ガンダムビルドダイバーズ クオンタムエリート 作:しゅみタロス
イグニス「フロンティア・パスを、こっちに渡してもらおうか?」
ナイフを手にして紅葉に要求するイグニス。紅葉はイグニスに憎悪をむき出しにして抵抗する。
紅葉「カッコ悪いな、負けを認めずに自分の欲求やエゴだけを相手に押し付けて、こんな脅迫紛いな行いしてニューゲームとか……
気持ち悪いぐらいの負け犬だよ。あんた」
ガッ!!
紅葉「ッ!!」
紅葉の顔面に拳ぶつけ、イグニスは紅葉の胸ぐらを掴む。
イグニス「イキってんじゃねーよ、ガキ。お前のその腐った目を抉るぞ」
紅葉「やってみろよ、抉ったら殺すだけじゃ済まないからな。俺、結構根に持つんだよ。今でも最悪な物抱えて生きてんのに、
ゲームごときで犯罪とか、お前の方がガキだよ」
この時紅葉は考えていた、怒りの矛先を自分に向けてツバキを守ろうとしていた。
イグニスへのこの発言は正論に聞こえるが特に意味は無い。紅葉の真意に気付いたツバキは紅葉を見守る事しか出来なかった。
イグニス「痛い目見たくなかったらフロンティア・パス渡せ。どの道逃げられねえぞ」
紅葉「なら、こっちの要件にも従ってもらおうか?そうすればフロンティア・パスを渡してやる」
イグニス「いいだろう、何だ?」
紅葉はツバキの方を見つめて答える。
紅葉「彼女を放せ」
イグニスはニヤリとして了承した。
イグニス「いいぜ、カイヨーク。その女を放せ」
ナイフを持った手を放し、ツバキは紅葉に歩み寄ろうとする。
その瞬間……
ザッ!!
マイザーは狂気的な笑みと同時にナイフを横に振って……
ツバキを背中を衣服ごと斬りつけた。
その場に倒れるツバキを目の前で見せつけられた紅葉の目は絶望に染まる。
イグニス「アハハハヒャハハヒヒャッヒアッハハハ、素直に聞くと思ったか?おめでたいやつだ。戦場でも言うだろ、敵国の人間は奴隷か見せしめだって?生きて返す訳ないだろ!!このガキィ!!」
この時紅葉は既に心にかけていたブレーキが完全に壊れた。怒りが頂点に達した紅葉はデビッツの腕にかみつき、拘束を解く。
ナイフを落としたデビッツの顔面に蹴りを一発ぶつけ、後ろから襲ってきたカイヨークを振り向きざまにパンチをかます。
そして二人の持っていたナイフを二つ手にすると鬼の様な覇気と顔でイグニスに宣言した。
紅葉「人の心なんてもういらない、道を外れてもいい、俺は今から……
おまえをぶっ殺す!!」
イグニスに襲い掛かろうとしたその時……
貴信「紅葉アアアア!!」
突如として紅葉を貴信が押さえつける。
イグニス「お前はッ!!」
ガスッ!!
脊髄を手刀で殴り、動きを一時期的に止めたのは
マイザー「てめえ、海賊狩りの……」
時春「キョウヤ、警察を呼んでくれ
キョウヤ「既に出動させた、着くまで現場の3人を取り押さえる。手伝って。それとツバキちゃんを早く病院に」
大人のメンバーが海賊を抑えるのを見て、紅葉は発狂染みた声で叫ぶ。
紅葉「ふざけんな!!そいつは俺がやるんだ!!殺すんだ!!ツバキを傷つけて嗤った、あいつを!!」
貴信「落ち着け、落ち着くんだ!!ツバキちゃんはそんな事望んでない、君があいつを殺したら、君もマイザーと同じ人間に堕ちるんだぞ」
紅葉「!!」
その言葉に紅葉はピクリと抵抗をやめ、その場に、涙ながらに崩れ落ちた。
紅葉「畜生、畜生オォォォーーーーーーー!!」
紅葉の叫びと同時に、救急車に運ばれるツバキを紅葉は貴信と共に追いかけた。
琴羽総合病院
貴信「落ち着いたか?」
紅葉「すみません、正気を失ってた。ありがとうございます、止めてくれて」
貴信は紅葉の肩を叩き、紅葉を慰めた。
貴信「紅葉君、君は本当に優しいよ。誰かの為に怒れること、守ろうとする事は実に素晴らしい、でも、歯止めを外したら、さっきのようになる。これだけは言わせてくれ、
自分の良心を、決して忘れるな」
紅葉は貴信の言葉を聞いて頭を掻く。
紅葉「フロンティア決勝戦の前に、とんでもない事やっちまったな。ホント……」
すると病院の奥から看護婦が紅葉の前に現れる。
看護婦「九音紅葉さん、彼女が目を覚ましましたよ」
紅葉「本当か?ケガは!!」
看護婦「大丈夫ですよ。幸い深くない切り傷で十分対応できました。ですがしばらくは入院となりますので外に出る事は出来ませんが大事には至りませんでした」
紅葉「良かった……」
その言葉に紅葉は安堵して胸に手を当てる。
すると病院の玄関から……
凍夜「ハア、ハア、紅葉君、ツバキちゃん。来たよ」
凍夜が息を切らして紅葉の前に現れた。
紅葉「凍夜、来てくれたのか?ていうかもう夜遅いけど」
凍夜「だって、二人が海賊に襲われたって聞いて、居ても立っても居られなくて」
紅葉「ありがとな、心配してくれて」
凍夜「皆の為なら、僕が真っ先に会いに行きたいから」
笑顔で紅葉とハイタッチする後ろで貴信は聞く。
貴信「今、ツバキちゃんとは面談できますか?」
看護婦「勿論、可能ですよ。ですが時間的に話せて30分ですが」
凍夜「僕も行っていい?渡したい物あるんだけど」
紅葉「分かった、一緒に行こう」
二人はエレベーターに乗り、ツバキのいる部屋へと向かった。
ガラッ!!
ツバキ「あ!!紅葉君、貴信さんに凍夜君まで!!」
紅葉「とりあえず、なんともなくて良かった……本当に……」
今にも泣きそうな紅葉にツバキは静かに伝える。
ツバキ「私も、紅葉君が無事でよかった。それに紅葉君は十分守ってくれたよ。だから泣く必要なんてないよ」
紅葉「ありがとう、何とか元気取り戻せたよ」
すると貴信はスマホでカレンダーを見ながら呟く。
貴信「ダメだな、フロンティア最終戦まで後5日。ツバキちゃんに何とか試合だけは見せてあげたいがどうしたものか……」
ツバキ「あちゃ~、その発言だと私しばらく入院っぽいね~」
すると凍夜はニヤリと口元で笑い、紙袋をツバキに渡す。
凍夜「そうだろうと思って、準備はしておいたよ。これ、貸してあげるよ」
紙袋を開けると中にはバイザー型デバイスが入っていた。
それを見た貴信は驚愕する。
貴信「それって、ヤジマ・ソリューションズが来年発売する携帯型のバーチャル端末。VN-001じゃないか!!何故持ってるんだ!!」
凍夜「まだ開発中のプロトタイプだけどおじいちゃんのコネで試験用に手に入れた物を持ってきた。これを使えばログインを介さずにGBNの世界観に入ることが出来る」
ツバキは嬉しそうな顔で凍夜に聞く。
ツバキ「これ、本当に使っていいの!!」
凍夜「勿論、これで紅葉君の最終戦を応援して」
ツバキ「ありがとう!!」
凍夜「それじゃあ、僕はここで失礼するよ」
貴信「僕もそろそろ」
凍夜「おう、また会おう、じゃあな」
二人きりになった病室の中で紅葉はツバキの手を握る。
ツバキ「どうしたの?急に?」
紅葉「なんか、愛おしく思えてさ」
ツバキ「もしかして、怖い?負けるのが……」
紅葉「怖いさ、でも、心のどこかでワクワクしてる。ここまで来たんだって、思うと……」
ツバキは紅葉の頬を撫でる。
ツバキ「紅葉君がやりたいようにやればいい、私は止めたりしない。必ず……
必ず優勝して、二人でGBNの王になろう」
紅葉「ああ、絶対に勝つ。期待しててくれ」
そう言ってツバキの手をそっと放して、紅葉は覚悟に満ちた顔で病室を去っていった。
5日後
秋葉原のプラモ屋
紅葉「行くぜ」
フロンティア・パスで最終決戦の地に立つ紅葉。目の前に立つクジョウ・キョウヤを前に宣言する。
紅葉「この戦いには、背中を押してくれた仲間の想いが俺をこの地に立たせている、どんなに強くても、この剣は決して折れねえぞ!!」
キョウヤ「その覚悟、僕の全身全霊を持って迎え撃とう。その剣で、僕を超えてその覚悟を証明してもらおう!!」
紅葉・キョウヤ「俺/僕はッ!!絶対に負けないッ!!」