IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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序章終了です。


第3話

マツナガside

 

胸部グラビティブラストの中にエネルギーが充填されていくのが見える。こんなに至近距離で撃たれたら塵も残らないだろう。

まずい!まずい!!

なんとか脱出しようともがくがびくともしない…

          

足を切り落とすか!?

 

・・・あ!その手があったか!

 

足をパージすればいいんだ!

急いでコンソールを操作し両脚をパージしてグラビティブラストの射線から離れる。射線から離れたところでグラビティブラストが発射された。

テツジン型の腕は自分のグラビティブラストで潰れている。

 

ナデシコの突入は後はエンジン部分のみだ。

「マツナガさん!早くもどって!!」

ミスマル艦長の顔がコックピット内に映る。いつも冷静な艦長には似合わない焦った顔をしている。…当たり前か。俺の命がかかっているんだもんな。

「ダメです!テツジン型だけは何としても抑えなくては!後ろから撃たれてナデシコが墜ちます!俺に構わず行ってください!」

そう言い放つとフィールドランスを構えてテツジン型に切りかかる、がテツジン型はこちらに向かって来ていた。しかもテツジン型のお腹の部分が開き自爆装置が作動している。このままナデシコに向かわせてはナデシコに影響が出てしまう。やることは一つしかない。

 

 

 

イヤリング返せないな…謝らなきゃ。

エリナにコミュニケを繋いだ。

「トウヤ!もう戻って!」

繋がった瞬間に泣き顔を見せられた。

「いや…ごめん。それは無理だよ。俺が戻ったらナデシコが墜ちちゃうよ。本当にごめん、イヤリング返せないわ」

エリナが焦っているのが分かる。珍しい。なぜか物凄くかわいいな。

右耳の青いイヤリングに目が行ってしまう。

 

「イヤリングなんか良いからトウヤが帰ってきて!お願い…」

 

 

「…ごめん。またな」

 

エリナの顔を見ていられなくなってコミュニケをこちらから切ってしまった。

泣きたくなった。

涙が溢れ出した。

前がよく見えない。

叫びたくなった。

雄叫びみたいなよく分からない声を上げてしまった。

エリナの名前を叫んでしまった

どうしようもなくなった。

 

 

覚悟を決めた!

 

 

 

テツジン型の腹を抱きしめ推力を全開にしてテツジン型をナデシコから引き離す。

コックピット内にジェネレーターのオーバーロードの警報が響いている。何とかテツジン型がナデシコに近付くのを防いでいる状況だ。

 

そしてナデシコがチューリップに入りきった所でテツジン型から手を離し急速に離脱するがテツジン型から光球が起こり一気に広がりその光球に飲み込まれた…

 

 

 

エリナside

 

私は艦橋の提督席の横に立って戦況を観ている…いいえ、トウヤの状況を見ている。状況は良くない。2機目のテツジン型が現れたからだ。これを放っておいたらきっとナデシコが墜ちる。きっとトウヤは2機目を放って置くはずがない…でもそれは本当にギリギリまで帰って来れない事になる。

 

 

彼がナデシコに来たのは月基地に立ち寄ったときだ。月基地では木星蜥蜴の正体をムネタケ提督に教えているところを盗撮されていたとは言え私がばらしてしまった。地球連合、地球政府にとっては最大の汚点。タブーである。

殺されると思っていた…しかし会長、アカツキは『殺されないよ』と言っていた。なぜかは分からない。

そんなときに彼は現れた。私は彼は刺客だと思っていた。勤務のシフトが一緒だったから。だから彼とは距離を置いていた。

いつも一緒にいる。それだけで私の精神はどんどんすり減った。

ある日、私は一緒に食事をしているときに意を決して彼に聞いた。

「いつまで私を監視しているの?早く殺したら?そうすればこんな船は早く降りれるんでしょ!?」

って。

そしたら彼は首を傾げて

「はい?いきなりどうしたんです?」

と言う。私も彼の反応に驚いた。

「あなたは連合が送ってきた暗殺者なのでしょ?」

「え?なんで俺が暗殺者なんですか?確かにあの真実にはビックリしましたが、私はアカツキ会長からあなたを護衛しろと言われてます」

え?護衛?あいつが私に?

「だってアカツキ会長もあの場に一緒に居たじゃないですか。さすがに責任感じてるみたいです。それにタイミングを考えてください。私がナデシコに乗ったのは月ですよ?ほぼ同時なんておかしいですよ。それと私の本当の立場はアカツキ会長のシークレットサービスです。連合宇宙軍でパイロットをしていて、いざという時に会長を護れるようにと此処に来たのです」

彼は笑顔でそう答えた。

…確かにそうだ。タイミングがおかしい。

「だから安心してください。あなたは私が守ります。そんな疲れた顔では美人が台無しですよ」

彼の言葉に思わず顔が赤くなり胸が一杯になって涙が溢れた。私は思わず…

 

それからの私は安心していつも通りの日課を送れるようになった。そして彼とよく話をするようになった。そして彼が気になるようになった。

彼はナデシコメンバーの中でもまともな思考をしていた。破天荒な行動が多いナデシコのメンバーだが、彼だけは普通の行動をとっていた。みんながテンション高く突拍子もない行動を起こす中、一歩引いて見守っていた。

でもノリが悪い訳ではなかった

みんなと楽しみ笑った。

 

彼の操縦技術はナデシコのエステバリス隊でも引けを取らないものだった。そのためかエンジェルスとも仲良くしていて気に食わない…

 

「マツナガ機がテツジン型に捕まりました!」

メグミ・レイナードが悲鳴に近い声をあげる!

(トウヤ!!)

やられちゃう!お願いだから逃げて!涙が出てきた…

 

「ディストーションフィールド出力安定。チューリップへの突入率70パーセントマツナガさんの帰艦可能限界まであと僅かです」

ホシノ・ルリが冷静な報告をしている。思わず睨みつける。でもそれは筋違い…

映像でマツナガ機の足がテツジン型に捕まって振り回されている。そして止まったかと思うと

「テツジン型にエネルギー反応。グラビティブラストを撃つようです」

血の気が引いた。

「トウヤ!逃げてぇ!!」

叫んでいた。

「マツナガ機脚部をパージ。無事です」

涙を流しながらホッとした。

 

「テツジン型グラビティブラスト発射。マツナガ機には当たっていません」

ホシノ・ルリの報告。

「メグミさん!マツナガ機と繋いでください!」

艦長は早口でメグミ・レイナードに指示を出す。

すぐにモニターにマツナガの顔が写る。

「マツナガさん!早く戻って!」

艦長の声が艦橋に響く。

「ダメです!テツジン型だけは何としても抑えなくては!!後ろから撃たれてナデシコが墜ちます!!俺に構わず行ってください!」

通信が切れるとマツナガ機はテツジン型にフィールドランサーを構えて突っ込んでいく。

「テツジン型にエネルギー反応。自爆装置を起動したようです」

ホシノ・ルリの声が艦橋内に響いた。

映像ではマツナガ機がフィールドランサーを捨ててテツジン型のお腹の部分にしがみつくところが映し出される。

 

急に私の前にコミュニケが現れてトウヤの顔が写る。彼の顔は申し訳無さそうにしている。

「トウヤ!もう戻って!」

思わず叫ぶ。

ただ戻ってほしい。それだけ…

「いや…ごめん、それは無理だよ。戻ったらナデシコが墜ちちゃうよ。本当にごめん…イヤリング返せないや」

彼の目が私を見ている。涙が溢れて霞んでしまう。

「イヤリングなんかいいからトウヤが帰ってきて!お願い…」

胸が熱くなって声にならなかった。

「ごめん…。またな…」

彼はそう言ってコミュニケを切った。彼の顔が見えなくなる。

映像は必死にテツジン型を抑えているマツナガ機が映っている。

 

「ナデシコチューリップに突入が完了します。ディストーションフィールド出力最大」

ホシノ・ルリがチューリップへの突入が完了したことを告げる。

そして…テツジン型が白い光に包まれる…

 

「イヤぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

そして私は、意識を手離した。

 

 

 

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