【RTA】マギアレコードRTA チームみかづき荘ルート 作:ironplate
『木星なのか』という存在を知ったのは、同じマギウスの一人であるアリナが度々呟いていたのを聞いた時だった。
最初は、わたくしには無関係なものとばかり思っていたが、最近はそうも行かなくなってきた。
まずあのアリナが『デンジャラス』と賞していること。
あのアリナにデンジャラスと言われてしまうのであればそれは相当なのは想像にかたくない。
実際に会ってみたいと興味が湧いてきた。
だからあのみふゆと親友の仲だと知った時は本当に驚いたし、一見まともそうに見えてこのわたくしを脅して来たのにも驚いた。
彼女の行動は何もかも突飛で、全く読めない。
論理性も一貫性も一見あるように見えるのだが、どこか破綻していて計算が狂う。
いつだってわたくしの想像を遥かに凌駕してくる存在。
この前だって、ウワサの破壊に携わっていると聞いたと思ったらマギウスの翼候補を連れてきた。
マギウスを敵視している...訳でもなさそうなのだが、一方では明らかに敵対するような行動を取ったりしているのだ。
わけがわからない。
だからわたくしは、会議を行った。
彼女をどうするかはわたくし達の計画において最重要の項目になるはずだ。
「...木星なのかというのはどういう存在なのか。僕にはよく分からないよ。」
「だよねー。実際会ったわたくしが分からないんだから当然だよね。」
会議といいつつ、アリナは何だか様子が変だったから置いてきた。
ここにいるのは『柊ねむ』とわたくし『里見灯花』のみだ。
マギウスの本拠地、『ホテル・フェントホープ』。
その最奥に存在する聖堂。
巨大な白い翼を持ち、常に瘴気を放ち続ける蛾のような存在、『エンブリオ・イブ』がわたくし達が座るテーブルを見下ろすように壁に貼り付けられ、項垂れている。
「イブが孵化するまでもう少し何だけどにゃー。あいつを何とかしないと計算が狂っちゃう気がするんだよね。」
「それには同意するよ。不確定要素はなるべく省いたほうがいい。」
「不確定要素と言えばアリナの事はどうする?」
「アリナは...最近は特に様子がおかしい。あれは何か...心酔しているようだった。」
「本当に?あのアリナが?」
「僕が言うんだから間違いはないよ。」
「その自信はどこから来るのかにゃー?」
「...木星なのかについてだけど一ついいかな。」
「?」
「彼女の魔法、黒羽根の調査で分かった固有魔法はとても面白いよ。」
「あぁ、あの何でも切ったり貼ったりできるっていうアレ?」
「そう、もしあの魔法が物理法則を完全に無視できるとしたら?」
「...なるほどねー。わたくし達の計画に利用できるかもしれない、そういう事?」
「そう、僕達の計画の最終段階、『ワルプルギスの夜』を呼んでイブを孵化させる。その足がかりになるかもしれない。」
「けどあいつをそこまで踏み込ませて大丈夫なのかにゃー?」
「リスクは大きいだろうね。だけどワルプルギスを呼ぶのは今になっても全然目処が立っていないじゃないか。」
「特定の周波数を見つけるのに難航してるだけだよー。」
「こうしてる内にもウワサはどんどん破壊されていくだろうし、僕達にはあまり時間がない。それは分かっているだろう?」
「善処はしてみるけど。期待はしないでほしいなー?」
「えらく弱気だね。灯花らしくもない。」
「...取り敢えずウワサを破壊して回ってる環いろは達をマギウスの翼に引き込まないとねー。」
「それに関してはもうみふゆに頼んであるよ。すぐにでも講義を開いてくれるだろう。よろしく頼むよ。」
「おっけー。じゃ、わたくしは『木星なのか』に会ってくるから。」
「行ってらっしゃい。」
木星なのかをマギウス側に引き込むのは悪い話ではない。
こちらとしても戦力が増えるのは嬉しい話ではあるし、監視下に置いて動きを制限できる。
だからこそ度々話を持ちかけていた。
初対面で脅しをかけてくるくらいだからあまり良く思われてないのは確かだろうけど...。
...よく思い出してみよう。
最初に脅された時どういうふうに言われた?
『...何をしてようが構わんがみふゆを悲しませるようなら...殺すぞ?』
...これが答えか?
全てみふゆのためだというのか?
いずれにせよ、これは一つの材料に過ぎない。
この条件を提示するにはまず彼女がわたくし達の計画に役立つかを確かめねば。
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電波塔の一件から数日経った。
みかづき荘もまた賑やかになってきている。
もし神様がいるならば、私にどうしても仲間を作って欲しいらしい。
もう二度と仲間なんて作らない。
だから、ただの協力関係だって言い聞かせてたつもりだった。
現実はどうだ?
結局、流れで仲間を作ってしまっていて、それを半ば認めてしまっている自分がいる。
あの決意はなんだったのだろうか?
...私は意志の弱い女だ。
「...やちよさん?どうしたんですか?」
カウンターで肩肘をついて思いにふけっていると、環さんが話しかけてきた。
「何でもないわ。ただの考え事よ。」
「そうですか。」
...思えば最近はおかしい事だらけだ。
ウワサの発生、みふゆの事、魔女を飼う集団、マギウスという存在、そして...鶴乃がここ最近みかづき荘に現れないこと。
ほぼ毎日来ていた彼女の全く姿を見なくなった。
あのフェリシアですら心配していたくらいだ。
するとその時、インターホンが鳴った。
それに環さんが応対しに行って、少しして戻ってきた。
「あの、やちよさんに用があるらしいんですけど...。」
「誰だったの?」
「『胡桃まなか』っていうらしいんですけど...知ってますか?」
...聞いたことのある名だ、私に用事が?
とりあえず玄関に出てみる。
そこにはその胡桃さん以外にもう一人いた。
見覚えがある。
確か魔法少女だったはず。
名前は...なんだったか。
「あなたに頼るのは尺ですけど頼りに来てやりましたわ!」
「なんで喧嘩腰なんですか...あ、どうもお久しぶりです。」
「...何か用?」
「一つ尋ねたいことがあるんです。...なのか先輩の居場所を知りませんか?」
「なのかの?...確かに最近見てないけど...どうかしたの?」
「全然見ないのよ。学校にも居ないし家にも居ない。あなただったら知ってるかもって言う人が居たから来たのよ。」
その報告には素直に驚いてしまった。
鶴乃が居ないと思ったらなのかまで居なくなっているとは。
目の前のことばかりになってしまって視野が狭くなっている証拠だ。
「...残念だけど私も知らないわ。」
「そうですか...。」
そう告げると胡桃さんはガックリと肩を落とした。
よほど期待して来たらしい。
悪い事をしてしまったかもしれないが、知らないものは知らないのだから仕方がない。
「わざわざすみません、失礼します。」
そう言って二人は帰って行った。
...何がなんだか、あのなのかが行方不明になるなんて。
思えば、みふゆが教えてくれていたから行動を把握できていた。
ウワサだってなのかが運んでくれた情報があったから破壊できた。
私は何もしていないじゃないか。
...いつまでも私は駄目なリーダーだ。