「……匂いが薄いな~」
「ん?君は鼻が効くのか?」
「えぇまぁ。桐谷さんはいつから日高さんの弟子に?」
「京介でいいよ。歳も変わらないだろ?響鬼さんの弟子になったのは2年前かな?色々あって、弟子の話が俺に来たんだ」
「その、色々って言うのは?」
「悪いけど、それは俺の口からは言えない。響鬼さんに聞いたら多分だけど教えてくれると思うよ」
「そう……じゃあ俺はこっちを探すよ」
「じゃ、俺はこっちに」
そう言って、2人は別々の方向に進んでいった。京介は地面や木の分かれ目、辺りの岩に残っている人の痕跡を追い、炭治郎は鼻を頼りにして微かに残っている人の匂いを辿って探していく。
「こっちかな…?」
鼻だけを頼りにしていたせいか、森の随分と深い部分まで到達してしまった。標高もそれなりに高い場所に来ている。
「スン…スン…こっちだ!」
ようやく匂いを見付けられたのか、匂い目掛けて走っていった。到着したのは切り立った崖の先端部分。そこに響鬼こと日高が座っていた。
「日高さん」
「ん?あぁ君か」
「京介が探してましたよ?」
「ハハハ。また修行すっぽかしたからか。帰ったら怒られるな~」
そんなことを言いながら笑っていたが、響鬼の背中はどこか悲しそうだった。炭治郎もそれを匂いで嗅ぎとっている。少し気は退けるが、思いきって気になってることを聞いてみることにした。
「あの。何故日高さんは……その、鬼を辞めたんですか?鱗滝さんや京介は今も鬼の名前で呼んでいるし、威士もまだ辞めたことを認めてないって話してしたので……」
「…ただ、単純に嫌になっちゃったんだよね。鬼になって戦うのが……」
それを火切りに、鬼として活動しなくなった理由をポツリポツリと話し始めた。傷付く仲間を見たくないや、長い間やってきたからだとか、様々な理由が並べられたが、どれもいまいちピンと来ない。だが、最後に話し始めた理由で、全て納得がいった。これが鬼を辞めた、なれなくなった本当の理由なのだと。
「俺さ、過去に1人、弟子を殺してるんだよね……」
「え?」
「スゴいヤツでさぁ、俺なんかよりもよっぽど才能があって、でもその才能に胡座をかかず、努力を続けて、一途で直向きで、優しくて、誰よりも鬼になるべき存在だった……でも、それを俺は…………」
「日高さん……」
『音撃打!猛火怒涛の型!!ハァ!たぁ!オリャア!ハァァァァァ……ハァ!!』
『ひ、響鬼……さん…………』
『明日夢……明日夢!!…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……ウワァァアァァアアァア!!!!』
「────ッ!?」
「日高さん?!」
「大丈夫。大丈夫……」
過去のトラウマを思い出したのか、額に脂汗を流し呼吸が乱れた。心なしか顔色も悪くなっている。
「それからかな~。鬼に変身するだけで吐いて、修行するだけで意識が遠退いて、バチを握れば震えが止まらなくて……無意識に倒してきてた敵の命の重さって言うのかな?それが急にのし掛かってきて……気付いたら戦えなくなってたんだ……」
思い出しながら話してるだけでも気分が悪くなってきてるのか、体が強張って震えている。震える手で懐に手を入れて、丁寧に布にくるまれた何かを取り出した。
「これは?」
「京介の前の弟子、明日夢が使ってた道具。俺達が鬼に変身する為の音叉だ。鬼になるには師匠の許可が必要で、俺はあの時、まだそれを出していなかった……もし許可してたら、アイツは死ななかったのかもな」
差し出された音叉を受け取り、布から取り出した。明日夢の形見として大切にされているのか、小さな傷はあるが汚れなどは一切付いていなかった。
「明日夢はきっと俺のこと恨んでるだろうな~。それに幻滅もしてるはずだ……自分の師匠がこんなに情けない人間だったんだから」
遠い目をしながら、そう炭治郎に言った。だが、何かに気付きたのか、炭治郎はおもむろに音叉に鼻を近付けて匂いを嗅ぎ始めた。
「あの、明日夢さんはきっと、日高さんを恨んでませんよ。幻滅もしてません」
「ん?」
「俺鼻が効くんです。この音叉、微かにですけど、日高さん以外の匂いがあって、その匂いは日高に対する尊敬と感謝の物で……多分、死ぬその瞬間まで、日高さんの事を慕っていた筈です」
「……そっか」
炭治郎の言葉を聞くと、それ以上はなにも言わずに再び森に目を向けた。遠い過去を懐かしむように森を見ている。
「なぁ炭治郎」
「はい!」
「京介を、一緒に連れていってくれないか?鬼殺隊には俺の方から連絡しとくよ。俺が京介に教えられることは無い。俺の所にいるより、炭治郎といた方がアイツにとっても良いからな」
「……分かりました。でも良いんですか?」
「大丈夫だよ。京介はもう十分強い」
少し考えたが、炭治郎は京介と一緒に行動することを決め、響鬼はそれを聞くとその場から立ち去っていった。響鬼が見えなくなると、炭治郎も鱗滝の所に戻って事の経緯を話、京介を連れて任務へと向かう。
「あ!」
「どうした?」
「日高さんにこれ返すの忘れてた……」
「あぁ。明日夢の音叉か。大丈夫じゃないか?」
「いや。これ日高にとって大切な物なんだろ?俺が持ってちゃダメだと思うんだけど」
「また会えるんだからその時に返せば良いよ」
「会える……のかな?」
「会えるって。必ず。そんな気がする」
形見の音叉を布にくるみ、懐へ入れて2人で任務へと向かっていく。
皆さんは無限列車見ましたか?俺は見てきました。面白かったです。原作の良さを引き出しまくってました。明日また見に行こうかな~笑