爆炎に包まれた楯無はなかなか煙から出てこない。
もともと吸着地雷は対艦用で一発で駆逐艦を中破させる威力を持っている。地雷の中に鉄の破片が入っており周囲に高速に破片を跳ばすことで破損させる。今回の爆発で俺も若干の破片を食らったが問題は無い。
爆煙が晴れ始めると楯無の姿が見えてきた。蒼流旋は持っているが水は纏っておらず機体も同様で水のベールが無くなっている。
「もう…完全に油断しちゃったな…まさか時限式とはね…」
楯無の表情は試合開始時の余裕の表情がない。そして機体も所々破損している。あれは確実に絶対防御が発動したな。
「怪我はないか?」
俺の問いかけに楯無は目を丸くして驚いている。
「戦闘中に何を聞くのよ…」
「模擬戦だ。実際の戦闘ではないんだ。心配をするのは当たり前だ。少し威力が高すぎた。さっきのは対艦用の地雷だからな」
「納得…怪我は無いわ。心配してくれてありがとう。じゃあ続きを始めましょう!!」
会話が終わると楯無は蒼流旋を構えて此方に突っ込んできた。
俺もレールガンをしまってフィールドランスを呼び出し楯無の蒼流旋を受け止めて蹴りを入れるが楯無は咄嗟に後ろに下がって交わした。俺はフィールドランスを持っていない左手を引くとナックルガードをセットして前に付き出すと手首より先を飛ばした。ワイヤードフィスト、分かりやすく言えばロケットパンチのワイヤー付きだ。楯無はまた知らない攻撃に戸惑ったのか反応が遅れて俺の左手は楯無の右肩に直撃した。そしてそのまま楯無との距離を詰めてフィールドランスを楯無に突き立てた。ランスはシールドバリアに直撃したが、楯無も蒼流旋を此方に突き立て直撃する。シールドエネルギーがみるみる減っていくが楯無も同じように減っているはずだ。そこで俺はフィールドランスの先端を開きシールドバリアをこじ開けたと同時にアリーナにブザーが鳴り響いた。
『更式機、シールドエネルギーエンプティ!勝者、マツナガ!』
アリーナが歓声に包まれた。
「あ〜あ…負けちゃったか♪」
「俺の機体の特徴や武装を知らなかったからだよ。次回は負けないだろ?」
「そうね。次回は負けない!」
俺達はそんな話をしながらピットへと向かった。
「あんな小娘に苦戦するとは…マツナガ、腕が落ちたんじゃないか?」
ピットに戻っていきなり千冬からお説教を食らっています。
「織斑先生…さすがにみんなの前で小娘は不味いですよ…。それにあの水のベールは反則ですよ?」
「あれは…確かに反則だな。私も苦戦したからな。だがお前は途中で諦めただろう?」
千冬の言葉に思わず視線をそらしてしまう。千冬はそれに気づいたのかため息をついた。
「確かにお前にとってはつまらなく、やる気の起きない試合だっただろうがせめて本気でやってやれ」
「はい…」
途中からやる気が無くなったのが分かってしまったようだ。
「ともあれお疲れ様。ゆっくり休め」
千冬がピットから出ていった。
「ふぅ…」
ベンチに座り一息つき今回の模擬戦について考える。
今回の模擬戦はとても苦戦した。技術が足りてなかった。結局は楯無に攻撃を一度も当てられなかった…実戦を経験しているはずなのにだ…間違いなく実戦ならば死ぬな。鍛え直さなきゃな…何故だか気分が落ち込んでしまった。まるで初陣で何も出来なかった時のようだ…暫く動けなくなってしまった。
着替え終えてピットを出るとそこにはセシリアとシャルが待っていた。もしかしてずっと待っていたのかもしれない。悪いことをしてしまったな。
「お疲れ様でした。これで学園最強ですね」
「でも随分と苦戦していたようだね」
セシリアとシャルが労ってくれるがシャルの言う通り苦戦した。その事実に俺は顔をしかめてしまった。
「やっぱりトウヤさんは納得してなかったんだね。楯無会長は強かったね…学園最強っていう肩書きは伊達じゃないね」
「ですが学園最強に勝ったのですから胸を張ってくださいまし。」
どうやら俺はセシリアとシャルに慰められているようだ。
「すまない。自分の不甲斐なさにイラついていた。これからはもっと訓練をしっかりするよ。次の楯無との模擬戦にはしっかり勝てるようにね。」
笑顔で謝ると二人も安心したようだ。
「では夕食をご一緒しませんか?」
「僕も一緒に行きたいなぁ。」
セシリアの提案にシャルも食い付き目を輝かせている。
「いつも一緒に食べてるのに何でそんなに嬉しそうなんだ?じゃあ行こうか。」
そう言いながら俺達は食堂に向かって歩き始めた。物陰から楯無が観ているのも気付かずに…。
「それで…会長は何の用なのでしょうか?」
食堂で食事を受け取り3人で席に付くと楯無までもが俺たちの席に座った。セシリアとシャルはあからさまに嫌な顔をしているが当の楯無はどこ吹く風でこちらに話し掛けてくる。
「今日はありがとう。まさか負けちゃうとは思わなかったわ。一応非公式の模擬戦だから会長の交代は約束通り無しになるわ。」
どうやら約束は守ってくれたみたいだ。
「今回の模擬戦で勝てたのはまぐれです。会長も次回は負けないと思っているでしょう?」
「そうね。弾に一発も当たらずに地雷にやられたなんて…でも負けは負け。確かに次回は負けないとは思っているけど…あなたももっと訓練しなくてはって思っているのでしょう?」
さすがは会長だ。俺の心内は完全に読まれているみたいだ。
「はい。あの体たらくでは生き残れるとは思いません。会長の腕は凄すぎです。」
これは本音だ。どうも俺は自惚れていたようだ。木連との『戦争』を経験し地球軍最強のナデシコに所属して彼らにひけをとらない戦果を挙げていた。だが楯無との模擬戦では結果的には勝ったが射撃も近接も直撃を与えられなかった。
「誉めてくれてありがとう。でもあなたの腕はもっと素晴らしい。もっと訓練をすればさらに腕をあげられるわ。」
「私もお手伝い致しますわ!」
隣に座るセシリアが俺の右腕にしがみついて協力を申し出てくれるが…
「僕も手伝うよ!」
シャルも左腕に抱き付いてきた。
二人にしがみつかれたが…なんと言うか二人の柔らかいものが俺の腕に…
「む…」
楯無が言葉の通りムッとなり立ち上がると俺の席の後ろに回り腕を首に巻き付けて抱きついてきた!!
「会長!?なにやってるんですか!」
「何って、私も訓練に付き合うわよん」
何だこれ…背中にも柔らかいものが…
「はぁ…ありがとうございます…」
「会長!あなたは忙しいでしょう?お止めになったほうがよろしくては?」
「そうだよ!会長はやめておいたほうがいいよ!」
セシリアとシャルと楯無に言葉の通り引っ張りまわされる。
右に左に後ろに体をグルグルと回された。いい加減イライラし始めてきたので声を出そうとしたその時・・・食堂中に殺気が満ちた。周りを見渡すと食堂にいた生徒達がバタバタと倒れる者が続出した。
「トウヤ・・・貴様は何をやっているか・・・」
食堂の入口に般若の姿が後ろに見える千冬が立っていた。俺の両腕にしがみついていたシャルとセシリアはガタガタと震えているが気を失ってはいない。背中の楯無だけは震えていない(顔が見えないのでそう思う)。
「織斑先生・・・周りの被害がひどすぎです。お叱りは後で受けますからひとまず怒りを抑えてください・・・」
俺が千冬に声を掛けると千冬もはっとなり周りを見回し気まずそうな表情となっている。
「それといい加減三人とも離れてくれないか?訓練ならば皆で行えば良いだろう?セシリアもシャルも楯無会長の技術を盗むチャンスだろう」
シャルとセシリアは納得いっていないようでなかなか離れようとしない。楯無は素直に離れた。
「デュノア?オルコット?」
俺が苗字を呼ぶと慌てて離れた。
「それじゃあ今後はみんなで訓練しよう。いいね?」
三人は首を縦に振り一先ずは落ち着いた?のだろうか。
さて・・・この食堂の惨劇はどうしようか・・・