いつのまにやらマイスターへの道   作:YAMYAM

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ガチャ

扉を開けるとガヤガヤとした酒場の喧騒に包まれる。

昼なのに。

隅で飲んだくれているオジサン、依頼の張り紙を見ている冒険者達、その中に何人か気になる特徴がいるな。まぁ、まだお世話になる予定はない。そしてカウンターの中の髭のマスター。いいガタイだ。

3がつく日じゃないからフレアさんはいないっと。

 

「すまないが、後ろが使えているから中に入ってくれないか」

扉のところで立ち止まっていたら、後ろから声をかけられた。

「あ、すみません。いまどきます」

慌てて中に入る。どこの田舎者だよ俺。

「ん、ありがとう。坊主、酒場は初めてか?」

声をかけてきたのは茶色の短髪のひょうきんそうなコリーっぽい戦士。あ、ハレッシュだ。

「はぁ、成人したばかりなんで今日が初めてです。といっても飲みに来たわけじゃなくて依頼を受けに来たんですが」

「依頼?ああ、おまえ錬金術師か。俺の名前はハレッシュって言うんだ。よろしくな」

「俺はハルトムートです。アカデミーの学生です。早く錬金術師って名乗れるようになりたいですよ」

「俺らからすると学生も錬金術師だけどな。

そうだ、街の外へ採取に行くときは護衛を雇ったほうが安全だぜ。獣や魔物、盗賊もでるからな。

俺は街にいるときは大抵酒場にいるし、マスターに確認して護衛依頼が入っていない期間を予約しといてくれても構わない」

「そのうちお願いします。近いうちヘーベル湖には行きたいと思っているんで」

「おう、待ってるよ。じゃあな。それにしてもこの店、狭いと思わないか。俺みたいに身体のでかいやつは窮屈だぜ」

そう言って本当に窮屈そうに椅子と椅子の間を歩き出す。

この時代はまだ酒場が狭いんだよな。クーゲルはまだ冒険者をしてたはずだから居ないし。

錬金術の依頼のおかげでかなり儲かって数年後に改装、ってとこかな。

壁際から店の中をぐるっと見渡してみる。

……オジサンに話しかけてもお小遣いはくれないだろうな。お嬢ちゃんだからだろう、あれは。

入り口の張り紙を読んでみる。

『捜し物から怪物退治まで、困った時は酒場「飛翔亭」まで』

アカデミー生である俺は素材やアイテムしか受けられないけど、冒険者を目指していたらこういう依頼を受けながら戦闘経験を積んでいったんだろうなぁ。

そう思いながら素材やアイテムの依頼が貼っている壁へ向かう。

冒険者への討伐依頼や護衛依頼などとは場所が分かれており、壁の辺りにいるのは大帝が錬金術師かアカデミー生だ。たまにぷにぷに玉を持っている冒険者が依頼が出ていないかと見に来る程度。既に棲み分けができてます。

俺も何か今の時点でものがないかを確認してみる。

 

「中和剤(緑)が7個で銀貨602枚か。まだまだ高いな」

少し悩むが近くの森に行けばこの時期は魔法の草が結構とれるはず。近々授業でやるし、復習にもなるので受けても問題ないだろう。

依頼書をはがしてマスターのところへ持っていく。

「すみませーん、この依頼を受けたいんですがいいですか?」

「なんだお前、見ない顔だな。初めてか?」

「ハルトムートです、はじめまして、よろしくお願いします。今日からアカデミーで錬金術を勉強しています」

「ああ、よろしく、ハルトムート。最初に言っておくが、依頼を受けたら必ず最後まで終わらせること、依頼人が満足する品質を納めることだ。途中で投げだすような奴にはだれも依頼をしなくなる。信用がなくなったらそこでおしまいだ。これを忘れずにやっていけるか?」

「もちろんです。まだ見習いですが、職人として誇りをもってやっていきたいと思います」

心の底からそう思っているが、顔も出来るだけそう見えるように引き締めてみる。

第一印象は大事だよな。

「よし、いい心がけだ。それで受けるのは中和剤(緑)か。もう作ったことがあるのか?」

「いいえ、今晩作ってみますが、明後日授業でやるので、品質の上げ方を聞いてみるつもりです」

「期日まで30日あるし、それでもいいだろう。間違いなく期日までに持って来いよ」

「はい!」

「他に何かあるか」

「いえ、ありません。それじゃあ出来たら持ってきます」

よし、依頼ひとつゲット!

 

 

飛翔亭を出て武器屋に向かう。

外門にそのまま向かおうと思ったのだが、実家にいた時に使っていたナイフは兄貴から借りていたものだったことを思い出したのだ。

近くの森は日帰りできる距離には危険はほとんど無いと言っていいが、丸腰で行くのは問題だ。

虎の子の銀貨を使って短剣を買った。ああ、残り20枚……。

杖の方が錬金術師っぽいのかもしれないが、短剣より杖の方が高いのに攻撃力が低いんだ。

どうせぷにぷにとか出てきたら逃げるだけなので、最低限の武器があればいい。

武器屋の親父には防具を買えと口をすっぱくして言われたが、もう少しお金がたまらないと買えないんだってば。

1人で街の外に出るのは実は初めてだった俺。

日が落ちる前には絶対帰りたい。せいぜいあと1時間。

心もとない装備でびくびくと近くの森の中を歩き回った。

 

 

なんとか魔法の草3束と、うに2個、ニューズ1個を手にした俺は、警戒のしすぎで疲れ切って寮へ戻ってベッドに倒れこんだ。

あ、シャワー……。

 

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