仮面ライダーエルフ   作:青ずきん

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今回は戦闘描写が雑になってます。
申し訳ないです……


第25話 Spiritー魂魄のケツイ

「はい、あーん」

 

「……なあ、そろそろそれやめねぇか?」

 

「それって?」

 

「その『あーん』に決まってんだろうが! 小っ恥ずかしいんだよ!」

 

「えぇー……いいじゃーん、させてよー」

 

「ぬあああやめろ! 頼むからやめてくれ!」

 

 エルフの里。小鳥の(さえず)りが僅かに耳朶を打ち、心地よいリズムを刻んでいる。

 ビオラと京太郎の二人が頬張っているのはアイスクリームだ。里に来る前に買ってきたレギュラーサイズのもので、味はチョコレート。中に砕かれた板チョコが入っているタイプの人気フレーバーだ。

 

「随分その人間にご執心だな、ビオラ」

 

「あ、アゼル。おひさー。にひひ」

 

「……オイ人間、ビオラになんか余計なこと吹き込んだりしてねぇだろうな?」

 

「するかよ! 俺だって困ってんだから助けやがれ!」

 

「……いつの間にそんなに態度がデカくなったんだ? 人間、えぇ?」

 

 赤髪パーマの男『アゼル・ムノーン』。

 エルフの里がアクサー達に襲われてからというもの、ビオラを本当の妹のように可愛がりながら助け合ってきた青年だ。灰色のパーカーに付けられたポケットに手を突っ込んでいる様と眠たげなジト目から第一印象が悪くなりやすいが、根は優しい兄貴肌である。

 

 しかし、今回はその兄貴肌が悪い方向に作用してしまっているようだ。

 

「おうおう俺より年上の癖してこんなすぐキレんのか? あ、いや、年上だからか? あんまり怒んない方がいいぜ、血圧上がっちまうぞwww」

 

「野郎…………表出ろや、決着付けてやる」

 

「ふたりとも喧嘩しないの! ほらアゼル、私のアイス分けてあげるから怒らない!」

 

「別にキレてねぇよ!」

 

「いやバチクソにキレてて草」

 

「京太郎も煽らない! あーんしてあげるから!」

 

「それが原因なんだよそれがぁ!」

 

「……なんかうるさいね」

「……うるさいね」

 

「……でもおにいちゃん、たのしそう」

「おねえちゃんもたのしそう」

 

 シエラ・トルックス、ティエラ・トルックス姉妹。幼くして家族を失った双子だが、完全には絶望せず希望を持ち続けている。無邪気で天真爛漫な笑顔は、常に里全体も笑顔にさせてきた。

 

「こんな平和な日々がずっと続けばいいんだけどね……」

 

 リセラ・オシカペア。エルフの里の生き残りの中で最年長であり、ビオラ達と同じく家族を失った寡婦(かふ)だ。生き残ったエルフ達を自分の子どものように見ており、強い愛情を注いでいる。

 

 現在のエルフの里は未だ瓦礫が散逸する場所とは思えないほど明るく、そして暖かい世界だ。一年ほど前の襲撃などまるで夢だったかのように笑顔が溢れている。

 いつまでもこうして、みんなと笑いあっていたい。

 ここにいる全員が同じ想いを抱いていた。

 

 程なくして目的を思い出したビオラは突然立ち上がり、皆の方へ向き直った。なんだなんだと、野次馬のような注目を浴びている。

 

「うしたビオラ、なんかあんのか?」

 

「……私、皆に話したいことがあるんだ」

 

「はなしたいこと?」

「どういうこと?」

 

「私は……皆と過ごすこの日常が大好き。ずっとずっと、こんな毎日が続いてほしい。……でも、手放しで喜べるような時でもない。私達にはまだ、この平和を乱そうとしている敵がいる」

 

「『NAHMU』の連中……か」

 

「うん。そろそろ……決着をつける時だと思う」

 

 京太郎が口にした名前に頷きながら、神妙な面持ちで言い切るビオラ。その表情には、さまざまな感情が混じっているようにも見えた。後悔、憤怒、正義感…………。

 決意を固めていたビオラだったが、アゼルの疑問がそれを一瞬揺るがせた。

 

「……だがよビオラ、聞けばその人間の組織にはまだクソ強ぇ奴らが残ってんだろ? 雑魚だって無限に湧くらしいし、正直お前とそこのカス人間だけじゃ厳しくねぇか?」

 

「おいカス人間ってなんだカス人間って」

〔そうだぞ、この男には『アホ人間』という名称が相応しい〕

「うるせぇお前は黙っとけバナナ」

〔その名で呼ぶな! 私にはアルテンという名がある!〕

「どっちでもいいから黙れよ」

 

「……正直、心配してないって、怖くないって言ったら、嘘になる。でも、NAHMU(アイツら)は、この里を滅茶苦茶にして、今も人体実験を繰り返してる。これ以上、それを黙って見過ごすなんてできない」

 

「ま、そういうわけだ。俺もビオラも、必ず勝って帰ってくる。あのクソ野郎共を残らずブッ飛ばしてきてやるぜ」

 

「おにいちゃんかっこいい」

「おにいちゃんいけめーん」

 

「だろ? だろ?」

 

「いやまあ別に横屋京太郎(お前)は帰ってこなくてもいいけどな」

 

「ンだとゴラァ!」

 

「……なんであの二人は喧嘩ばっかりするんだろ」

 

「どっちもビオラちゃんのことを大事に思っているからじゃない? それに、喧嘩するほど仲が良いって聞くし」

 

「……そうかな。うん、そういうことにしとこ」

 

 嘗ての活気をほんの少しだけ取り戻したエルフの里で、二人の戦士が立ち上がった。世界を狂わせる歪みきった悪を滅ぼさんとする、正義の仮面ライダー(ヒーロー)が。

 

 

 エルフの里でのちょっとした激励会から数時間後、暫く各自で自由行動をとった後に集合するということで、ビオラと京太郎は別行動になった。

 決戦は約一日後。それまでに、京太郎には会話をしておきたい人物がいた。

 彼の唯一と言ってもいい友人『石月 凱(いしづき がい)』だ。

 近くの喫茶店に呼び出し、少し苦いコーヒーを啜りながら話を始めた。

 

「……で、こんな急に呼び出した理由は何なんだ? 京太郎」

 

「ああ。それなんだけどな……悪りぃが、明日の講義の代返頼まれてくんねぇか?」

 

「代返? 何でまた?」

 

「……どうしても、外せねぇ用事が出来ちまった」

 

「……成る程、ビオラちゃん関係か」

 

「……! 何でそれを……」

 

「お前の顔を見りゃあ分かる。ビオラちゃん関係以外でお前がそんなバカみてぇに悩むはずはねぇからな」

 

「俺、そんな分かりやすいのか?」

 

「ああ。一回鏡見てみたらどうだ?」

 

 近くのガラスに顔を近づけて自分の顔と睨めっこする京太郎だが、当然自覚することはできない。

 その様子が馬鹿らしく見えたのか、凱は口元を手で押さえながら笑っている。

 

「……お前の代返、頼まれてやってもいいぞ」

 

「本当か!?」

 

「ああ。但し、条件がある。…………絶対に、生きて帰ってこいよ」

 

「……あたぼうよ」

 

 突き合わせた二人の拳は力強い音を奏で、京太郎に勇気と安らぎのようなものを与えた。

 苦かったコーヒーは、いつしかその苦さを失っていた。

 

 

 

「全員、いるよね?」

「問題無いよ」

 

「心配すんなって、大丈夫だ」

〔ああ、今の私達に心配など無用だ〕

 

「緊張なさらず、いつも通り行きましょう。焦っては、彼らの思う壺です」

 

 「……アンタ、今まで一体どこほっつき歩いてたの? おかげで色々と大変だったんだから」

 

「いやあ、申し訳ないですね」

 

「おっしゃあ! 遂にここまで来たぜ!」

「ピクニックに来たんじゃないんだから、あんまり(はしゃ)ぎすぎちゃだめよ〜?」

「うう……やっぱり怖い……」

「大分足腰が疲れてきたのう、早めに終わらせるか」

「オイ! ちゃんと暴れさせてくれるんだろうな!? オイ!」

 

 暗色の外壁とパイプに包まれた工場のような建造物。

 非道な人体実験を繰り返してきた組織『NAHMU』の総本山と思われる建物の前に、二人の人間とひとりのエルフ、五体の精霊と一匹の龍が集まっている。

 

 一見まるで統率が取れていないようにも見えるが、『目の前の組織を滅ぼして平和を守る』という思いだけは(約一名を除き)共通している。曇天だった空も、いつしか日の光を見せ始めてきた。

 

「それじゃあ皆……行くよ」

 

 大仰な門を開いたその瞬間から、戦いの火蓋は切って落とされた。

 本物のゴキブリのように湧いて出てきたラテラリスアクサーが一斉に襲いかかってくる。「容赦」という言葉など最初から存在しなかったかのような数の暴力が、無慈悲に駆け出す。

 

「……メロノ」

「あいわかった」

 

【ノーム!】

【セットアップ!】

 

【Transform】

 

【Invade……】

 

 しかし、それに屈するビオラ達ではない。幾多の戦闘を切り抜けてきたその姿には、一縷(いちる)の動揺も見られなかった。

 ビオラに続いて京太郎達も続々とベルトを巻き、戦闘態勢を整える。全員の双眸(そうぼう)は、ラテラリスを冷ややかに捉えていた。

 

「「「変身!」」」

 

【サモン!】

 

【Authentication.】

 

【Jubilation!】

 

 

【地底の技王、英名なる神の腕の下に参集されたし! 天地不可逆の理を覆せ!】

【ガイアーーーー……ノーームッ!!】

 

【Now loading……】

【Humanity will continue to evolve from now on.】

 

【Celebrate! Today is Night's birthday.】

 

「皆、行くよッ!」

 

 仮面ライダーエルフとなったビオラの声を皮切りに、ライダー陣営はラテラリスアクサーの群れへの突撃を開始した。

 

 先頭に立つエルフが地面からせり出す土塊でラテラリス達を吹き飛ばし、クリーチャがそれを黒く太い触肢で薙ぎ払う。更に、残った分をヒューマが片すという連携でラテラリスアクサーを次々と蹂躙していく。

 

 戦闘開始時と比べてラテラリスが1/3ほどに減った頃、漸く入り口である扉がエルフ達の視界に入った。だが、そこでラテラリスの増援が現れてその道を塞ぐ。なんとしても、この先を進ませる気はないようだ。

 

「……こんまま()りあってても埒が明かねぇ。俺らが抑えとくから、お前ら二人で先に行っててくれ」

 

「京太郎っ!?」

 

「……案内をします、着いて来てください」

 

「ちょっ、アンタ何処行って……こら、待ちなさい!」

 

 慌てて追いかけるビオラと、淡々と前へ進んで行くヒューマ。どちらにも、不吉なまでの焦りが見える。少しばかりの不安を胸に抱きながら、クリーチャはラテラリスの殲滅を続けた。

 

 

 

 『NAHMU』の拠点内部は、いやに暑苦しかった。

 辺りのパイプから漏れ出ている蒸気と金網の床が耳朶を打つ。どこもかしこもオレンジ一色で、変わり映えのない景色が暫く続いた。

 数分ほど走り続けたところで、(ようや)く景色に変化が見られた。

 

 だが、それは良い意味での変化とは言えないものであった。

 

「よお、久しぶりだな。こんなとこまで何しに来たんだ?」

 

「……ビネガー」

 

 奥へと続く巨大な鉄の扉の前。

 二人の前にその姿を見せたのは、幹部怪人の一体『ビネガーアクサー』だ。

 いつもの調子で語りかけてくる姿には、エルフとヒューマの二人と対峙しても尚怯えが見られなかった。それどころか、今にも動きたくて仕方がないように全身を震わせている。

 

態々(わざわざ)質問するような事でもないでしょう?」

 

「そうだなァ。そう言われりゃあ理由なんかどうでもよくなってくるな。……要するに、お前らと全力で戦えるって事だろ?」

 

「アンタでも分かるように言えばそうかもね」

 

「馬鹿にしてんのかゴラァ!? ……決めたぜ。まずはエルフのクソガキからだ。テメェからぶっ潰す」

 

 エルフの安い挑発に乗せられ、ビネガーは構えを取る。同様に、エルフとヒューマも戦闘態勢に移行。間もなく戦いの幕が上がると思われたその状況は、ふと外から聞こえてきた悲鳴によって暗転した。

 

「なにっ!?」

 

「……ああ、そういや忘れてたわ。……入り口にラテラリスの群勢が居たろ? 門番代わりに常駐させてんだけどな。アイツらがちょいと時間を稼いでる間に、何体かアクサーを街に放ったんだよ」

 

「ッ!」

 

「いやァ、中々にベストタイミングだったんだぜ? お前らが本拠地(こっち)に集まってくれてっから、街が手薄なんだよな。なんか一人足りねぇみてェだが、万一アイツが対処に向かったとしても一人じゃきちィだろうな!」

 

「犬童! 私達も戻って───」

 

 危機的状況に陥っている事を知ったビオラは踵を返そうと後ろに振り向くが、ビネガーが酸性の液体を飛ばすことでそれを阻む。

 ……心の中の焦りが、一段と強くなる。

 

「させっかよ。それに、戻っても無駄だぜ? ウチのシステムは優秀だからな。ウチらのボスんとこにある制御装置を何とかしねぇ限り、永遠にアクサーが放たれ続ける。こうやってゆっくりお喋りしてる間にもどんどんアクサーが生まれては街に向かってるぜェ? クハハハッ!」

 

「コイツッ……!」

 

「焦らないで、ビオラ」

 

「っ! ウィル……」

 

「ここは僕が引き受けよう。ビオラ達は奥に向かって」

 

「ッ!?」

 

 仮面の下で苦虫を噛み潰したような表情をするビオラを抑えたのは、ビオラの体内から音もなく抜け出たウィルだった。穏やかな口調で、諭すように語りかける。

 一方のビオラは、納得できないという様子だ。

 

「大丈夫、僕だって何の策も無いわけじゃない。安心していいから、先に行きなよ」

 

「安心なんかできるわけないでしょ!? ウィルは私の────」

 

 

「行けっつってんだろ。駄々()ねないで言うこと聞けよ」

 

 

「……!」

 

 初めてだった。

 今まで聞いたことのない、ウィルの怒声。先程までの穏やかな口調が脳に刻まれているせいか、異常なまでの恐怖が走る。

 

 自身の恫喝(どうかつ)にも似た諭しに怯えるビオラを見て我に返ると、ウィルはいつもの口調に戻して再度説得を試みた。

 

「……まあとにかく、ここは僕がやるよ。ビオラと犬童は先に行きな」

 

「……行きますよ、ビオラさん」

 

「…………」

 

「オイコラ、俺を無視してんじゃねェ!」

 

「二人の邪魔はさせないよ」

 

 人魂の状態のままウィルは光弾をビネガーの足元へ撃ち、その足を無理矢理止めさせた。その隙をつき、ヒューマはエルフの手を引きながら扉を乱暴に破って奥へと進んだ。

 

「……やってくれやがったな、このオバケ野郎」

 

「オバケじゃないよ。正式には『ウィル・オー・ウィスプ』。一応、光の精霊なんだ」

 

「どっちでもいいそんなモン! とにかく、今から俺はお前をぶっ飛ばす。何にも出来ねェとは思うが、精々死なねェようにな」

 

「うーん……それ、僕のセリフなんだけど。盗らないでくれるかな?」

 

「は? お前が? 俺を? ぶっ飛ばす? ありえねェって、冗談キツいぜ」

 

「まぁ、()()姿()()()()なら、そう思うだろうね」

 

 そう言うと、ウィルの身体は上下に伸びて人型となった。腰を超えるほどの銀色の長髪に、少女然とした顔つき。鼠色のパーカーとジーンズは、どことなく出不精を感じさせる。

 突然の変貌でビネガーが眼を見開いたのも束の間、ウィルは不慣れな手つきで腰に()()()()()()()()()()()()()()

 

「おお、よしよし。ちゃんと出たね」

 

「……は? 何だよそれ、あのエルフのガキの……」

 

「うん、ビオラのやつと一緒だね」

 

「なんで、お前が……」

 

「え、もしかしてビオラしか使えないと思ってたの?」

 

「んなこた知るかよ! テメェ、前に住処を襲った時に出張って来なかったじゃねェか!」

 

「まぁ〜あの時はすごく病んじゃったからね。でも、そんな状況でもビオラは立ち上がったんだ。だから、僕もただ近くで応援するだけじゃ申し訳ないなーって思ってさ。ちょっと、リハビリしてきた」

 

 驚きの連続で動揺するビネガーを更に驚かせるように、ウィルは自身の左胸部に手を突っ込む。ウィルの身体は液体のように滑らかに形を変え、その右手に白い球体を握らせた。

 

【ウィル・オー・ウィスプ!】

【セットアップ!】

 

「……変身」

 

【サモン!】

 

【ウィルオーー……ウィスプッッ!!】

 

 

「……さて、改めて自己紹介をしようか。僕は『仮面ライダーウィスプ』。今から君を倒す、とある惨めな精霊だ」

 




ええ、承知しております。今回は非常〜に雑な回になってしまいました。
申し訳ないです。が、そんな泣きっ面に蜂が刺してくるような出来事がありまして。

実は当方、テストが控えておるのです。。次回の投稿も遅くなる見込みです。
まあテスト勉強一切してないんですけどね初見さん。
ほんとの事言うと、最近(約二ヶ月)リリースされた音ゲーにハマってました。

割と忙しくなりそうな気はしますが、可及的速やかに投稿できるよう尽力しますので、よければ次回もよろしくお願いします。

仮面ライダーエルフ 最終話まで───

────残り4話
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