ドラゴンを育てていたら いつのまにか私も強くなっていた   作:美味ケーキ

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第12話 遥なるスキル

「お客さん?……」

 

男が

「アン」

といって指をパチンと鳴らすと、隣にいるドラゴンのネックストラップが青白く光った。

「ドゥ」

そして、ドラゴンが大きく口を開けたかと思うと、大量の魚が宙を泳ぐように出てきた。

「トゥロワーー!!」

と男が叫ぶと、その無数の魚が武器屋のマスター目掛けて飛び掛かった。

 

「キャーー!!!」

「うわ!」

ガラガラガッシャン!!

 

「痛ててててて…おい!何しやがるこの魚野郎!離せ!離せ!」

といって両手両足をバタつかせて噛み付いている魚を払う。

遥は慌てて腰に刺してあった短剣を両手で握って前に突き出した。

「あなた何なの⁈」

 

「先程この店からピンクのドラゴンが出てきたのを見て、珍しいなぁと思いましてね〜」

「それと、すみませんねぇ、僕ちんのペットがお腹が空いていたみたいなので」

 

「今度はそっちのお嬢ちゃんに…トゥロワー!!」

魚達は遥の方に方向を変えると、凄い勢いで突進した。

 

「キャーー!!」

ガラガランッ!

 

遥は、周りにあった武器を倒しながら、地面に仰向けになって倒れた。

 

ダンッッ!

その時、ピートがラルとキルトを連れて戻ってきた。

「どうしたんだ⁈」

キルトはスーーッと倒れている遥の方に駆け寄る。

 

「おやおや、ドラゴマスターのお帰りですねぇ」

「ピンクのドラゴンちゃんも…お嬢ちゃんのドラゴンだったんですねぇ」

 

ピートは状況を察し

「くそっ!」と言って、片手でロッドを握り、指を打ち鳴らした。

するとラルのネックストラップが光り、緑色のシールドのようなもので包まれた。

ピートがすかさずロッドを振り上げると同時に

「トゥロワー!!」と男が叫びながらピートの方を指差す。

 

「うわわわっ!」

ピートは無数の魚のアタックを喰らって店の外に飛ばされた。

 

「うーーん、何だかどの方も歯応えがありませんねぇ」

 

男は再びマスターに近付いて

「せめて」

ドスッ!

「僕ちんに似合う」

ボコッ!

「武器を貰えますかねぇ」

ドカッ!

とマスターを殴り、蹴り倒した。

 

「うぐっ…」

マスターは手で口を拭いながら

「俺は、あの子達の為にもこんな所でやられる訳にはいかねぇんだ」

と立ち上がろうとしたが、再び倒れた。

(マスター…)

 

「では、トドメの…」

 

ピートは

「遥!! 指を鳴らして!!」

遥は起き上がりながら

「え⁈ 指⁈」

「そう、こうして打ち鳴らすんだ!!」

 

「分かった!」

 

パチンッ!

 

すると…………………

 

 

 

何も起きなかった。

 

「だ、ダメか…」

 

遥は、慌てて手当たり次第辺りを弄ると、先程の大剣を見つけ、

もうどうにでもなれと大剣の柄を握った。

 

(え⁈……軽い……)

 

遥はそのまま両手で大きく大剣を構えた。

 

「トゥロワー!!!」

 

無数の魚が宙を泳いで遥に迫る。

 

遥は大剣を一振りし、魚達を地面に叩き落し、二振りし、魚を切り掻き分け、両手で大きく振りかぶって男に斬りかかった。

 

 

ドッフンッ!!!

 

 

「え⁈…… ぼ…僕ちんが真っ二つ…に…」

と男は光る粒子になり消えていった。

 

 

「え⁈ …………」

 

 

「これって…………」

 

 

ピートもマスターも、口をあんぐり開けたまま遙を見つめ続けた。

 


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