仮面ライダーエルフ   作:青ずきん

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まーた遅くなった……申し訳ないです。


第14話 Re:Embarrassー尖った心、裏返し。

「くっ……!」

 エルフは衝動的に走り出し、京太郎の前に立ち塞がった。

【カモン! フレア! スピリチュアル!】

 必殺技の発動を知らせる音声が鳴り響く。同時に、エルフに擬態したミミクリーアクサーが掌から火球を放つ。

「このっ…!」

 小さく声を漏らしてからエルフは跳び回し蹴りを繰り出す。その衝撃波が火球に触れ、小規模な爆発を起こした。辺りを薄い煙が覆い、視界を遮る。

煙が完全に晴れる頃には、ミミクリーアクサーはその場から姿を消していた。

 

「……はあ」

 変身を解除し、ビオラは安堵したようにへたり込む。それを見た京太郎は、少し困ったような顔つきのままビオラに歩み寄っていった。

「…こういう時ってさ。『ごめんな』って言えばいいのか、それとも『ありがとう』って言えばいいのか、正直よく分かんねぇんだ。…もちろん、さっき助けてくれた事には感謝してる。でも、無理矢理戦わせたのは俺だし……」

「……だからこそ俺は、言われて嬉しい方を選ぶことにした。…ありがとう、ビオラ」

「……」

 京太郎の感謝には何も返さず、ビオラは徐に立ち上がった。そのまま一言も発さずに後ろに振り返り、つかつかと歩き始める。暫くビオラが歩くと、突然振り返ってきて叫んだ。

「デート! ……するんでしょ? 早くエスコートなりしてよ」

「え、あっ…あぁ、分かっ…た」

 ぼそぼそとした声で反応し、京太郎はビオラの元へと駆け寄っていった。

 

「…つってもなあ」

 強い日差しがビオラ達を照らす真っ昼間。京太郎はビオラの隣を歩きながら思案していた。何をかというと、このデート紛いの人間界の案内についてだ。凱の元を飛び出したのは良いものの、突発的な案だったためになんのプランも無いのだ。

 今は特に行く宛もなくぶらぶらしているが、これをいつまでも続けるわけにはいかない。自分から誘った手前、「特に行きたい所は無いので自由に歩いてください」とは言えるはずも無い。万が一にでもそんなことを言い出せば、「あっそ」などと言われて帰られるに違いない。それだけは避けなければならない。

 だが、現在の持ち合わせはあまり無い。そのため、ショッピングモールを練り歩くなんて真似をすれば私生活に影響を及ぼしかねない。

「…よっしゃ」

 それらを考慮した可能な限りの最善策を思いついた京太郎は、軽やかな足取りでビオラのエスコートを始めた。

 

「おし、ここならまあ大丈夫だろ」

「…ねぇ。もしかしなくっても、ここって……」

「お、ビオラ知ってんのか。遊園地だ。中々のチョイスだろ?」

 京太郎がビオラを連れて訪れたのは、近くの遊園地だった。数回回転するジェットコースター、巨大な観覧車、メリーゴーランド。他の数多くの遊園地とそれほど差違があるようには見えないが、この遊園地は一周が短い代わりにかなり高速で動くジェットコースター『シャイニングホッパー』を強みにしている。これが人気を博しており、京太郎の地元の周辺地域に位置する遊園地の中ではトップクラスに人気なのである。

 休日なのもあってか、いつもより客足が多いように見受けられた。入り口に近づき、少し順番を待ってのりものパスを購入する。…が。

「そこの子、もしかしてお子さんですか?」

「…は? 私を子供扱いしてんの?」

「えっ? えっとね……」

「あっ、ごめんなさい! えっと……従妹、です……」

「あっ、あぁ……はい、分かりました……」

 

 …と、こんな感じで購入する際にビオラが係員に噛みついていた。正直な所ビオラは、歳を知らない状態で「小学生です」とでも紹介されれば、情報をそのまま飲み込んでしまう程に背が低い。だが、彼女の齢は206。故に、自分の歳の半分も生きていない人間に子供扱いされるのが気に食わないのだろう。

 購入を無事済ませ、アトラクションへと歩を進める。道中、京太郎とビオラはかなりの注目を浴びていた。異常なほど背丈に差がある男女、多くの人々が小学生かと見紛うほどの低身長に長い金髪を持つビオラ、そしてビオラのその整った顔立ち。すれ違った人々は思わず振り返っていた。

 

 ようやく目的のアトラクションにたどり着き、二人はそれを見上げる。

「…ねぇ、まさか……これに、乗る気…?」

 ビオラが震えながら指差した先にあったのは、4回ほどの回転をするジェットコースター『フライングファルコン』だった。マゼンタに塗装されたレールは優しい印象を与えるが、その実心臓の弱い者には追加でかなりの絶叫を与える凶悪なジェットコースターだ。

 下手をすれば先程までの戦闘よりも足を竦ませているのではと勘繰ってしまうほど震えていたビオラは、こっそり後ろに下がってアトラクションから距離を取ろうとしていた。

 

 だが、京太郎は既にビオラの分のパスまで購入したのだ。今更引き下がることなど出来はしない。そこで係員に子供扱いされてビオラが怒っていたのを思い出し、京太郎は子供扱いでビオラを煽って乗る事を決めて口を開く。

「お? もしかして怖い? まあ〜…確かにお子様目線だと怖いかもなあ、このジェットコースターは」

 その言葉を聞いたビオラは肩のあたりをピクッと反応させ、途端に京太郎を睨んだ。

「…別に怖いとか言ってないでしょ。やってやろうじゃない」

「……ちょっろ」

 

「安全バーのロックを確認します、少々お待ちください」

 ビオラはしかめっ面でシートに体重を預ける。体を覆うかのように造られた安全バーを力の限り抱きしめ、恐怖に震える自身をなんとか律しているようだった。

「怖くない、怖くない、怖くない、怖くない……!」

「めっちゃ怖がってんじゃん」

「怖くなんかないッ! 怖くなんか──」

「それでは出発いたします。翼を広げ、力に備えてください。では、いってらっしゃい」

「ッ!?」

 勢いよく京太郎の方へ振り向き、ビオラが反駁したその瞬間。係員の出発のアナウンスが入り、ジェットコースターが動き出した。その途端にビオラの心臓が激しく鼓動する。『シルフィードスレイヴ』で高速移動をしてはいるが、アレは装甲の頑丈さ故に『落っこちても大丈夫』という安心感があるからこそと言っても良い。

 しかし、今は変身などしていない。流石に人間ほど耐久力が低いわけでは無いが、死なない可能性も無い。人間が造った物を信用できないためか、ビオラは命の危機すら感じている。

 

 そんなビオラの心境など露知らず、ジェットコースターはゆっくりと高度を上げていく。頂点まで登りきり、コースターは急激に速度を上昇させて走り出す。

「わああああああっっ!!?」

「わっほーい!!」

 仮面ライダーへと変身していたのならば軽く変形させてしまうほど安全バーを抱きしめ、ビオラは怯えたような顔つきで絶叫を上げる。

「無理無理無理無理無理無理無理無理ぃぃぃ!!!」

「イェーーイ!!」

 対して京太郎は臆することもなく、ジェットコースターの疾走感を楽しんでいる。縦方向に1回転する部分に差し掛かり、乗客たちの間でも絶叫と歓声が入り乱れていた。そんな中ビオラは、全力で楽しんでいる京太郎の隣で目を三白眼にし、垂涎しながら気を失っていた。コースターの動きに合わせて体が揺さぶられるのみで、声一つすら上げていなかった。

 

「おーいビオラ、起きろって。もう終わったぞ」

「……ハッ!?」

 京太郎に肩を叩かれ、ビオラはようやく意識を取り戻した。アトラクションを降りて暫くしてからも、ジト目でよたよた歩きながら「もう二度と乗りたくない……」などとぼやいていたのを見て、京太郎は少しばかりの反省を憶えた。

 次に京太郎が向かったのは、小さい子供でも安心して乗れるジェットコースター『エキサイティングスタッグ』だった。次もジェットコースターだと知るや否や、ビオラは全力で首を左右に振った。

「無理無理無理無理無理! 絶ッッッ対に無理!」

「そう言わずにさ、これは凄く短いやつだし、ビオラでもいけるって」

「そういう問題じゃなくて! 『じぇっとこーすたー』そのものが駄目なの!」

 なんとかして誘おうとする京太郎だったが、ビオラはそれを真っ向から拒絶した。若干泣き出しそうに潤んだ小さな瞳が、その心の奥底に隠れた逃げ出したい衝動を表していた。

 それでも諦めず、ビオラにジェットコースターを楽しんでもらうために京太郎がビオラの手を引いた、まさにその時。轟音と共に、何かが空から降ってきた。着地点は『エキサイティングスタッグ』の真上。周囲が忙しなく現場から離れようとする中、その何かは潰れてしまった『エキサイティングスタッグ』から飛び出し、ゆっくりと着地。徐に立ち上がり、その姿を現す。

 

「アンタは……ビネガーアクサー……っ!」

 その正体はビネガーアクサー。こちらを睨み、無言で距離を詰めてくる。ビオラはファイティングポーズをとると同時にエルフドライバーを出現させ、ウィルを呼び出す。

「……助かった、これでジェットコースター(アレ)に乗らずに済む……ウィル! ネディンのオーブ持ってきて!」

「……相変わらず人使いが荒いなあ」

「あんたは人じゃないからセーフでしょ」

「じゃあ『使いが荒いなあ』に変更で」

「……それじゃ意味伝わらなくない?」

「え? じゃあもしかして僕って最初から負けてた?」

「……そんなのどうでもいいから、早く」

「……理不尽だなあ」

 そんな会話を交わしつつも、敵の姿をしっかりと捉えていたビオラは無策で突っ込んで来たビネガーアクサーの頭を蹴り飛ばす。いつもの彼なら物ともしないはずだったが、何故かビネガーアクサーは頭を押さえて後退りをしていた。

 

【ウンディーネ!】

【セットアップ!】

「……ミミクリーアクサー(アンタ)の擬態って、隠す気無いんじゃないかってぐらい死ぬほど分かりやすいんだけど……自覚ある?」

「……!」

 真の正体を悟られたビネガーアクサー、改めミミクリーアクサーは擬態を解き、ビオラに背を向けて逃走を始めた。

「あっ、ちょっと! 待ちなさい!」

【サモン!】

「ネディン、出番!」

「りょうかいっ!」

 ベルトに装填されたオーブからまっすぐ飛び出し、ネディンは水で鎖を作り出してミミクリーアクサーの首を絞める。

「アッ……ガァ……」

「よし、ネディンナイス!」

【その淑女、泡沫の様に儚く散りゆく小さき命。荒波の如く激しく在れ!】

【スプラッシャーーーー…ウンディーーネッ!!】

 ビオラは走りながら変身を完了させ、鎖を解こうともがいているミミクリーアクサーを飛び蹴りで吹き飛ばした。

「グ……ング……」

 足を震わせながらも立ち上がり、ミミクリーアクサーは仮面ライダーエルフ ウンディーネスレイヴの姿へと変貌を遂げた。が、完全には再現しきれないようで、所々本家よりディテールが禍々しくなっている箇所が散見される。

 先程の仕返しと言わんばかりに、擬態仮面ライダーエルフは口のあたりから水の鎖を吐き出す。その攻撃を、本物のエルフは顔を右側に軽く傾けるだけで回避して見せた。そしてその代わりに擬態エルフの足元に鎖を放って螺旋状に上昇させ、擬態エルフの身体を締め上げた。

「これで……どう!?」

 擬態エルフの元に駆け寄り、本物のエルフは鎖ごと擬態エルフを蹴り上げる。遠くに飛ばされた擬態エルフは、それでもまだ諦めようとせず、地べたを這ったままの体勢で今度はエルフを囲うように鎖を打ち出した。それはエルフの攻撃かのように螺旋状に上昇していき、エルフの身長とほぼ同じ高さになったあたりで一気にエルフの元へ収束した。

 

 だが、これもエルフが自らを液状化させることによって回避された。擬態エルフは駄々をこねる子供のように握り締めた右の拳で地を叩き、大量のラテラリスアクサーを呼び寄せた。まるでゴキブリかのようにカサカサと動き回るラテラリスアクサーを相手に、エルフはキックとパンチを織り交ぜて応戦した。胸部を狙って攻撃し、挟まれそうになった際には片方の首を引っ掴んで後ろに振り向き、盾のように扱って防いでからもう片方に反撃した。大群をあっさりと片付け、ゆっくりと擬態エルフに近づく。

「……残念。どれだけ私に近づこうとしても、結局真似するまでが限界っぽい」

【ウンディーネ!】

 呆れたようなセリフを吐き、エルフは未だに地べたを這ったままでいる擬態エルフを見下しながら必殺キックの体勢に入る。

【カモン! アクア! スピリチュアル!】

「どうせ真似するんなら、せめて私ぐらいの独創性を持って出直すことね!」

 言い終えると、エルフは擬態が解け始めたミミクリーアクサーをサッカーボールのように天高く蹴っ飛ばした。

「ギゥッ、ギュアアアアアッッ!!」

 奇声を上げながら、ミミクリーアクサーは宙で爆発した。天高くまで蹴り上げたのは、この爆発に人間やアトラクションが巻き込まれないように配慮したからだ。その行動を振り返り、自分の中で段々と人間に対する態度が軟化していっているのではと、変身を解除したビオラは一抹の不安を憶えた。

 

 

「はああ……何かすっごい濃い一日だった…」

 ビオラは夕日をバックに背伸びをし、ひどく疲れたような表情を晒した。実際、あまり運動をするタイプではなかったビオラはかなりの疲労が溜まっており、今すぐにでも倒れ込みたいほどだった。

「つーことは、デートは成功ってことでオッケー?」

「……どこにデート要素があったんだか」

「いや、ほら……ラーメンとか……」

「どう考えてもデートでラーメンはないでしょ。恋人と食べるって感じの料理でも無さそうだったし」

「ええ〜……」

 

 そんな会話を繰り広げながら、二人はゆったりとした足取りで帰路を辿る。ビオラが元に戻ってくれて、人間の世界を少しばかり紹介できた。『じぇっとこーすたー』はアレだったけど、まあまあ楽しかった。そんな風に、今日という日は双方にとってとても良い一日となった。

 少し歪で、とてもデートとは呼べないような二人の旅路が、いつかデートと呼べるほどにビオラと親しくなること。そして、ビオラに人間のことを信じられるようになってもらうこと。あわよくば、そのまま他のエルフ達にも人間を見直してもらうこと。それが、現在の京太郎の目標だ。

 自分が、エルフと人間の橋渡しのような存在になってみせる。そんな思いを胸に抱きつつ、京太郎はまた歩を進めるのだった。

 

 

 

「……まだ見つからない?」

「……ええ。大変申し訳ございません」

 ビオラが強く嫌悪するアクサーの巣窟にして総本山である場所、『NAHMU』。薄暗いその一室で、『NAHMU』の首魁と思わしき男と託斗は会話をしていた。内容は、数日前に施設から行方を眩ませた新型のアクサーについてだ。男からそのアクサーの捜索命令が出されていたが、託斗達は捕らえるどころか発見する事さえ出来ていなかった。

「……そっかあ」

 男はため息混じりの声を上げ、虚空に目を見やる。が、男はあまり落胆しているようには見えなかった。その理由はただ一つ。

「……ま、別にいいや。最初から特別な期待とかしてなかったしね、もう帰っていいよ」

「……了解です」

 そう、この男は、最初から期待などしていなかったのだ。『無理だとは思うけど、見つけてくれたらラッキー』というほどの感情しか無かった。それは、幹部級アクサー達を含め託斗に一切の信頼が存在しないことでもある。

 

「やだっ、やだっ! 助けて! お願い!」

「嫌だ、やめてくれ、化け物になんかなりたくない!」

「……」

 培養液に閉じ込められ、否応なしにその身を怪物へと変貌させられる人々。今まで何も考えず、寧ろ悪ノリまでしていた託斗は、ここに来て初めて「平和」という言葉に疑問を感じだした。

 エルフ達は、人間よりも圧倒的に高度な知能を持ち合わせている。故に、人間では想像もつかないような兵器を開発して人間の世界に侵攻してくる可能性がある。だからこそ、そのまま何も反撃出来ず、取り返しのつかないことになる前にエルフ達を抑圧する必要がある。それは正しいことだと感じていたし、正義の行いでは無いのでは、と疑うこともしなかった。

 

 だが、それは自分たちだけの平和ではないのか?自分たち「人間」が平和に暮らしたいように、エルフ達だって平和に暮らしたいはずである。ただ「高度な知能を持っている、だから戦争を仕掛けてくるかもしれない」などと、差別にも近い感情だけでエルフ達を排斥するのは果たして正義なのだろうか?

 

 一部の人間とエルフという、自称「平和のための致し方ない犠牲」を切り捨てることで得た世界は、本当に平和な世界だと胸を張って言えるのだろうか?

 

 託斗の頭の中では、様々な形の「正義」と「平和」が鬩ぎ合っていた。




更新遅れてしまい大変申し訳ございません!

プライベートに時間を割きまくっていたら執筆の時間が取れず(サボっていただけともいう)、こんなに遅くなってしまいました。本当にごめんなさい。

今度からはもう少し更新ペースを上げます!
……と言いたいのですが。実はこれから中間考査と期末考査が始まるため、それに向けた勉強をしなくてはならなくなりまして……
まあつまり、次回も更新が遅くなってしまいます、ということです。待って頂いている方が(万が一)居ましたら本当に申し訳無いのですが、次回の投稿にもお時間をください。こんな作者ですが、見捨てないでいただければ本当に嬉しいです。では、次は第15話でお会いしましょう。
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