IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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IS学園に入学への章
第4話


マツナガside

 

風だ。

 

風を感じるなんて久々だな。

 

宇宙には風は吹かないもんな。

 

風を感じたのは教育隊以来か…

 

同期は元気にしてるかなぁ。

 

ん?

 

俺はいつ地球に戻ってきたんだっけ?地球周辺で…

 

戦闘中だった!

 

目を開けると遠い青色が映っていた。いや、見えた。

 

空だ…

 

体を起こすと緑と紺と青が見える。草と海と空だ。

俺はいつ地球に戻ってきたんだ?

体を見るとナデシコのパイロットスーツのままだし手の甲を見ればIFSのマークは付きっぱなしだし。

ひとまず身体を覆っているパイロットスーツの皮膜を解除する。

Tシャツでは少し寒いが地球の風は気持ちがいい。

 

(ナデシコは…エリナ達はどうなったんだ?)

 

コミュニケを押してみるがエラー表示になる。

ダメか…

 

後ろを振り返ると白い建物が並んでいた。とても綺麗な建物でいくつも建っていた。しかも塔みたいな建物もある。

(ここはなんだ?木星蜥蜴の被害も無いみたいだな。ってことは…どこ?)

結論も出せずに建物の方へ歩いていく。足元には『寮→』だとか『校舎↑』とかの文字が浮かんでいる。

(学校なのか?)

ひとまず校舎に行けば人がいるはずなので校舎へと向かう。

 

 

しばらく歩くと前方から2人の女性が走ってきた。

 

「貴様!何者だ!?」

 

黒髪のロングヘアーで黒目の女性がこちらを睨んでいる。上下が黒のスカートのビジネススーツの方が立ち止まり声を掛けてきた。

 

「え?いや…すみません。私もなぜ此処にいるのか分からなくて。此処はどこですか?」

 

頭を下げて謝ってしまう。

そんな俺を見てもう一人のショートカットの緑色の髪でメガネを掛けた黄色いダボダボの服を着た女性がこちらに頭を下げて

 

「いや、こちらこそすみません。ここはIS学園で一般人の立ち入りが禁止されているのです」

 

と教えてくれた。

 

「アイエスガクエン?何ですかそれは?」

 

聞いたことの無い単語を聞き返してしまう。

その反応に二人の女性は驚いている。

 

「!?君は見た目はアジア系だが日本人か?」

 

黒い髪の毛の女性が尋ねてきた。

 

「はい。ニホンですが?」

 

首を傾げてしまった。

黒髪の女性がもう一人の女性に耳打ちをして小声で何かを言っている。

緑色の女性は頷くとこちらに歩み出て笑顔で

 

「ここでの長話はまずいので部屋を用意します。そこで話をしましょう」

 

と言う。

従うしかないよね。

 

「はい。従います」

 

黒髪の女性は白い建物へと向かい歩き始める俺もそれについて行く。緑髪の女性は俺の後ろに付く。

これは俺を警戒しての行動だ。この二人は警護や逮捕術を習ったことがあるって事だ。

少し歩くと建物の入り口を通りどこかの部屋へと通された。テーブルを挟んで座らされて女性二人が座ると黒髪の女性が口を開いた。

 

「まずは此方から自己紹介を。私はIS学園教員の織斑千冬だ」

 

次に緑髪の女性だ。

 

「同じく教員の山田真耶です」

 

次は俺だな。

 

「私は地球連合宇宙軍機動戦艦ナデシコ所属エステバリス隊のマツナガ・トウヤです」

 

俺が自己紹介をすると目の前の女性2人が怪訝な顔をした。織斑千冬が口を開く。

 

「地球連合宇宙軍とはどこの組織だ?」

 

え?

 

地球連合宇宙軍を知らない?

有り得ない!

 

「知らない?では木星蜥蜴は?」

 

俺の世界で誰もが知っている言葉を聞いてみる。

するとやはり織斑千冬が困った様な顔をしながら答えた。

 

「なんだそれは?先ほどマツナガさんはIS学園を知らないと言ったな?」

 

…まさか。

 

「はい。まさか誰もが知っている言葉なんですか?」

 

こめかみから頬にかけて汗が落ちるのが分かる。

 

「その通りだ。IS、インフィニットストラトスの操縦者を養成する機関のIS学園を知らない者は殆どいないな」

 

背中が冷たくなる。

俺はどこに来てしまったんだ?

 

「マツナガさん。あなたは軍人なのか?エステバリス隊と言っていたがパイロットか?」

 

織斑千冬の言葉が俺を現実に引き戻す。

 

「はい。エステバリスは人型機動兵器です。」

 

「木星蜥蜴とは敵なのか?」

 

またも織斑千冬だ。

 

「木星蜥蜴、正式な名称は木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星小惑星反地球国家連合体と言い略して木連と言い地球に対して侵略をしています。ただ…」

 

俺は続けられなかった。木連の人々は過去に月と火星を追われた人々と。

 

「なんだ?木連とやらは宇宙人なのか?」

 

織斑千冬は腕を組んで訪ねてきた。

 

「いえ、木連の人々は元々地球人でした。月と火星の独立を訴えて追われた人々が木星圏で生きてきた人々の末裔です」

 

俺の言葉に織斑千冬も山田真耶も驚愕の顔を浮かべる。地球人の所かそれとも火星、月、木星なのか。

 

「マツナガさん…あなたは別世界の人なのか?」

 

織斑千冬が立ち上がり聞いてくる。

俺も迷ったが思ったことを口にする。

 

「その様ですね…確信が持てました」

 

俺は織斑千冬の顔を見ずに下を向いた。

信じたくは無いがあまりにも話が通じない。同じ日本人なのに…

 

「インフィニットストラトスとは機動兵器ですか?」

 

先ほど聞いて気になる単語を尋ねてみる。次は山田真耶が答えてくれるようだ。

 

「インフィニットストラトス、略してISとは宇宙での活動を目的としたマルチフォームスーツです」

 

スーツ?ロボットなのか?

 

「まぁ…ひとまずマツナガさんの素性は分かった。ひとまず休んだらどうだ?ひどい顔をしているぞ。すまないがID確認のために唾液を貰っていいか?」

 

織斑千冬はスーツのポケットからプラスチックの試験管を出す。中に綿棒が入っておりそれに唾液を付ければ良いのか。

俺は頷き試験管を受け取ると綿棒を、舌の上で湿らせて試験管に戻す。

 

「山田先生、客人用の部屋を用意してくれ。確保出来たらマツナガさんを案内して欲しい。マツナガさんはすまないが山田先生が戻ってくるまでここで待っていて欲しい。念のため言っておくが出回ったりしないでくれ。勝手に出歩くと捕まるからな」

 

そう言うと部屋から出て行ってしまった。

 

「では私も行きます。10分掛からずに戻ってきますので待っていてください」

 

山田真耶も立ち上がり俺が頷くのを確認すると部屋を出て行った。

俺は座っているソファーの背もたれに背中を預けて天井を見る。

 

(どこなんだ此処は。木連を知らないって事は戦争も起きていないって事か)

 

戦争が当たり前になりかけていた。木星蜥蜴は倒すべきもの。軍の中ではそう教わっていた。しかし街中では軍があまりにも弱すぎるため士気は低かった。諦めれば良いなんて声も聞こえた。

だがナデシコに配属になり木星蜥蜴の正体を知ってからは考えないようにしていた。

 

彼等の気持ちが分かるからだ。

 

だが、彼等が火星の人々を殺したのは許せない。

 

だが、地球がやったことに比べれば…

 

止めよう。

こんな事考えても仕方がない。

目をつぶる。

心地良い。

しばらくこうしていよう。

 

 

「マツナガさん。マツナガさん」

 

え?寝てしまった?

 

「あ!はい?」

 

目を開けると山田真耶がこちらを覗き込んでいた。二つの山脈越に見える顔は笑顔だった。

 

「よっぽど疲れてたんですね。お部屋の確保が終わりましたので迎えに来ました。それと食事は私が部屋まで持って行きます。では付いてきてください」

 

山田真耶と部屋を出て行く。建物を出て学園の中を歩く。本当に綺麗な学園だ。もしかして国家予算で運営しているのか?

 

「山田さん、この学園は国で運営しているのか?」

 

隣を歩く山田真耶に聞くと頷く。

 

「はい。アラスカ条約でこのIS学園は日本の国家予算で運営しています。しかも世界でここにしか無いんですよ!」

 

笑顔で答えているが、なんで世界で唯一の学校を日本の予算だけで運営しているんだ?押し付けとか思いやりってやつか?

通路の案内を見るとどうやら寮に向かっているようだ。

建物の前に来ると看板には「1学年学生寮」と書いてある。

中に入り一番目の部屋の前で止まる。プレートには「寮長室」と書いてある。

 

「マツナガさん、すみませんが客人用が、とれなかったので寮長室を使ってもらいます。鍵は預かっていたので渡しておきます。では後で夕食と着替えを持ってきますので寛いでください」

 

鍵を渡されて山田真耶は出口に向かっていった。

 

鍵を開けて扉を開けると…

 

ゴミ溜めの部屋だった。

 

なんだこれは…

 

しかも最近まで使っていた形跡がある。しかも洗濯物もあるし…女性物?

 

部屋は間違えてないよな?山田真耶は寮長室って言ってたもんな…

 

片付けよう…

 

 

 

たっぷり1時間かけて部屋を片付けて今は洗濯物を乾燥機にかけている。

ゴミは3袋出て玄関に置いておいた。

2つあるベッドの荷物が沢山あった方に腰を掛けて外を観る。夕焼けがやたら綺麗だ。

ベッドに横になる。

 

 

『トウヤはもう少し相手の気持ちに敏感にならなきゃダメよ!』

 

エリナが頬を赤くしながら怒っている。

 

『優しいのは良いことだけどあまり他の人まで優しくしているといつか…刺されるよ』

 

ニコ!

 

ビクッ!!

 

目が覚める。

 

あの笑顔は危険だ。

 

外はすっかり暗くなり部屋の中も暗くなっている。明かりをつけると机の上に食事とジャージが置いてあった。時間は19時だ。

ひとまず着替えて食事にしよう。パイロットスーツは圧力をかけているため意外と疲れる。

ジャージは楽で良い。

食事は和食だった。焼き魚定食だ。

食事を一人で食べるなんて久しぶりかも知れない。ナデシコの時は常にエリナと一緒に食べていたし、食堂には誰かしら知り合いがいた。機関科や整備班・ホウメイガールズなど同じシフトの連中や食堂のウエイトレス達だ。

独りの食事がなこんなに寂しいとは。

黙々と食べていると部屋の扉が開いた。中に入ってきたのは織斑千冬だ。

 

「目が覚めたのか。すまなかったな。部屋の掃除をしてもらって」

 

少し赤くなりながら目をそらす。

 

 

え?織斑千冬の部屋だったのか?

 

 

「いいえ、構いませんよ。むしろ勝手に片してしまい済みませんでした」

 

笑うしかない。

 

「食事が終わったら相談がある。今後のことだ」

 

そう言っ手にて持っている封筒を見せた。織斑千冬は俺に封筒を見せると洋服ダンスから下着を取り出しシャワー室に向かった。

俺は食事を続ける。

シャワー室から織斑千冬が出てくると少し赤い顔だけを扉から出して

 

「バスタオル知らないか?」

 

と聞いてきた。

 

「バスタオルは乾燥機の中に有ります。勝手に洗濯させてもらいました」

 

「ああ…ありがとう」

 

そういうと扉を閉めてシャワー室に戻っていった。

 

それから30分程してから織斑千冬が出てきた。髪の毛が少し濡れていて色っぽい。自分で顔が熱くなるのがわかる。

 

「マツナガさん、封筒の中身は見たか?」

 

バスタオルを肩に掛けていてジャージを着ている。

 

「いいえ…確認します。それと私の事はマツナガと呼び捨てで構いませんよ」

 

封筒の中身を出すと入学案内と書いてあった。

 

え?

 

「先程の唾液で身分とISの適性を確認させてもらった。身分は登録なし、ISの適性はAと分かった。恐らくマツナガはISを動かす事が出来るのではないかと思う」

 

冷蔵庫から缶ビールを取り出すとプシュッ!と音をさせて開けると一口呷る。ベッドに腰を掛けて話を続ける。

 

「もう直ぐ新学年が入学するのだが私の弟が入ってくる。出来れば一緒に入学して欲しい」

 

ほほぉ。弟がいて入学するのか。

 

「構いませんが他にも仲のいい奴も一緒に来るんじゃないのですか?」

 

「いや、それはない。なんせ男は一夏一人だからな」

 

…何?

…ってかなぜ?

 

「男が一人?」

 

「そうだ。なんせISは女性しか操縦出来ないからな」

 

織斑千冬が自信満々に言っている。

 

「はぁ?女性しか操縦出来ない?どんだけ欠陥兵器ですか!?今までに男性操縦者は現れた事は?」

 

「いや、一夏が初めてだ。そして私の予想ではマツナガが2人目だ」

 

織斑千冬はニヤリと笑っている。

 

「何にせよ明日の朝にISに触れて確認してもらう。もし動かせるなら入学してもらいたい」

 

女子高に男が2人だと…キツいな。

織斑千冬が2本目のビールを開けながら話を続ける。

 

「それにマツナガにとっても悪い話ではない。まず学園にいる間は他の機関や企業からの影響がない。学園の規則でそうなっている。そして、学園の規則とは国際条約だ。それと身分は私が何とか出来る。全寮制だから住む場所は困らない。卒業後は恐らく引く手あまたになる。何だったら学園で採用する事も出来る」

 

なかなか条件がいいと考えて良いのだろうか。

それとも囲い込みなのか。

だが、俺の第一の希望はナデシコに帰る事だ。

 

 

 

 




2015.07 改編
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