聖歌隊さんはアビスに潜って空をみる   作:おのれ犬、群れるな怖い

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のほほんと呑気な聖歌隊さんと(巻き込まれた)身分詐称処刑隊アルフレートくんが、昔ヤーナムを訪れた優秀な学者さん(ボ)の元にお勉強しにいく為に、アビスに不法侵入する。

前の一部抜粋、オースまでやって来た部分の続き。


ちょっと続いた1

 

「アルフレート君、その乗り出してる馬鹿を掴んでおいてください」

 

馬鹿呼ばわりされ、むっと口元を歪める様子は確認でき、とても不本意だと表明する。

 

「落ちたりしませんよ。子供ではないんですから」

 

「貴女の場合飛び込むでしょう。前科がある事覚えて居ますからね」

 

何をしたのか分からないが、一応、と肩を掴んでおく。振り払われる様な事はなかったが、肩に置いた手を掴まれたので、何かとても嫌な予感がした。咄嗟に離そうとしたが、今度は腕にしがみ付かれて不穏さが加速する。

 

「さて、どうしましょうか」

 

どうする、とは主にどう『不法侵入』を決行するかという話だ。ぐるりとオースの街を見てまわり何となくの朧げな情勢などは把握している。

その結果、ここはおいそれと異邦人の侵入は許してくれそうにないだろう。それが例え、ただ勉強しに、勢いだけで出てて来た政治的に何ら思惑も無い変人共だったとしても、だ。

そしてその『変人』の区分にいささか問題が有ったとしても。

 

勿論、強行突破は容易いが変に礼儀正しくお利口さんで優等生なアルフレートは良い顔をしないだろう。

 

「……私が何とかしますから、ちょっと二人はその辺うろついて居てください」

 

少し考えてから、謎の攻防を繰り返す同胞と身分詐称状態のアルフレートへ、手を振って見せる。まるでしっし、と羽虫でも追い払う動作だ。

 

「分かりました。行きましょうアルフレートくん。何か催し物を行っている様ですし、そちらも覗いて見ましょう」

 

妙に聞き分け良く頷き、ぐいぐいと大柄な男を引っ張り人ごみの中へ進んでいく。

当の引っ張られる青年は不安そうに、聖歌隊二名に目をやる。

 

「……大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫ですから、早く行ってください。そのこから目を離さないでくださいね。本当に突拍子もない事を仕出かすので」

 

まだ不審そうな顔をしながらも、無事に重い白い装束姿の二人組が離れて行く。復活祭に浮かれ燥ぐ人々も、異様な恰好の二人が傍を抜ける際には一瞬振り返り二度見して居たが、直ぐに自分達の興味の赴くものへ意識を戻す。これほど賑やかなら、多少奇怪な恰好の人間が居ても催し物の一環だと思われるのだろう。

 

残された方は、こそりと人通りの少ない路地に入り込み荷物を漁る。フラスコの中に閉じ込められた霧。それから注射筒、既に針は装着されている。ついでに青色の不穏な液体。

 

「どの程度体質が異なるのかは分かりませんが…、まあ死にはしないでしょう」

 

流石に毒メスは仕舞って置いた。死体を量産した後のを処理は出来ればしたくはない。

 

 

アルフレートは溜息と共に顔を覆いたい衝動にかられた。そして実行した。

主に羞恥心に寄る行動だ。

 

辛辣な事は言わないが、より扱いが面倒くさい方、と認識している人物と『その辺』を巡って居たのだが…その面倒くさい方が子供に混じって歓声とともに無邪気に手を叩いている。頭一つ分どころでなく、周りから浮いている。

それを後ろで眺めているのが、どうも恥ずかしくて居心地が悪い。

 

周りは皆、小さな子供ばかりなのにその中に臆面も無く紛れて座り『わー』などと言いながらぱしぱしと、黒い手袋に包まれた手でのんきな拍手をしている。

連れとしては恥ずかしくて身悶えしてしまう。

 

羞恥心に耐えながら、何とも低予算な人形劇とも言えない、英雄譚は販促で締めくくられる。

 

「ほら、もう行きましょう」

 

大柄なアルフレートからしたら、さらに小さく見える子供を蹴飛ばしたりしない様、慎重に近づき面倒くさい方の連れの二の腕を掴んで立たせる。

 

「はい」

 

あれだけ熱心に見つめていた割に、あっさりと頷きとことことその場を後にする。

 

「面白かったですね」

 

主にアビスという得体の知れないものを起点に成り立つ、この街での情操教育的な観点が垣間見えて非常に面白かった。

まだ医療教会が全盛期であり、教会の狩人たちが英雄として羨望の眼差しの中に有った時の様で。ただ、語って聞かせる側にもその絡繰りが見えて居ないというのは面白い。

どこぞの医療者達は確信犯だったから。

 

「…そうですか?」

 

素直に語られる話の内容に対しての感想では、正直、子供向けという印象。そして子供に語って聞かせるには随分と物騒な人物の話だったと思うのだが…。そんな事を呟く。

 

「アルフレートくんがそれを言うんですか…」

 

何故か酷く飽きれた様な声で見上げられた。そしてぽすぽすと背中を叩かれた。重い処刑隊の装束の裾が揺れる。

 

「きみは本当に心がつよいですねえ」

 

『強い』と言われたが、なんだか貶された様な気がする。腑に落ちないながらも『目を離すな』と言われた人物がふらふらと何処かへ行きかけたので慌てて大股で後を追う。

 

「う、わわわっ」

 

「おや。申し訳ありません」

 

角の多い路地を何を基準にか、とことこ前進して居た背中が止まり、少し顎を引くような動作をして謝罪する。

どうやら死角から飛び出してきた誰かとぶつかったらしい。

しかし、謝罪はするが屈んで手を貸す様な動作はしない。社交性のなさにため息を付きながら、代わりにアルフレートが手を差し出す。

 

「大丈夫ですか?怪我が無いと良いのですが…」

 

尻もちをつき、後ろにひっくり返るように転がっていた少女はぽかん、と固まってしまう。

それもそうだろう。

人にぶつかったと思ったら、何の衣装かと首を傾げたくなるような服装に、顔の見えない奇妙な帽子の人間と、同じく見慣れない妙な恰好の、大柄な男だ。戸惑うのも無理はない。眼鏡の奥の丸い瞳をぱちくりと瞬かせている。

排他的なヤーナムの人間なら、子供でも知らない人間は警戒するかもしれない。

と、ぶつかった筈の当人は呑気に考えて、転げた少女よりも足元に落ちた小さな物に意識を向けた。

 

拾い上げて見れば白い笛だ。先ほどレプリカを販売すると言って居たがそれだろうか。

僅かに首を傾げて、まじまじと眺める。手袋越しとは言え何だか引っ掛かる手触り。綺麗な白だ。骨灰磁器?この土地でどの程度白い粘度が取れるか知らないが、子供の玩具に買い与えるならもっとコストは押さえるだろう。

 

「落としましたよ」

 

物怖じせず、アルフレートの手に縋って立ち上がる長い金髪の少女に差し出す。良く表情の動く子で、大きく驚いた顔をしてから、慌てて受け取り勢いよく頭を下げる。

 

…特にどうという話では無いが、『借りて来た』処刑隊の装束は一度は誰かが着たものだ。つまりミンチ製造している。

それを纏ったアルフレートもどうかと思うが、そんな事知りもせずに手を取った少女もどうだろう。

本当に、どうと言う話ではないが。

 

ぶんぶんと二つに束ねた髪を揺らしながら何度も礼を言っては、また慌ただしく駆けていく少女を見送る。

 

「……舐めたら分かりますかね」

 

「はぁあ!?」

 

空になった指先をすり合わせ、目元が完全に隠れている癖にその指先を眺め、ぼそりと呟かれた言葉に品行方正な青年は素っ頓狂な声を上げた。

何が、とは言って無いが突然にそんな事を言う変な奴に引いている。勿論少女の事ではなく笛の方だ。

 

「そう言えば、少し前にも落し物の笛を拾ったんですよ。持ち主を探しそびれてしまって…ちょっとアルフレートくん吹いてみてください。面白いですから。でも吹いたら全力でその場から退く事をお勧めします」

 

取り出した、錆びた風合いの小さな笛をぐいぐいと押し付けてくる。しかも何やらロクでもない事が起こるらしい物体だ。

 

「吹きませんよ!何処で拾ったんですか!?地面に落ちてた物を口に含んだら汚いでしょう!落とし主の方だって、赤の他人が口を付けたりしたら、不愉快でしょう」

 

何を考えているのか分からない自由人を押し返しながら、真っ当な反論を口にする。

やはりこっちは面倒くさい。教会上層で『おそらきれい』とやっている時の方がきっとまだ大人しいに違いない。

 

じゃれ合う二人は、待ち合わせ場所等を決めて居なかったが無事に辛辣だがまだまとも(医療教会基準)に捕獲された。

 

そしてとてもどうでも良い事だが、復活祭で沸き立ってる裏で数人自我と思考力がおかしな事に成った人間が出ていた。取り敢えず、生きては居るが外傷も無く原因は不明らしい。

不思議だね!

 

 

 

 




もし、アビスの呪いが神秘の類の様なモノだったら聖歌隊は少し上昇負荷を軽減できるのでは?対ミコさん戦闘装備ですし。
え、発狂耐性?紙ですねぇ…医療教会の発狂耐性はお察しな数値してますからねぇ…。三人とも発狂して目も当てられない事に成る場合もあるのでは?『おそらきれい』な方々はもともと正気なのかちょっと怪しいですけど。
そして吹いたら直ぐ退いた方が良い笛は、あれです。蛇さんが来ます。禁域の森で拾った落し物です。ヤーナムに帰ったらちゃんと分かりやすい所に置いておいたので、例の狩人様がやって来た時はちゃんとドロップしてくれます。

一人で行動してた聖歌隊さんは狩人さんが使うおっかない霧をぶちまけたり、ブルーハワイっぽいものを本来の用途を目指して直接血管にぶち込んだりしていました。
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