仮面ライダーエルフ   作:青ずきん

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10話です。
学校が休みになって課題に殺されそうになっている状況で書いてます。
例のウイルスヤバいですね。一刻も早く特効薬が出来るか事態が鎮静化する事を心から望んでいます。


第10話 Re:Humanー人類の才智

「…!」

 自身のすぐ近くまでバージェスアクサーの吻をおびき寄せたエルフは、左右に分かれて分裂、もとい分身を作り出した。完全にエルフを捉えた気でいたバージェスアクサーは、勢いよくエルフが先程までへたり込んでいた地点に食らいつく。衝撃によって砂嵐が巻き起こる。砂嵐の中で、バージェスアクサーは地面を喰らっていた。およそ1.2メートルほど抉られており、あと少し左に寄っていれば今頃口の中だっただろう。

「あっぶな……」

 ビオラが不意に呟く。同時にバージェスアクサーの隙を察知し、左手から水をブースターの様に噴射して分身と同時攻撃を図る。

「「ハアアッ!」」

「キィィーーィィーーーッッ!!!」

 言葉にならない甲高い悲鳴を上げ、バージェスは海の深くへと潜り込む。斬りつけた勢いでエルフも海へ潜り込むが、既にバージェスアクサーは戦線を離脱していた。

「…っはあ! 疲れた……」

 海から上がり、エルフは変身を解いてその場にへたり込む。バージェスアクサーを取り逃がしたからなのか、はたまた疲労からなのか、ビオラの顔色はあまり良くは見えなかった。

 重い腰を上げ、ビオラが帰路を辿ろうとしたその時。ふと、ビオラより少し背の高い中年の男性が声をかけてきた。

「あのー、すいませーん!」

 若干しわがれた声が、ビオラの足を止める。

「…?」

「はあっ…はあ。やっぱりだ……昨日の嬢ちゃんだね? いやー昨日は助かったよ! 本当に、ありがとうございます」

 中年の男性は深々と頭を下げる。寿司屋の店主の様な風貌は、しわくちゃな顔も相まって貫禄を感じさせる。

「……誰? 全く覚えが無いんだけど」

「…え? 知らない人なのか?」

 いつの間にかすぐ近くまで来ていた京太郎がビオラの方を向いて質問を投げかける。二人とも、この状況を理解できていないような顔をしている。

「いやね、昨日の夜にでっかい化け物に襲われたんだよ! その時にそこの嬢ちゃんがカッコよく助けてくれたんだよ!」

「へー……優しいとこあるじゃんビオラ」

「うっさい。……で、用件は何? 私今疲れてるから半端な用事は後にして欲しいんだけど」

「おお! それなら良かった! ちょっと待っててくださいね!」

「何が……って、聞いてないし…」

 男性は歩いて来た方と反対方向に走り出した。それから、ビオラ達の前にテーブル、椅子、俎などを用意し始めた。テレビの番組だと、ポン、ポンなどといったSEがついていそうなスピードだった。

 用事が完了するやいなや、男性はビオラ達の目の前で料理を始めた。

「私ね、実はすぐ近くで漁師をしてるんですよ! それでね、ぜひ魚料理を振る舞わせていただきたいなと思いまして…」

「いらない。私帰る」

「ちょ、おい待てって! タダ飯だぞ!?」

席を立ち上がり、ビオラは歩き出す。それを、京太郎は必死に止める。

「だから、いらないって言ってるでしょ。第一、私……」

 

「魚料理は味噌煮以外無理なの」

 

 その一言だけ告げ、ビオラは再び歩き出す。

「おっ、お待ちください! 今すぐ味噌煮にしますっ!」

 男性は必死に走り、味噌を用意して再度調理を始めた。

 

 

 それから数分後、鯖の味噌煮が完成した。高級そうな皿に乗せられ、京太郎達の前に振る舞われる。

「うっひょー! 美味そうじゃん! ほら、ビオラもこっち来て食えって!」

「…毒が入ってるかもしれないでしょ」

「目の前で料理してたのに何言ってんだよ! もう俺食うからな?」

「……うんめぇー!」

 実際に男性を助けたビオラよりも早く京太郎が料理にかぶりつく。余程味が気に入ったのか、まるで飲み物かの様に味噌煮を平らげていった。

「ほら! 毒とか無ぇだろ? ビオラも食えって!」

「……京太郎の分の皿に無いだけでしょ」

「じゃあ俺の分食う?」

「それは結構。いただきます」

 荒々しく椅子に座り、料理に口をつける。

 

「……美味しい。」

(えっちょっと待って…結構美味しいんだけどこれ……ホントに毒無いよね? 大丈夫?)

 噛み締めた瞬間、ビオラの表情が綻んだ。箸を動かし、無邪気な幼子の様にパクパクと味噌煮を自身の胃袋に送り込んでいく。

「……!」

 食べ終えてから、ビオラは夢中になっていた自分を制止して我に返った。

「…結構、美味しかった。…ありがと」

 

「……お粗末さまでした」

 恥ずかしそうに俯きながら歩き去るビオラを、男性は暖かい目で見送った。

 

 

 

 

「……そういえばさ」

 海辺からそれほど離れていないカフェテラスにて、京太郎、ビオラ、ウィルの3人は会話をしていた。ダークブラウンの机と椅子がシックな店の雰囲気によく映える。

 鼎談の口火を切ったのはビオラだった。いつもより少し声が低いあたり、より真剣に話し合いに臨んでいることが窺える。

「『ビネガーアクサー』と『ウィップアクサー』……京太郎が言ってた『私達の所に来た奴ら』のことなんだけど。………何でソイツらの事を知ろうとしたのか。知ってどうする気だったのか。……全部答えてもらうけど、準備出来てる?」

「え…えーっと………」

「ほら、早く」

 ビオラは容赦無く返答を急かす。足を組んで無言の圧力を掛ける様は、京太郎にとって威圧感の塊の様にも思えた。

 

「…その、さ。見た目とか教えてもらおうと思って。見た目が分かるんだったらさ、俺がどっかでそいつらの事見かけた時に、「こんなとこにいたー」とか言えるだろ? ……エルフの里を見て、もしアレが本当に人間のやった事なんだとしたら、ビオラ達が人間を恨む理由ってのも分かるんだ。だからこそ、俺が少しでも協力して、「良い人間も居るんだ」って思わせたくて……」

「……私の復讐に、アンタは関係ない。それに……」

 

 

「アンタだって、復讐の対象になるかもしれない」

 ビオラは目を見開いたまま顔を近づけて凄んでくる。……目の前の仇に襲い掛かって殺したい衝動を、必死に抑え込んでいる様にも見えた。

「…ま、こんな感じでビオラはまだ京太郎の事を信じ切れて無いみたい。だから、京太郎がそこまで気負う必要は無いんだよ」

 ウィルが京太郎を優しく諭す。しかし、京太郎にとってその言葉は「お前なんか必要無いから自分たちの前から消えろ」とでも言われるかの様な、自分という存在の介入を拒絶されたかの様にも取れてしまっていた。

「…それでも、俺は…」

 京太郎が自身の決意を打ち明けようとした、その刹那の出来事だった。

 

 

「────!」

 

 

 バージェスアクサーの絶叫。それは、もはや言葉として形容するには手遅れなほど言語というものを感じさせなかった。獲物を捉えた喜びか、エルフに負けた地団駄か、何れにせよ、ビオラ達は一度逃走を許した相手を再度捉えたのだ。このチャンスを逃す筈は無い。

【ウンディーネ!】

 ビオラはベルトの出現とオーブの起動を同時に行う。

【セットアップ!】

「変身!」

 少しずつバージェスアクサーに歩み寄りながらレバーを倒す。

【サモン!】

 バージェスアクサーという得体の知れない怪物を目の当たりにして逃げだす民衆をくぐり抜ける様にネディンがオーブより飛び出す。

【その淑女、泡沫の様に儚く散りゆく小さき命。荒波の如く激しく在れ!】

【スプラッシャーーーー…ウンディーーネッ!!】

「もうアンタを逃したりなんかしない。ちょっとだけ……本気、出してあげる」

 仮面ライダーエルフがそう呟いた瞬間、1人、3人、7人、15人とその数を増やしていく。そして……

「どう?これが……人智の先ってやつ」

 最終的に、エルフは31人にまで分身した。

「じっくり見せてあげるから……ありがたく受け取りなさい!」

【カモン!】

 ベルト右側の太いレバーを下ろして飛び上がる。

【アクア! スピリチュアル!】

「はああっ!」

「「はああっ!」」

「「「「はああっ!」」」」

「「「「「「「「はああっ!」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「「「「「はああっ!」」」」」」」」」」」」」」」」

 弱点の腹部目掛けて、31人がライダーキックを放つ。同じ箇所に放たれたキックは、その威力を漸増させていく。

「ンギュゥーーウギャァウアーーーッッ!!!」

 気色悪い絶叫と共に、バージェスアクサーは海上で爆ぜた。爆発した地点にあった海水がこちらにまで飛んでくる。

「……ほら、アンタなんか要らないでしょ。分かったらもう私達に……」

 

「いやぁ実に素晴らしい! 感激しましたよ!」

「…は? 誰……?」

「何だアイツ……?」

 エルフが京太郎を指差し、自分達への干渉に断りを入れようとしたその時、突然エルフの後ろから男が拍手をしながら歩いて来た。

 茶髪のミディアムに気怠げな目つき、ボタンが一つも留められていない研究用の白衣、真っ白な長ズボンに焦げ茶の靴と、砂浜にはとても合わない服装をした男にビオラ達は訝しげな視線を向ける。

 

「やーー…バージェスアクサー()も成長していましてね、もう少し観察していたくはありましたよ。でも、やはりそれ以上に貴女という存在には興味が尽きませんよ、『仮面ライダーエルフ』!」

「アンタまでそういう呼び方………待って、何で私の事知ってんの?」

 エルフは自身の呼称に呆れていたが、その途中に違和感を感じた。少なくとも、仮面ライダーなんて呼び方を知っているのはウィル、精霊達……京太郎も知っている可能性がある。しかし、目の前の男の事を、自分は一切知らない。それなのに、何故男は仮面ライダーという呼び方を知っているのか。エルフの頭脳を持ってしても、どうしても理解することは出来なかった。

 

「まあまあ、何で知っているのかなんてことはどうでもいいじゃあないですか。それよりも、大事なのはこれから。そう、これからの貴女次第なんですよ」

「私次第……?」

「そうです! 貴女が……」

 

「僕のかわいい実験体(モルモット)になっていただけるか……ですよ」

 

 男は、はにかみながら淡々とそう告げた。

「モルモット…? アンタ、頭のネジ何本か飛んでるんじゃないの……?」

「………そうですか。それは非常に残念な返答です…まさか、実力を行使しなくてはならないとは……」

 そう言うと、男は懐からバックルの様な機械を取り出した。ベルト右側には縦に長い長方形型の不自然な窪みを持ち、左側には何も表示されていない真っ黒な液晶画面が具えられていた。

「何だアレ………」

「…僕も、知らない代物だね……」

 予想外の事態に、エルフだけでなく京太郎、ウィルまでもが驚きを隠せないでいた。

 

 男は、その機械──ヒューマドライバーを自らの腰に充てがう。ベルトが伸びて反対側に繋がる。それを確認すると、男は拳よりも少し大きい円柱状の金属を取り出した。上部には蓋にも見える、下部を不自然に切り離す黒い線が走っている。その下部には機械の配線の様な物が複雑に絡み合っていた。その内2本が何もない上部へと続いている。

 男が、全体の1/5ほどの比率をした上部を左回りに120度回転させる。すると上部に新たな配線が出現し、下部の配線の内の一つと繋がった。即座に左手に持ち替え、窪みに挿入する。

 

【Transform】

 

 ベルト左側の液晶画面が発光する。水色の無地を背景に、赤い四角に白い文字で『認証』と表示されている。男の周囲に、平仮名、片仮名、アルファベット、数字などといった文字が下から現れては上に消えていく。近未来的な待機音が、男の怪しさを際立たせる。

「…変、身」

 静かに告げ、『認証』の文字を軽くタッチする。

【Authentication.】

 女性的な機械音声が砂浜に響き渡る。同時に、男の足元から様々な文字が出現し、男の体を纏った。

【Now loading...】

 男の体を包む文字達が、黒い素体へと姿を変えた。直後、文字が現れて白銀のアーマーへと変化し、素体に張り付く。

 

 今、新たなる戦士が誕生した。

【Humanity will continue to evolve from now on.】

「私の名は『仮面ライダーヒューマ』! 我らが人類の……科学の結晶だ!」

 黒い素体は白銀の装甲を纏っており、日の光を受けて輝いている。全体的に角ばった装甲と青い複眼が恐ろしい程脳裏に焼きつく。

 

「うっそだろお前……」

「こんな事…本当にあるんだね……」

「……」

 仮面ライダーヒューマを除いた誰もが、その存在に驚愕した。

 それを尻目に、ヒューマは液晶画面左上の『+』と表示されている部分に触れる。

【Option】

 縦に並んだ幾つものアイコンから一番上にある剣の様なアイコンにタッチする。

【Weapon】

 『認証』と『キャンセル』の二択から、ヒューマは『認証』を選ぶ。

【Authentication.】

 下から上に流れる文字達が武器へと変わりゆく。ヒューマは現れた持ち手、引き金、その先に取り付けられた白い立方体、正面の正方形の画面しか備えていない簡素な武器の画面を操作する。

【Blade】

【Authentication.】

 武器──プログラムアクターが認証を完了させると、立方体の真上の面からビームソードの様に強く青白い光が現れる。

「さあ、お待たせしました仮面ライダーエルフ、私と、貴女の体を賭けた勝負を始めましょう?」

「……いいわ。アンタにも、人智の先を見せてあげる」

「承知しました。ならば僕は、人類の才智を披露して差し上げましょう」

 

 その言葉を言い終えると、2人のライダーは衝突した。尤も、片や水で生成した刃、片やビームソードにも似た剣、どちらが優勢なのかは火を見るよりも明らかだった。

「くっ……」

 少しずつ、エルフの方が押されていった。どこまで行っても、文明の利器には敵わないのか。そんな事を信じようとしないエルフは、右腕に力を込める。

 だが、ヒューマはそれを易々と弾く。エルフに生まれた僅かな隙を狙い、剣を振るう。

「うあっ!」

 吹き飛んだ勢いで地面を転がり、エルフは大きな隙を晒してしまう。

「僕の勝利……ですね」

 ヒューマはプログラムアクターを付近に放り投げ、ベルトに挿入された機械──フォースコネクターの上部を、再度左回りに120度回転させる。

【Finish attack】

【Authentication.】

 『認証』をタッチし、空高く飛び上がる。

「終わりですッ!!」

 絶えず文字を出現させる右脚を突き出し、エルフにライダーキックを発動する。

「ぐうっ、うああああッッ!!!」

 やっとの思いで立ち上がったエルフの胸部に、『ヒューマニティスパニッシュ』が炸裂する。その圧倒的な威力を前に、仮面ライダーエルフは初めて爆発を起こした。

 エルフは元のビオラの姿へ戻り、膝から崩れ落ちる。

「うん、完璧ですねぇ、さすが私」

 倒れ伏すビオラに近づきながら、ヒューマは自画自賛を始めた。ビオラを回収しようと近づくヒューマに、京太郎が駆け寄る。

「待て! お前、何者なんだ!?」

「貴方に名乗る義理はありません。そこ、大人しく退いていただけます?」

「……聞けねぇ頼みだな」

「何故です? 貴方は人間、そちらはエルフ。守る理由などないでしょう。それともなんですか? まさか自分の恋人だとでも?」

「恋人とか、そういう話じゃねぇだろ……! それに、何なんだそのドライバー、普通の人間が持つモンじゃないだろ?」

「『普通の人間が持つ物では無い』という事は、必然的に私が『普通の人間では無い』という事になると思うのですが、まさかそこまで思考が及んでいない?」

「………」

「…はあ。興冷めですね。まあ良いです。機会は幾らでもあります、し…」

 ヒューマは変身を解くと、ポケットに手を突っ込み、一枚の紙を取り出した。

「これ、彼女に渡しといてください」

 そう言い、男は京太郎に紙を押し付ける。

「何だ、これ……?」

 その紙には、『犬童 託斗』と書かれており、その下には数字やアルファベットが羅列されていた。

「それ、僕の名前と電話番号、それとメアドです。よろしくお願いしますねー」

 それだけ言ってから、犬童 託斗は後ろを向いて軽く手を振り、歩き去っていった。

 

「…いや、多分ビオラ携帯持ってないと思うんだが……」

 歩き去る託斗に、京太郎の言葉が届くことは無かった。




10話でした!やったぁ!6000字超えた!(低レベルな喜び)
新ライダー『仮面ライダーヒューマ』登場!如何でしたか?
僕は英文だらけなので「ゼロワンみたい」って言われそうな予感しかしません。
一応言います、企画しだしたのは去年の(大体)6月くらいなので、パクっているつもりは微塵もありません!(信用0)
あんま関係ないんですが、僕はスターウォーズを見た事は一切ありません。なので、実際ビームソードがどんな感じになってるのかはあんまり知りません。
それなのに出してるんだからねぇ、本当に、青ずきんって奴は…(故意犯の発言)
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