天才=馬鹿   作:あんた

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朝強い奴は人間じゃないと思う

 

 

 

 

朝は辛い。

夏はくっそ暑くて起き上がるのも億劫で、全てにおいてやる気が削がれて何もする気になれない。

冬は冬で寒過ぎてそもそも、ベッドの中から出る気になれずあと何分.......何分と言い訳するように篭っているとそのまま寝過ごすという事態が発生する。

2度寝なんて日常茶飯事で休日にもなれば毎回のように昼まで寝ている、そして紗夜にドヤされる。

お前は俺の嫁か何かか。

そう言うと更に怒りが増して罵倒が激しくなるので絶対言わないが。

 

そして何よりも、

 

 

「空、おはよー!」

 

いつも聞き慣れた明るい声と同時に我が掛け布団が宙を舞う。

あぁ、俺の相棒が.......

何よりもお隣さんの我が幼なじみがこうして毎朝寝起きにテロってくる天災。

 

「あぁ.......日菜、おはよう」

「おはよー!相変わらず朝は機嫌悪いねぇ」

「分かってんならもう止めてくれ」

「んー、いや!」

 

ですよねー。

無駄にいい笑顔が俺には朝日よりも眩しいよ。

正直このまま日菜を無視してベッドに立てこもってもいいのだが、そうすれば間違いなく日菜は暴走するし、紗夜からはありがたーいお話を頂くことになるので渋々立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

.....................。

 

 

 

 

 

 

「いや出てってくれないと着替えらんないんだけど」

「今更じゃない?私は気にしないよ」

「だから俺が気にするの!」

 

女の子にニコニコ笑顔でガン見されながら着替えるとか新しい拷問か何かかな?

 

「ただの布切れ1枚に大袈裟だなー。じゃあさっ!私のパンツも見せてあげるよ、これでおあいこだね!」

「何がじゃあだよ!スカート持ち上げんな馬鹿!」

「そう言ってパンツを食い入るように見る空くんであったー」

「ばっか、お前のパンツなんかに興味なんてねぇよ」

 

嘘です。

こんなんでも可愛いから普通にドキッとします。

水玉パンツ、ありがとうございます。

 

「うっそだー。鼻の下伸ばして言われても説得が力ないよ」

「の、伸びてなんかねぇし!どちらかと言うと俺は日菜のパンツより紗夜のパンツの方が見たいね!」

「へぇ」

 

すぅ、と細くなった日菜の目。

あ、やべぇ死んだわ。

寝惚けていた頭が途端に冴えてきて、背中に嫌な汗が流れる。

 

「私のよりお姉ちゃんのパンツが見たいんだ」

「あ、いや.......」

「ふーん。そっかそっか」

 

パンツの話でここまで窮地に陥った奴が居るだろうか。

少なくとも俺は知らない。

というか日菜がパンツを俺に恥ずかしげもなく見せびらかしてくるから、なんというかレア度が乏しく低くありがたみが薄いのに対して紗夜のパンツはガードが固い。

装甲車どころかメタルギア並に固い。

故にそのスカートの中にある桃源郷を見ていたいと思うのは仕方がない事ではないだろうか。

見えないからこそ求めるのだ我々男はその先を。

それに紗夜は絶対赤面して超恥ずかしがるぞ、絶対可愛いぞ。

 

「それに比べて私は可愛くないって?」

 

 

 

 

思考が全部筒抜けな件について。

 

 

 

 

 

「い、いや日菜も可愛いぞ」

「声震えてるけど」

 

幼なじみ様の後ろに修羅が見えるからです。

 

 

「だってさ、お姉ちゃん」

「え」

 

 

日菜がさっと身を引いて現れたのは姉である紗夜。

表情は俯いていて分からないが見えている耳は真っ赤で小刻みに震えているのが伺える。

え、何時からいたんですと?あ、最初からっすか。

 

「空の馬鹿!変態!え、えっち!」

 

なんで言ってる方が恥ずかしそうにしてんだよ可愛いかよ。

因みに腰の入ったいいビンタを頂きました。

そして日菜は大笑い。

ほんと朝はろくな事がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ、どうしたの?」

「聞くな後輩」

 

 

俺の頬に真っ赤に咲いた椛を指さしながら呆れている赤メッシュの後輩ちゃん。

ジト目でまたか、みたいな呆れ顔してるけど、絶対想像したのと違うからなそれ。

今俺は日菜にお姉ちゃんのご機嫌取ってくるから先行ってて、と言われて先に学校に行ってる途中にコイツらに会ったという訳だ。

もはや彼処まで怒らせると俺とは間違いなく口を聞いてくれないので、日菜に任せるしかない。

ホントに頼むぞ日菜。

まぁお前が原因でこうなったんだけどな。

 

 

「紗夜さんに〜、パンツ見たいって言ってビンタされたんだ〜」

「うっわ、先輩さすがにそれはないですよ」

「色々と弁明させて貰いたいところだがその前に、モカお前なんでわかんだよ」

 

モカちゃんは超絶美少女だから〜、と間の抜けた声でいう自称美少女。

まぁ確かに美少女なんだが自分で言っていいものじゃないだろそれ。

ていうか美少女うんぬん関係ないからな。

後、ひまりはどうでもいいけど蘭が本気で後退り始めてるからモカは少し黙ってような。

 

コイツらは同じ学校の1個下の後輩で、日菜や紗夜というかバンド関係で知り合いになった仲でそれ以来こうして顔を合わせれば話をするような間柄。

いつも5人なのだが今日は3人。

赤メッシュのツンデレ担当、自称美少女担当、アホ担当。

 

「それ、どういう意味ですかっ!」

「どういう意味も何もそういう意味だ」

「意味わかんないですよ!」

 

君は一々鵜呑みにし過ぎな、あと蘭足踏まないでそれ結構痛いから。

 

「まぁ俺の中での美少女は日菜と紗夜だからな」

「空先輩も罪作りな男ですな〜」

「何がだよ」

「そう言う所です」

「ほんと空先輩は乙女心ってものが分かってないですね」

「馬鹿野郎、お前は万年頭ん中恋愛脳なだけだろ」

「失礼ですねっ!」

 

ギャーギャーと五月蝿いひまりが噛み付くように飛び掛ってくる。

残念だったな、俺は日頃から日菜の無茶振りにより身体はそれなりに鍛えられているのだ、女の子1人あしらうのは容易い事。

 

むにゅん。

 

「えいっえいっ、先輩のバカ!」

「くっ、殺せ」

「正直者ですな〜」

 

おっぱいには勝てなかったよ.......

動く度に結構揺れるそれはたいそう立派な大きさで、じゃれ合うようにべしべしと俺を叩いてくるひまりの攻撃よりも、押し当てられるように形を変える柔らかいそれの方が何百倍もの破壊力があった。

冷やかな目で俺を下げずむ蘭と、相変わらず何考えてんのか分からんモカ。

どうやら自分の意思じゃ抵抗不可なようなので助けて頂きたい。

助けて欲しいなあ。

 

「何、してるの?」

「ひっ」

 

突然後ろから掛けられた声にピンっと背筋が伸びた。

誰だよ情けない声で悲鳴なんてあげたやつ。

俺だよ。

 

「日菜さんっ!?」

「やっほー、で何してたの?」

 

うわぁ、笑顔が素敵ですね。

でも目が全然笑ってないですよ。

俺に抱き着いていたひまりは飛び退くように離れて、俺と同じようにガクブルしている。

分かるよ怖いもんな。

 

ちらりと日菜の目線がひまりの胸に行って自分の胸に行く。

そして俺へとやって来た。

あっ、死んだわ。

 

「そんなに大きいおっぱいが好きなの?そんなに鼻の下伸ばしちゃって.......どうなの?」

「あ、いや.......」

 

目のハイライト死んでますよ。

どもっちまったがこれどもらないで普通に言える奴いる?

目線を泳がしてガクブルし情けない姿を晒す童貞がいた。

はい、俺です。

おい童貞は関係だろ。

 

「別に俺とひまりは争ってただけで.......」

「私にはイチャイチャしてるようにしか見えなかったけどなぁー」

 

日菜は怒っている。

何故怒っているのかは分からないが、怒っているのは確かだ。

でも今ここで何か言わなければヤバい、何がヤバいかは分からないがそれだけは分かる。

でも俺の口は開いては閉じてを繰り返すだけで言葉を発してはくれない。

やべぇよやべぇよ。

流れる冷や汗、目の前にハイライトの死んだ目。

俺には分かる、これ日菜も口聞いてくれなくるやつだ。

無視されるのはすごく辛いのだ、1週間ほど昔無視された事があるのだがその時は何やってもいまいち楽しくなくてホントに辛かった。

 

「日菜さん〜、さっき空先輩が1番の美少女は日菜さんだって言ってましたよ〜」

「それ、ほんと?」

「お、おう」

「もー、空ってば恥ずかしいよっ!」

 

ぴょんっと跳ねて腕を取ってくる日菜はニコニコ笑っていてハイライトさんが帰ってきてきた。

なんか良く分からんがナイスだモカ!

モカの方を見ればサムズアップをして無駄に様になったドヤ顔で「パン1つ追加で」との事で。

 

「すみません、日菜先輩。勘違いさせちゃったみたいで」

「もういいよ。でも空は私達のだからあまりそういう事したらダメだよ?」

「おい。誰が誰のだって?」

「嬉しいでしょ?踏んであげよっか?」

「なんで踏むとかいう話になった」

 

 

 

 


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