デンドンデンドンデンドンデンドンデンドンデンドンデン……   作:葛城

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なお、無惨の所業を耳にするたびに有罪カウントが増えていく模様


ちなみに、上弦の鬼はちゃんと3体居るよ。ただ、かなりデバフが掛かった状態だけど


第六話: デデーン……無惨、アウト―!(有罪)

 ──いったい、私はどうすれば良いのだろうか。

 

 ──さっさと誤魔化して逃げるべきなのだろうか。

 

 ──でも、何かバレているから無理っぽいかも……。

 

 

 

 そう、彼女がつらつらと思ったのは、『鬼殺隊』のトップである当主が住まう屋敷の庭先……ではなく、屋敷の奥。

 

 布団の上にて、妻の『産屋敷あまね』より身体を起こされている、当主の産屋敷耀哉(うぶやしき・かがや)と対面した時であった。

 

 どうして彼女がそう思ったのか……それに至る理由の一つは、当主が住まうこの屋敷への招待方法にあった。

 

 というのも、まず、大前提として、当主の屋敷は鬼(正確には、鬼舞辻無惨)の目から逃れ、その所在を知られないようにする為の対策が幾つも施されている。

 

 

 一つは、屋敷の所在を知る者を厳選し、けして外部に漏らさないよう徹底すること。

 

 また、屋敷への案内人に関しては、間に幾つもの中間地点を挟むことで情報を分散し、仮に一人を捕まえても屋敷の位置が分からないようになっている。

 

 

 二つ目は、屋敷そのものを外部からは分かり難いよう細工を施し、周辺には藤の木が広範囲に渡ってパラパラと植えられている。

 

 この際、ダミーとして幾つか集中している場所を作っておく。これは、意図的に集中させると逆に怪しまれるという心理を付いたもの。

 

 

 一度だけならまだしも、二度、三度とハズレを引けば、『ああ、ここらは藤の木の群生地なのか』と鬼側も考えるのを見越しての対策であった。

 

 他にも、『藤の花』より抽出した対鬼用の猛毒や、試作段階だが藤の臭いを放つ爆発式の煙幕、引退した柱(いわゆる、鬼殺隊の中で最も強い9人を指すらしい)の常駐など、様々な対策が当主の屋敷には成されている……のだが。

 

 

 

(まあ、逃げるかどうかは後にして……言うべきだろうか、私をおんぶした3人目の女子、妊娠しているということを……!)

 

 

 

 彼女の内心に一点の陰りを落としたのは、隊員のまさかの妊娠発覚という、めでたいといえばめでたい話からであった。

 

 

 と、いうのも、だ。

 

 

 前述した対策を十二分に発揮する為に、屋敷へ招待される人間は基本的に目隠しと耳栓をされ、中継点までの案内者に背負われる形での移動となっている。

 

 これは、万が一屋敷を訪れた者が鬼にされた場合の対策だ。こうすれば、鬼にされて無惨に記憶を読まれても、屋敷の所在が分からない。

 

 彼女も、最初は良く考えているなと感心した。

 

 負担を掛けないよう、若干浮いた状態でおぶさったおかげで、誰もが楽そうにしていたが……問題が発覚したのは、3人目の案内人におぶさった時だ。

 

 

 ──あ、この人3ヵ月ぐらいだ。

 

 

 ほとんど条件反射で行ってしまったスキャンによって、彼女は己を背負ってくれている『隠(かくし:曰く、裏方みたいなモノらしい)』の状態を知ってしまったのだ。

 

 

 正直、ビックリした。

 

 

 一人目は胃腸が弱っていて、二人目は疲労が溜まっているといった感じで、三人目がコレだ。視界が塞がったからと軽い気持ちで考えていたから、余計に驚いた。

 

 何せ、鬼を殺す組織である。あの、『縁壱』が所属していた組織である。

 

 ほぼ無制限の体力と回復力を持ち、常人の何倍もの力を持ち、特殊な武器で首を落とさなければ殺せないという、『鬼』を殺す組織……それに属している女が、だ。

 

 

 ──妊娠程度で怖気づくだろうか? 

 

 

 本音を言えば、子供の事があるから辞めるべきだと訴えたい。しかし、わざわざ命の危険が有り過ぎる、『鬼殺隊』という組織に入っているのだ。

 

 相当な……鬼に対して、鬼舞辻無惨に対して、とてつもない恨みを抱いているのは、考えるまでもない。

 

 そう、彼女は、言うべきか胸に秘めておくべきか、思い悩んでしまう理由がそこにあった。

 

 

 ……だって、縁壱なのだ。

 

 

 あいつが仮に女だったら、臨月だろうが残像出しながら鬼を32分割した後に20秒ぐらいで産み落とし、へその緒の処理をしながら片手間に鬼の首をはねてそうな……そんなやつが属していた組織なのだ。

 

 さすがに縁壱並みの人間(?)はもう居ないと思うが、絶対ではない以上は……だいたい、そうでなくとも……妊娠というのは、非常にデリケートな問題である。

 

 お互いが納得したうえでの話なら何の問題もない。だが、仮に秘匿された恋、表沙汰に出来ない話であった場合を考えれば、彼女も迂闊に口出しできない。

 

 

 しかも、その女は己の妊娠に気付いていなさそうなのだ。

 

 

 先天的に悪阻(つわり)などが出ない体質なのかは不明だが、足運びや息遣いには己の胎を気遣う素振りがなければ、庇う様子もない。

 

 常識的に考えれば、ああ気付いていないのかと思うところだが……ぶっちゃけ、『鬼殺隊』の関係者でなければ、お前もう少し自分を労われよと声を掛けているところだ。

 

 

(……うわあ、何だアレ……炎症、皮膚病、免疫疾患……軽くスキャンを掛けただけでもアラートがガンガン鳴り始めているぞ)

 

 

 ……そのうえ、当主である耀哉ですら、アレだ。

 

 

 ようやく……という言い方も何だが、身体を起こし終わって、改めて姿勢を正して向き直る耀哉と奥方と、その後ろで控えている子供(顔立ちがそっくり)を見て、思う。

 

 

 まず、鼻から上全体にて広がっている赤紫色の腫れ。

 

 まるで皮膚がひび割れているかのようにボロボロで、顔の造形が整っているからこそ、余計に……僅かに開かれた目はもう……光を感じ取れていない。

 

 だぼっとした和服(おそらく、身体を締め付けない為だろう)で分かり難いが、首から下も相当にやられている。

 

 袖から伸びる腕は痩せ細り、血の気が無い。スキャンで確認すれば、肋骨は浮き出ている程に痩せ細っていて……自力で立ち上がる事も困難なのだろう。

 

 まあそれは、介助されて身体を起こしている様を見れば、考えるまでもないことだが……それはそれとして、だからこそ、彼女は耀哉に対して『アレなやつ』だと判断したのだ。

 

 

 ──さすがは……あの縁壱がお館様と認めた人物だ。

 

 

 顔を見た途端……いや、それ以前に、雰囲気もそうだが、床に付いたままの時点で察しは付いていたが……相当に症状が重いというか、状態が悪い。

 

 出血こそ……あ、いや、極々微量ではあるが体内にて出血は見られるが、それ以前に、常人ならのた打ち回るほどの激痛に苛まれているはずである。

 

 なのに、輝哉は微塵もソレを表に出していない。

 

 彼女の目から見ても、信じ難い精神力。顔色一つ変えず、呼吸一つ乱さず、震え一つ起こさず、汗一つ掻かずに……薄らと笑みを浮かべると。

 

 

 ──お願いをお聞きくださり、ありがとうございました。

 

 

 そう告げて、頭を下げた。それは耀哉だけでなく、妻も子供たちも同様で。

 

 自らの、父の、夫の、状態を分かっていても、欠片も表に出さず、静かに頭を下げる様は……もはや、圧巻の一言であった。

 

 

(……というか、その痣やら腫れやらは何なのだ? 先ほどからこっそりナノマシンを送っているというのに、修復した傍から再発していっているのだが……)

 

 

 と、同時に、彼女は耀哉の身に起こっている謎の症状、病名の特定が出来ず、内心にて首を傾げていた。

 

 何故なら、彼女の大本(前世の記憶♂)は無知でも、バスターマシン7号に搭載された情報量(医学データも)は多岐に渡っている。

 

 これは最初から持っていたモノなのか、本物がサービスのつもりで追加してくれたのかは定かではないが、問題なのは……その情報量を持ってしても、無理なのだ。

 

 これには、彼女も表にこそ出してはいないが、驚いた。

 

 ぶっちゃけ、病じゃなくて呪い(オカルト)の類ではと冗談半分に考えたぐらいだから、彼女の驚きも想像出来よう。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 で、そんな彼女の驚きを他所に、だ。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………???」

 

 

 とりあえず、諸々を抜きにして、だ。

 

 

 隊員の妊娠の事とかもそうだし、色々と今後の事(それ以外にも色々と)を考えていた彼女が、この時に思った事は、だ。

 

 

 ──ところで、何故に私は頭を下げられ続けているのだろうか……で、ある。

 

 

 しかも、頭を下げているのはお館様だけではない。部屋の端にて控えている柱たちまでもが、頭を下げたまま動かないのである。

 

 その中には、彼女を招待した胡蝶カナエと、その妹である胡蝶しのぶ(カナエは、『元』柱、らしい)と。

 

 あの店に居た大男、悲鳴嶼(曰く、岩柱という役職らしい)も、当主に倣って深々と頭を下げている。

 

 

 もちろん、他の柱も同様だ。

 

 

 本来は9人居るらしいが、突然の事だったのでこの場には他に3人……合わせて6人しか居ないが、それでも全員が一糸乱れぬ様子で頭を下げ続けていた。

 

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………本当に、どうしようか。

 

 

 

 チラリ、と視線をさ迷わせるしかない彼女は……どうしたものかと考え込む。

 

 連れて来られて何だが、こういう対応をされるのは相当に久しぶりだ。ある意味、久しぶりを通り越して新鮮な気持ちになるぐらいに。

 

 

 だって、ほら……大陸の方だと、初手悪魔認定(あるいは、ペテン師認定)が基本だし、こちらから証拠というか主張しない限りは、『俺が上、お前は下』が基本スタンスである。

 

 

 時々、対等な立場で接してくる者もいるが……だいたいは、見返りを求めての接し方で、下心が薄らと透けて見えていた。

 

 例外は、教会などの信心深い関係者ぐらいなものだ。

 

 まあ、アレはアレで狂信的というか、『捧げる……』とか言っていきなり生贄を捧げようとしてくるけど、でも、それにしたって全てがそうでは……ああ、違う、そうじゃない。

 

 

(……仇討ちとか、義憤解消とか、そういうお願いなら力になってあげられるけど、不老不死にしろとか巨万の富をとか死者を蘇らせろとか言われても困るんだよなあ)

 

 

 このパターンから来る次の言葉は、おおよそ想像が出来る。ていうか、何度も経験してきた事である。

 

 

(戦争に協力して欲しいとかも有ったなあ……権力握っているおかげでやりたい放題していた明らかな悪人相手なら何度かバスターミサイル撃った覚えはあるけど……何か、そんな感じでもなさそうだしなあ……)

 

 

 彼女としては気が引ける事ではあるが、放って置くとほぼ確実に国や領地が荒廃するような者が上に立ったのを見た時……苦痛なく即死させた事が何度かある。

 

 

 何様かと人々より問われれば、『もっともだ』と彼女自身も頷く……だが、さすがに、アレだ。

 

 

 何もしなかった結果、その国が、その領地が、どのような末路を辿り、悲惨極まったのかを幾度となく見て来たからこそ、放って置くことが出来ないのだ。

 

 民に餓死者が出ているのに重税課すだけでなく、『放って置けば勝手に増える』みたいな感覚で居るやつが上に立てばもう、その後に来るのは地獄である。

 

 

 ……ぶっちゃけ、それで文字通り壊滅した国や領地を何度か目にしたからこそ、余計に、だ。

 

 

 他には、彼女の基準から見てゴミ畜生以下みたいな事しているのに要領良く誤魔化して、ちゃっかり『人並みの幸せ』みたいなモノを手に入れているやつも、同様にバスターミサイルの刑に処した覚えがある。

 

 

 ……こっちはまあ、アレだ。被害者の声があまりに耳に入って来たせいである。

 

 

 もちろん、そのまま動いたりはしない。今際の時に『天罰を……天罰を……』と涙ながらに訴える者を見かける回数が増えてきたので、独自に調べてみれば……だ。

 

 半分は『お前それ被害妄想だし誤解だよ』って感じで終わるが、もう半分がヤバい。

 

 

 ──やべえこいつ鬼畜外道過ぎて鬼が可愛く見えてくるよ言葉が出ねえ、である。

 

 

 正直、人の皮を被った鬼はこういうやつなのかとすら思ったぐらいだ。

 

 しかも、そういうやつに限って表向きは『ヒノカミ様万歳!』とか口にする。

 

 さすがにそんなやつに神様扱い(しかも、本気ではない)されるのは侮辱極まりないので、バスターミサイル発射である。

 

 

(……なら、アレか? 挨拶だけでもしておきたかったとか、そういうのかな?)

 

 

 それならそれで、彼女としては楽なのだが……まあ、何にせよ、だ。

 

 

(……とりあえず、何か話して欲しいね)

 

 

 ここまで沈黙を保たれるのは初めてで……とにかく、意図が全く読めないので、彼女は耀哉たちの態度に困惑するしかなかった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………いや、待って。この人たち、何時になったら頭を上げるのだろうか? 

 

 

 一向に顔を上げる気配が見えない鬼殺隊の面々に、彼女はきょろきょろと視線をさ迷わせた。

 

 

(これはアレか? 新手のわっしょいなのか? 鬼殺隊ともなると、わっしょいにも違いが出るのか?)

 

 

 こういう場合、下手に止めようとすると余計に拗れてしまう。

 

 それを経験則として知っていた彼女は……ひとまず、この場でおそらく一番会話した時間が長いカナエへと声を掛けた。

 

 

「──はい、何でございましょうか?」

 

 

 すると、頭を下げたまま返事をされた。

 

 

 ……固い、固いよ!? 

 

 

 思わず、そう言い掛けた彼女ではあったが、3度目の正直という言葉が有るらしいし、失敗を重ねた彼女はその分だけ賢くなっているのだ。

 

 

「……あの、これってどういう状況なのかな? こういう畏まった所作には疎いから、どうしたら良いか分からないんだけれども……」

 

 

 ──分からないことは素直に聞く。

 

 

 そのように思い至った彼女が心に従って尋ねれば、しばしの間を置いてから、「申し訳ない、困惑させてしまいました」耀哉が顔を上げた。一拍遅れて、柱たちも顔を上げた。

 

 

「今日、来てもらったのは他でもない。貴女様にどうしてもお礼が言いたかったのです」

「お礼、とは?」

「今日まで……長く、我々『鬼殺隊』のみならず、悪を挫き正義を成して人々を見守り続けてくださっている貴女に、言葉だけでもお伝えしたかったのです」

 

 

 そうしてようやく、耀哉は本題に入った。

 

 それを聞いて、ようやく彼女も理解した。

 

 

 ──あ、これは気楽なタイプのわっしょいだ、と。

 

 

 それさえ分かれば、もう恐れる必要は無い。前世から引き継いでいる事の一つ、彼女は、過分なお礼をされると気が滅入る性分なのだ。

 

 

「別に、お礼を言われたくてしていたわけじゃないから、気にしなくてけっこうですよ」

「……少しぐらいは」

「そういうの、間に合っているから大丈夫。気楽に、今日も空に浮かんでいるよね~、みたいな感じで結構だから」

 

 

 かなり気が楽になった彼女は、ひとまずそう言って耀哉のお礼を無理やり打ち切った。

 

 実際、結果的に助けてはいるが、使命感が有ってやっているわけではない。

 

 縁壱が狙っていたやつだし、野放しにすると大変な事になるからという、言ってしまえば己の心の平穏の為だ。結論から言えば、水戸黄門ムーブも結局は己の心の平穏の為である。

 

 なので、彼女としては気軽に笑顔で手を振って貰えるだけで満足なのだ。このように畏まった形でお礼を言われると、逆に申し訳ない気持ちになってしまうのである。

 

 

「──ところで、話は変わりますけど、さっきから気になっていた、その顔の痣というか、腫れというか……」

 

 

 とはいえ、それで引き下がるのであれば、彼女もわっしょいに怯えたりはしない。もう、神輿はこりごりなのだ。

 

 そんな思いも込めて、彼女は些か強引に話を変えながら……おもむろに、耀哉の傍まで近寄ると──。

 

 

「おお、これでも消せないのか」

 

 ──さらり、と。

 

 

 まるで汚れを拭き取るように耀哉の左目の辺りを摩った途端、痣が消え、腫れも引いた……健康的とは言い難いが、元々と思われる目と肌が露わになった。

 

 

「……え?」

「病ではないから、それが限界かな。申し訳ない、(ナノマシンでは)それ以上は貴方の身体が耐えられないし……おそらく、数日後には元に戻ってしまう」

 

 

 ──現時点ですら、ナノマシン投与量ギリギリなので。

 

 

 

 その言葉を、彼女は口には出さなかった。ナノマシンと言ったところで理解されないだろうし、説明するのも面倒くさかったからだ。

 

 おまけに、治療した理由は見た目が痛々し過ぎて気の毒に思ったからで……やれるだけはやったし、もうええやろ……そんな精神というか、その程度の考えでしかなかった。

 

 

「……ああ、あまね、少し痩せたね。こうして、子供の顔をもう一度目にする事が出来る日が来るとは……」

「──あ、あなた……」

「みんなも……壮健で何より。また、お前たちの顔を見られて嬉しいよ」

「お、お館様……!!!」

 

 

 だから、まさか泣かれるとは……いや、耀哉とその家族は予想出来ていたけど、柱の皆様方もぼろぼろと大粒の涙を零すとまでは、さすがの彼女の目を持ってしても見抜けなかった。

 

 

 ぶっちゃけ、滅茶苦茶気まずい。ここが室内でなかったら、即座に雲海の中へと戻るぐらいの気まずさである。

 

 何せ、自分以外全員泣いているのだ。

 

 まるで自分が泣かせてしまったみたいで、穴が有ったら入りたいとはこの事かと、彼女は身を持って理解した。

 

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………そうして、ふと……という言い方も何だが、耀哉たちとは目を合わせないようにしていた彼女の興味が……離れた所にて座っている柱たち6人へと向けられる。

 

 

 その内、カナエ・しのぶ、悲鳴嶼の3人は顔馴染みだ。まあ、出会ってから大して時間も経っていないし、仲良しではないけれども。

 

 悲鳴嶼とはほとんど会話らしい会話をしてはいないが、胡蝶姉妹があれほど慕っているあたり……善人なのは見て取れた。

 

 

 ……で、残りの3人。

 

 

 鬼をぶっ殺す組織の最高戦力とだけあって、中々に個性的な風貌をしている。

 

 その中で、特に気になるのが1人居るが……まずは、他の2人から自己紹介をしてもらった。

 

 

 まず一人目は、小柄の男性だ。

 

 

 世界的に見ても珍しいオッドアイに、口元を覆い隠す包帯。首に巻かれた白いヘビがこちらを見ており、ちろちろと舌を出しては、興味深そうに彼女を見ている。

 

 名は、伊黒小芭内(いぐろ・おばない)。『蛇の呼吸』という呼吸法を修めた柱とのこと。

 

 

 二人目は、桃色髪が特徴のセクシーな女性だ。

 

 

 驚くべき事に、その女性も彼女と同じく桃色の髪をしている。違いは、毛先に進むに連れて緑に近い色になっていて……また、日本人では珍しくグラマラスな体型をしている。

 

 名は、甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)。『恋の呼吸』という呼吸法を修めた柱とのこと。

 

 

 

 ……そして、問題の三人目。

 

 

 

 ある意味、彼女の興味を一番引いているのが……後ろで軽く纏めただけの黒髪の、無表情の男。額や首筋に模様にも見える痣が浮き出たその男を見やり……彼女は、思った。

 

 

 ──あれ、こいつ縁壱の血筋では……と。

 

 

 見た目は全く違うが、雰囲気が滅茶苦茶似ている。何考えているのか全く分からんくせに、底知れぬ気配というか、何というか……そういうのを感じる。

 

 

(……え、何コイツ、骨の強度や筋肉の密度ヤバすぎて怖いんだけど……え、人間なの? こいつ本当に人間なの?)

 

 

 て、いうか、スキャンしてみてすぐに分かった。

 

 隣の桃色髪(一部は黄緑)、も筋肉の密度等が男に比べても桁違いに高いが、この男に比べたら大人と子供ぐらいの差がある。

 

 ついでに言えば、心肺機能もオカシイ。お前心臓7個備えてんじゃね―のって思うぐらいにヤバい。人間のフリをした何かだろうとすら思えてくる。

 

 

(間違いない……こいつ、絶対に縁壱の血筋だ……)

 

 

 これほどの身体機能を持った者は、今も昔も縁壱以外に知らない。まさか、血筋とはいえ縁壱と同程度の能力を備えた者が生まれるとは……ふむ。

 

 

「そこの黒い長髪の人、お名前を伺っても?」

「……冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)。『水の呼吸』を修め、水柱に就いております」

 

 

 尋ねれば、前の2人と同じく素直に答えてくれた。縁壱と同じく、基本的に寡黙な性格のようで、表情の変化は少ない。

 

 

「つかぬことを幾つかお伺いする。もしや貴方の家系に……そう、祖先に縁壱と名の付く者はおりますか?」

「……申し訳ありません、分かりません。昔は裕福だったらしいのですが、私の曽祖父の代で……」

「ふむ、ならば、その額や首筋の痣は生まれつきですか?」

「おそらく、そうだろうと思います。私の面倒を見てくれた姉さんから、そのように教えられた覚えがあります」

「なるほど、分かりました。では、もう一つ……もしやとは思いますが、貴方は生まれつき……意識を集中するだけで、生き物の身体が透けて見えたりしますか?」

「──っ! どうして、それを?」

「深く考えないでください。ただ、そうなんだろうなあと思っただけで……あ、そこの……胡蝶しのぶ、顔を真っ赤にしていますけど、勘違いしないでください。透けて見えるというのは、服とかじゃなくて、皮膚が透けて内臓の動きが見えるとか、それぐらいに透けて見えるって話ですから……ですよね?」

「……凄いです、日の神様。どうして、分かったのですか?」

「まあ、私の目は特別ですので……そのように納得してください」

 

 

 なので、率直に色々と尋ねてみれば……だ。

 

 

(……確信を得た。やはり、こいつ縁壱の血筋だ……しかも、先祖返りか何かは分からんが、縁壱と同レベルに強いぞ……)

 

 

 ぶっちゃけ、こいつ1人だけで無惨を殺せるのでは……もう何度ぶっちゃければ良いのか分からんが、とりあえず……彼女は一つ頷くと。

 

 

「……泣いているところに悪いが、私から聞きたい事がある」

 

 

 未だ、涙が止まっていない耀哉たち家族へと向き直ると。

 

 

「前々から見つけ次第『鬼』を仕留めて来たのだが、いっこうに減る気配がない。何か、思い当たる事はあるか?」

 

 

 改めて……かねてより気になっていた疑問を一つずつ尋ねたのであった。

 

 

 

 

 

 




縁壱「私たちはそれほど大そうなものではない。長い長い人の歴史の、ほんの一欠けら……いずれ、私たちの才覚を凌ぐ者が現れ、彼らもまた同じ場所へとたどり着くだろう」

――だから、なんの心配いらぬ。私たちは、いつでも安心して人生の幕を引けば良い





富岡義勇「今後ともよろしく」

縁壱「やったぜ」



切り刻まれている御方「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )」

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