テストとかあるので、また遅くなるとは思いますが……どうかこれからもよろしくお願いします……。
「……へぇ、見つけてきたんだ。偉いじゃん。……それで? そいつは今どこに居るの?」
「それが……ある人間に、寄生しておりまして……」
「……じゃあ、その人間はどこ?」
「逃がして……しまいまして……」
「……」
街を襲う怪物『アクサー』を造り出し、人体実験を繰り返している組織『NAHMU』。寿命の近い電灯に照らされている質素な部屋で、NAHMUの首魁と犬童は話をしていた。話題は、少し前にNAHMUから脱走したアクサーのこと。これまでの長い実験の中でも最高傑作と呼べる個体だったのだが、どういうわけかNAHMUから離別し、そのまま行方知れずになってしまったのだ。
NAHMUではこの世のものとは思えないほどに歪な進化を遂げた存在の製造を行なっているが、最新鋭の機械が取り揃えられているような組織ではない。余り物にも似た雑素材を弄り尽くし、人間の身体に生物の能力を無理矢理宛てがっている。
彼らなりの配慮として、実験の被験者には死刑囚がよく選ばれている。百年近く前から存在する警察とのパイプを利用し、効率的に実験台を手に入れているというわけだ。
実験を始めて暫くしてから、NAHMUは他より知能の高いアクサーの製造に成功した。その名は『ウィップアクサー』。かなり長い『腕』のような触肢が特徴的な世界三大奇虫の一匹『ウデムシ』を基に造られた個体で、明確な自我と言葉を発する知能を持って生まれた。
次に誕生したのは『ビネガーアクサー』。ウィップと同じように言葉を発することこそ出来るが、その粗暴な性格が災いしてかあまり活かされているようには思えなかった。
主戦力が完成し、NAHMUの“計画”は順調に進みつつあった。
……が、そこでNAHMUは予想だにしないトラブルに見舞われた───。
京太郎の住まうアパートの一室。少し低い天井の明かりは灯されておらず、空き家かのような雰囲気を醸し出していた。曇天を覗かせる窓を背に、珍しく京太郎の元に直接赴いたビオラが正座を崩さずに口火を切る。
「……ねぇ京太郎、アンタに一体何があったのか……教えて、くれない……?」
「別にお前が心配するようなことじゃねぇよ。今まで通りの戦闘に、ちょ〜っと俺が加わるだけだ。そんな変わりゃしないって」
「……心配とかじゃなくて、ただ気になるだけ。どこで手に入れたのか、どんな力なのか。そういうことが……」
「わーった、分かった分かった。説明すれば良いんだよな? これからするから、耳クソ穿り出してよ〜く聞けよ?」
「……」
「……つっても、俺が説明するよりコイツがやった方が早ぇんだけどな。“アルテン”、起きてるよな?」
〔当然だ。お前より遅起きな奴など居らん〕
「……っ!? 誰!?」
「ん? あ〜……そういや、ビオラには言って無かったっけ……」
突如、オクターブの低い男の声が何処からともなく部屋中に響く。その胡乱な声に動揺したのか、ビオラは少しだけ後退りをした。
「ほら、ビオラが怖がってんじゃねえか。さっさと説明しろよ」
〔仕方がない、か。なら、まずは自己紹介から始めるとしよう。我が名は『アルテン』。又の名を……
……『バナナペストアクサー』〕
「だははははっ! やっぱいつ聞いてもダサすぎるだろその名前! つけた奴のネーミングセンス絶望的すぎるんだがwwwww」
〔笑うなァ! だから『アルテン』と名乗っていると言ってるだろうが!〕
「いやバナナてwwwwwバナナはねーだろwwwww」
〔連呼するなァ!〕
「……ふふっ……バナナ……」
〔貴様もかァァァァ!!〕
古びたアカシアの円卓を叩きながら爆笑する京太郎。自身の名を弄られ憤慨するアルテン。予想外の本名に堪らず吹き出すビオラ。傍目から見れば二人しか居ないはずのその部屋は、やけに混沌としていた。
「……ふう、悪りぃ。説明……っていうか、アルテンの自己紹介の途中だったよな」
〔貴様が盛大に邪魔をしてくれたからな〕
「……。そういえば、『アクサー』とかって言ってなかった? いい加減姿見せなさいよ」
〔生憎と、今の私は体を持ち合わせていない。この男の内部に寄生していて、そこから会話をしている〕
「京太郎に寄生……? どういうこと?」
〔私の能力は二つ。一つは『寄生』。自分とは違う存在に寄生することで、更なる力を引き出せる。もう一つは『感染』。症状が急速に進行する疫病に感染させることが出来る〕
「……アクサーが持ってる能力って、基本的には一つだけじゃないの?」
〔ああ、基本的にはな。私以外のアクサーは一種類の生物を基にしているが故、発揮できる能力は一つに限られる。だが、私は二種類の生物を基に造られたアクサーだ。だからこそ、基の生物二体に準えた能力を具えている〕
「それが……あの、リーガルを溶かして黒い液体にした技の正体?」
〔そうだ。『ペスト』とやらを流行らせた「ケオプスネズミノミ」からきている能力だな〕
「……」
……音が、聞こえる。人間を襲う怪物が闊歩する音が。……気配がする。自分と同じ、些少の闇の気配が。
「……アルテン」
〔分かっている。この女も気付いているだろう〕
「……今気付いた。アクサーが近くまで来てる……。ねぇ京太郎、何で私よりも早く気付けたの……?」
「んなこたどうでもいーんだよ。それより、さっさと現場に行くぞ」
「ちょっ、京太郎!」
一人騒ぐビオラを置き、玄関へと歩き出す。距離はそう離れていないし、一体だけなら5秒で殺せる。……でも、何となく他の気配もする。
(……な〜んか面倒臭ぇことになりそうだな……)
(事態が悪化するよりも早く消せばいい話だ。……そうだろう?)
(だな。急ぐとするか)
勢いよくドアを開け、地面に向かって飛び降りる。高さは3m弱しかないから、着地時の痛みは全くない。
……いや、無いわけじゃないんだろう。他の人間、例えば凱あたりが同じことをすれば、「痛ってえ!」とか叫ぶ場面であるはずだ。だが、今の俺にはそれがない。痛覚が麻痺したとかではなく、こう、何というか……体が純粋に硬くなったような感じだ。アクサーに殴られても、赤子が叩いてきた程度にしか感じなくなった。
強くなれたということだ。今まで傍から戦闘を見守ることしか出来なかった俺が、街を守ってきたビオラの横に立てたということだ。それが凄く嬉しい。でも同時に、元々あった感覚が少しずつ無くなってきてもいる。命に対する価値観だとか、恐怖の感情だとか。ただ、五感とか第六感とかは寧ろ前よりも鋭敏になった気がする。
色々とおかしくなった体にちょっとビビったりはしたが、今はそうでも無くなった。
ビオラの横に立ち、右手となることが出来る。そう考えただけで、暫くは自分の体のことなんか全然気にならなくなるからな。
「グウウウ……!」
怪物───リバースアクサーが唸る。その後ろには大勢のラテラリスアクサーを引き連れており、更にその後ろにはウィップアクサーが佇んでいた。
閑静な住宅街は荒れに荒れ、凄惨な光景が広がっている。辺りには砂埃が舞っており、あまり周囲が見えたものでは無かった。
だが、駆けつけたビオラの瞳は奥で構えているウィップをも捉えていた。厭悪に歪んだ顔でウィップを睥睨しながら、サラマンダーオーブを取り出す。
「…京太郎は一番前にいるあのキモい奴の相手をお願い。…出来る?」
「あたぼうよ。…ちゃんと勝つんだぞ?」
【サラマンダー!】
「……勿論」
【セットアップ!】
【Invade…】
戦闘の決意を交わし合い、ベルトに手をかける。
「「変身!」」
【サモン!】 【Jubilation!】
【フレイアーーーー…サァラマンダーー!!】 【Celebrate! Today is Night's birthday.】
複眼を輝かせ、二人は目標目掛けて駆け出す。
背中から実体化した触肢を出現させ、ラテラリスを蹴散らしつつ仮面ライダークリーチャはリバースに向かって前進する。
「オラよっ!」
リバースの前に立つと同時に軽いジャブを繰り出し、その巨体を仰け反らせた。しかし直ぐにクリーチャに向き直り、その灰色の身体でタックルを繰り出す。クリーチャはそれを右の前腕で受け流し、バックキックを見舞う。攻撃を躱されたリバースは憤慨し、怒声を上げながら感情任せの突撃を始めた。
「グウア……!」
「お、まだ戦る気十分じゃねぇか。良いぜ、とことん付き合ってやらぁ!」
そうして、まだ続く粗暴な抗争は混迷を極めていった。
「はあああああああっっ!!」
「無駄に騒ぐな、姦しい……」
時を同じくして、エルフとウィップアクサーの戦闘。リバースのように理性が少し欠如したエルフの拳が、ウィップに襲い掛かる。が、ウィップはそれを軽くあしらってから前蹴りでエルフをいとも容易く吹き飛ばして見せた。
「ぐっ……!」
歯軋りをしてから、エルフは吹き飛ばされた先の地面に握り拳を力強く叩きつけた。すると、距離があるにも関わらずウィップの足元から躰全体を覆い尽くすほどの火柱が噴き出した。
突然の出来事に些少動揺していたが、ウィップにはあまり効いていないのか、痛がる素振りをまるで見せなかった。
「……ふむ、それほど効果は無いようだな」
「……」
「…………いや、やるしかない……!」
この瞬間、
【サモン!】
【財宝の守護者、今こそその権威を振るい給え! 老獪な守銭奴共を処罰せよ!】
(……駄目、やっぱり……制御できな……!)
【トレジャーーーー…ファヴニーールッ!!】
「……っあぁ〜……起きんのは久々だなァ……」
「……貴様、エルフの女ではないな? 何者だ」
呼び出されたことで眠りから覚めたヴァニラは、簡単にビオラの意識を乗っ取って欠伸と背伸びをする。これに対しウィップは訝しげな感覚を覚え、『ファヴニールスレイヴ』となったエルフに問うた。
それに対するヴァニラの答えは……
「決まってんだろ? 世界最強の、イケメンドラゴン様だよォッッ!!」
自慢げに咆哮しながら、黄金の翼を広げて挨拶代わりの飛び蹴りを放つ。片手で受け止められると侮っていたウィップだったがその蹴りは想像以上の威力があり、地に足を着けたまま大きくノックバックした。
「……何だ、その力は……!?」
「おお、お前みたいなクソカスキモキモ厨二病野郎でも俺様の最強さが分かるのか? やるじゃねぇか。お前のあだ名から『キモ』を一個消してやるよ」
「……舐めた真似を……!」
怒りに震える腕をエルフへと伸ばして頭部を掴み上げ、地面に複数回叩きつける。最後に手を離してエルフを投げ捨てるが、エルフは宙で身体を捻って事なきを得た。エルフは間髪を容れずウィップを指差し、
「おいてめぇこのクソカスキモ厨二病野郎! 危ねぇじゃねぇか! なんてことしてくれやがる!?」
などと宣った。対してウィップは、
「戦場に危ないも何も無い。危機的状況に追いやられたというのなら、その責任はお前にある」
「うっぜぇんだよこのクソカスシモ……クソが! 噛んだじゃねぇか!」
「知るか。お前が勝手に噛んだだけだろう」
「うぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」
エルフの稚拙な発言をウィップが淡々と返す、そんな会話が暫くの間続く。しかしそれも束の間、エルフの背後にビネガーアクサーが突如現れ、拳を振り下ろしてくる。
「オラよォォッ!」
「……当たんねぇんだよな、これが」
「何だッ!?」
エルフへ振り下ろされた拳を止める黒い腕が一つ。その正体は、リバースアクサーを仕留め終えたクリーチャであった。それに気付いたエルフは急に振り返り、掌からその装甲と同じく金色に輝くフランベルジュを出現させ、ビネガーに突き刺す。
「チッ、面倒くせぇ……!」
「おい俺様クズザリガニ、俺様はお前に言っておきたいことがある、だから黙って聞け!」
「ザリガニじゃねぇよ! ビネガロンだよビネガロン!」
「んなのどっちだって良いんだよ!」
「いいや良くねぇ! 俺はビネガ──」
「うるっせぇな! 話進まねぇだろうが空気読め!」
「ンガァッ!?」
自身の話を遮るビネガーに痺れを切らしたのか、エルフはビネガーの顔面にストレートパンチを放つ。突然の攻撃に対応出来なかったビネガーは正面からまともに喰らい、数メートル先まで飛ばされてしまった。
「テメェ……黙って聞けとか抜かして急に殴る奴があるか! ぶっ飛ばすぞゴラァ!」
「その口調だよクソザリガニ!」
「だからザリガニじゃ……」
「てめえのその口調俺様と似すぎなんだよ! これじゃどっちが喋ってるか分かんなくなるだろうが!」
「……は?」
思ってもいなかった内容に、ビネガーは開いた口を塞ぐことが出来なかった。口こそ開けていないが、クリーチャとウィップも思考が完全に停止している。
「今すぐ一人称を『あたし』に変えやがれ! じゃねぇと区別付かねえだろうが!」
「……駄目だわこの馬鹿、意味分かんねぇ。一回俺とウィップがボコしてやんねぇと……」
クリーチャ達の視界の両端からラテラリスアクサーが現れ、一斉に襲い掛かってきた。すぐさま臨戦態勢に移るエルフとクリーチャだったが、ものの数秒でそれを解除することになる。
何故なら─────
【Finish attack】
【Authentication.】
「何ッ……!?」
ウィップが一驚した瞬間、ラテラリスアクサーが一体も残らず吹き飛ぶ。辺りに舞う砂塵が晴れると、その正体が判明した。
「……何故だ、何故貴様が『そちら側』に居る……」
「……犬童託斗ッ!!」
仮面の下で、犬童は不敵な笑みを浮かべた。
2回目になりますが、更新遅れてすみません!(多分次回もこれくらい期間開くかもしれませんが……)
最後の方のヴァニラとビネガーの会話は殆どやっつけです……どうしてもこういうメタ発言させたかったんです! すいません許してください! 何でもしますから!(何でもするとは言ってない)