IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第42話

結局、午後の授業の途中で宇宙への思いに浸っていた俺は千冬の出席簿アタックで思考を現実に戻されて授業はつつがなく終了した。なかなか頭が痛かった。SHRが終了すると一夏と箒は剣道場で剣術の訓練をセシリアは射撃場で射撃訓練をするとの事だった。セシリアに訓練を見て欲しいとせがまれたがこの後は外出すると伝えると残念がっていたが引き下がってくれた。

 生徒会室に入ると虚さんがいた。

「あらマツナガさん。お帰りなさい。向こうは大変だったようですね」

笑顔で迎えてくれた。この笑顔はなかなかの癒しだな。

「戻りました。向こうではなかなかびっくりしましたが更識の事前の情報で警戒はしていましたから全員無事に戻ってこれました。シャルロットにはかわいそうな事にはなりましたが、父親が苦肉の策で男装をさせていたことが分かったのですからこれからの関係修復は簡単に行くでしょう。それと交渉もうまくいきましたしね」

虚さんはお茶を出してくれた。

「そうですか。でもパリは花の都。観光とかもしてきたのでしょう?」

「そうですね。シャルロットに連れられていろいろと観てきました。そうだ。これは生徒会にお土産です。みなさんで召し上がってください」

俺は鞄からお菓子の包みを渡すと丁度生徒会室の扉が開きなんと本音がやって来た。

「おおー!マッツー!おひさー」

ダボダボの袖をブンブン振ってこちらに歩いてくる。

「いや…教室でも会ってるでしょ。まあ会話をするのは久しい気がするけどね」

「細かいことは気にしない!えへへ~。やっぱりこっちにもお菓子があったねー」

・・・本音の目的は生徒会へのお土産のお菓子だったのか…なんてドンピシャのタイミングなんだ。

「本音?こっちに『も』って事はクラスの方でも頂いたんでしょ?」

虚さんの言葉に本音は少しだけ顔をしかめるが

「私も生徒会だよー」

と言い包みを開け始めた。

俺と虚さんは苦笑いで本音を眺めていた。なぜか本音を見ていると憎めずまさに『のほほん』という表現が似合っている。確か一夏は本音の事を『のほほんさん』と呼んでいた気がする。

虚さんが本音にココアを出し自分はお茶を入れて椅子に座って三人でお菓子を食べて過ごしている。

しばらくすると生徒会室の扉があき楯無が入ってきた。

「やあトウヤさん。フランス旅行はどうでした?」

楯無は笑顔だが目が鋭い。一体あの鋭さは何の意味があるのだろうか。

「なかなかスリリングな旅行でしたよ。一応は観光も出来ましたしね。それと楯無から借りているおもちゃも役にたってしまいましたしね」

俺も楯無の調子に乗っかると楯無は席に座りながら「フフフ…」と笑っていた。

「なんなんですかその笑いは」

俺が指摘をすると楯無は扇子を開いて

「いいえ。色々と建設的な活動をしたみたいで…」

と少し不機嫌になっている。扇子には『建築士』と書いてあった。何の建築士なのだろう。

「どういう意味なんでしょうか?」

俺の問いには笑ってごまかしている。

「まいいや。ひとまず状況の理解は?」

「あらかた理解できています。正直、ホテルでの襲撃は予想外でしたがあなたとシャルロットさんに怪我が無くて良かったです」

楯無の顔から笑みが消えた。

「とりあえずは二階堂さんも今回の件は今は騒がないでおくとの事でしたのでそこのところは宜しくお願いしますね」

「分かりました」

「後は何かありますか?この後にシャルロットをレゾナンスに連れて行く予定があるので他に無ければ行きたいのですが?」

そう告げると楯無の片眉がピクリと動いた。そして扇子で口元を隠して

「あら、帰国そうそうデートですか?」

と茶化してきた。

「違いますよ。着の身着のままこちらに来たので日用品や着替えの買い出しに行くだけですよ」

俺がそう答えるが扇子を閉めて露になった口元はつり上がっている。

「いや、それをデートと呼ばずなんて言うんですか。虚ちゃん?何て言うかお姉さんに教えてくれないかな?」

楯無から聞かれた虚さんは笑顔になって

「逢い引きですかね?」

と答えた。

「そっか!?これは逢い引きつて言うんだ!」

楯無は手のひらをパンと鳴らして大袈裟に驚いた振りをしている。

「いや!どっちも意味は一緒じゃないですか!?だからデートでも逢い引きでもないんですよ。まぁ…いっか。それじゃあ何も無いなら行きますよ?」

席を立ち扉に向かうと楯無が呼び止めてきた。振り替えって楯無を見ると

「ちゃんと門限守るんですよ?」

 

と言われたので楯無の言葉を無視して生徒会室を後にした。

 

 

 

「お嬢様…さすがに嫌われちゃいますよ?」

虚の言葉には呆れの色が混じっていた。

「さすがにああもフラグをポンポン建てると苛ついちゃうんだもん。しかも当の本人は気付いていないし」

楯無は頬を膨らませて愚痴を溢していた。

「え~?でも織斑先生には優しいよ?今日は違うフランスのメーカーの腕時計してたからまっつんがあげたんじゃやいかなぁ?」

本音の発言に楯無の顔が強ばった。

「トウヤさん…私には個別のお土産無かったのに!」

楯無の手に持たれている扇子がギシギシと音を立てている。

「お嬢様。もう少しアピールが必要なのでは?接触時間を増やさないと厳しいですね」

虚は淡々と語る。彼女の心は分からないが一応楯無を応援しているのかも知れない。

「よし!今度、トウヤさんと一緒に出掛けてみせるわ」

楯無の宣言に本音は手を叩きながら

「おお!頑張れお嬢様~!」

と喜んでいる。楯無の隣に立っている虚はため息を吐いている。

話題の彼の居なくなった生徒会室では主人の決意の満ちた部屋になっていた。

 

 

 

自分の部屋に戻るとシャルは制服のまま椅子に座ってパソコンに向かっていた。俺に気が付くと椅子から立って

「お帰りなさい!」

と言いながらこちらに歩いてきた。

「ただいま。出掛ける準備はどうだい?」

俺の問い掛けにシャルは大きく頷いて

「うん!いつでも出られるよ」

て答えた。

「じゃあ行こうか」

と自分の机の椅子に鞄を置いて部屋を出るとシャルも後ろから付いてきた。隣を笑顔でご機嫌に歩いている。

正門を通りすぎモノレールに乗りるとシャルは窓からの景色に感動していた。シャル曰く海の上を走っている様で凄く気持ち良かったらしい。

レゾナンスに到着すると先ずは服を見に来た。あられこれと自分の身体に合わせて「どうかな?」と聞いてくるがシャルは容姿がとても整っていて何でも似合う。どれも「似合う」という言葉を使うと「真面目に答えて!」と怒られてしまった。結局は10着程試着して買ったのは5着程買い次は生活雑貨の店に入った。マグカップやバスタオルや洗面道具など細々した物を買いその後には携帯電話の契約に向かった。シャルは何故か俺の機種の色違いを選んだ。

因に今回の購入代金は富士見技研の経費として落とすそうだ。なので全て俺が立て替えて払っている。今回の買い物は一応は富士見技研に出向したシャルの転勤の一環として行われたという篠田さんの気遣いとのことだ。

他にも色々と周り俺の両手には紙袋やビニール袋がいくつも握られている。しかしどれも軽い物なのでそこまで苦ではない。シャルはまだニコニコ楽しそうにキョロキョロお店を見ている。

「他に何か欲しいものはあるか?」

シャルに問いかけると笑顔で首を傾げて

「そうだなぁ…。他には無いかなあ。ご飯を食べて帰らない?」

「そうだな。今から帰っても食堂は微妙な時間だな。何か食べたい物はあるか?」

「僕ねお寿司と言うものが食べてみたい」

シャルは目を輝かせて言っている。

「寿司か。構わないが生の魚は食べれるのか?生の魚が駄目だと食べるものが相当限られてしまうぞ?」

俺の言葉に少し悩んだ後に

「大丈夫!日本に暮らすのだから慣れないとね!」

シャルの決意に少し感動してしまった。

こうして俺とシャルはレゾナンスの寿司屋に向けて歩き始めたのだった。

 

 

 

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