仮面ライダーエルフ   作:青ずきん

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ようやく新フォームでござんす。
どうでもいいんですけど、本作の怪人たちは「気持ち悪い」って言われてそうな生き物をモチーフにしてます。例えば、1話で出たクリアアクサーはグラスフロッグという生き物がモチーフです。是非調べてみてください。


第4話 Re:Justiceー水棲の女王

「だー…クソつまんねェ…おい託斗、なんか面白ェ奴いねぇか?」

 明かりの少ないとある研究室。そこの床に寝転びながら、ビネガーアクサーは問う。

 

「そう焦らないでくださーい。僕も忙しいんでーす。」

 託斗と呼ばれた男は、パソコンとにらめっこしたまま軽快に答える。

「テメェもテメェだ。いっつもカタカタカタカタるっせーんだよ…」

「…じゃあキャメルの所にでも行ったらどうです?彼女なら相手してくれるでしょうし…」

「俺アイツ無理なんだよ。口を開けば託斗様託斗様って…カセットテープかっての…」

「ふーむ…困ったねぇ…」

 託斗は、右の親指と人差し指で自分の顎の輪郭をなぞりながら呟いた。

 

 

「ねぇねぇ、君達ってさ、彼女とか居る?」

「いや、その前に…どちら様?」

 講義を受けに大学に来ていた京太郎と凱は、スライムを擬人化した様な、どことなく大人の雰囲気を醸し出している半透明の女性(?)に声をかけられていた。

「あぁ、やっぱり気になるぅ?」

 どこが「やっぱり」なのかさっぱりだった二人は、ただただ苦笑いを晒すことしか出来なかった。

「私はネディン。これから貴方達二人の内どっちかの月下氷人になる女よ。よろしくね♪」

「…なあ凱、『ゲッカヒョージン』って何だ?」

 京太郎はネディンに悟られない様に凱に耳打ちした。

「…要するに、仲人ってことだ。」

「…『ナコード』って何だ?」

「…マジかよお前…」

 そんな会話を繰り広げていた二人は、一つの足音が近づいて来ているのに気付いた。

 

「…何してんの?」

 足音の正体はビオラだった。いつも通りのしかめっ面のまま尋ねてきた。

「いや…それこっちの台詞なんd」

「アンタが私のこと言いふらさないか見張りに来てんの。アンタを殺せばその必要も無くなるんだけど…」

 バンッ!と机を叩きながらビオラは静かに告げる。

「言いふらさないかって…言いふらして何になるんだよ…」

「あぁ、それはねぇ…」

「ネディン‼︎余計なこと言わないでって‼︎」

 ビオラはネディンの方を向いて叫ぶ。

「…お前も大変なんだな…」

「…」

 

「そう言えば、彼女がどうとか言ってたよな?あれ何だったんだ?」

 横から凱が冷静に尋ねる。

「あぁそれ?実はねぇ〜、ビオラちゃんの彼氏とかどうかな〜と思ってさ〜。」

「はあ⁉︎馬鹿じゃないの⁉︎人間の彼氏とか頭おかし過ぎるでしょ!」

「ま、ビオラならそう言うよねぇ〜」

 いつの間にかウィルがビオラの後ろにいた。正直俺はウィルほど「神出鬼没」という言葉が似合う奴は居ないと思う。

「僕から言わせてもらうなら、ネディンはもうちょっと色々疑うことを覚えた方が良いよ?」

「えー?でもでも、信じないことには何も始まらないでしょー?」

人間(こいつら)を信じた所で始まるものなんてないでしょ」

「ちょ、ビオラちゃ…」

「うるさい」

 そのビオラの一言によって、辺りに静寂が訪れた。

 

「…。よし、雰囲気変えようか。ビオラ、アクサーが出たよ」

「えっ嘘でしょ⁉︎」

 ビオラは何処にいるのかも聞かずに走り出した。

「…まさかとは思うけど、ウィルが出したりとかしてる訳じゃないよな…?」

「いや〜、僕にそんな能力はないよ、第一あったとしても使うメリットが無いしね。」

「…だと良いけどな…」

「あれ?もしかして疑われてる?」

「…そんなことより、ビオラんとこ行った方が良いんじゃないのか?」

「…それもそうだね、行って来るよ。」

「…」

 

「…なあ京太郎、あの人魂みたいなのって悪い奴なのか?」

「いや…まだ分からん。あくまでも可能性の話だ」

 そう、あくまでも可能性の話。別に何かそういう素振りがあったとかじゃない。素振りっていうかなんていうか…人魂だから素振りもクソもないな…

 仮にウィルがアクサーを生み出していたとして、そのメリットはなんだ…?

 …駄目だ、分からん。結局できるのは、あいつがヤバい奴じゃないよう祈ることだけか…

 

 

「…居た」

 白と黒の色が螺旋状に絡み合っている蜂の怪人、「ベルベットアクサー」を捉えた。どうやら、まだ建物を破壊する段階には至っていないらしい。

 腹部に青白い炎を出現させ、変身の準備を整える。

【サラマンダー!】

【セットアップ!】

【サモン!】

 オーブから半透明の赤い蜥蜴、サララが呼び出された。サララはその勢いでとんぼ返りをし、光がビオラを包むよりも早くとり憑いた。赤い炎にも似たオーラが、ビオラを包んでいる。

「…いくよサララ、力を貸して」

「…合点だ」

 螺旋状の光が、オーラごとビオラの体を包む。光が弾け飛ぶと同時に、炎のオーラが装甲に変わり、エルフの体にくっついていく。

【燃え盛る炎、その勢いは特急の如く! その炎、万物を溶かし尽くす!】

【フレイアーーーー…サァラマンダーー‼︎】

 

「…さあ、来なさい。人智の先を見せてあげる」

 

 決め台詞をしっかり決めてから、エルフは走り出す。

 エルフの拳とベルベットアクサーの拳がぶつかり合う。

 少しだけエルフが押し負け後退りするが、すぐに体勢を立て直し再び拳を振るう。

 躱し躱され、偶に胸部にヒットする。そんな競り合いを嫌ったのか、ベルベットアクサーはその特徴的な白黒の色合いを、何かに侵食されるかの様に赤黒く染め上げた。

「色が…変わった…?」

 その直後、ベルベットアクサーは体の赤い箇所から無数の火球を飛ばして来た。

「ちょ、ちょっと、そんなのあり⁉︎」

 エルフは右へ左へ転がりながら火球を避ける。

「この…!」

 エルフは自らの右腕を燃やし、ベルベットアクサーに近づいて全力で殴る。

 吹き飛んだベルベットアクサーは、立ち上がりながらその燃える様に赤い箇所を濃い青に変えた。そして右腕を目の前に翳し、右手から毒を噴射した。

「くうっ、あっ!」

 流石のエルフでも毒に耐えきれず、悶え苦しむ。

「くっ、あ…」

 

 

「もう!ホントに忙しない子!」

 そこに、ネディンが近づいて来た。悶絶するエルフの後ろに立ち、喋りかける。

「ほらサララも、無理しないの。あとは私に任せなさい。」

(悪りぃ…任せたわ…)

 サララが声を出し、エルフの元から離れる。同時にエルフの装甲も無くなり、黒い素体が露わになった。

「OK、まかされたし!」

 ネディンがオーブへと姿を変え、エルフの左手に握られる。

 エルフは胸の前でオーブを構え、天頂のボタンを押し込む。

【ウンディーネ!】

【セットアップ!】

 ベルトの中央に嵌め込み、変身待機音を鳴らす。

「…変身!」

 左側のレバーを倒す。

【サモン!】

 サララ同様、オーブからネディンが飛び出す。とんぼ返りをして、エルフの上空から垂直に降りて来る。

【その淑女、泡沫の様に儚く散りゆく小さき命。荒波の如く激しく在れ!】

【スプラッシャーーーー…ウンディーーネッ!!】

 そして、仮面ライダーエルフ ウンディーネスレイヴは顕現した。

 と同時に、エルフを侵していた毒が消え去った。いや、正確には取り込んだのだ。

「…ごめん、ありがと」

(そんなの気にしなーい!ほらいくよ?)

「…分かった。今度こそ…人智の先を見せてあげる」

 左の人差し指でベルベットアクサーを差しながら宣言する。

「…グルッ!」

 激昂したベルベットアクサーは右手から毒を噴射した。

 エルフは、歩きながらゆっくりベルベットアクサーに近づきつつ、左の掌を翳す。

 すると、どういうわけか、噴射された毒を全て吸収した。左手を握り締めて下ろし、今度は右の掌を突き出し、

「お返し。」

 掌から吸収した毒を噴射した。

「ギュレアッ!」

 まさか返されるとは思わなかったのか、ベルベットアクサーはその毒を正面から喰らった。

「ハア…グルルッ!」

 ベルベットアクサーは、やけくその様に色を橙と黒に変え、瞬時に3体に分身した。

(あら、そんなことも出来るの?奇遇ね、実は私たちもね、)

「「「「「分身出来るの。アンタより多く」」」」」

 エルフは一瞬だけ体を液体に変え、新たに4人分の体を造った。

 エルフの声が5重となって響く。

「「「「「これで5対3。5人分の必殺技を喰らいなさいな」」」」」

 次の瞬間、5人のエルフは同時に右側の太いレバーを下ろす。

【カモン! アクア! スピリチュアル!】

「「「「「はあっ!」」」」」

 飛び上がって空中で前宙返りをし、完全に同期した動きでライダーキックを繰り出す。

「「「「「はあああああっ‼︎」」」」」

 ベルベットアクサーの必死の抵抗も虚しく、5人のライダーキックを受け爆ぜ散った。

 

 

 

「なあなあ」

「なになに?」

「ウィルウィル」

「京太郎京太郎」

「なんで態々2回繰り返してんの?」

 町から少し離れた公園の隅で、京太郎、ビオラ、ウィルは屯していた。急用につき凱不在のため、ビオラがボケ二人組を捌かなければならなかった。

「あのさ、ウィルってさ、いつからさ、ビオラとさ、一緒にさ、いたのさ?」

「それはさ、そこそこさ、前からでさ、大体さ、1年くらいさ、前からさ」

「思ってたよりさ、早くってさ、吃驚したさ!」

「なんでさっきから最後に「さ」って付けてんの…?」

「「一種の遊びさ!」」

「…バカみたい」

 今日も太陽の下で、いつも通りの馬鹿騒ぎが繰り広げられていた。




4話でした。台詞が多すぎて劇の台本みたいになっちゃった。
今回ウンディーネ大活躍。途中で披露した分身、あれ実は書いてる時に思いついたもので、自分でも予想外でした。

…あれ?そう考えるとサラマンダーなんにもしてなくない?

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