龍騎神弓クラシカルサキ 〜with魔法戦記リリカルなのはForce an official if〜   作:高町魁兎

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吸われゆく大地、散りゆく二人、
その真意に気付く時、彼女はまた一回り大きく成長する…のかもしれない

龍騎神弓クラシカルサキ、はじまります


diary 26 戦乙女

9月某日 ナカジマジム

「…法律のお勉強ですか?」

この日はたまたま休日がズレて一人だったのでナカジマジムに訪れヴィヴィちゃんたちの様子を見がてら調べ物をしてたんだけれど、その様子を見たヴィヴィちゃんは少し心配そうな顔で私を見ていた。

「…あっこれ?、前もちょっと電話で話してたあの2人なんだけど。」

「今回の事件の首謀者の手先になってるあの2人組ですか?」

ヴィヴィちゃんは私の隣に座って本を覗き込んだ。

「うん、あの二人はさ…嫌々戦ってるんじゃないかって気がして、どうにか平穏な生活を知ってもらって、のびのびと生きて欲しいんだ。だけど、もしもう一度確保して説得できても…裁判上では…どう裁かれるのかなって。」

私はため息を吐いてこの話を終わらせようとすると、ヴィヴィちゃんがボソッとこんな事を言った。

「…フェイトママの事例なんですけどね、この例と同じ判決に持っていけるなら…」

「PT事件…だっけ?」

「はい、あの時のフェイトママはただプレシアママに喜んで欲しくてやった事で、それが次元犯罪の手助けだったなんて知らなかったんです。

だけど、フェイトママたちはユーノ司書長やクロノ提督たちの協力も得ながら半年かけて無実を勝ち取りました…まあこの後も色々あったんですが…あとノーヴェ達も似たような例の一例ですし、今回の2人組もきっと…咲さん?」

その話を聞いてる間に完全にフリーズしてしまっていた、だけど少しだけ決意が固まった。

「…ありがとヴィヴィちゃん。」

「はい?」

「気休め程度だけど、心配事が一個消えた。あの二人を説得して、名前もあげて…人間としての暮らしを知ってもらって…あっごめん、ヴィヴィちゃん。」

ポカーンとした顔でこっちを見てる…

「とりあえず咲さんが笑ってくれたので何よりです。

あっ、そう言えば咲さんっ、今日はお休みなんですし…」

新暦0082年10月16日 ミットチルダ臨海区

…説得できたのに…分かってくれたと思ったのに…なんで…二人がいなきゃ大団円じゃないよ…

心の中で呟き、黙って手を握りしめ、唇を軽く噛み、漏れ出そうになった声を抑えた。

「…バカ…」

ふと声が漏れ出した、もう堪えるのも…

奥底に押し込んで隠していた悔しさが漏れ出した時、砂埃の晴れた先に、装甲が剥がれ落ち、コアであるイヴァが剥き出しになっているのを見つけた。恐らく、今のところ私以外誰も気がついていない。

「…アイツら…ッ?キャロさん!八神部隊長!」

「なんや?」「どうしたの?」

「あれ、見てください。」

「…遠すぎてよー見えへん…!?…そーゆうカラクリかぁ!」

私は見えた物がなんなのかを全員に共有して…

「でもどーするん?、いくら撃っても吸われてくだけやよ。」

言われてみれば引力が弱まっていても、装甲そのものは魔力攻撃が通用し辛い、勝算は薄い。

だけど、私はこの怪物のモチーフが登場する神話のある一文を思い出した。

「きっとあの2人が作ってくれたチャンスなんです。」

「よー分かった、やけど、もし…」

「大丈夫です!…あの神話にはこうありました。

“神封せしは戦乙女の剣と弓、矢を射りし弓壁を崩し、託されせし剣音を超え、吸い込む渦の先捕食者の核を壊さん”」

つまり…あの引力に勝つには光超えるような速さで攻撃するしかない、だから2人はこの文における矢を体現して、そして二人の剣が託されし剣、…結論、私はあの中に光を超える速度で突っ込むしか無い。

この文に書かれた戦乙女として。

だけどその障害物となるあの腕の数は削らないと恐らく軌道が逸れて世界の何処かへ行ってしまう。

「…と言う事だと思います…だから…ッ!?」

「サキちゃん…ホントにやるの?」

キャロさんに悲しい目で心配されて、そのまま両肩に手を置いてこっち目を合わせてくる。ごめんなさいキャロさん…みなさん…でも…

「キャロさん…ありがとうございました、あの時助けてくれて、名前をくれて、妹みたいに大事にしてもらっちゃって…また…ッ!」

キャロさんは私の顔を打った。

「お別れお別れでも、この後ずっと会えないなんて嫌だよ…っちゃんと…帰って来て…くれるよね?」

キャロさんは抱きつきながら私に呼びかけて泣いている、でも…

「ちゃんと帰ってこれる保証は無いですけど、なるべく…帰って来れるようにしますから…事が終わったら…またキャロさんのシチュー食べたいです。」

「…いくらでも作ってあげるから、だけどサキちゃん…私のわがままを聞いて。」

「ワガママ…ですか?」

「私は小さな頃は見はなされて…恐れられて、いろいろが怖くて、でも今は…私を受け入れてくれる人を失うのが怖いんだ。

…だからサキちゃんもソウシくんもエリオくんもフェイトさんやなのはさんだってみんな…だからこそ、元気な顔でちゃんと帰って来るって…約束して。」

アルザスの地から追放されて、局内でもいろんな舞台を転々とさせられてきたキャロさんの口から出たこの言葉は、私の胸を強く締め付ける…私だって…2人揃って帰って来たいけど…大好きなキャロさんとお別れしたくない、ずっとこのまま同じ部隊で一緒に過ごしたい…だけど…だけど…

「なんとか帰って来れるように全力を尽くします…居なくなったりなんか…しませんから…キャロさん…大好きです。」

このワガママを聞く事は無理かもしれないけど、口ではこう約束するしかなかった、だから…最後の会話になるかもしれないここで…全部、全部伝えて…それから…それからっ…

『キャロ!、八神部隊長!』

そうやっている間に怪物が再び動き始めた、二人が装甲に開けた穴は再生されずにさっき切り落とした無数の腕が再生され、穴を覆っている。

「…わかった、作戦変更、前線メンバー…全員出撃や!」

『『『『『了解!』』』』』

「お願い、します!」

再び動き出し、引力が強くなっていく…

「… 天地貫く轟火な咆哮、歩けき大地の永遠(とわ)の守り手、我が元に来よ黒き炎の大地の守護者。竜騎召来、ヴォルテール!」

「ソウシくん!シェルクエール!こっち!」

ヴォルテールが現れると共に疲れているフリードからヴォルテールとシェルクエールにそれぞれ飛び移る。

「「ウィングロード!」」

スバルさんとギンガさんが妨害されて歪になりつつも道を作り、それを伝って…

「はぁぁぁ…はっ!」「「リボルバー…ブロウ!」」

そのままリボルバーナックルで一本ずつ、更にエリオさんが一本切り落として…

「黒の香No.3!ハミングバード!」

無数の黒い鳥が周りを取り囲む、そしてその鳥に気を取られてる間に…

「今です!」

「ゆくぞ、咲。」「はい!シグナムさん!…「駆けよ、隼!」

シグナムさんと私のシュツルムファルケンで一気に起爆させて…

「火の鳥のように舞えっ!ストライクフェネクス!」

反撃の為に飛ばされたもう一本をギリギリの距離一直線に貫いく、シェルクエールのおかげで回避もバッチリ…そこを更に空を横切って…

「疾風迅雷!」「轟天爆砕!ギガントぉぉ…シュラーク!」

ヴィータ副隊長とフェイトさんが一気に切り落としていき…

「パフィ、もういっちょお願い!」「いきます、…盾龍・飛翔脚!」

ソウシくんが脳天をかち割る勢いで一蹴し追加の爆薬に火を付けて爆砕したところで隊長たちが合図を送る。

「「なのは!、「ティアナ!」

「ごめんね怪物さん…でも、これでゲームセットだよ…「全力全開!」」

流れ星のように魔力が一箇所に集まり最早数の暴力だけどキャロさんと八神部隊長も…

「私たちも加勢するよ…鳴り響け、終焉の笛!」「お願いっ…ヴォルテール!」

「ラグナロク!」「スターライト…「ブレイカー!」」

4本の集束砲の柱が次々にその腕を奪い、あれだけ落とされれば再生にはかなりの時間がいるだろう。

「ソウシくん!」「サキ!」

シェルクエールの上に戻ってきたソウシくんと手を繋いで…とここまでは完璧だった。

「「ウィングクロスユニゾン…テイクオフ!」」

再び一つになって剣を構えた時…その怪物からイヴァの部分が分離し、さっきまでの巨大な身体を乗り捨てた。

「逃げる気か!?」

八神部隊長の声も届かず、この引力の発生源となっている魔法陣が閉じ始めた。

『…このままでは、また15年逃げられてしまう…』

その声は今回の…いや私の父ユージのものだった。

『人生を捧げたと言うのに、また仇が取れないと言うのか…』

彼の妻、そう私とソウシくんの身体であるフィリスの母の仇であるあれを逃すのは逮捕されてもなお避けたいようだ、…いけるかな、間に合うかな?

「肩を落とさないでください…私が討ち取って来ますから。

代わりにちゃんとこの仇を撃つために犯した罪を償い刑期を果たした後で…きっちり15年分、たーっぷり私を甘やかしてもらうから。」

グッと右手に力を込めて、剣を抜こうとした時、ついポロッと漏らしてしまった言葉に恥ずかしくなってしまった。

「…なんやエリキャロじゃふまんかぁ〜?」「酷いなぁ…サキちゃん。」

私の顔がだんだんと赤く…いや真っ赤に染まった。

「もうっ!いじらないでくださいよこんな時に!」

そう言うとなのはさんやフェイトさん達まで乗ってきて…

「にゃはは〜♪サキちゃんもまだまだ甘えたいお年頃なんだね〜」

「エリオやキャロじゃダメなら私の方がいい?」

「フェイトさんにはもう僕とキャロが居るじゃないですか!」

「なら咲もソウシも私たちの子になってみるのはどうだ?」

「オイ!シグナム、ウチはもうアギトが居るから店員オーバーだ!」

「なんか癪だなぁ…」「お?やるか?アギト。」

「ケンカはやめるです!」

「じゃあティアはいかが?」「いかが?じゃないわよ!」

「(トーマ、賑やかだね。)」「うん…。」

「ちょっと!なんで私が甘えたがりみたいな…」

「違うの?」「もう!ソウシくんまで!」

ヴォルブラムの艦版の上で散々いじられた後で…

「そろそろ逃げられてまう…張り切って行ってき。」

「はい、みなさん…ッ」

グッと涙を堪えて、息を吸って…

「「いってきます!」」

剣を引き抜き、体に風を受けながら体に青い炎を纏わせて、曇り空を突き抜ける手前でイヴァが手招きするように高みの見物をしている。でも徐々に速度を上げていき、音速…マッハの領域に入った状態で閉じかかった魔法陣の中へイヴァ諸共突っ込んだ。

「…正気か?不死鳥よ。」

「あなたも私のこと名前で呼んでくれないんだ…」

その魔法陣の中は吸われていった物が漂う4次元空間が広がっているが、いくつかは徐々に溶けるように消えている。

つまりあの怪物の…クトゥルシアの胃のような役割の空間だと悟った。

「自らその命…経つ気か?」

「…あなたを野放しにしたら、他の世界が!…だから幅からそのつもりだぁぁぁぁ!」

そんな空間の中ではブラストシステムを使わずに行動するのは不可能なほどに強い引力…いや重力?が働きプカプカと浮かびながら無重力の世界にいる感覚だ。

そんな中でイヴァは周りに漂っていた物の中にあった鋭い刃物で反撃してくる。

「どうせこの空間以外で我以外が吸収されるのは時間の問題…無駄な抵抗をよして養分となるがいい。」

「断るっ!…ッ? そんなぁ!?」

その刃物と刃を交えた末に剣にヒビが入った。

「分解が始まったようだ…」

タイムリミットがこんなに早いなんて…

魔法陣が縮まってどんどん穴が狭まっていく…でもサキちゃんはまだ、出てこない。

『タイムリミットまであと…』

「…こっちから穴を広げる事は出来ませんか?!」

『残念だけど…それは…』

私は肩を落とした、こっちからはもう見守るしかないのだから。

「サキ…っちゃん…」

「大丈夫やキャロ、親鳥は巣立った雛を送り出した後は、信じて待つしかないんや、やからその愛情は、帰ってきたら注げばええ。

やから帰ってくると信じるのが大事やで…」

はやてさんはそう言って私の方を抱いて語りかけた。

ついに剣も鞘も私の手から抜けてビルの破片に刺さった…なす術なし…なの?

「(どうしよう…サキ)」

「…って言われても…」「master、please My use」

「ダメだよアークウィンガー、そのカードリッジを温存しないと…」

「master… Who said he didn't want to spare?(出し惜しみしたくないと言ったのは誰でしたっけ?)」

そうだ…脱出用のカードリッジを残して負けても…

「…ユニゾン、解除」

私はソウシくんとのユニゾンを解除して…あの呪文を唱えた。

「我乞うは天翔る翼・・・この手繋ぎし者よ、この銘の元にその姿解き放て・・・」「サキ…わかった、やろう!」

お互いに悪戯に成功した子供のように笑い合って、私の身を大好きな弟に預ける。

「来よ、飛竜ガーディアレウス、盾竜転生!」

竜の姿を解き放ち、私は狙撃に集中し、ソウシくんは回避と追尾に専念してもらう。

「まだ足掻くか…」

「まだ足掻くよ…約束が…」

目の前が滲んで前が見えなくなってきた…

「…約束があるから!」

最後のカードリッジから作られた矢を射る、少し外れたが、刺さりはした…

「ふん…約束がなんだ。」

「勝った気になるのは早いよ!」

私は突き刺さった鞘と剣を引き抜き、矢のようにつがえた。

「ゲームセットだよイヴァ…大人しく封印されてなさい!…」

カードリッジはもうない、だから呪文が必要だ。

私は胸の奥から聞こえる呪文を唱えてその矢を向けた。

「ファントム、ブレイズ、フリューゲル…悲しき怪物をあるべき姿へ

コール、クルリア、クラシカル!戻す力をこの手の矢に!」

二人から託された剣に光が灯る…

「マギアクリスタル、カインドクトゥルシア…封印!」

しなる弦に押し戻された剣がイヴァの体を貫いて、その体を宝石に戻し、剣と鞘もまた勾玉に戻った。

そしてそれらを拾い上げたあと私たちはここに浮かんでいる瓦礫の上に腰掛けた。

もう帰ろうにも閉じる前にあの穴には辿り着けそうにない。

ごめんなさいみなさん…私たち帰れそうにないです。

「サキ…これで全部終わったのかな?」

「きっとね…」

身を包んでいるバリアジャケットも溶け始めてきた、この空間に吸収されるしかないのかと思ってただ呆然としていると、溶けたバリアジャケットの中からピンク色のカードリッジが出てきた。

「これって…私、バカだ。」

そのカードリッジには[長距離転送 転送先座標キャロ・ル・ルシエ]と書かれた特殊カードリッジだ。

ユニゾンを解いて無かったら二人とも助かったってこと?

「…これはね、もしもの時があったらって思ってキャロさんに作ってもらって、隠しておいたんだ。」

ソウシくんが私の方を見ずに説明した。

あの作戦に乗ってくれたのもアークウィンガーが出し惜しみするなと言ったのもこれがあるからだったんだ…だけど…使えないや。

「でも…ソウシくんが使って、私はいいから。」

「だめ、サキが使ってよ。」

「なんで?」

「片方しか助からないなら僕はサキがいい。」

「私だってソウシくんが助かるならどうなったって…それにここで消えれないならきっと、ずっと…」

私の体の…擬似的に再現された不死鳥であると言う悲しい宿命がある。

だからここで消えた方がきっと…

「それだけじゃないよ、僕は十分に大事にしてもらった。

たくさん幸せにしてもらった。

だけどね、サキはその24倍も大事にして貰ってるんだよ。

その人たちのところへ帰るべきだし…約束もあるんだよね?」

ソウシくんはアークウィンガーにカードリッジを籠めて、私を抱きしめて、耳元で囁いた。

「大事にしてくれて、弟としてお世話までしてくれて、名前もくれてありがとう…短い間だったけど幸せだったよ。

だから最後くらい自分勝手にさせてもらうね…」

カードリッジが放たれ、ピンク色の魔方陣が展開された。

「ソウシくん!…嫌だ…嫌だよ!」

「さよなら…大好きだよ、お姉ちゃん。」

私の意識はここで途切れた。

あの怪物が作り出した穴から眩い光が走ったあと、その口は一気に閉じた。

サキちゃんもソウシくんも、あの子も出てこない。

『サキちゃんたちの反応ロスト…通信も繋がりません…?これは?』

「どないしたん?」

『…空から何かが降ってきます!』

そう言われて空を見上げると、小柄で髪が長くて、すぐにぽきっと折れてしまいそうなほど手足の細い少女が私の手の中に降ってきて、そのまま倒れてしまったところをエリオくんが二人一緒に受け止めて、自分の膝の上に寝かせた。

「キャロ…大丈夫?」

「うん、大丈夫…」

私の手の中に降ってきた少女をよく見ると、その子は生まれたままの姿で水晶の卵を抱いたサキちゃんだった。

あのカードリッジに気が付いてくれたみたいで安心した。

「…おかえり、サキちゃん。」

 

To be continue




次回予告
怪物を退けて、この事件は収束しました。
だけど私の心にはぽっかりと穴が空いたまま…次の進路を選ばなきゃいけない。
次回、龍騎神弓クラシカルサキ
「未来のたまご」
何十年だって何百年だって…忘れないよ。
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