仮面ライダーエルフ   作:青ずきん

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またもや遅れてしまい申し訳ありません。
言い訳は後書きでさせていただきます。


第26話 Re:Spiritー人魂状の光の精霊(ウィル・オー・ウィスプ)

「仮面ライダー……ウィスプ、だと?」

 

「そ。まぁ、名付けたのは今なんだけどね」

 

 重厚な扉の前で対峙する二人の戦士。余裕そうな仮面ライダーウィスプと、若干の焦りを見せるビネガーアクサー。

 

 先に仕掛けたのはビネガーの方だった。目にも止まらぬ速さで接近し、無数の攻撃を叩き込む。ウィスプはというと、ギリギリのところで攻撃を受け止め、その後の猛攻もなんとか凌いでいた。

 

「いきなり攻撃してこないでくれよ、危ないだろう?」

 

「はんッ! 全部防ぎきった奴がよく言うじゃねぇか」

 

「いやいや、結構ギリギリだったよ? 僕動体視力あんまりよくないし、もうちょっと遅めに動いてくれると助かるな」

 

「『はいわかりました』って手加減するとでも思ってんのかコラァ!」

 

「ま、そんなうまくいかないよねー」

 

 ビネガーの攻撃は更に激しさを増した。特定の箇所を狙っている訳ではなく、とにかく当たればいいと思っているかのような攻撃だ。

 スピードも甚だしい上に防御する場所もあまり掴めず、ウィスプは数発だけ喰らってしまった。それをチャンスと捉えたのか、ビネガーはウィスプに尻尾を向けて酢酸を噴出した。

 

 ほんの一瞬───生存本能のようなものがはたらき、ウィスプは跳び上がることで酢酸を回避することに成功した。金網の床に付着した酢酸は恐ろしい速度で金網を溶かしている。血の気が引くような感情を覚えながらも、再びウィスプはビネガーに向かって自身を繰り出す。

 

 上段回し蹴りからソバットへと繋ぎ、ストレートパンチでダメージを与えつつ距離を離して光弾による遠距離攻撃をかます。反撃のタイミングを失ったために、今度は逆にビネガーの方が防戦一方となった。

 

「チッ……この野郎!」

 

「おっと危ない。怒りに身を任せていると動きが単調になるよ? 前までのビオラみたいに」

 

「あのクソアマと一緒にするな!」

 

「家族を奪った君達を相手に、泣きそうなぐらいの怒り顔だったよね、ビオラ。そんなビオラに色々ひどいこと言って煽ってたろ? それに対するささやかな仕返しとでも思ってくれればいいよ」

 

「……ナメた真似しやがって!」

 

 ビネガーは再び酢酸を噴出するが、直線的に発射されたそれはいとも容易く避けられてしまい、背後に回ったウィスプのハイキックを受ける。そのダメージは大きく、ビネガーを軽く怯ませるに至った。

 

 次いで人魂状の弾をいくつか浮かせ、多角的な攻撃を実現させた。正面からはウィスプ自身が戦闘を行い、側面・背面からは人魂状の弾が襲いかかるため、ビネガーは対処に苦労しているようだ。

 

「クソがッ!」

 

「地に足着けたままだと自由度少なそうだし、空でも飛んでみる? 天井も高いし気持ちいいと思うよ?」

 

「はっ!?」

 

 急加速してビネガーの胸ぐらを掴むと、ウィスプは垂直に上昇しつつ拳打を加える。そのまま宙を旋回し、随所に張り巡らされたパイプに叩きつけながらビネガーを弄ぶ。

 ビネガー自身には飛行能力がないため、自由に飛べるウィスプとは異なりうまく戦えていない。これまでの彼の姿からは想像もつかないほど調子が悪く、また珍妙だった。

 

「よっと。空を飛んでみた感想はある? 楽しかった?」

 

「……テメェ、マジで良い加減にしとけよ」

 

「君と僕とじゃ感覚が違うし、『良い加減』って言われてもあんまりよく分からないんだよね。もうちょっと具体的に教えてもらえるかな?」

 

「テメェのそういう所だよッ!」

 

 力任せに殴ってきたビネガーの拳を、ウィスプは片腕で受け止めてみせた。が、それは軽々というわけではなく、拮抗しているのだと傍から見ても分かるようなものだった。

 少しずつ、少しずつ。自身の力が薄れていくのを、ウィスプは感じ取っていた。口調にも声色にも出さないが、その心には僅かな焦りが覗いている。

 そして遂に、ウィスプが若干押されはじめた。

 

 

 

 

「……ねぇ犬童、アンタ先に行っててくれない? 私、やっぱりウィルが心配。ちょっと戻ってくる」

 

 ウィルの援助により先を急いでいたエルフとヒューマだったが、突然エルフがその足を止めた。心の中の憂いが拭いきれず、来た道を戻るというのだ。

 しかし、こうしている間にも建物の外ではアクサーが湧き続けている。その対処に当たっているクリーチャにも何れ限界が訪れるため、可及的速やかに制御装置を抑えないといけない。

 

「あまり時間を掛けすぎないのが吉です。それに、私達の中で此処の構造を知っているのは私だけです。迷子になってもらっては困ります」

 

「じゃあウィルを見捨てろって言うの!?」

 

「そうは言っていません。それに、彼も無策で私達を先に向かわせたわけではありません」

 

「じゃあどんな手があるって言うの?」

 

「…………エルフドライバーです」

 

「……は?」

 

「エルフドライバーを使用し、仮面ライダーとなって迎え打つんです。仮面ライダー、ウィスプとなって」

 

「……何それ、聞いたことないんだけど」

 

「でしょうね。本当は、私も口止めされていたんです。彼から、『ビオラには絶対に言わないでほしい』、と」

 

「……なんで……そんなこと……」

 

「自身の命を削る変身だからです。強大な力の代償、でしょうか」

 

「……!」

 

 絶句した。

 ウィルが自分に黙って、勝手に命に関わるような真似をしたこと。そして、犬童がそれに加担したこと。

 まともな整理のなされていないエルフの思考を占めたのは、怒りの感情だった。

 

「アンタ……それを知ってたの!? 知ってて、私に黙ってたの!?」

 

「少し前から、ウィルさんがビオラさんの前に現れる機会が少なくなっていたこと、ご存知でしょうか。あの間、ウィルさんは私を巻き込んで特訓をしていました。『リハビリ』、と言ってましたね」

 

「……」

 

「以前にも使用したことがあるそうですが、それも随分昔の話らしくって。また急に使うと負担がひどくなるらしく、それを軽減するために毎日特訓をしていました。『命に関わるって知ると絶対止めてくるだろうから、ビオラには言わないでほしい』とも、言っていました」

 

「……ふざけないでよ、なんでアンタは止めなかったの!?」

 

「……他でもないウィルさん自身の意思だったからです。ウィルさんは、普通の少女として生きるはずだった貴女を戦わせることに、負い目を感じていました。だからこそ、自分が何もしないわけにはいかない、と」

 

「そんな……」

 

「……少し喋りすぎました。急ぎましょう」

 

 悔しさの混じったような声で急かすヒューマに、エルフは力なく步を再度進めた。

 

 

 

「クッソ、次から次へと湧いてきやがる……マジでコイツら面倒臭ぇんだけど……」

 

〔そう腐るな。私は楽しいぞ? 中々に血湧き肉躍る戦だ〕

 

「お前はそうでも俺はそうじゃねぇんだよクソ野郎……!」

 

〔キツくなったら代わるんだぞ〕

 

「結局使われるのは俺の身体なんだから意味ねーんだよタコ!」

 

 NAHMUの本拠地の前では、未だにクリーチャがアクサーの群勢と格闘していた。戦況は五分五分、あるいはほんの少し優勢と言ったところか。

 

 量産型であるラテラリスだけだったアクサー達の中には、いつかその姿を見た別のアクサーも混じってきている。純粋に殴れば済むラテラリスとは違い、相手の能力も考慮した戦闘を行わなければならないという状況は、変身者である京太郎を疲労させるのに充分すぎるものだった。

 

「あっオイてめぇ! 待ちやがれこの!」

 

 その時、一体のアクサーがクリーチャの横をすり抜け、街へと向かって行った。その事に気付いた頃にはすでにかなりの距離が開いており、懸命に伸ばした触肢も僅かに届かなかった。

 

 焦るクリーチャを他所に、アクサー達は次々と数を増やしていく。そして、その間にもクリーチャを突破したアクサーは街の方へと急いでいる。エルフやヒューマを追いかける大量のアクサーか、街へと向かったアクサーか。二者択一を迫られたクリーチャは、はやる胸の鼓動を必死に抑えながら一つの答えを出した。

 

「一分でアイツを片付ける! 行くぞアルテン!」

 

〔……承知した〕

 

 勢いよく飛び出し、猛スピードでアクサーを追跡する。

 アクサーの姿を視界に捉えた頃、アクサーはちょうど民間人を襲いかけていた。怪人の姿に動揺して叫喚する人々の海をギリギリで避け、クリーチャはアクサーにその鉄鎚のような拳を叩きつける。

 

「なんだ、何が……!?」

 

「……ギリセーフか。早く逃げろ! コイツは俺が!」

 

「仮面……ライダー……?」

 

「ああそうだ! さっさと逃げねぇとコイツに……んにゃろう!」

 

 ヒーローの名を口にする人々を急かし、クリーチャはアクサーを殴り飛ばす。次いで触肢を叩きつけ、目標通り一分以内にアクサーを倒すことに成功した。更にアクサーが溢れることを想定し、クリーチャは忙しなくNAHMUの本拠地へと戻っていく。

 時間にしてほんの数十秒ではあるが、その勇姿は街にごった返す人々の目に強く焼きついただろう。

 

 

 

「……さて、そろそろおしまいにしようか。僕も疲れてきたし」

 

 一方、仮面ライダーウィスプはビネガーアクサーをあと一息というところまで追い詰めていた。弱々しく立つビネガーは文字通り虫の息で、そよ風でも吹こうものなら数秒も経たず倒れそうだ。

 

「ハァ……テメェ……ナメたこと……抜かしてんじゃ……ねェぞコラ……」

 

「息をするのも辛そうだね。一思いにやるとしよう」

 

 か細く呼吸を続けながらも悪態をつくビネガー。その様子を認めたウィスプは最後の一撃を放つため、ドライバーの操作を始める。

 しかし、それを妨害するためにビネガーは酢酸を噴出した。最後の抵抗と言わんばかりの、強烈な攻撃だった。

 あらゆる物を溶かすその強酸性の液体は、ウィスプ自身とドライバーに深刻なダメージを与えるのに成功した。激しい痛みと熱が患部を蝕んでいく。

 

「づッ……!?」

 

「やっとこさやられてくれたなァ! このクソ野郎!」

 

「……まだだっ!」

 

「ガァッ!?」

 

 ウィスプが痛みに呻く姿を認めたビネガーは、水を得た魚のように勢いを取り戻して再びウィスプに襲い掛かる。一瞬反応が遅れたもののウィスプはギリギリで攻撃を受け止め、前蹴りでビネガーとの距離を離した。

 まだ痛みが走る身体を無理矢理動かし、ウィスプは今度こそ最後の一撃の準備に入る。

 

【カモン! ウィルオー! スピリチュアル!】

 

「はあああああっっ!!!」

 

 飛び上がって右足を突き出し、ビネガーに全力のライダーキックを放つ。白い炎のようなオーラが全身を包み込んでその威力を増大させ、眼前の敵を滅ぼさんとする蹴りがその怪人の身体を貫いた。

 

「ぐああッ、ああッ、ハァ……ここまでかよ……クソッ……遊び……足りねェよ……」

 

 その言葉を残し、ビネガーアクサーは膝から崩れ落ちて爆散した。辺りには耳を(つんざ)きそうな爆音が響き、いくつもの設備を破壊していく。

 

「……ここは崩れ落ちそうだね。早めに移動しよう」

 

 天井から落ちてきた鉄塊が道を塞ぎ始めた頃、危機を感じてウィスプは先に進むために足を動かした。

 誰も居なくなった後、その道は完全に閉ざされた。

 

 

 

「……! 今の音……!」

 

「ウィルさん達の戦いに決着が着いたのだと思われます。ウィルさんに勝っていてほしい所ではありますが……」

 

 仮面ライダーウィスプの援助を受けて一足先に奥へと進んでいた仮面ライダーエルフ・仮面ライダーヒューマの両名は、アクサーを濫造する制御装置の存在する部屋の前まで来ていた。

 ヒューマの案内は的確で、迷う事なく到着出来たがその道程はかなり複雑であった。時折見失いそうになりながらも漸く到着した事実に、エルフは既にそこそこの疲労が溜まっている。

 

 そんな二人の耳に届いたのは、ビネガーアクサーが爆発四散して散る音だった。もちろん、二人はどちらが勝ったのかなど知る由もない。二人に出来るのは、ウィスプが勝利しているよう祈ることだけだ。

 

「……それより、我々は先に進みましょう。この扉の奥に制御装置があります」

 

「早く潰して、京太郎を助けないと……」

 

 分厚い鉄製の扉に、いくつもの認証。生体認証からワンタイムパスワードまで、さまざまな認証が開錠を拒んでいる。ヒューマは一旦変身を解いてから全ての認証に対応し、遂にその扉を開くことに成功した。

 

「……開きました。では、中に……」

 

「……待って、中に誰か居る!」

 

 先に進もうとする犬童を止めたのはエルフだった。その制止を受けて立ち止まった犬童は、一人の人物をその視界に映した。

 暗がりで無機質な部屋に、嫌になる程の存在感を示す男が一人。

 部屋の薄暗さに溶け込むような黒スーツを身に付けていたが、犬童にはその人物が何者なのかがすぐに分かった。

 

制御室(こんなところ)に何の用だい? 犬童託斗くん。それに、エルフのお嬢ちゃん」

 

「……犬童、あいつ誰?」

 

 

 

 

「……(くろがね) 雪人(ゆきと)。“異種族殲滅組織”『NAHMU』の首魁(しゅかい)です」

 




まず、二ヶ月以上もお待たせしてしまい大変申し訳ありません。毎回謝罪していて反省の色が見られない気がされると思いますが、これからは最低でも月一で更新していきたいなと思っていますので、どうかよろしくお願いします。

肝心の理由ですが…………ハイ、音ゲーにハマってました。具体的には、ダンカグ・プロセカ・フィグロスの3つをやってました。だって楽しいんだもん……

試験があるため更新が危ぶまれる1月ですが、なんとか月一更新したいと思っています。個人的にも3月までには終わらせたい……!

仮面ライダーエルフ 最終話まで───

────残り3話
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