結局、黒服さんこと黒崎さんと河川敷を走った後、家に帰り朝食を済ませ、そのまま学校に登校した。
「まだかなぁ……」
自分の席に座り、とある人物を待っていた。そのとある人物とは、まぁ、隠す必要のない市ヶ谷さんなんだけどね。それで、なんで彼女を待っているかと言うと、今朝一緒に走った黒崎さんから一つお願いされててーーー
『あのー美咲様』
『あ、はいなんでしょうか』
一通り走り終わり息を整え終わった後黒崎さんに声をかけられた。
『不肖ながら、私共黒服はパステルパレット、ロゼリア、アフターグロウに関してはパイプが作れつつあるんですが、ポッピンパーティに関しては少し手間取ってしまいまして、その、美咲様にポッピンパーティと話をつけてもらえないでしょうか……』
『あぁ、いいですよ、市ヶ谷さんに話し通せば多分行けるはずですし』
ーーーと言う話があり、ポピパと話をつける為、1番身近にいる市ヶ谷さん(と戸山さん)を待っているのである。いつもの事なんだけどね。
「おーす、今日は起きてたんだな」
ガラガラガラとクラスの扉が開き、市ヶ谷さんが少し気怠に入室してくる。
「起きてましたよーってまた、戸山さん置いてきたでしょ」
「またあいつ寝坊したから見捨ててきただけだっつーの」
置いてきたってわけでしょそれ、っというか見捨ててきたって言う方が物騒でしょ。スタスタスタと歩いてきた市ヶ谷さんは私の前の席に壁に背をつける形で座る。
「たーく、香澄の寝たいって言ってるのになかなか寝かせてくれなくてなー」
「ぶふっ……」
いきなり夜の話をされて吹き出してしまう。自分が失言したことに気がついた市ヶ谷さんは軽く顔を赤らめた後、罰悪そうに言葉を発する。
「いや、すまん、いまのはナシだ、忘れろ!」
「じゃ、忘れますが、一つ聞かせてください、その首元の赤い斑点はなんですか」
そう言うと慌てたように市ヶ谷さんは首に手をやり顔を真っ赤にする。それから"え、嘘だろ今朝確認したんだけど、どこにあったんだ!?"っと慌て始める。まぁ、本当はついてないんですけどね。
「何慌ててるんですか、市ヶ谷さん、嘘ですよ」
「奥沢さん!!!」
机を両手で叩きつけ、こちらに前のめりになりながら抗議してくる市ヶ谷さんに対して私は笑いを堪えながらも宥める。
「あ、そうだ、市ヶ谷さん」
宥める事に成功し、着席し頬杖を私の机の上につき市ヶ谷さんは不貞腐れながら目線だけをこちらに向ける。
「なんだよ」
「前夜祭の話で少しばかりポッピンパーティの皆さんと話したい事があって次ポピパの会議がある時にお邪魔したいなぁと思いまして」
「あーミッシェルでステージにずっと立たなくちゃいけないアレか」
はいっと答えると興味ありげに市ヶ谷さんが身体をこちらに向ける。
「実はそのアレで、ポピパの曲とセッションをしなくちゃならなくなりまして」
「なんじゃそりゃ」
昨日のパスパレの事務所で起こった出来事とその関係でテレビに出演する事やその流れで他のバンドの曲とセッションすると言う話になったと言う事をかいつまんで説明する。
「成る程、それでか……っと言うかさ、テレビ出演するんだな」
「あーいやぁそうだね……私も言われるまで全く待って知らなかったから少し困ってるんですよね」
お互いにあははっと苦笑いしていると、ダッダッダッダッだと誰かが走ってくる音が聞こえてくる。それから、私達のいるクラスの前で足を止めガラガラガラっという扉が開く音がする。
「あーりーさーーーー!!!」
昨日と同じく、戸山さんが少し息を上げながらそこにいた。
「おう、香澄じゃねーか」
「おう、じゃないよ、なんで置いていくのさー!!!」
「香澄がおきねーからだろ」
抗議をしながら私達のもとに寄ってくる。それから、昨日と同じように押し問答を始めてしまったので、少し笑ってしまう。
「あっ、おはよう!美咲ちゃん!」
「おはようございます、戸山さん」
うりうりうりと市ヶ谷さんのほっぺたに、自身のほっぺたを擦り付けていた戸山さんに挨拶をされ、挨拶を返す。
「この、香澄、一旦離れろ、バカ!!!」
ほっぺたをすりすりされていた市ヶ谷さんが大声を上げて戸山さんを引き離す。それをされた戸山さんは少ししょんぼりとする。心なしか、耳みたいになっている髪の毛も萎れてるように見えた。
「あっ、ごめん、ありさ」
「はぁ、別に気にはしてないけどさ、そうだ、香澄」
ん?なに?っと戸山さんが首を傾げる。
「奥沢さんが、香澄と話したい事があるらしいんだけどさ……」
そう言って市ヶ谷さんがこちらを親指で指してくる。まぁ、確かに話す事はあるけどさ。
「え、なになに!!」
目をこころ並みにキラキラさせた戸山さんに言われ、事の端末を話す。勿論、戸山さんはミッシェル=美咲と言う考えには至ってない側の人間なので、ミッシェルの代理人としてと言う程で全て話す。一通り話し終えると戸山さんは首を何回かうんうんと縦に振る。
「成る程!それで私達と話したいんだね!いいよ!」
まぁ、流石戸山さん、一発OKでした。その後、話した結果、ポピパの会議は今週末行われる予定となった。一応他の人三人にも話を通すと言う事となっている為断定的な話ではないですけどね。
「……とまぁ、そんな感じでよろしくお願いします」
市ヶ谷さんがそう締めくくり、彼女と席を半々にして座っている戸山さんが大きくてをあげる。
「はーい!」
「楽しみね!美咲!」
そして、この話をしている間にこころも登校してきて、今現在私がこころの腰に手を回した状態で、席を半々するような形で座っている。
「そうですね」
キラキラと楽しそうに笑っているこころの顔を見ながらふと、昨日の黒服さん(多分黒崎さんだと思う)との会話を思い出す。"こころ様の満面なそれでいて直視し難い笑顔は一種の自己防衛と警戒心の現れだ"と……。
「いいのか、弦巻さんも連れて来て」
戸山さんとこころが話している間に市ヶ谷さんが耳打ちしてくる。それに対して私は鼻で笑う。
「大丈夫ですよ、ミッシェルの代理人として話進めますので」
そう言うと"そうじゃないんだけどな"と言って市ヶ谷さんは少し渋い顔になる。
「そうじゃないってどう言う事ですか」
「いや、気にしないでくれ、こっちの話だ」
そうやって話を省かれてしまい、結局分何の事かわからずのまま時間は過ぎ去ってしまった。