ラスト2話、よろしくお願いします。
「ビオラッッ!!」
仮面ライダークリーチャ/横屋京太郎の叫びが辺りに響き渡る。
だが、声を上げていないだけで仮面ライダーエルフを除く他のライダー達も心の内で驚愕していた。いの一番にクリーチャがエルフの元へと駆け出し、ウィスプ、ヒューマもそれぞれエルフへと駆け寄った。
が、しかし。
「……痛ってぇな、加減しろよテメー」
「「えっ?」」
「……手加減したつもりはないんだがね。何故生きているんだい?」
クリーチャとヒューマが更に驚愕する中、左半身だけとなったはずのエルフが
ものの数秒で完全に身体が戻ると、エルフはそのわけの説明を始める。
「トカゲの尻尾はブッ千切れても再生するだろ? それとおんなじ理論だよ
「お前……サララか?」
「そうだよ、今ビオラに代わるわ」
声の主は火の精霊・サララだった。京太郎の質問に冷静に答えると、サララはその身体をビオラへと譲る。
「……あー危なかった。サララの力がなかったら完全に死んでた」
「ビオラか? 無事か?」
「うん、無事無事。ていうか京太郎知らない? サラマンダーって火を食べて再生するんだよ」
「知らねぇよンなモン……つーかさっきのアレ、火ぃ出てたか? 全く見えなかったけど……」
「まーちゃんと再生できるように飛び散る前に残さず食べさせたからね」
会話もそこそこに、再び四人はメガアクサーの方へと向き直った。依然としてその姿は巨大で、形容し難い圧を感じさせる。
「おっしゃ! んじゃあまずは俺らから!」
戦いの火蓋を切って落としたのはクリーチャだった。メガアクサーの元へ疾駆してから伸ばした触肢でメガアクサーの翅を貫く。しかし大したダメージにはなっておらず、事も無げなメガアクサーの翅の一振りによって縮めた距離を再び離されてしまった。
「マジか……そんな効いてる感じがしねぇ……」
「蚊が血を吸っているとして、その姿を見ない、もしくは腫れるまでは痛みに気付かない。君にも覚えがあるんじゃないかな? そんな感じだよ」
「……舐めてんなこの野郎」
「落ち着いて京太郎。奴を囲むように広がって多角的に責めて。数的有利を生かす感じで……ほら犬童も動いて」
ファヴニールスレイヴへと姿を変えつつエルフは全員に指示を出す。それとなくエルフの思考を読んで動いていたウィスプを除き、それぞれ正四角形になるように動いてメガアクサーを囲んだ。
的は分散したが、メガアクサーに不都合は一切ない。その巨体を生かした広範囲攻撃は、周囲に幾つものクレーターを作り出す。ライダー達はギリギリでそれを回避し、一斉にメガアクサーへの攻撃を始める。
「ハアッ!」
主に狙われたのは翅の付け根だ。エルフは線対称に枝刃の付いた剣を振り下ろし、その翅を斬る。しかし、斬れたのはほんの数センチだけ。儚げな見てくれに合わず、その身体はかなり硬い。
四人の中で唯一翅に狙いを定めたクリーチャは、背中から複数の触肢を出しながら特攻し、その翅を貫くことに成功した。幸い、翅自体は薄く比較的破れやすいようだ。
「……やるね。でも、所詮はその程度。微々たるものだし、特別気にするほどでもないね」
軽くあしらうように言い放つと、メガアクサーはその場で回転しながら辺りに鱗粉を撒き散らした。数えきれない鱗粉の一つ一つが爆発し、周囲に爆音を響かせる。
「まずっ……」
「犬童っ!」
爆発に巻き込まれそうになったヒューマを間一髪で助けたのは、意外にもウィスプだった。若干の驚きを見せながらも、ヒューマは態勢を立て直してメガアクサーに向き直る。
「……助かります」
「別にいいよ」
そう淡白に返すと、ウィスプは再びメガアクサーの元へと飛び立っていく。
その身体から僅かに粒子が漏れていることに初めて気付いたのは、ヒューマだった。
その後も、変わらず拮抗状態が続きエルフ達は苦戦していた。攻撃はしっかり命中しているはずなのだが、致命傷を与えるに至っていない。一進一退の攻防が続く中で、少しずつ体力は削られている。
「割と耐えているね。君達が僕の同志だったら良かったのに……」
「ハア……死んでも御免だぜ、お前みたいなクソリーダーに付いていくなんてな……!」
「……大丈夫、言ってみただけさ」
双方とも体勢を整えて、再び戦いの火蓋が切られたと思われたその時。
「……ッ!」
唐突に、ウィスプが片膝を突いてその場に
「ビオラッ!」
「……! 京太郎!」
「いいからウィルんとこ行け! 速く!」
気付く様子のないエルフに代わって、クリーチャがその攻撃を受けた。
エルフは自身が攻撃されようとしていたこと、その攻撃をクリーチャが庇ったことに気付き一瞬動揺したが、クリーチャは構わずウィスプの元へ駆け付けるよう促す。
「ウィル! ウィルっ!」
「……何も問題はないよ、戦闘に戻ろう」
「嘘つかないで! 無理しないでよ!」
「無理なんかしてないさ。それよりも戦線に復帰、しない、と……ッ!」
「ウィルっ!」
「ビオラさんッ! ウィルさんに無理させないでください! 此奴は僕らで対処します!」
「随分と余裕そうだね」
戦闘に戻ろうとするウィスプをエルフに止めさせ、メガアクサーの攻撃を防ぐ。
好機を逃すまいとするメガアクサーの攻撃は依然として激しく、ヒューマとクリーチャは苦戦を強いられている。時折ウィスプに呼び掛けるエルフを狙った攻撃も混じり、対処は困難なようにも思われた。しかし、その攻撃はエルフ達の元へは一度として届かなかった。それは、何としても二人の邪魔をさせまいと奮戦するヒューマとクリーチャの努力による結果だ。
未だ抑えられない動揺を胸にしまいつつ、エルフは呼び掛けを続ける。
「これ以上は無理だよ! お願いだから……っ!?」
「……もう、大分限界が来てるっぽいね」
遂に、誰の目から見ても分かるほどにウィスプは身体から淡く光る粒子を放ち始めた。ほんの僅かに、ウィスプ自身の身体も透明化している。
「……ねぇ、ウィル……犬童から聞いた。命を削る……変身、って」
「……それ喋るべきじゃなかったなあ。口軽いんだねぇ、犬童」
「そんなのどうでもいい。それよりも今は……ちょっと!」
先程までは片膝を突いていたウィスプだったが、その体力すら失い、地面に倒れ込んでしまった。
仰向けに身を投げ出し、何もかもを諦めたような声色で呟きを始める。
「……今年で1368年。随分長いこと生きてきたけど、やっぱり今年が一番濃い一年だったなあ」
「……なんで、なんでそんな……遺言みたいなこと言うの……?」
「今日という日、ビオラと、京太郎と……あと、犬童と過ごしてきた日々。すっごく楽しかったよ」
「……もう喋らないでっ!」
「お別れだね……ビオラ。でも、君はもう僕が居なくても大丈夫。京太郎達が、ビオラを成長させてくれてる。それをちゃんと知ることが出来たから」
「お願いだから喋らないでよ!!」
「君の『正義』が、君らしくなったから」
「お願いだからぁ!!!」
「今日はそんな……最高の、一日になったから」
「ウィルっっっ!!!」
「じゃあね、ビオラ」
「───────!!」
その瞬間、ウィスプの身体は淡く光って霧散した。亡骸は一片も残らず、そこに在ったのはウィルが使用していた『ウィル・オー・ウィスプオーブ』のみであった。
「ウィルっ……うぃるぅぅ……!!」
仮面に隠れている為表情こそ伺えないが、少女の内にある感情は間違いなく悲哀に支配されていた。
行き場を失った嗚咽が虚しく空に響く。
とめどない涙が頬を伝い流れる。
オーブは何も喋らない。喋っては、くれない。肩を抱く相手も、優しく慰める相手も、今はどこにもいない。戦火の中の少女に、情けは何一つとして与えられなかった。
「ウィルッ!?」
「ウィルさん……!」
「本当に君達には緊張感というものがないねぇ」
ウィルが消滅したことなど気にも留めず、容赦なくヒューマとクリーチャへと鱗粉を飛ばしては爆発させる。ウィルの方へと振り向いていた二人は対処が遅れてしまい、爆撃をモロに受けてしまった。
共に地面に叩きつけられてしまったのもあり、かなりの大ダメージを受けている。
「クッソ……! ビオラ、しっかり───」
「ふふっ………………ごめんね。いつまでもこんなのじゃ、駄目だよね…………」
「ビオラ……?」
「ちゃんと……ウィルの分まで、頑張らなきゃ……」
変身を解き、ビオラは泣きはらしたような顔を晒した。深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、未だ視界を滲ませる涙を軽く拭い、ウィル・オー・ウィスプオーブを力強く掴んだ。
「ウィルの為にも…………アンタだけは絶対倒す」
【ウィル・オー・ウィスプ!】
【セットアップ!】
「…………変身ッ!」
【サモン!】
【ウィルオーー……ウィスプッッ!!】
透明度の高い鬼火のようなモノをその身に宿し、『仮面ライダーエルフ ウィル・オー・ウィスプ』は誕生した。
燃え盛るように揺らめく白い複眼と頭部はさながら『ウィル・オー・ウィスプ』そのもののようであり、同じく燃えるような意匠の胸部・腕部装甲は亡きウィルを想起させる見た目となっている。
ドライバーに収まっているウィル・オー・ウィスプオーブは頭部と同じように揺らめいており、全体的に闘志と儚さを感じさせる異様な雰囲気を醸し出していた。
「ビオラさん……素晴らしいです! 完璧です! 結婚してください!」
「もうこの際
「もちろんッ!」
その姿に感嘆しつつも、エルフとクリーチャは共にメガアクサーに向かって駆け出す。しかし、エルフの方がクリーチャよりも圧倒的に速くメガアクサーの元へ辿り着き、その翅の大部分を貫いた。
「グッ……!? 何だ、火事場の馬鹿力とでも言うつもりなのか……!?」
勢いをそのままに、エルフはメガアクサーの周囲を旋回しながら次々と攻撃を叩き込んでいく。これまでは翅以外にあまり通用していなかった攻撃も、みるみるうちにメガアクサーの身体を削っていく。
メガアクサーが自身の巨体を振るって反撃しようとするも、エルフは周囲に鬼火のような弾を浮かせて攻撃、メガアクサーの反撃を許さない。
「このッ……!」
「焦ってるわね」
幾度となくエルフ達を苦しめてきた爆発する鱗粉も、エルフは踊るように避けてしまう。ここでクリーチャ・ヒューマが追いついてエルフと同時に胸部に蹴りを叩き込み、大きく距離を離すことができた。
「犬童! 京太郎! トドメ刺すよ!」
「はい!」
「了解!」
【ウィル・オー・ウィスプ!】【カモン! スピリッツ! スピリチュアル!】
【Finish attack】【Authentication.】
【The kill time!】【Dead end.】
三人は夜になりかけている薄暗い空へと跳び上がり、
先にヒューマとクリーチャが交差するようにメガアクサーを貫いてダメージを与え、最後にエルフがその傷痕に追撃する。
「ハアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!」
「まだだッッ……まだ……終わってたまるかァァァッ……!!」
枯葉のように朽ち果て、色も美しさも失った哀れな翅に力を入れながら必死の抵抗をするメガアクサー。しかし、僅かに込めた力が弱まった隙にエルフの蹴りが
「ッッグアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッ!!!!!!!」
轟音を響かせながらメガアクサーは爆散し、その儚い命を散らした。キラキラと光る粒子が雨のように降り注ぎ、暗色の空を僅かに照らしている。
「勝っ…………た?」
絞り出すようなエルフの声。やがて、内から湧き上がった感情が爆発する。
「勝ったっ! 私達勝ったよ京太郎っ!」
「ぃよっしゃぁぁぁぁ!!! やったぜビオラ!」
「やりました……やりましたよビオラさん!」
「京太郎ぉ〜!」
ヒューマを無視してクリーチャに抱きつくエルフ。あまりのショックに呆然と立ち尽くすことしかできないヒューマは、ピクリとも動かずその場で止まっていた。
暫くして落ち着き、変身も解いたビオラ達は地面に座り込んで星を眺めていた。サララ、ネディン、フィルーシュ、メロノも近くで騒ぎつつ、漸く訪れた平和を謳歌している。
「……綺麗な星空」
「だな。星空って……あんま気にしたことなかったけど、こんなに綺麗だったんだな……」
「京太郎くん、ちょっと」
「なんだ、ネディン」
「ちょっと、何のために耳打ちしてると思ってるの?」
「悪ぃ、なんだ?」
「満天の星空の下、敵組織の首魁を倒して平和になった今! 告白するチャンスよ!」
「バカかお前! できるわけねぇだろ!」
「……何の話してるの?」
「あー……気にすんな」
〔正直に言えばいいだろう。お前もその気ではないのか?〕
「うるせぇ!余計なこと言うな!」
「……大変そうだなぁ……」
そう溢し、ビオラはまた空を仰いだ。その表情はどことなく晴れないでいる。理由はただ一つ、相棒・ウィルの消滅だ。
未だ、その現実が受け止められない。ふと周りを見渡せばそこにいるんじゃないかと、まだ考えてしまう。
「……もしかして、ウィルのこと考えてんのか?」
「……バレてた?」
ビオラの表情から察した京太郎の問いに、ビオラは苦笑いで返す。晴れない表情を続けるビオラだったが、そこにはもう一人、思い詰めた表情をしていた人物がいた。
「……僕の責任です。僕が……止めなかったから」
「ホントにね。……って言いたいとこだけど、正直貴方には責任はない。貴方がウィルに付き合わなかったとしても、きっとウィルはひとりで色々やってた。だから、貴方がウィルのことで苦しむ必要はない」
「でも! 僕が協力したせいで───────」
「それ以上言わないで」
立ち上がってまで抗議する犬童を制し、ビオラは再び星空を見上げる。
「ウィルは私達のために頑張ってくれた。だから、これからは私達がウィルの為に頑張る。それで、いいでしょ?」
頬を濡らしながら、ビオラは満面の笑みを犬童に見せた。
その笑顔を受け止め、同じく笑顔をつくって犬童はまた地面に座り込んだ。
遠い一番星が、静かに煌めいたような気がした。
さらばウィル。
はい、本編終了です!!!!!やったぜ!!!!!
たった2話しか登場しなかったラスボス・メガアクサーをシバき倒し、遂に本編が完結しましたぜ!
尊い犠牲はありましたが、無事仮面ライダーエルフの物語はほぼ終焉を迎えました。
次回は、今回の後日談的な内容となっております。あと1話、仮面ライダーエルフの物語にお付き合いいただければ幸いです。
それでは、また次回。
仮面ライダーエルフ───
────次回、最終回。