嘘つきの道化師    作:ノッキー

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そんな感じで、撮影が始まった。まぁ、ある程度までは順調に進んだもののとある事情があり、今の私はもう一人のミッシェルとなっていた。

 

「ミッシェルって女の子だったんですね」

 

江ノ島にある階段を登りながらも大和先輩が笑いながら、こちらを見てくる。

 

「そうですねー」

 

ミッシェル仮面(仮)を付け黒服さんと同じ黒スーツを着た私が相槌を返す……で、何故私がこのような格好になってしまったかと言うと、少し時間は遡りまして江ノ島の麓にある通りでの私の発言が発端でーーー

 

『黒服さん、この階段はミッシェルで登るのは無理っぽいです』

 

江ノ島の長い階段を目の当たりにした私が発した一言に黒服さんも頷く。

 

『確かにこれは下手したら脚滑らせて転ぶ可能性がありますね……』

 

『どーするの、美咲ちゃん』

 

隣に立っていた日菜先輩が聞いてくる。実は江ノ島には登るには二つルートがあり、真正面から行く階段を登るルートと江ノ島を船てぐるりと半周して島の反対側から行くルートがある。今回は登るルートから島の反対側に行って、そっから船で戻ると言う道筋になっていた。実は江ノ島にはエスカレーターがありそれを使ってでも登る事は可能だけど、それをする程体が貧弱な人もいないし、なによりパスパレの皆さんが天真爛漫に登っていく図を撮りたいと言うプロデューサーの強い願いからエスカレーターを使うと言う選択肢は消えたっと言ってもミッシェルでエスカレーターを使えるかどうかと言われると自信がない。主に、エスカレーターに巻き込まれる危険性があるからではあるけど。

 

『どーするって……強引に登るしかないと思いますけど……』

 

ミッシェルを着たまま腕を組んでどーしたものかなと思案していると、黒服さんがそれならと声を上げる。

 

『……悪手ではありますが、一つ手段があります』

 

少し時間をくださいと言われ一旦撮影が止まり、黒服さんはスタッフ数名と私を連れてバスまで戻り、そこで私はミッシェルを脱がされ、代りに予備の黒服さんの服を押しつけられる。

 

『私と一緒にミッシェルの着ぐるみだけ先に船で反対側に送ってください、美咲様はこれを』

 

来ている間にスタッフ数名にそう命令を下し、それから何処からともなくミッシェル仮面(仮)と黒いハンティング帽を取り出し、私に押し付けーーーもう一人のミッシェルとなった私は撮影班と合流したのである。設定的にはミッシェルが行けないところに行く為にスマートになると言う設定となった。そして今現在、一緒に登っているのは大和先輩と白鷺先輩で、他の三名は日菜先輩の提案で先に登った人の勝ち!ゲームを敢行した為別行動となっている。若宮さんは大丈夫そうだけど、丸山先輩は、大丈夫かなぁ……。

 

「貴方もいろいろと大変わね」

 

二段後ろにいた白鷺先輩が若干息を上げながら言ってくる。

 

「あはは、いつも彼女に振り回されてますから、こう言うのには案外慣れてます」

 

一応は今もカメラは回っている状態なのでこころと言う固有名詞は伏せておくべきだなと思いそう発言する。

 

「彼女って……」

 

ジド目で白鷺先輩が見てくる。それに対して私は首を傾げる。

 

「アレ、白鷺せ……さん、知りませんでしたっけ」

 

同じくカメラが回っている以上、個人情報を漏らさない為にも先輩と言うのも無くすためカメラを回している間だけ、私は白鷺先輩達の事をさん付けしている。

 

「いや、知ってるわよ、でもそう言う事じゃなくて……」

 

はぁと白鷺先輩がため息をつき、あははっと困ったように大和先輩が苦笑いをする。

 

「まぁいいわ、こう言うどうでも良い部分は基本的にカットされるから」

 

「???」

 

今一何のことを言っているか分かってない私は首を傾げることしかできなかった。そして、そんな他愛のない話をしながら階段を上がっていると、道の途中でちょっとした広場が現れ、そこにちょっとした人溜まりが出来ているのを見つける。

 

「ん?アレは……あーあー」

 

その人溜まりの中心にあるベンチでぐてーと萎れている丸山先輩を見つける。

 

「うがぁぁぁぁ」

 

それもアイドルとは思えない、そうまるで前に食らったドッキリのゾンビより酷い状態で座っていた。

 

「ぶふぁ!ちょ、あやさん!」

 

「あやちゃん!」

 

まぁそうなるよねーと思いながら、慌てて人溜まりをかけ分けて行く大和先輩と白鷺先輩の後をついて行くようにして丸山先輩の元に行く。

 

「あれ、白鷺千聖さんじゃん!凄い美人じゃん!」

 

「あ、本当だ!大和麻耶さんもいる!え、なに、パスパレの取材撮影とかやってるの!」

 

「あれ、でも、最後の人見たことない……」

 

その最後の人はその内正体が分かりますよーと思いながら各々喋っている人溜まりの中心へと私も入る。

 

「もう動けないよー!千聖ちゃーん!」

 

「貴方が日菜ちゃんに乗るからでしょ!」

 

そこでは案の定、ベンチにべったり座っている丸山先輩とその状態からどうにかして立たせてようと手を引いているいる白鷺先輩の押し問答が繰り広げられていた。

 

「こうなると、なかなか終わらないんですよね……」

 

「あはは……」

 

それから私は大きく溜息を付き、二人の元に行く。

 

「白鷺さん、そんな事しても丸山さんが立ち上がれないですよ」

 

「でも、いつまでも、こう言う所を、面前に、見せたくないのよ!」

 

はいはいと言い、強引に白鷺先輩と丸山先輩を離す。それから、膝立ちになり丸山先輩の足と腰の所に腕を通し、よっと立ち上がる。まぁ言わば"お姫様抱っこ"状態になり、丸山先輩がひぅっと変な声を出して顔を赤くする。それを私は気づかずに思いの外易々と持ち上がってしまった方に気がとられていた。

 

「あーれ、丸山さん、ちゃんと食べてる?めちゃくちゃ軽いんですけど」

 

「だ、食べてる!食べてるよ!」

 

若干暴れている丸山先輩を軽く押さえつけながら白鷺先輩と大和先輩の方を見る。

 

「さて、こうすれば行けます。さぁ、行きましょう」

 

「それはそうだけどねぇ……貴方……」

 

ジド目で見てくる白鷺先輩とあははっと苦笑いしている大和先輩に私はまた首を傾げたのだった。

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