【完結】フリーズランサー無双   作:器物転生

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【あらすじ】
ネレイド神が掌握され、
シゼルは解放されたものの、
主人公組のために犠牲となりました。


世界終末の夜

 創造神セイファートに導かれ、俺は試練を受ける。そして極光術を修得した。「セイファートの使者」と名乗る存在によると、真の極光術というらしい。これはネレイドの用いる闇の極光術に対抗するために必要な物だ。でもネレイドが闇の極光術なら、セイファートは光の極光術じゃねぇのか?

 俺とファラとキールとメルディは、インフェリアとセレスティアを駆け回る。そうして様々な大晶霊と契約した。水風火・地氷雷・光闇・時元の全10種だ。インフェリアやセレスティアの遺跡を探索して、エリクシールという体調を完全に回復させるアイテムも集めた。それでも、どれほど準備を整えても、ネレイドに勝てるのかは分からねぇ。

 グランドフォールの危機は去った。その代わりとして問題になったのは、あの人だ。ネレイドに憑かれたあの人は、世界を破滅に追い込みつつある。あの人は最後に見た姿のまま、インフェリアの空に浮かんでいた。そして世界を「敵」と定め、インフェリアの大地を削ってる。大地を削られて海だけになれば、人は生きて行けねぇ。このままじゃ。いずれ人類は死滅するだろう。

 

「あの人に極光術は通じるのか?」

『彼女は「世界を殺す猛毒」だ。晶霊を取り込み、その晶霊を殺す事で、莫大な力を得ている』

 

 そもそも、あの人の言う「小人さん」なんていなかった。

 

「極光術の天敵じゃねえか。そんな奴を、なんで今まで大晶霊は放って置いたんだ?」

『彼女は人間だ。「人の問題に大晶霊は関わるべきではない」と彼等は定めている』

 

「こんな時くらい、いいじゃねぇか。世界の危機だぜ? 大晶霊が10体も居れば、あの人も倒せるんだろ?」

『気軽に大晶霊が力を振るえば、簡単に人は滅びてしまうのだ。たとえば今、彼女が力を振るっているように』

 

「あれは、もう、人じゃねぇだろ」

『あんな様でも人なのだよ。100年と言わず、あと20年も経てば老いて死に逝くだろう。その前に世界は滅ぶが』

 

「それで世界が滅んだら大晶霊も困るんだろ?」

『その後に世界が滅びてしまっては、意味がないのだ。それに彼女は晶霊の天敵になりえる』

 

「俺の修得した極光術にとってもな。他に通じそうな技に、心当たりはないのかよ」

『彼女の出力に対抗できるものは、世界を滅ぼす可能性すら秘めた極光術しかないのだよ」

 

 セイファートの使者は、あの人を「猛毒」と例える。たしかに、その表現は合っていると思った。力だけではなく、存在その物が猛毒だ。この世界がオカシクなったのは、何もかもあの人が原因と思える。そもそも、あの人は何者なんだ? ロナという女性じゃない。得体の知れない、別の何かだ。

 

Re

 

 あの人は巨大な翼を広げ、セレスティアへ乗り込んで来た。ついにセレスティアまで来ちまった。子供船長の船に乗って、俺達は戦場へ向かう。俺達だけじゃない。セレスティアの革命軍も一緒だ。彼等のおかげで船に搭載した晶霊砲は、あの人まで攻撃が届く。だが、それでも、あの人を倒すには至らなかった。

 

『撤退はない! 進め! 進めぇ!』

『例の船を先に進ませる事だけを考えろ!』

『あの船が沈めば俺達も終わりだぁ!』

『撃てぇ! 撃ちまくれぇ!』

『来るぞ! 空が落ちてくる!』

『後先なんて考えるなぁ!』

 

 降り注ぐ氷の群れが、革命軍の戦艦を押し潰した。瞬く間に革命軍は壊滅していく。その間に俺達は隙間を抜け、あの人の下へ突っ込んだ。革命軍の人々によって作られた道だ。ほとんど言葉も通じない俺達と一緒に戦ってくれる、セレスティアの人々の命で作られた道だ。その道を俺達は突き進んだ。

 高速で走る船の甲板に、俺達はいる。風の大晶霊のおかげで、風圧で息が止まる事はない。俺はメルディと手を繋いでいた。メルディの手はキールと繋がれている。でも、ファラと手は繋いでいない。ファラには大事な役目があるからな。俺達はファラ、俺、メルディ、キールの順で横に並んでいる。もうすぐ空に浮かぶ、あの人の真下だ。もうギリギリだろう、これ以上は近付けない。

 

「始めるぞ!」

「うん!」

 

「頼むぞ、メルディ!」

『はいな! みんな出てきてよ!』

 

 キールの言葉を受けて、メルディが全10種の大晶霊を召還する。これから少しの間、時間を稼いで貰わなくちゃならねぇ。クレーメルケイジから10個の光が飛び出し、空へ向かって行った。そして、あの人と戦闘を始める。だが、あの人は晶霊の天敵だ。ダメージを与える事はできないだろう。こっちの切り札は、極光術しかない。

 俺が「真の極光術」の素質(フィブリル)を持ち、メルディは「闇の極光術」の素質(フィブリル)を持っている。本来ならば「闇の極光術」はネレイドを呼び寄せる。しかし今のネレイドは、あの人に執着しているらしい。だから「闇の極光術」を使ったメルディが、ネレイドに乗っ取られる心配をする必要はなかった。

 メルディから放たれた黒い光が、俺の中に入ってくる。俺の中にある白い光と交わって、その輝きを強めた。俺の「真の極光」とメルディの「闇の極光」を、俺の中で混ぜ合わせていた。それによって極光術の出力は増大する。しかし、その代償として俺の体は傷付けられた。増大した極光術の出力に、人に過ぎない俺の体は耐え切れない。

 そんな俺の体に、ファラがエリクシールを使う。エリクシールによって体にできた傷は治り、俺の体力も気力も完全に回復した。しかし、回復した側から再び、俺の体は崩壊を始める。あまりの痛みに、俺の意識は真っ白に染め上げられた。だが、極光術の発動だけは止める訳にはいかない。

 大丈夫だ。そのためにファラがいる。俺の側にファラが居てくれる。どんなに俺の体が壊れても、隣にいるファラが回復してくれる。俺の役割は、極光術の出力を限界まで高める事だ。ファラの役割は、傷つく俺を回復し続ける事だ。だから俺は、何も心配しなくていい。

 そんな俺の手を、ファラが握る。なんでだ? 回復はどうした? ファラの手は片方しかない。だから俺の手を握ったら、薬を使って俺を回復できないだろ? その時、極光術の発動と痛みに耐えていた俺は、気付かなかった。考える余裕がなかった。ファラが俺の手を握った理由は、単純なことだ。

 

「くすり、きれちゃった」

 

 ああ、なんだ。そうか。じゃあ、これで終わりだ。そう思った俺は、手を上へ向ける。向けようと思ったら、手は上がらなかった。腕が壊れてやがる。ははは、バカみたいだな。そんな俺の体をファラが支えてくれる。上も下も分からない感覚だが、俺はファラを信じた。信じて、撃った。

 

 極 光 波

 

 声は出なかった。だが、白い光が世界に溢れる。俺の体から世界に広がった。それは遠くに見える、黒い闇を押し退ける。白い光によって黒い闇は潰され、どんどん小さくなっていった。あの黒い闇が、あの人なのだろう。そして白い光が、俺だ。大丈夫だ、勝てる。勝てるぞ!

 そう思った。思っていた。けれど、絶望が拡大する。黒かった闇が、黒いまま輝き始めた。そして黒い光は、白い光を飲み込み始める。グルグルと回る気持ちの悪い動きで、白い光を浸食していた。黒い光で、俺がおかされていく。そんな、ウソだろ? あと少しだったのに、なんでだ!? こんなのってねぇだろ!?

 瞬く間に黒い光は俺の下へ届き、俺の体も飲み込まれる。でも、まだだ、まだ終わってねぇ。俺は死んでねぇぞ! そう思っていたけれど俺は、体が不安定になった。俺の体がグルグルと回っている。なんだ? これ? なにが起こってる? 俺の体はファラが、支えてくれているはずだろ? え? ああ、そうか。つまり、誰もいなくなったんだ。

 

 

黒い極光に飲み込まれて

 




▼『紫檀』さんの感想を受けて、「クィッキー」が「クイッキー」になっている件を修正しました。やっと小動物の名前を出したと思ったら、間違えてたでござる。

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