…怪人に興味持ってくれる人いるかなぁ。
いや、そもそも読んでくださる人いるかなぁ。
「ねぇ」
「うるさい」
「ねぇねぇ」
「うるさい」
「ねぇねぇねぇ」
「うるさいって言ってるでしょ‼︎」
ビオラは激昂した。自分に執拗に話しかけてくる精霊に。
「彼氏作らないの?」
「うるさいって!」
ここ30分ほど繰り返し聞いてくる。本当にうんざりする。
「…うえ〜ん、ビオラちゃんが意地悪するよ〜う…」
「気ン持ち悪…」
「そこまで言うことないでしょ⁉︎」
私は、荒廃した山道を歩いていた。正直、目的を考えると気が滅入って仕方ない。私の目的は一つ。…久しぶりに、墓参りに行くこと。あの時のことを思い出すと、体中が厭悪と憤怒、哀愁で震える。
ー過去
『お母さん! お父さん! お姉ちゃん! ライラ!』
『お姉…ぢゃ…』
『逃…げ…』
『…!ライ…』
ぐしゃっ。
何かが壊れる音が私の耳を劈いた。
そして、理解した。
目の前で、妹の頭が踏み潰されたのだと。
人間たちにとって、
そして次は、私の番なんだと。
家族を殺した「腕」が迫り来る。
『あ…うあ…ああああああああっっ!!!』
私は、泣き叫びながら一心不乱に走り出した。
そして考えた。
私たちが何をした?
何で人間は襲って来た?
…なんで、みんながころされなくちゃいけないの?
『…必死だね。それもそうか。命の危機だもんね。』
『…誰?それに…何でそんなに冷静なの?』
『…諦めてるからだよ。命も、里も、何もかも。』
『…』
『君は諦めないの?』
『…もう、誰も居ない。私と一緒に遊んでくれる友達も、私が馬鹿やって、叱ってくれるお兄さんも……私の帰りを待っててくれる、家族も。』
私は膝から崩れ落ち、ぼそぼそと呟いた。
『そっか。じゃあ一緒に諦めよう?』
『…うん。』
『ちょいと待ちぃや』
『…?』
『その台詞を黙って聞き流す訳にはいかねぇよお』
『…誰』
ビオラたちの目の前には、半透明で赤い蜥蜴の様な何かが浮いていた。
『自己紹介だな。俺ぁサララ。しがないサラマンダーよ』
『サラ…マンダー…?』
不思議そうにビオラが尋ねる。
『うえっ⁉︎俺のこと知らないとか言う⁉︎』
ビオラは黙ったままこくりと頷いた。
『げーマジ?うーん…ってうおっ⁉︎』
怪人達がビオラたちの元にたどり着いた。複数存在する「腕」の中で、一対だけ巨大なのが目立つ怪人。蠍の尻尾の様なものを携えた、古ぼけた大樹の様な色合いをした怪人。最早万事休すとも言えるこの状況の中、サララはとんでもない提案をしてきた。
『…この状況を何とかする方法が一つだけあるんだけど…聞く?』
『…聞くだけ聞いてみようか。』
諦めた様な声で「人魂」は呟く。
『…そこの嬢ちゃんに、「仮面ライダー」になってもらうこと。そうすれば…』
『何でもいい』
ビオラが零す。
『…諦めずに済んで、それで…』
『家族の仇に、復讐出来るなら。』
『良いのか?この道を選べば嬢ちゃんは…』
『何でもいいって言った。…だから、早くして。』
『…オッケー』
そう言うとサララは、ビオラの腰あたりに手(前足?)を翳した。すると、どこからともなく青白い炎が現れた。炎が消えると、そこには「ドライバー」があった。左の方から帯が出てきて、自動的にビオラの腰に巻き付いた。
『えっ…何これ…』
困惑するビオラを尻目に、サララは口から赤い球体を吐き出した。
『よっと。これ使ってくれ』
『えっ…本気で言ってる…?』
『…一応弁明しとくが、「何でもいい」って言ったのは嬢ちゃんだからな。』
『…』
『それは「サラマンダーオーブ」だ。俺がサラマンダーだからな。先ずはオーブのボタンを押してくれ』
説明されている間にも、怪人達はじりじりと距離を詰めてきている。
ビオラは、覚悟を決めた。
【サラマンダー!】
『そのまま真ん中の空いてるところにオーブを入れろ!』
ビオラはいわれるがままに動く。
【セットアップ!】
『左の方に小さいレバーがある!それを倒せ!』
【サモン!】
『なっ、何⁉︎』
突然ビオラの体が螺旋状の光に包まれた。
少しして光は弾け飛び、黒一色の素体を纏ったビオラが現れた。
【燃え盛る炎、その勢いは特急の如く! その炎、万物を溶かし尽くす!】
『何?ほんとに何⁉︎』
『ちょっと失礼するぞ!』
『え?え…』
次の瞬間、サララがビオラの体目がけて突っ込んでいった。そして、そのままとり憑くかの様に装甲と化した。
【フレイアーーーー…サァラマンダーー‼︎】
『何…この力…!』
溢れ出る力を全身で感じたビオラの頭の中には、奇妙な変身音のことなど微塵も存在していなかった。
『はあっ!』
飛び掛かりながら怪人を殴る。それまで感じていた恐怖が嘘の様だった。
『これなら…いける‼︎』
ビオラ…いや、「仮面ライダーエルフ」は、勘に任せてベルト右側の太いレバーを下ろした。
【カモン! フレア!スピリチュアル!】
燃え滾る炎が右脚を包み込む。
『はああああああああっ!!!!!』
横一直線に脚を振り抜いた。
『…チッ。ビネガー、一旦退却だ。』
『はあ!?ざけたことぬかしてんじゃねぇよ‼︎』
『喧しい。帰るぞ。』
『はあ?テメェ…』
『待ちなさい!!』
ビオラが力の限り叫び、「腕」の怪人に飛び掛かる。それを「腕」の怪人はいとも容易くあしらい、跳ね飛ばす。
『あっが…!』
『…用はそれだけか?』
『…答え…なさい…』
『何だ
「腕」の怪人が後ろ向きのまま語りかける。
『…アンタらの…アンタらの、名前を答えなさい』
怪人達が振り返り、エルフに答える。
『…良かろう。我が名は「ウィップアクサー」。…憶えて帰るが良い。』
『俺ぁ「ビネガーアクサー」だ。また遊ぼうぜ、ボッチエルフ。…っくはははははははっっ!!!』
ー現在
ここからだったかな、「虚無」という感情が、「憤怒」に変わったのは。
そんなことを思い出していると、墓場に着いた。木々が鬱蒼としており、掻き分けていかないと前に進めない。
水を替え、辺りを軽く掃除する。線香を新しく立て、手を合わせて目を瞑る。
でも、これは弔いにはならない。
贖罪にはならない。
私が、私たちが諦め、見殺しにした命の分。
私たちは生き、そして……
…アクサーを、殺さなければならない。
「お参り終わったぁ?」
豪華な食事を目の前にして燥ぐ子供の様に純真な声が左から聞こえる。
「…ネディン。お参りの時は邪魔しないでっていっつも言ってるんだけど」
ネディンと呼ばれたまるでスライムを擬人化したかの様な女性は、自分が何故怒られているのかまるで分からないといった顔をしている。
「…で、何の用?」
若干面倒くさそうに問う。その疑問に対し、ネディンは近所の主婦との会話かの様に話す。
「それがねぇ、美桜坂町の方でアクサーが出たんですってぇ」
美桜坂町と言えば、京太郎たちが住んでいる町のことだ。
「…放っといていいでしょ、別に」
冷めた声色のままあっけらかんと答える。
「…じゃあ、こう言えばどう?」
んふふ、とネディンは含み笑いを挟んでから、
「『ビネガーアクサー』が来てるって言ったら。」
「!!」
その瞬間、ビオラは走り出した。
「ああんもう、忙しない子…」
慌ててネディンも後を追う。
ビオラが着いた時、町は既に荒れたい放題だった。
叩き割られた硝子、建物全てを飲み込みそうな勢いで燃え広がる火災。
嘗て壁や天井だったものの破片も散乱している。
その惨状の中に佇む影が二つ。
一つは、パンダの様に白黒の、それでいて蜂の様な意匠を持つ怪人。
もう一つは、『闘い』に魅せられ、そして狂った蠍擬き。
ヤンキー座りでこちらを見つめる蠍擬きに、ビオラは目をつけられてしまった。
「…よォ、エルフちゃん。俺とちょっと遊んでかね?」
「…殺す。」
一言だけ発し、ビオラは変身する。
【フレイアーーーー…サァラマンダーー‼︎】
「へへッ…いいじゃねぇかァ、上等じゃねぇかァ、そうこなくっちゃなァァァッ!!!」
叫んだと同時に立ち上がり、走り出す。
ビネガーアクサーは右腕をブンブンと振り回し、エルフの顔面目がけて右ストレートをかます。
エルフはそれを見切って躱し、お返しとばかりに右ストレートをビネガーアクサーの胸部に叩き込む。少しだけ後退りさせたが、構わず突っ込んでくる。
もう一度殴りかかるが、今度は左手で受け止められる。手を掴んだまま振り回され、壁に叩きつけられる。
「がっ…」
苦しむエルフに、白黒の蜂の怪人が歩み寄る。
しかし、ビネガーアクサーが白黒蜂怪人の胸ぐらを引っ掴んで止めた。
「邪魔してんじゃねぇコラ。テメェはあっちで破壊でもしとけ」
手を離された怪人は、怯えた様に震えて明後日の方向に走り出した。
「よ、悪りィな、邪魔が入っちまった」
先程のやり取りをまるで無かったかの様にして言う。
「まだまだ足りねェよなァ? 遊びてェよなァ? そうだよなァ⁉︎」
尋ねながら右脚でエルフを蹴り上げる。
「うぐあっ…!」
耐えきれなかったのか、地面に落ちたと同時に変身が解ける。
「うっ…くう…」
「おいおい…もう終わりかよつまんねェなァ……もう帰れ。体調が万全になったらまた来い」
それだけ言うと、ビネガーアクサーは溶ける様に消えた。
「うおあー…こりゃ酷ぇな…」
正午過ぎ。偶々アクサー二体が襲撃して来た日と遊びに出かける日が被った京太郎と凱は、町の惨状を理解する為にかなりの時間を要した。
「…ん?」
ふと、京太郎の目に何かが留まった。
「悪りい凱、ちょっと待って」
「んお?何だぁ?」
京太郎は目に留まった何かに駆け寄った。
その何かとは…
「この子! この前の美少女じゃねぇか⁉︎」
ビオラだった。どうやら、凱の目にもビオラは美少女として映っているらしい。
「おい大丈夫か…?手ぇ貸すから頑張って立…」
「いらない」
ビオラは冷ややかに一蹴した。
「…自分で立てるし、何より……」
「人間の手を、借りたくない」
そうぼやくと、ビオラは壁に手を掛けたまま何処かへ歩き去っていった。
「おっ、おい! ビオラ!」
京太郎の叫びが届くことはなかった。
…が、代わりに凱が反応した。
「へぇー…あの子、ビオラって名前なんだなぁ〜…」
「あ…そうか、そういや凱知らなかったよな…」
「…なんだか、ボディーソープにありそうな名前だな…」
「どういう感性してんのお前…」
いつもと少しだけ立ち位置が変わった二人は、いつしかビオラのことが頭から消え去ってしまっていた。
はーい3話ですどうも。実は2話で新フォーム出す予定だったのに4話になってしまったり、3話で今回の怪人「ベルベットアクサー」を暴れさせるはずだったのにビネガーアクサーと一緒に出したばっかりに何もさせてあげられなかったり…悉く上手くいきません泣