テニス、バイトからのバンド(in ミッシェル)……かなりいろんな事やってたけど、多分今以上にここから逃げたい気分になった事は無いと思う。
「これでもっと笑顔を世界に届けられるね、薫!」
「あぁ、なんて儚い合同ライブなんだ」
机の反対側に座っていたスーツ姿の女性の方々(こころの護衛ではない)が少し苦笑いしてるのを確認しつつ、両手を机につき上半身を前かがみにさせてからバカ二人をなだめる。
「はいはいはい、こころは少しステイ、それと薫さんは儚い儚いうるさいですよーもー全く相手の人も少し引いてるじゃないですか」
バカ二人を宥めたのちに、ため息をつき左隣に座っていたこころの方をみる。
「……って言うかさ、こころ」
「なに?みさき?」
ニコニコした顔で私の顔を見ながら首を傾げてくる。
「本当にミッシェルさんを中心にして合同ライブする気なの?それも、一日中ずっと」
「そうよ、みさき」
その言葉を聞き座り直しマジかーと天井を見上げ腕を組んでうーんと唸る。実は今日、こころの家に召集するように黒服さん達から連絡があり、部活が終わった後に来たところ、いつも会議をしてる部屋に見知らぬ人がいた。話を聞けば近々開催される有名なテニスの世界大会の前夜祭の関係者の方で、屋外ライブをしてほしいとの事。元々はいつも練習で使ってるCIRCLEの店主であるまりなさんの所に連絡が行って、そこから彼女の判断で、ポピパ、ハロハピ、パスパレ、アフグロ、ロゼリアの面々にこの話を通した。それで全てのバンドからオッケーが下りて合同ライブをすることになった。まぁ、特殊な例だけど、まだわかる。
「尚且つ、ハピハロのメンバーであり、マスコット扱いされてるミッシェルさんにはずっとステージに立ってもらいたいと、何時間もずっと」
「そうよ、なんかおかしいかしら?」
「いやいや、だからさぁ……」
おかしいでしょ!と言いたいところだけど、こころたちにとってミッシェルはハピハロの妖精的な扱いをされていて稀にこういう無茶振りをされる事がある。まぁ、大抵ハピハロの会議で私が有耶無耶にして無かったことにしてるけど、今回はそうならなかった。いや、そうできなかった。
「ね、ねぇ、こころちゃん、やっぱりミッシェルの負担が大きいと思うから、一日中はやめたほうがいいよぉ〜」
返しの言葉が思いつかず、少し悩んでいると少し歯切れが悪い感じでこころとは私を挟んで反対側に座っていた花音さんが言う。だが、こころは少し口を尖らせて首を横に振る。
「うーん、それは無理ね、だってもう決まってるもん」
そう、私がここに来た時には既に、ミッシェルが合同ライブを一日中ずっと舞台に立つ事が決定していたのである。黒服さんの話によるとずっと花音さんと黒服の皆さんが私が来るまでにこころを含めた3バカを止めてはいたものの、止めきれず決定されてしまったらしい。なんでこういう日に限って部活動が長引くのよ。
「すみません、奥沢様、こころ様を止められなくて申し訳ありませんでした」
後ろに立っていた黒服さんの一人が私に謝罪をしてくるがあははと愛想笑いを返す。
「いいえいいえ、気にしないでください、先に決まっちゃったものはしょうがないですし、私も部活動で来れなかったのも原因だから謝らないでください…体力持つかなぁ……」
一応部活でテニスをやってるからそのテニスの有名な世界大会がある日は覚えてる。確か今から2ヶ月後に開催され、今はちょうど梅雨だから2ヶ月後って、まてまて炎天下の中、前夜祭で空調もない屋外でバンドを一日中、それもほぼ休憩ができない着ぐるみを着てやれと……流石に無茶振り過ぎる。
「熱中症が怖いなぁ……」
和気藹々とそのライブについて話を進めてるハピハロの面々を他所に私はそう呟いて溜息をつく事しか出来なかったのだった。