ボッチの俺がいつのまにか最強認定されていた。……え、なんで?   作:赤月ヤモリ

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第四話 勘違いされている?

 マジでラッキーだった。

 

 不良に絡まれたかと思ったら、強い風で巻き上げられた砂が彼らの視界を奪ってくれたのだ。

 動揺している間にそりゃあもう本気で殴ってやったら、あいつら見えないにもかかわらず反撃しようとして――そして、同士討ちを始めた。

 

 バカかな?

 

 鍛えたやつらが殴り合ったので、全員がノックアウト。

 俺の周りで呻いている。

 

 兎にも角にも逃げるのなら今の内だ。

 俺は急いで砂浜を抜ける。

 すると抜けた先で、ぽかんと口を開ける先ほどの中学生を見つけた。

 何してんねん。

 

「き、キミさっきの子だよね?」

「は、はい! 今のって――」

 

 どうしよう、もしかして見られていたのだろうか。

 正当防衛で、例え効いていなかったとしても、俺は暴力をふるった。

 それは違法行為だ。

 

 うーん、さっき助けたし、お願いしたら黙っといてくれるかな?

 

「このことは、オフレコで、お、お願いできるかな?」

 

 こんな時までコミュ障発動しちゃうことに泣きそうなんだが。

 

「もちろんです……っ!」

 

 なんかめっちゃキラキラした目を向けながら良い返事をしてくれた。

 がり勉君はそのまま続ける。

 

「それで、先ほどのお礼も言いたいのですが……」

「と、とりあえず、先にこの場を離れようか」

「は、はい!」

 

 起きられても困るしね。

 すたこらさっさと、とりあえず俺の家へと向かうことにする。

 

「あ、あの! 本当に助けていただきありがとうございました! 僕、幾花(いくはな)幸正(こうせい)って言います! マジ尊敬っす!」

 

 走りながら自己紹介してくる幸正君。

 尊敬、というのはあれか。

 駅前で助けたことだろうか。

 

 だとしたら素直に嬉しいな。

 頑張ってよかったと心の底から思える。

 

「お、俺は、佐藤景麻。何はともあれ、無事でよかったよ」

「佐藤……景麻……っ! 景麻さんって呼んでいいっすか!?」

 

 噛みしめるように名前を呟かないで欲しい。

 俺はノンケだからそういうの全く嬉しくないじゃんね。

 

「え、あ、うん」

 

 それにしても何かめっちゃ懐かれたんだが。

 男に懐かれても嬉しくないのよね。

 

 出来うることなら年下美少女に懐かれたい。

 景麻センパイ♡ みたいな感じで呼ばれたら即落ち二コマする自信があるぞ。

 

「そう言えば景麻さんって高校生なんすか?」

「あ、あぁ。桜越高校に通っているけど」

「えっ、そこって——」

 

 何かを言いかけた幸正君だが、不意に彼のスマホが着信を知らせて言葉を途切れさせる。

 小走りのまま画面を見た彼は「姉貴っす」と言って電話を取った。

 

「い、今帰るから……う、うん。わかった、大丈夫だから、うん、うん、おっけー」

 

 電話を切った幸正君は俺を見て、少し残念そうな表情で言った。

 

「すいません、姉貴が早く帰って来いって言ってて……僕的にはお礼したいんっすけど」

「いや、家族を困らせる必要はないだろう」

 

 というかお礼してくれるつもりだったのね。

 別にいいのに。

 

「あ、あの! 連絡先教えてください! 今度お礼したいっす!」

「いや、そんな。大したことしてないし」

「……っ! 何処まで優しい人なんっすか!」

 

 やべー。何か知らんけど彼の中で俺の評価がうなぎ登りなんだが。

 

「いやほんと。あんな状況なら、年上としては当然のことだよ」

「くぅ~! 凄いっす! 兄貴って呼ばして貰ってもいいっすか!」

 

 何かもう、意味わからんのだが。

 つーか、兄貴って何なの?

 キミ、見た目がり勉の癖に、もしかして案外体育会系なの?

 

 何か断るのも面倒になってきたな。

 俺も早く家に帰ってリンチされたときの汚れとか、砂浜の砂とか洗いたいし……。

 よし、ここはさっさと連絡先教えて帰ってもらうとしよう。

 

「うん、兄貴って呼んでいいから。あと連絡先も交換するから。とりあえず、今日の所は帰りな。お姉さんも心配してるんでしょ?」

「うっす‼ ありがとうございます兄貴!」

 

 そうして、むさ苦しいがり勉である幾花幸正君と連絡先を交換。

 その後彼は駅へと歩いて行った。

 

 駅前の塾に通っているらしく、家は電車で数駅行った先なのだとか。

 塾帰りにあんな奴らに絡まれるとはなんと不幸な。

 

 ……それは俺もか。

 

 溜息を吐いて、俺は集合住宅に入っていく。

 階段を上って二階が俺の家。

 財布に入れてる鍵を取り出し、玄関を開錠しようとして——三階から降りて来る足音を聞いた。

 

 何とはなしに視線を向けて、彼女の姿を捉える。

 

「……あれ、佐藤君だ」

 

 白のスキニーに黒のTシャツ、その上から緩めのカーディガンを羽織った女性が、俺の名前を呼んだ。

 

「……そ、曽根川さん」

 

 そこにいたのは曽根川冬華。

 何気に初コンタクトだった。

 

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