夜の女王   作:がぶり

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嵐吹く

船員たちもひと段落し、船も落ち着いた頃、船長はハンター試験を受ける4人を操舵室へ呼び出した。

しかしまだ1人、オルが来ていないようだった。

 

 

 

「オイオイ、なんで俺たちゃこんなとこに呼び出されてんだ?」

 

 

 

「私も同感だ。」

 

 

 

不満そうに言うのは後半に乗ってきたスーツの男と女顔の男だった。

 

 

 

 

「結局残ったのは4人か。もう1人はまだ来てねぇな。

そんじゃあまぁ、お前らの名前を聞こうじゃねェか。」

 

 

「オレはレオリオ。」

 

 

「オレはゴン!!」

 

 

「私の名はクラピカ。」

 

 

 

コンコン、と操舵室の扉がノックされた。

 

 

「来たな。入んなお嬢ちゃん。」

 

 

ギィ……と音を立てて入ってきたのは

呼ばれていた最後の1人、オルだった。

室内なので日傘は無く、元々付けていた目元と鼻辺りまである黒いベールのみだった。

 

 

『あら……、遅れてしまったみたいね。

失礼したわね、ごめんなさい。』

 

 

 

口元に手を当てて驚いたように話した。

 

 

「いや、構わねェよ。コイツらの名前を聞いてたとこだ。お嬢ちゃんの名前は??」

 

 

『私はオルよ。』

 

 

 

「よォし、これで全員集まったな。

そんじゃ次の質問だ。お前ら何でハンターになりたいんだ?」

 

 

船長のこの質問にレオリオとクラピカが面白くなさそうな顔をした。

 

 

「おい、えらそーに聞くもんじゃねーぜ。

面接官でもあるまいし!」

 

 

「オレは親父がハンターなんだ!!

それで親父が魅せられた仕事がどんなものなのか見てみたいんだ!」

 

 

「おい待てガキ!勝手に答えんじゃねーよ!

協調性のないやつだな!」

 

 

「私もレオリオに同感だな。」

 

 

「おい、お前歳いくつだ。

人を呼び捨てにすんじゃねーぞ!」

 

 

 

「うそを吐いて嫌な質問を回避するのは容易い。

しかし偽証は強欲と等しく最も恥ずべき行為だと私は考える。」

 

 

「レオリオさんと訂正しろ!!おい!!」

 

 

 

 

「かと言って初対面の人間の前で正直に告白するには私の志望理由は私の内面に深く関わりすぎている。したがってこの場で質問に答えることはできない。」

 

 

クラピカの話に入れずぎゃんぎゃんと後ろでレオリオは騒ぎ立てるが全く相手にされず額には青筋が立っている。

 

 

そして喧騒が嫌いなオルもこの状況にうんざりていた。

 

 

 

『ちょっと、騒がしいわよ。

……私は知人にハンター試験を受けるように言われたからよ。その他に理由はないわ。』

 

 

 

「てめぇもか!!!勝手に答えんじゃねぇっつーの!!」

 

 

てめぇ、その一言にオルはレオリオに目を滑らせた。

 

 

 

『……てめぇ、ってまさか私に言ったの?』

 

 

 

キン……と空気が一瞬で張り詰めた。

 

オルがレオリオに威圧をかけたのだ。

 

 

『あなた、さっきから聞いてたけれど、人に敬語を使えという前に自分のその言葉遣いを直した方が良くてよ。……あんまり強い言葉を使うと、小物にみえるわ。』

 

 

 

「なにぃぃいい!?!?」

 

 

 

ツンとそっぽを向いた事で威圧が解け、

さらに苛立ちを募らせたレオリオがオルに掴みかかろうとした。

 

 

 

(この男、今ここで殺してしまおうかしら。)

 

 

 

す……と服に隠していた金属製の扇に手をかけたその時、オルの前にクラピカの背が庇った。

 

 

「何をしている!!

女性に手をあげようとは見下げた男だ!!!」

 

 

 

「んだと!どいつもこいつもふざけやがって!!」

 

 

ゴンは仲裁しようにも割って入れず、船長の隣でオロオロとしている。船長も呆れた様子で頬をかいた。

 

 

「おい!今の質問に答えられなかったそこの男ども2人、今すぐこの船から降りな!!」

 

 

 

「「何だと!?」」

 

 

 

「まだ分からねーのか??既にハンター試験は始まってるんだよ。」

 

 

 

「「「!!」」」

 

 

 

ギィィ、ギィィと先程よりも荒く船が揺れ始めた。

波が高くなってきたのだろう。

 

 

 

「知っての通り、ハンター資格を取りたいヤツらは星の数いる。そいつら全部を審査できるほどハンター教会は人でも時間もねェ!」

 

 

 

だから俺たちみたいなのが篩にかけるんだ、と船長は意地悪く笑った。

 

 

 

 

「「…………。」」

 

 

 

「……私はクルタ族の生き残りだ。 4年前私の同胞を惨たらしく殺した盗賊グループ、幻影旅団を捕まえるためハンターを志望している。」

 

 

 

 

(幻影旅団……。

クロロ=ルシルフルが率いるグループの事ね。一時期緋の目がオークションに出品されていたのは見たことがあるわ。)

 

 

 

 

「賞金首狩りか。幻影旅団はA級首だぜ。

熟練のハンターでも迂闊に手を出せねェ。無駄死にすることになるぜ。」

 

 

 

「死は全く怖くない。

私が1番恐れているのはこの怒りがやがて風化してしまわないかということだ。」

 

 

 

「要は仇討ちか。わざわざハンターにならなくたってできるじゃねぇか。」

 

 

 

「この世で最も愚かな質問のひとつだな、レオリオ。

ハンターでなければ入れない場所、聞けない情報、できない行動というものがキミの脳みそに入り切らないほどあるのだよ。」

 

 

 

 

クラピカが喧嘩腰にそう言った。

レオリオはギリギリと歯を食いしばって怒りを耐えている。

 

 

「おい、お前は?レオリオ。」

 

 

 

「オレか??オレは金さ!!

金がありゃなんでも手に入るからな!!!

でかい家!いい車!!うまい酒!!!」

 

 

 

「品性は金では買えないよレオリオ。」

 

 

 

ボソリとクラピカが言ったその一言にレオリオは我慢が効かなくなった。

 

 

 

「……表へ出な、クラピカ。

その薄汚ねぇクルタ族とかの血を絶やしてやるぜ。」

 

 

 

 

「なんだと!?取り消せレオリオ!!!!」

 

 

 

 

「レオリオさんだ。……来な。」

 

 

 

「望むところだ!!!」

 

 

 

 

「おいこらお前らまだオレの話が終わってねーぞ!」

 

 

 

「放っておこうよ」

 

 

 

「な!」

 

 

「その人が知りたければその人が何に対して怒りを感じるかを知れ。ミトおばさんが教えてくれたオレの好きな言葉なんだ。 オレには2人が怒ってる理由がとても大切なことだと思うんだ。……止めない方がいいよ。」

 

 

そう言ってゴンと船長は操舵室を出て、2人に着いて行った。

 

 

(あの子、私よりも年下だと思うけれど、随分達観しているのね。あの男たちよりもよっぽど大人じゃない。)

 

 

 

ふぅと疲れたように息をつき、オルも4人の後を追った。

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