幕間Ⅰ
携帯を机に置き、みさき……と言った少女が今日こなかった少女の席の前に座り込んでいた。
「……会いたいわ……」
夕焼けに沈む教室の中、一人になった少女は俯きその金色の髪の毛を揺らし首を横に振る。それは何処か幻想的な風景に見えたが、彼女自身の落ち込みがそれすらも凌駕しており、幻想的でありながらどこか愁があった。
「明日会えるかしら……」
日中の彼女からは到底思えないような不安そうな声が漏れる。今日一日会えなかったそう思うだけで彼女の心の奥底がギュッと雑巾にでも絞られたような感覚になる。一日中、彼女が居なくて辛かった。広がっていた世界がいきなり狭まった様な気がした。彼女が居たからこそ広がった世界が急に縮まった。それに、金髪の少女は気がついた、いや、気がついてしまったのである。
「会いたい……みさき……」
とても苦しそうに金髪の少女は呟き、そして時間は残酷にも過ぎていくのであった。
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幕間Ⅱ
ー江ノ島の岩屋へ行く為の橋の上での会話(日菜視点)
無茶をした事でずぶ濡れのままのみさきちゃんと共にちとせちゃんに怒られた後、私はとある人物を探していた。岩場から周りを見渡し、そしてその黒い服を着た彼女が江ノ島にある岩屋への橋の上でこちらを見ているのを見つけた。それと同時に彼女の方も私に気がついたのを感じた。階段を上がり、私は背筋良く立っている彼女の隣に立つ。
「どーも、黒服さん♪」
「…………」
声をかけたけど、黒服さんは海の方をジッと見て無言でいた。それに倣い私も手すりに寄りかかり手すりの上に肘をつき、頬杖をした。目の前には真っ青な海と空がまるで境界線をなくしたように存在していて、それはまるで天と地の境目が無くなったかのように思えた。だけど、何処か、るん♪とはこなかった。少しして、黒服さんが口を開いた。
「……氷川日菜、貴方は何者ですか」
「何者って、私はただのアイドルだよ。アイドルでもあるし、学生でもあるし、何よりおねーちゃんのいもーとでしかないよ」
特に私はおねーちゃんのいもーとである事が、私である理由かな。多分、おねーちゃんが居なければ私は居ない、双子で生まれた、だからおねーちゃんと会えたんだって私は思ってるの。だから、何者かと聞かれるとそう答えたい。だけど、おねーちゃんがやめてって言うから私はこうやって答えるようにしてるんだ。
「……だったら質問を変えます、美咲様に対して何を言ったんですか」
「私が言ったのは"彼等を助けたいか"と"笑顔にしたい?"って言う二言だけだよ、それ以外は全部みさきちゃんが自分の意思で行った事だよ」
多分、あの時、みさきちゃんが自分の身を案じて"助けない"と言ってたら私はみさきちゃんに対してるん♪って来てないし、本気でここから追い出そうかな思っていた。だけど、みさきちゃんは自分自身の事を顧みず、悲しんでいる人を笑顔にしたい、そう言って私に知恵を借りながら自ら海へと入って、見事に少女を助けた。だから、今の私はみさきちゃんに対して凄いるん♪って来てる。そう、まるでこころんを見ているような気分になる。
「……やはり、貴方は何を考えているか全くもってわかりません」
重々しく黒服さんが言ってくるが、私はそれに対しておかしく思ってあははっと笑みを漏らしてしまう。
「まさか、黒服さんにそんな事言われるとは思わなかったよー」
「そうですね、私共黒服でも貴方みたいな実例はこころ様以外見たことないと言うのが正直な話です。昔から従ってるこころ様なら美咲様には届かないのは少し残念ではありますが貴方よりかは何を思っているか理解はできるんですが……」
サングラスの横から私はその紫色の目が少し細くなるのに気付いた。そして、私は感覚的に確信を持てた。この人がやったと。
「今の言葉、凄いるん♪って来た……やっぱりみさきちゃんを嵌めたのは貴方って事で良さそうだね」
「いえ、私共でも流石に人の命に関わる事は用意できません」
ピクッと黒服さんの眉毛が少し上に動く。行けると思い、追い討ちをかけるように私は言葉を紡ぐ。
「海の件じゃないよー、あれはたまたま……そっちじゃなくてミッシェルの件の方だよー、あの子は磨こうと思えば幾らでも輝くし、なんやかんや渋々とでもやってくれるし、なんならこころんの事いちばーん理解してる常識人だもんね」
確かに、こころんの周りには似たような人が2人いるけど、それでも彼等よりかは確実にみさきちゃんの方がこころんの事を理解し出していると感覚的に私はわかっていた。だから、今日ふっかけたら凄いるん♪って来ることをやってくれた。
「だからと言って、あの子に嫉妬するのはどうなのかなー」
「…………」
そう言うと、黒服さんは黙り込んでしまった。もう一押しかな。
「そー言えば、今回の話……少し気になって花音ちゃんに話聞いてみたんだ、話の発端はなーに?ってね」
「…………氷川様……」
「そしたら面白い事言ってきてさ、花音ちゃんがこころんの家に行った時には既にミッシェルが一日中出る事は決まってたらしいよ」
黒服さんがもう一度黙り込む。ピューっと言うトビの声が何回か聞こえてくる。まるで私と黒服さんの間に空間的に壁ができている様な感覚まで生まれ……日菜せんぱーい!と言うみさきちゃんの声が聞こえてきた。
「ん?なーにー?みさきちゃーん!」
岩場の方に目をやると、パスパレのみんなと一緒にいたタオルを首に掛けているみさきちゃんが手を振ってくる。
「撮影再開するらしいですよ!」
「わかったよー!今すぐ行くよ、みさきちゃん!」
そう言って手を振り返す。私は黒服さんの方を一瞥する。それから頭の中で感覚的に出てきた言葉を口に発する。
「撮影も始まっちゃうし、行くねーーー
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