「黒ッ!?」
「黒いな」
「えっ!?黒いと、なんか良くないんですか!?不吉ですか?」
「いや。そう言う訳ではないが……あまり見ないな。漆黒は」
「……俺は鮮やかな赤い刀身が見れると思ったのにィィィィ!!!クソォォォオ!!イヤァァア!!」
「アダダダダァ!!危ない!落ち着いてください!何歳ですか!?」
「37だ!」
山奥にある一軒家の中で、大人2人と少年1人の間で一連のやり取りが行われていた。大人の内1人は天狗の面を。もう1人がひょっと子の面をしている。
少年の持つ刀の刀身が黒色に変わるのを見た瞬間、ひょっと子の面をした男は少年に掴みかかり、間接技をかけて絞めていた。
「今日賑やかですね」
「誰?」
「お。響鬼か。どうした?」
「野菜採れたんでお裾分けに。あと、俺はもう響鬼は引退しましたよ」
「まだ猛子はそれを認めていないだろ。まぁ上がっていけ。いま茶をだす」
「ありがとうございます。そっちの鋼塚さんに締め上げられてる子は?」
「は、初めまして。竈門炭治郎です!ここでお世話になっています」
「おう。俺は日高仁志。よろしくな。刀を渡されたってことは、鬼殺隊に?」
「はい!先日最終選別を終えました……あの、響鬼って言うのは?」
鱗滝の言った「響鬼」と言う言葉に引っ掛かったのか、少し申し訳なさそうにその事を尋ねた。
「ソイツは自称元鬼。猛子の音撃戦士だ」
「猛子?音撃?と言うか鬼!?」
「まぁ早い話、お前が所属する鬼殺隊と似たような組織だ。倒す存在の担当は違うけどな」
「いや自称じゃなくて本当に元なんだけど……あぁ鬼って言っても君らが倒してるのとは別の存在ね。自身の体と精神を限界まで鍛えて、強い力を扱う。それが猛子の鬼」
「成る程……鬼殺隊以外にもそう言う組織が」
「まぁ倒してる物は違うけど。ご馳走さま。じゃ、俺は帰よ。また採れたら持ってくるから」
出された茶を飲み干し、響鬼は鱗滝の家を後にした。遠くに行くのを見計らって、炭治郎は鱗滝と鋼塚に気になることを聞いてみる。
「日高さん。ずっと元鬼って言ってましたけど、どう言うことなんですか?もう引退ひたなら、なんで2人はまだ響鬼と?」
「元と言うのは、響鬼が勝手に鬼になることを放棄したからだ」
「放棄?」
「それはアイツの過去に関わってくる。同じ猛子の人間やアイツの弟子なら兎も角、俺達が話すことはできない」
「まぁ勝手に放棄しただけで、響鬼と言う立場はそのまま。弟子に名を継がせた訳でもない。長い間鬼をやっていた為、実力も高く猛子としては手放したくない存在。辞めさせる理由がないと言う所だ。酷な話だがな」
2人は響鬼の過去に触れず、猛子と響鬼の関係を教えて何故「元」なのかを説明した。謎は解けず終いだったが、炭治郎はそれとなく重要な何かがあると思い深く追求することは無かった。
「すいませ~ん。鱗滝さんいますか?」
「ん?あぁ京介か。響鬼ならさっき帰ったぞ」
「しまった入れ違いだったか……」
新たに京介と言う炭治郎と然程変わらない年をした少年が扉を開けて入ってきた。響鬼に用事があることを察した鱗滝が帰ったと伝えると、頭を抱えてしまったと言う表情をする。
「その様子だと、また修行をすっぽかされたな」
「またか。お前もいい加減弟子なんか辞めたらどうだ?威吹鬼あたりなら真面目に教えてくれそうだが」
「いや。俺は響鬼さんひ憧れたから弟子入りしたのであって、あの人以外に修行を付けて貰っても俺には意味が無いのですが……」
彼が響鬼の弟子のようだ。しかし、状況を見るからに頻繁に修行をサボられている。今日も響鬼を探して山の中まで来たようだ。鋼塚には呆れられ、鱗滝からは慰められている。
「この人が、日高さんのお弟子さんですか?」
「あぁ。桐矢京介。今響鬼の元で鬼になる為に修行を積んでいる少年だ。ただ、今日みたいに響鬼に逃げられることがあってな」
「それ、問題にならないんですか?」
「基礎はもう教え終わっていると聞いた。一応問題は無い。筈だ」
猛子の鬼の修行では、取り敢えず弟子に基礎を教え込む。これがしっかりされていれば特に問題視はされない。そこから先の事は鬼をやっている師匠の裁量に任されている。基本的に猛子から指図をだす真似はしない。
「これが許される日高さんって一体……」
響鬼が持ってきたキュウリを全員でかじりながら、口々に響鬼の事を愚痴っていた。色々と酷いものだ。
「はぁ。失礼しました。また響鬼さん探してきます」
「あぁ。気を付けてな。炭治郎、お前も探してくると良い。京介と競争してこい」
「え?」
「京介も一応修行になる。やっても損はないだろ」
「分かりました。行ってきます」
「よろしく」
「はい!」
次回は響鬼さんの過去でも書こうかね。続きがあったらの話ですけどね。