ドラゴンを育てていたら いつのまにか私も強くなっていた 作:美味ケーキ
〜〜〜〜男の店〜〜〜〜
「さぁ、さぁ!端から端まで見てってよ!」
といって男は両手を広げた。
狭い店内には、まるでお祭りの出店のように、小さい武器から、当たりとも取れる大きな武器までがぎっしりと並んでいた。
「すごい品揃え!」
遥は初めてみる沢山の武器に、どの武器がどうと言うよりは、圧倒されてキョロキョロしていた。
「わぁ」
ピートはロッドが並んでいる売場に目を向けた。
「…なんだか…良さそう」
「…でも俺たち…特にこの子はまだゲームを始めたばかりで、どれがいい物なのか判断つかないんだ…」
「おうよ!そういうことなら、そうだな、お兄ちゃんはロッド使いか?」
「うん、刻印もロッドだし」
「それならこれはどうだ」
「これはヘッドの部分に、何処かの森の主が落としたとされる風の宝玉が嵌め込まれているんだ。見たところお兄ちゃんは風属性だろう?」
「うん、うん、良さそうだね。でも……そんなにお金を持ってなくて…」
「そうか、分かった。俺はなぁ、若けぇのに対しちゃ甘いんだ…出世払いでいいだろう!」
「おまえが、これからバッタバッタと倒すモンスターで何か珍しいものを落としたら、いつかこの店に持ってきてくれ。」
「え…いいの?…でもやっぱりそんな訳には…」
「その風の宝玉以上の物だ!それ以上の品質でもいい、数でもいい。お宝を持ってくることで約束だ」
といってピートの方に小指を突き出した。
「分かった約束するよ…ありがとう!」
といってピートも立てた小指を男の小指に交えた。
「あ、そういえば、良い物見せて頂けるって言うのは、そのロッドの事ですか?」
と遥が聞くと
「お、悪りぃ悪りぃ。いやな、実はな…これなんだ…」
と男は勿体ぶって、後ろから何やら大きなものを持ってきて、両手で大事そうに2人の前に置いた。
「こ、これは…大剣?」
「そうよ!ご名答!」
「でもよ、これはそんじょそこらの大剣じゃねぇんだ」
「おれの爺さんの、そのまた爺さんの代から打ち続けられ、磨き続けられた名剣さ。」
といって重たそうに鞘からゆっくり剣を抜いた。
「わぁ、すごい光沢!」
「これすごいや!」
「これでぶった斬れば、プレイヤーは勿論、どんな硬いモンスターも
一刀両断できるぜ!」
「おぉぉ!」
「でもよ、一つだけ欠点があるんだ…」
遥とピートは声を揃えて
「何…⁈」
「……重過ぎて振れねぇんだ…」
「これをこおして、グワッ…と何とか持つ事はできる」
「しかし、この柄と剣のバランスなのか、こうやって振ろうとすると…」
「おっとっと!」
といって男はよろめいて倒れそうになった。
「わわわわわ!大丈夫ですかっ⁈」
と丁度その時、バタバタバタッと小さい足音がしたかと思うと、3人の子供達が男に駆け寄った
「ねぇねぇ、父ちゃん何やってるの?」
「仕事仕事!このお姉ちゃん達に似合う武器を探してやろうと…」
「わぁ、ドラゴンだ!すごいすごい!」
と言って男の言葉には耳もくれず、ラルとキルトに触り始めた。
「ちぇっ、聞いちゃいねぇ」
「お、ドラゴン好きなの?」
3人は声を揃えて
「うん!」
「よーし、分かった!お兄ちゃんが広い所でドラゴンに載せてあげるよ」
「じゃあ、ちょっと俺は行ってくるから、遥はゆっくり武器でも見ててよ」
「うん、分かった」
「悪りぃ〜な、兄ちゃん!頼んだよ!」
みんなが出ていくと
「はぁ、ちょっと奮発して作り過ぎちまったなぁ…」
「まさか、授かるだけ授かって、嫁が居なくなっちゃうなんて思って無かったからなぁ」
といって男は視線を落とした。
「そ、そうなんですね」
「まあ、しみったれた話は置いといてだ…」
とその時
バタバタ、ガッシャン!と店の入口から大きな音がした。
「お、なんだ⁈ やけに帰りが早えぇな」
と2人が店の入口の方に目をやると…
「ダハハハのハ!この僕ちんに似合う武器はあるかな〜」
と太ってサングラスを掛けた男が、自分の髭を人差し指と親指で摘んで伸ばしながらニヤ付いていた。
そしてその隣には、青い成竜が今にも噛みつかんとばかりに牙をむいていた。