死神ワールドに転移したが全力で米花町を脱出する   作:伝説の類人猿

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これで6話改訂は終わりです


第7話

「ふう……死ぬかと思ったぜ……。早くうな重食いてえなぁ」

 

「もう博士は少し反省してくださいよ。僕たちへとへとなんですからね」

 

「い、いやぁすまんのぅ…」

 

縄梯子を博士が開けたという(語弊)穴にたらしたら出るわ出るわ人間が。

ふと思ったんだけどさこれ順番を上手く利用したら合法的にパンツを覗ける…………いやいやそうじゃなかった!

とにもかくにもキッドだキッド!!

 

キッドの一味になれば俺の立場が米花町市民からキッドの手下にジョブチェンジする可能性が高い!そうなればひょっとすると一年たつと強制的にどこにいても米花町に戻るという呪いがなくなるかもしれないのだ!!

 

乗るしかない、このビックウェーブにッッ!!あるいは、試すしかない!この大科学実験を!!

ぶっちゃけもうやれることはあらかたやってしまったしマジで後がないという事情も多分に含まれていたりはする。

 

で、そのためにも俺はキッドが現れるであろう終盤のシーンに突入しなければならないんだがわれらが死神こと主人公のコナンはどこいるんだ?

 

「とりあえず下手な大人よりしっかりしてそうな灰原に聞きたいんだけどコナンはどこに行ったんだ?」

 

「……彼なら一人でスコーピオンを追ったわ。今頃城のどこかだとは思うけれど」

 

「よしッ!分かった」

 

今ならまだ間に合う!いける……!行けるぞ!いい感じのシーンにお邪魔してキッドの正体を確認!

そしたら素早くノミのようにキッドにすり寄り意地でも手を離さない!

あとは多分キッドがなんやかんやしてとりあえず窮地は脱せるはずだからモウーマンタイ!!

 

ナハハハハ!!爆弾包丁ピストル拳、なんでもどんとやって来い!犯人の武器たちよ!(多分)キッドがどうにかしてくれるはずだからな、怪盗だし。

 

「ちょっと待ちなさい!あなた城に入るつもりなの!?」

 

「当たり前だのクラッカーが分かるやつはもういないとは思うが今のを現代語訳したらそうだ、ということになるな」

 

「相手は凄腕の殺し屋なのよ!?あなたみたいな年がら年中お茶らけている人が無事に帰れるはずがないわ!!」

 

一理あるどころかド正論をぶつけてくるのはやめてくれないかな。これでも一応リスクの比較をしたうえであえて鉄火場に突っ込もうと無理やりテンション上げてるんだよこちとら。

 

控えめに言ってこのまま怪我を負う可能性が高い場所に突っ込むのと米花町に住み続けるのでは圧倒的に後者のほうがリスクが高い。

米花町は現代の地獄ハッキリわかんだね。

 

「いいや行くね!!それでもあえて、怪我すると分かっておきながら突っ込まなきゃいけない時があるんだ俺には!!その時が今なんだ!!」

 

「こんな時まで頭おかしいこと言わないでもらえないかしら……!博士、絶対にこの馬鹿が変なことしないように取り押さえておきなさいよね」

 

「哀君の言う通りじゃぞ一郎君!確かにコナン君が心配なのは分かるが早まってはいかん!!普段からだらけておる君がこんな時だけ都合のいい超人パワーが使えるはずもないじゃろ!!」

 

ぬわぁぁ!誰もだらけとらんわ!ただ少し人生に休息という名の彩を入れてるだけじゃ!

HA・NA・SE!こんなところで無駄な信頼と連携を発揮するんじゃない!

 

「あっお城が……!」

 

「も、燃えてる……」

 

「コナン君……」

 

なああ!なんかもう明らかにことが済んだかのような火の燃え広がり方をしてる!?っていうか一体いつの間に火事が起きたんだよ!あれか、これもそのスコーピオンってやつの仕業かッ!

 

それともまさか犯人との決着がついてコナン映画特有のいかにもな建物崩壊の時間がやってきてしまったのか!?

 

い、いやまだコナンは現れていない。だとしたら急いであの火の中に突っ込めば…………!

 

 

 

 

 

 

 

「心配すんなよお前ら」

 

「「コナン(君)!!」」

 

「お、遅かったか…………」

 

どうやら間に合わなかったようである……。ぐうぅ、いやまぁあれだけどさ。大阪あたりのグダグダを考えたらぶっちゃけ事件が解決するシーンに間に合ったこと自体が一種の軌跡なんだけどさ。

 

火事の中に突っ込まなくて良くなったことを祝うべきか、はたまた俺が事情聴取を受ける原因を作ったスコーピオンとかいうやつをぶん殴れなかったことを悔やむべきか、あるいはキッドととうとう面を向かって会えなかったことを嘆くべきか……。

 

とりあえず上向くか。有名な歌にも上を向いて歩こうって言うのがあるし空見てたら元気も出るはずだ、多分。

 

じゃ、今は燃え盛る城を背景に明日どうやって生き抜く(事件を避ける)か考えようかな。来たれ平穏、帰れよ殺人。

このモットーを大切にしつつ今はコナンの無事を(一応)祝うことにしよう。

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

「などと言って普段なら終わったかもしれんが今回の俺は一味も二味も違うんだよなこれが」

 

ふふふふ、真夜中に一人物陰からこっそりと毛利探偵事務所をのぞき込んでる俺はもはやまごうことなき変質者である。職質不可避であるがそれでも意味がある以上しなければならないのだ。

 

そもそもキッドとあろうものがこっそりとフェードアウトするだろうか?そりゃ現実においてはそうだろうけどさ。少なくとも漫画やアニメ的展開を考えるのであれば脚本家は絶対に地味な幕引きを行わない。

 

しかしそれに反して予想外にキッドは地味な幕引きを選んだ。それはなぜなのか?

 

コナンは俺たちの後ろからひょいっと現れた後「なぁーに心配してんだよ。俺は無事だぜ。ヘッ(キメ顔)」的なことを言って格好つけた後犯人は白鳥刑事が護送していったと語った。

 

状況から察するに今回の事件においてキッドは白鳥刑事に化けていて最後の土壇場に火事の中からエッグとコナンを救い出したというシナリオが想像できる。

とすれば彼は犯人の護送があったからおとなしくフェードアウトしたのだろうか?

 

さらに疑問なのはなんでキッドがお宝を目の前にしながら持ち主に返したのかだけどもまぁそういう展開ってある種お約束みたいなところがあるし今回もご多分に漏れずそういうやつだったんだろう。

しかしそうするにしても何かしらの理由があるべきなのだ。

 

以上のことからおそらく今回のお宝に関する話には何か感動秘話的なものがあったと予想したほうが筋が通りやすい。

 

キッドはお宝を盗むために変装して潜入していた。しかしながらコナン一行と共にエッグについて探りまわった結果としてこれは盗むわけにはいかないという結論に陥った可能性が高い。

ここから導き出せるのはこの事件は全体的に感動路線を走っているということである。

 

感動路線の事件であったからキッドはひっそりと(余韻を際立たせるために)退場していったのだろう。

 

そうすると少なくとも拘置所まで真面目にキッドは犯人を連れて行ったことになる。

白鳥刑事は警視庁所属の人間だからそこまで運んだ……であってるよな?違ったら最悪なんだけど。

 

まぁとにかくここで重要なのはどう見ても主人公たるコナンと敵方のキッドが別れの言葉的な奴を言う暇がなかったということである。

 

少なくとも火事の真っただ中で悠長な別れのやり取りはできないはずだ。

すると考えられるのはどこか落ち着いた場所で再び相まみえて少しの会話をするというパターン。

 

映画ならお約束だろ?

主人公と好敵手が事件が終わったあとになんかちょっとしたお話をするやつって。

 

まして今回は感動路線。ないわけがない。締めの洒落たやり取りが。

それがあると仮定した場合、この落ち着いた場所とはどこか?少なくとも城ではない。

 

だって焼け焦げてるしわざわざコナンがあんな遠くまで一人で足を延ばす理由はない。

すると予想される可能性の高い場所はここ。毛利探偵事務所しかないわけだ。

 

「いやぁ俺冴えわたっちゃってるかもしれないぞ!」

 

アホだって?でももうこれぐらいしか思い浮かばないし可能性がゼロじゃないならなんだってするぐらいの心意気だよ。

 

実際に当たってたみたいだしな。

 

「事務所から存在しないはずのおっきくなったコナンが下りてきた……ってことはまず間違いなくあいつがキッドだな!」

 

ふはははは!俺のメタ推理に恐れをなすがいい怪盗キッドよ!

あとついでに俺をぜひとも手下に迎え入れてください!入れてくれないと俺いつか死ぬかもしれないんですよキッドさん!!




『大阪で発生したエッグ強奪未遂事件ですが先ほど容疑者を確保したとの情報が入ってきており現在警察による__』

「やっぱり大騒ぎになりましたなぁ。あの人らしいといえばらしいですけど」

「手のものに調べさせたところ名前や住所が判明いたしました。大谷一郎、現在17歳。両親は見かけられず一人で父親が米花町に所有している邸宅に住んでいるようです」

「……そう、大谷一郎。それがあの人の名前なんですね」

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