IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第28話

 今日は日曜日。俺は朝のランニングをした後はベットで横になって本を読んでいる。楯無から昨日借りた〈噂が噂を呼びその噂から殺人事件が起きる〉と言う内容の本だ。読み初めからかなり面白い。一夏と箒は今日は一緒に出掛けるそうだ。昨日のうちに楯無に護衛を頼んでおいた。そのおかげで今日1日は特に予定はない。先週はドタバタしていたし明日はクラス代表決定戦だ。楯無の話を聞く限りては千冬に勝てるならオルコットには楽勝だそうだ。彼女には決定的な弱点があるらしい。そこに気付かせてあげるのも大人の仕事だそうだ。

一夏は…突撃お馬鹿になるだろう。

 

そんなことを考えているうちに眠くなってきた。

 

 

 

なぜだ…なぜトウヤは私を誘ってくれなかったのだ?

別々の部屋になって一週間も経って私は寂しくて寂しくて…

教室ではなかなか話も出来ないし教師という立場上寮の部屋に行くのもまずい。一回だけ行ったが何もなかった。

これからトウヤの部屋に乗り込んでしまおうか。周りの奴らに見つからなければ良いだけの事だ。

リスクは大きいがリターンも捨てがたい。

 

よし!

 

 

 

どれくらい寝ていたのか。左腕の時計を見ると12時を少し回った所だ。身体を起こし…ん?右半身が重い。目をやると…

 

千冬が寝てる…

いつの間にか寝ている。

気持ちよさそうに俺の胸元に顔を埋めている。

 

起こすのも可愛そうだしこのまま寝かせておこう。

俺はまた寝入った。

 

 

トウヤの腕枕は最高だ。トウヤの匂いも最高だ。トウヤが寝ている姿を見たときは涎が出てしまったがトウヤの腕を枕にして寝っ転がると安心感が私を満たしてくれた。優しさに包まれるとは、まさにこの事を言うのかも知れない。私は眠気に任せて意識を手放した。

 

 

暖かい。とても暖かい。

その気持ちよさに目を開けると千冬の顔が目の前にあった。

びっくりしてしまい身体が強張ってしまった。たが千冬は目を覚まさない。千冬の吐息が俺の喉の辺りに当たっている。それぐらい近いのだ。体制は俺が千冬を抱き締めている形になっている。

千冬の寝顔は普段の顔とは違いとても穏やかな顔をしている。普段の顔は格好いい、しかし今は歳相応の顔だ。

恥ずかしくなってきたので俺は身体を少し回転させて上を向きまた目を瞑る。

 

 

気が付くとトウヤが私を抱き締めていた。あまりの顔の近さに最初はとても驚いたが今は落ち着いている(心臓はバクバクだが)トウヤの顔を見ていると…またこの前の様にキスをしてしまった。また幸せな気持ちになってまた寝入った。

 

 

目が覚めて時計を見ると19時になっていた。隣ではまだ千冬が寝ている。昼を抜いたのでお腹が鳴っている。

「千冬、起きてくれ。千冬!」

俺が身体を揺すると千冬が目を開けた。俺の顔を見ると顔を真っ赤にさせていた。

「どうした?顔が真っ赤だぞ?熱でも出たか?」

俺が手を千冬のおでこに当てると千冬は慌てて手を振り払う。

「だっ大丈夫じゃ!」

じゃ?舌噛んだらのか?

千冬の首まで真っ赤になり物凄い勢いで千冬は部屋から飛び出していった。

 

なかなか可愛いじゃないか…

 

そんなことを考えながら俺は洗面をして食堂に向かった。

 

食堂で食事を受け取ると本音がこっちに向かって手を振っているのが見えたので本音の席に向かうとこの前に一緒に食事をした鷹月さんと相川さんも一緒にいた。

「マッツー元気?ご飯一緒に食べよーよ」

そう言いながら見えない手で自分の隣を指差した。相川さんも鷹月さんも笑顔で迎えてくれた。

「ねぇ〜ねぇ〜マツナガ君は今日は何して過ごしたの?」

鷹月さんは目をきらきらさせて俺に話しかけてきた。

「今日は最初は読書してたんだがそのうち寝てしまってさっき起きたばかりなんだ」

そう言うと鷹月さんも相川さんもびっくりしていた。

「ん?なんで驚くんだ?」

俺が尋ねると二人とも顔を見合わせながら

「なんだかマツナガ君はもっと勉強している感じ?というか何をしているか分からない感じなんだよね」

酷いな…

「そっか。俺も普通に昼寝もするし読書もするし釣りもするんだぞ」

笑いながら答えると本音も含めた3人とも笑っている。

「三人は外出しなかったのか?」

「今回はパス。お小遣い無くなっちゃうし」

「臨海学校に向けて新しい水着を買うために!」

「お菓子が買えなくなっちゃうし!」

そうなんだよな。みんなお小遣いなんだよな。俺みたいに収入が有る訳じゃないもんな。

「そっか、大変だよな」

「そうなんだよ!大変なんだよ~!」

「お小遣いの増額を要求しちゃう」

「もっとお菓子を!」

相変わらずマイペースの本音だ。

相川さんも鷹月さんも一般家庭ならば本当に努力して試験に合格したのだろう。

ところでこの学校は授業料は有るのだろうか。国家予算で運営って言うぐらいだから無いんだよな?

「マツナガ君って結婚してるの?」

相川さんの質問に急に周りの音が消えた。

質問した相川さんですら周りをキョロキョロしている。

なんだか答えたくなくなったが…仕方ないか。

「していないよ。因みに彼女もいない」

そう答えると一気に周りが騒がしくなった。

 

「行く!?行っとく!?」

だとか

「チャンスよ!このチャンを逃したら明日は来ないわ!」

とか

「やはり織斑君狙いなのね!」

違います。

 

など色々と聞こえてきた。

「マツナガ君…何というか、ごめんなさい」

相川さんは申し訳なさそうに謝ってきた。

「気にしないでいいよ。高校生ならば普通の会話だろ?ここがほぼ女子校だからこんな風になるんだろ?」

俺がホォローを入れると相川さんも笑顔で

「そうですね。マツナガ君と織斑君は注目の的です」

あまり認めたくないが事実なのだろう。

「だろうな。軍も女性パイロットは人気が凄かったからなぁ。本当に人気があった」

「そうなんですか?」

「うん。だって10パーセントしか女性がいなかったらそりゃ人気も有るだろう。酷い言い方だが容姿はそんなに関係なかった。きっとホルモンにやられるんだろ」

俺の言葉に三人とも笑っている。

「でもそこで付き合ってもほぼ100パーセント別れるんだってさ」

「え?何でですか?」

驚いたのは鷹月さんだ。

「部隊に行くと大抵部隊長ってのは大尉なんだよ。そして大尉ってのは優秀だと30代前半にはなれるんだよ。すると女性達は一般の幹部よりも有望な幹部を選ぶってわけ」

鷹月さんと相川さんは驚いた様子だ。

確かに酷い話だよな。全員がそうって訳じゃない。

「なんだか逞しいというか」

「ガメツいと言うか…夢が壊れるかも」

大人の世界過ぎた?

「まぁ全員がそうではないよ。中には看護科とか補給科の女性と結婚した人もいるしね。幹部は転勤が前提だから嫌がる人も居るんだよ」

「へぇ~そうなんですか」

「軍人は大変ですよね」

「でもいろいろな場所のお菓子が食べられる」

 

そんな会話をしながら夕食を食べて今日は殆どなにもせずに1日が終わった。

 

 

 

トウヤ…なぜ追いかけてくれないんだ!

私が走りだしたら追いかけてくれるはずだろう!

 

ベットで千冬が泣きながら布団を抱きしめているとも知らずに。

 

 




次回からクラス代表決定戦です!
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