悪いけど今日はもう遅いし高木君も疲れてるから明日にしてくれないかしら?」
「さっ佐藤刑事⁈今日は早めに帰ったんじゃないんですか!」
「あっ佐藤さんこんばんは。さりげなく高木刑事が元気だったらやっていいなんて流石ですね」
ていうかなんでこの人は俺が何か企んでいたことが分かったんだろうか?
あっそういやこの人刑事だったわ。そりゃ犯行計画には敏感よな。
うむ流石警視庁の刑事。高木刑事?あれは中身元太だから……。
「はいこんばんは。高木君もわざわざ非番なのにお疲れ様。それで私がここにいる理由なんだけど私の持ってる資料が必要だって頼まれてね」
「資料?誰がこんな時間に欲しがるんですか佐藤刑事?」
「ああそれがね高木君ーー」
刑事ともなると色々大変なんだな。
てかこんな夜中に持ってこいなんて命令するやつは余程仕事に熱を持ってる人なんだろうな。
ん?いま俺の中で変な虫の予感がしたんだが。なんかこう危ないような危なくないようなって……とりあえず何か起こるって感じの……。
「高層マンションにキッド出現!現在ヘリ部隊が追跡中‼︎」
「私が呼ばれたのは怪盗キッド関連なのよ」
……えっこれ俺も事件に巻き込まれるやつですか?
*****
バタバタと動いている刑事たちの姿を部屋の隅でポケ〜っと見守るのは些かシュールかもしれない。
なんで俺が未だ警視庁に残っていて刑事たちが追い出さないのか、その理由は俺のガン泣き説得と普段の活躍(大嘘)による信頼関係の構築である。
いやもちろん嘘だよ?
俺だっていつも泣いてるわけじゃ無いから。でも信頼関係は本当だよ。ね?刑事さん!
え?どちらかというとこいつを野放しにしたら何するか分からないから取り敢えず待ってもらってるって?
なんだぁ……てめぇ……?いくら白鳥警部でも容赦しねえぞ。表出てこいってんだ。
河川敷でやり合おうじゃねえか。
まぁ高木刑事が佐藤刑事とよろしくやるのを妬ましく思って妨害しようとするような器の小さな御坊ちゃまは放っておくとして問題は怪盗キッドである。
というか俺が未だここにいる理由はこのことについて考えをまとめてたからだ。比較的安全な部類だしここは。
最初こそまたもや俺が殺人事件に巻き込まれると発狂しかけたがちょっと落ち着いて考えてみるとそうでもないことに気が付いたのだ。
よくよく思い出してほしい。そもそも怪盗とは人殺しをするものなのか?
答えは否である。怪盗たるもの常にエレガントでならなければいけない。
つまりキッド自身が人殺しをすることはないのである。
でだ、コナンシリーズの中でキッドが出てくるのはどんな時か?
そう劇場版である。基本普通の……いわゆるテレビアニメの方には出てこない。漫画版はちょっと自信ないけど。
まぁ何が言いたいかっていうとここコナン時空においてキッドはあまり殺人と縁がないのだ。
おまけに住む場所も(多分)米花ではないときた!
これこそ地獄に垂らされた一本のクモの糸ではないか?
もしも俺がキッド陣営に入社出来たらその暁には……殺人事件との遭遇率が極めて低くなる!てか上手くいけば米花からそのまま脱出できる!
ついでにコナンシリーズからもフェードアウトできる!
いやぁ最高じゃないか‼︎
あん?いやいやキッドはキッドで事件に巻き込まれるだろって?
心配ご無用‼︎俺は全力で裏方に回るから。
ほらスパイアクションものでよくあるパソコン操作して経路を示す係みたいな。
こう見えても俺資格はたくさん持ってたりするんで。
ぶっちゃけループ世界において時間なんて事実上無限な訳だしそれぐらいしかやれること無いんだよ……。それに役立つ技能があれば脱出の可能性は上昇する訳だしね!
そんなハワイで親父に、ならぬユーキャンの通信講座で…な俺の現状ならばきっとあの怪盗キッドだって雇ってくれるに違いない。
雇わなかったら雇うまで押しかけるまでだ。
そんなわけで現在の怪盗キッドによる犯行は俺に対して非常にいい流れになるわけである。
ここが少なくとも名探偵コナンの世界であるのは疑いようのない事実である以上いま起こってるキッド騒動は所詮前座。この場にコナンがいないのだから物語でいうところのオープニングにあたるわけである。
「とすると今回ばかりはコナンに一部くっついて行った方が
キッドが出てくるのは劇場版。だとすると一連の流れはなんらかの劇場作品と同じであるわけである。
映画の中でキッドが直接姿を見せるのはオープニングとクライマックスぐらい。
すでにオープニングは終わったとみてもいいことから次に接触できるのはクライマックスかあるいは……。
「変装中ってことになるわけか……。でも誰になってるかなんて知らんしなぁ」
もはや度重なる心労(主に殺人事件)によって俺の精神は擦り切れてしまっているのだ。映画の内容なんてもう大まかなことぐらいしか覚えてない。
かぁ〜ッッ辛いわぁ!マジ辛いわぁ!でもなぁ心労だもんなぁ!俺の記憶力のせいじゃないもんなぁ!
……取り敢えず暫くしたらどうせ俺も事件に巻き込まれるんやろ?知ってる。
そん時に臨機応変に行動したらいいか。
……ところで高木刑事はまだ雑用中なんですか目暮警部?そろそろ小切手渡したいんですけど。
あっはいまだですかそうですか。
えっ?明日コナンが引き取りに来るから仮眠室で寝てなさいだって⁉︎
冗談でしょ警部‼︎