嘘つきの道化師    作:ノッキー

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和気藹々と会議が終わり、決まった事としてはハピハロがライブの最初と最後を飾る事、ミッシェルだけはハピハロが最初出た後もずっとステージに残って観客にパフォーマンスする事ぐらいで詳しい話は他のバンドと話をしてからになった。会議が終わり、ハピハロの面々も帰宅し、私は一人鶴巻家の正面玄関の所に立っていた。

 

「……それで話があるって言われたから私はここに残ったんだけど、なんですか?」

 

ハピハロのメンツで一緒に帰ろうとしていた所を黒服さんに一人呼び止められたのである。そんでもって他の人達には話せない内容らしく、はぐみ、花音さん、薫さんには先に帰ってもらったのである。

 

「はい、今ここで話したいのは山々なんですが、いかんせんこころ様にも聞かれたく無いので付いて来てくれると嬉しいです」

 

「はいはい、行きますよー」

 

言われるがまま黒服さんの後をついていく。来た道を戻り鶴巻邸の中に入ると、邸宅内で別れたはずのこころがエントランス内に存在している階段の上に立っていた。それを確認した目の前の黒服さんとどこからともなく現れた数人の黒服さんが慌てて私を隠す立ち位置に並ぶ。

 

「こころ様、なぜ自分の部屋に戻ったわけではなくエントランスにいらっしゃるんですか」

 

「えぇちょっと、ハピハロのみんなに伝えたい事があったんだけど……」

 

「すみません、皆さまには既におかえりになってもらってます」

 

そっかっとこころには珍しい少し不貞腐れた顔になった後、まぁいいわ次の時に話しましょう!といつも通り満面な笑顔を見せる。その間に黒服さんの一人に肩を叩かれる。

 

「(……どうしたんですか?)」

 

「(これを付けてください、早く)」

 

肩越しに受け取り確認すると顔を四分の三隠すように設計されている熊の骸骨風の仮面だった。少し首を傾げてしまう。その間にエントランス二階にいたこころはくるっと回転してこちらから背を向ける。ただ、私は空気も読まずに思わず声を出してしまう。

 

「ナニコレ」

 

「ん?あれ?今みさきの声が聞こえたわ!」

 

地獄耳ですね、はい。くるっとまた回転してエントランスの方に出てくる。それから二階の手すりから身を乗り出してキョロキョロと周りを見回す。

 

「みさきーいるなら返事してー」

 

「(早く付けてください!奥沢様!)」

 

「(あっ、はい)」

 

急かされるように装着する。思いの外装着する手間はなく、すぐに嵌められた。それを確認するや否や黒服さん達が前から立ち退き乗り出していたこころと目線が合う。

 

「あっみさきそこにい……た……の……?貴方は誰?」

 

私を見つけるなり首を傾げてくる。一瞬は?って思ったけどとある事を思い出し、お腹のそこから笑いが込み上がってきた。

 

「あはは、そうだったそうだった、3バカは相手の顔が見えないとすーぐ人の名前なんて忘れるんだから」

 

あの豪華客船の件の時もそうだった、薫さんが仮面装着しただけでこころとはぐみはあの怪盗が誰だか判断できてなかった実例もあるしね。急に笑いだした私に対してこころがキョトンと目をまん丸くする。それを見ながら呆れるかなんだか自分でもわからない状態ではぁっとため息をつき、腰に手をやりまたこころの方を見る。

 

「こんばんは、鶴巻さん、私は"ミッシェル"と言う者です」

 

「み、ミッシェル?」

 

とっさに出た言葉に心が少し首を傾げる。あははーまたミッシェルに頼ってしまった感がするなぁ……取り敢えず黒服さんもバレて欲しくないらしいしここはその場しのぎでもいいから嘘つきますか……まさかここであの客船で教えてもらった薫さんの演技を使うとはね……

 

「はい、ミッシェルと言います」

 

「うっそ!私達のバンドにも同じ名前のメンバーがいるわ!」

 

でしょうね、中身同一人物なんだし……まぁ、話合わせるとしますか……

 

「ほーう、それは面白いバンドやってらっしゃるんですね」

 

「そうよ!ハピハロって言うバンドやってるの!」

 

冷静にそして、相手の言ってる事を解釈して慌てずに返す。

 

「ふーん、それで、ミッシェルっていうのはなんなんだい?」

 

「んー大きな熊の妖精なの!」

 

んーですよねーわかってましたー、わちゃわちゃふわふわとか歌にもなってますねー、いつも無茶苦茶言ってくるよねー空をとべーとかさぁ……まぁ、この場合私はその事を知らないという程で話さなきゃいけないから……

 

「よ、妖精……?それも熊の……ですか?」

 

「そうよ!とても大きくて、それでいてとても頼りになるの!」

 

んー確かに大きくて……頼りになってるのか……バンドの一番後ろで意味わからず、バンドなのにDJやってるのに……いや、バンドならあり得るか……まぁいいや

 

「へぇーそれは凄い」

 

「そうよ!ミッシェルは凄いの!……凄いんだけど……美咲しか居場所を知らないのよ……」

 

憂鬱そうにため息をつく。へぇーこころでもこうやってコロコロ表情変わるんだ……いつも"パッピー!ラッキー!スマイル!イェイ!"と笑顔で急に言い出して、またまた一緒にいた沙夜さんとかを困らして事もあった、しく、CIRCLEのラウンジでその事を愚痴られたあと"日菜より扱いが難しい"って言ってたし、なんなら市ヶ谷さんが対抗して"ピポパ、ポピパピポパのピポパ"って感じで対抗してきてなかなかカオスだったこともあったなぁ……なんか、うん、話戻すとこういつものこころとどこか違う気がする。こう、垢が抜けた?そんな感じがする。

 

「それは悲しいですね」

 

「えぇ……まぁ、いいわ、考えてるだけ時間が無駄になるわ!もっと楽しいこと探しに行きましょう!」

 

憂鬱な雰囲気から一転笑顔を見せて両手を大きく上に上げる。それを見て思わずはぁっとため息をつく。こんな時間から探しに行くって危ないと思うんですよね……。

 

「今の時間考えてくださーい、夜ですよーこっ……」

 

「ん?こっ……?」

 

いつもの癖でこころと呼びそうになりどうにかして言葉を止める。こころはと言うと両手を上げたまま首だけを傾けてこちらを見ていた。

 

「……んっぐ、鶴巻さん、時間が時間なので今日はお風呂はいって寝た方が良いかと思います」

 

「んーわかったわ」

 

なんか結構あっさりだなーと思いつつこころを見る。するとなぜか二階の柵から上半身を乗り出して手を差し伸べてくる。

 

「じゃ、お風呂一緒に入りましょ!ミッシェル!」

 

「って……はい?何言ってるんですか、鶴巻さん!?見知らぬ人とお風呂入るなってお母さんがなんかに言われませんでした!?」

 

「見知らぬ人?貴方ミッシェルって言ったわよね!」

 

言った、確かに言った……けど、確実にあの着ぐるみのミッシェルとは別人ですよね!事情を知らない百人中百人が別人だって答える奴だよね!こ・れ!そうだ!言い訳すればマダガスカル!そーれ、こーっこ!ってそれ違う、ゴージャスな人になっちゃう……ってなに迷走してるの私……

 

「いやいや、待て待て待て流石に同一人物じゃないですって、ミッシェルは熊ですし!」

 

「あら、そう、でも、声的には美咲に似てたからかしら、何故かしら」

 

伸ばしていた手を引っ込めてこころが首を傾げる。それよりも私的には、驚きが凄かった。だって、あの3バカの一角のこころが言う言葉、それ?だったらモロ生声のミッシェルを見破れないのはなんでカナーなんでだろう、なでたなんでだろう……あ、やばい、ジャカジャカとギター弾きたくなってきた……DJだけど……

 

「あのーさっきから美咲? って名前出てるけど、誰ですか?」

 

自分で言ってしまった以上、美咲という存在を知らないと言う設定にしなきゃいけないが故なのは分かるけど、まさか自分でこの言葉言う羽目になるとはねぇ。まぁ、黒服さん達が必死に私の存在を隠そうとしてたし、ここでネタバラシしてもいいかなぁとは思ったけどさっきからずっと黒服さん達が私の方を熱い目線で見てるんですよねーそれもサングラクス越しで……

 

「そうね……美咲はね、」

 

こころの反応を待ってると、まるで恋人の帰りを待っているお姫様のようにうっとりとした笑顔でふふっと笑った。それから、二階部分から一階に降りる為の階段を降り始める。

 

「美咲はね、いつも私の隣にいて、私の鼻歌を歌詞に書き起こしてくれる凄い人なの!でもどこか、冷たくて、笑顔を見せてくれないの……だからたまに見える笑顔がとてもとても優しくて好きなの!」

 

階段の手すりを掴みながら降りてきたこころはそう言ってとびっきりの笑顔を私に見せてくる。まぁ、いつも隣にいるって言うか、あんたからドカドカ近付いてくるんでしょうが……まぁ、悪い気はしないし、ぶっちゃけ隣に居て欲しいって思うようになってるもん、最近は。

 

「そうですか、今度会ってみたいですね」

 

私なんですけどね、と言う無粋なことは言わないで応答すると、それに対してこころが激しく首を縦に振る。

 

「そうよ、あなたも会ってみるといいのよ!」

 

それに苦笑いしながら返すと、こほんと静まり返っていた黒服さんが咳を漏らす。

 

「こころ様、そろそろお風呂の時間です」

 

「まだ、ミッシェルと話し足りないわ」

 

「ですが、こころ様、ミッシェル様は私達と少し話す事がありますので、ここら辺でお話はおしまいにしてください」

 

むくっと、こころの頬が若干膨らむ。あ、少し拗ねた。

 

「じゃ、私もそのお話に参加するのはどうかしら」

 

「それが無理な話なのでお下がりください」

 

何故か食い下がるこころに対して黒服さんがバッサリ切ると完全に、まるでリスが頬に餌を詰めた並に、頬を膨らませる。あー結構拗ねてるなぁ、珍しい。

 

「すみません、弦巻様、私も黒服さんに呼ばれてきた身なのでどうかお許しを」

 

黒服さんに助け舟を出すような形で私もこころに促すと、こころはぷーと頬に詰めていた息を吐き出す。

 

「わかったわ」

 

「ありがとうございます」

 

少し納得が行かないような顔で私から背を背けたこころはそのまま元来た道を戻る。その背中はいつも通りピンっと綺麗に立っていたが、それでも多少ばかり落ち込んでるような雰囲気が漂っていた。そして、二階へ登る階段を上り終え、豪邸の奥に帰るまでこころを見送った後、黒服さんが声をかけてくる。

 

「さぁ、奥沢様行きましょうか」

 

「あ、はい」

 

付けていた仮面を取り外し、ポケットの中に入れる。そして、これが、また私と言う嘘つき(ミッシェル)の人生を狂わせてしまう序章に過ぎなかったのは当時の私には知る由もなかった。

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