全ては終わるかと思った。しかし、ここが新たな始まりだ
第5次聖杯戦争から数年。
冬木に置ける聖杯戦争に終止符が打たれた。大聖杯の解体により、魔術協会も実質的に解体、冬木に施されていた魔術自体も解体されていった。
しかし、聖杯の存在を知った人々は、その欲望を止めはしなかった。
――大阪――
「がぁぁぁっ・・・疲れた・・・」
授業終わりのチャイムがなる。少年の名前は
場所は図書館。静かな空気が、少年は気に入っていた。その場に座っていた椅子から立ち、少し背伸びをする。夕日がカーテンの隙間から入ってくる。
机に広がった教科書類と筆箱、それと本類を一気にまとめて、カバンの中へしまう。
ついでにメールを確認する。そこには姉さんからのメッセージが届いていた。
『仕送りしておいたからね☆』
ありがとう。とだけ送り返して、俺は図書館を後にしようとすると、少し背の大きい、女性の魅力がそのまま具現化したような女性と鉢合わせになる。
「あらあら、今日はもういいんですか?」
彼女の名は正式には聞いていないから分からない。だが、彼女はキアラ、そう言って欲しいと言っていた。
この図書館の司書で、一応・・・教師・・・らしい。
俺は彼女の授業を受けたことは無い。だからどう言った授業をしてるかはわからないが、この図書館に来る度に、俺に突っかかってくる人だ。
「ええ。いい勉強になりました」
「もうっ。私に言ってくださればお教えしたのに・・・」
「あなたは仕事で忙しんだ。なら自分でヒントを探しながらやるのがいいんでしょう。その方がモチベーションがありますしね。最近の若者たちが勉強しないのは解く楽しさを知らないからですよ」
「あなたらしいですね。ふふっ」
わざとらしく微笑む彼女だが、それさえも色っぽく見えてしまう。彼女の魅力か・・・あるいは何か意図的なものなのか。
渋い顔をしてる俺に、彼女は1冊の本を差し出してくる。そう彼女は俺に会うとこうして定期的に彼女のオススメの本を差し出してくるのだ。
「これは?」
「今回のは恋愛モノですわ。許されない恋・・・それを叶えるために奮闘する少年少女・・・」
「ははっ。あなたらしいや」
「あら?私に恋でもしてますか?」
「違いますよ。あなたに最初にあった時も確か俺に恋愛モノを押し付けて来たから懐かしいと思ったからです」
彼女と初めて会った時、彼女は「運命の人」なんて冗談も言ってきたが、なかなか悪い人ではないことも会った時に理解した。
その時は本の話で一日を費やした思い出がある。そして最後には彼女のオススメの本を渡された。それからこんな感じにずっと渡してくるのだ。
しかも俺が来る時間は大体把握しているらしく、俺がいる時は大体彼女もいるのだ。
「それでは。また明日」
「ええ。また明日」
彼女と別れ、図書館を出る。広く見通しのいい廊下へ出る。窓の外からは赤い夕日が眩しい。
学校の外へ出て、自身のバイクまで足を運ぶ。制服を脱ぎ、いつもの服装へと着替える。バイクに跨り、ゆっくりとエンジンを入れる。
風を切るように道路を疾走する。いつもの見慣れた光景が目に入る。風を切る快感はやはりいつ乗っても気持ちがいいものだ。
――アパート――
「ただいま」
「遅いっ!」
家に帰ってそうそう、部屋の中から怒号が聞こえる。おかしい、俺の部屋には
鍵も俺以外持っているなんてことは基本的にはありえないわけで、もし、鍵なしで入ろうなら高度なピッキング技術がいるんだろうが・・・俺の中では即効で答えが出てしまった。
恐る恐る部屋の奥へと進んでいく。そこにはお母さんのような服の上にエプロンを着るスタイルの女性がいた。
長い髪に青眼の美人だ。聞いたところによると外人らしい。このアパートの管理人だ。名前はマルタさん。
「もう!こんなに散らかして掃除もしないで!」
「マルさん・・・」
「マルタさんです!」
面倒みが良いのか、彼女は暇な時には自分の部屋に来て掃除をしたり、料理を作ったりと俺のお母さん的な存在の人だ。
初めは心から優しい人だと思ったが最近になってこの人が怖いと思ってしまう。何故か俺の部屋に来ることが怖いのだ。俺が特になにか言っているわけではないのに。しかし、そこは彼女の気遣いだろうか。
「全く!部屋の掃除は心の掃除です!ここを綺麗にするだけでもだいぶ変わるんですよ!?」
「・・・たかが本が散らかってるだけでしょう?」
「されど本です!最低限のスペースは確保しているようですがそれではダメです!何かあってからでは遅いからです!」
「はぁい」
この人は常に・・・いや、極度の心配性だ。
しかし、この人は外見は良いし、普通に家事も出来るから人気者でしかもモテるのに・・・どうして俺の部屋に来るのか。1度これについて理由を聞いたことがあるが、彼女は「気にしないでください。私がやりたいだけですから」といって気にも止めなかった。
だが、男が1人で住んでるところに女性が入ってくるのもあれだ、すごい困る。
「とりあえず明日は早いので今日は寝ますよ」
「勉強は?」
「今日はとっくに済ませました。なので明日頑張ります」
「なるほどね。それなら分かったわ。でも!しっかりご飯を食べてから寝てね!あとお風呂も入ること!」
「はーい」
このやり取りを最後に彼女は俺の部屋を出ていく。キッチンには作り置きしてある料理と、使用されてさらに綺麗になっている包丁などの用品。布団はしっかり整頓されていて、服もきっちりハンガーにかけられている。
ここまで見ると彼女がどれだけ家事ができて面倒みが良いか嫌でも理解してしまう。全く。困った人だ。
「いただきます」
とりあえず彼女に言われたからにはやらなきゃ行けない。明日文句言われるのも嫌だしね。
その日はゆっくりご飯を食べ、お風呂に入ってからしっかり寝ることにした。
――次の日――
ゆっくりと目を開ける。気づけばカーテンの隙間から日差しが入ってきていた。ゆっくり身体を起こして、窓を開けると夏に相応しい冷たい風が頬を撫で、身体全体に染み渡る。
目を擦り、時間を見る。朝の7:00、ふむ。十分な時間じゃないか。
昨日の作り置きの余りを食べる。やはり美味い。味は多少落ちてても美味い物は美味いのだ。
と、部屋のチャイムが鳴り響く。俺は誰が犯人か分かってるので敢えて無視しようとするがチャイム音はどんどん間隔を短くしていく。
「せんぱーい!いるんでしょ!?」
「鈴か・・・うるさいよ。近所迷惑」
「はいすいませー・・・って!先輩が出ないのが悪いんでしょ!」
「今どきのギャルに付き合う気はない」
「即答!?酷っ!?」
「せっかく先輩の家に寄ったのに・・・」
「残念。俺はバイク通いだから」
「後ろに乗せて☆」
「・・・まぁちょっとだけならな」
そう言って彼女を部屋に上げ、無理やり着替えさせる。その・・・バイクに乗る時にさすがに制服だと色々困るからな。さすがに最低限の防護はして欲しいものだ。
俺のバイク用をもう一着着せて、ヘルメットを被せる。
俺の後ろに乗り、腰に彼女手が回ってくる。背中には年相応の身体が押し付けられる。
「行くよ」
「はーい!」
元気な声を聞いたのでとりあえず満足。俺はバイクを走らせる。目指すはいつもの学校だ。
――学校――
「よう!お姫様っ!」
「その名前はやめてくれないか?」
教室に入るなり、いきなり肩を叩かれる。叩いた人物は
ちなみに俺がお姫様と言われている所以だが姿だろうな。俺の髪は普通の男子よりは遥かに長く、長くて腰あたりまである。そして身体が男みたく筋肉質でないことも理由に挙げられるのだろう。そして去年の学園祭、俺が女装をしたことがきっかけでお姫様、鬼姫とも呼ばれるようになった。
「今日はなんの授業を取るんだ?」
「さすがに歴史取ろうかな、そろそろ出ないとやばいからね」
長い廊下を移動しながら、そんな事を会話する。授業単位が足りてなければ進級も出来ない。学校の辛いシステムが俺たちを襲う。
いくら嫌いな授業でも取らなければいけないのが辛いのだ。特に文学系はやりたくない。
その時学園内に放送が流れる。内容は俺を呼び出すものだった。空き教室までと言われたが・・・誰だろう。
「行ってこいよ。まだ時間はあるぜ?」
「そうだな。行ってくるよ」
2階、空き教室には涼しい風が流れ込んでくる。真ん中には青服に身を包んだ人が座って待っていた。身長は自分より少し低いぐらいの・・・教師。間違いない。ライネス先生だ。歴史全般の先生で俺の事を弟子と呼んでくる人だ。ちなみに身長は少し低いものの、教師だ。ちゃんとした教師なんだ。
「おお!弟子よ!来てくれたか!?」
「はいはい。来ましたよ」
「何故嫌そうな顔をする!こちらへ来い来い!なでなでしてやるぞ?」
「・・・遠慮します。子供じゃないので」
この人は色んな意味で絡みにくい。やれ色々あって弟子と呼ばれるようになったがそれすらも人前では結構辛い。教師の威厳はあるのか・・・と問いたい程だ。
しかしたまに見せる真面目な表情や仕事をこなしているのを見ていると憧れるものもある。
「ところで弟子よ、今日は何の授業を取るんだ?」
「今日は歴史ですよ、さすがに点数が足りないのでそろそろ出ないとマズいと思いましてね」
「そうか・・・今日は私じゃないんだよ・・・」
「え?」
「今日はキアラなんだよ。全くあの女に任せたくないんだよ・・・むー」
なるほどな。俺に会いたいだけにこの人は職権乱用をしたわけだ。なんて人だ。
しかしキアラさんが今日やるのか。あの人は定期的にくるが彼女の授業には全くと言っていいほど行ったことは無い今日は何の授業だろうか。
しれっと俺の膝に頭を寄せてくるライネス先生。ぺちっと手で払うがゾンビのように再び起き上がっては寄ってくる。こういう所がなければ素直に憧れるんだけどなぁ。
「ん?もうこんな時間か」
「む?もう時間か?」
「ええ。名残惜しいですがここで失礼します。先生」
「仕方ないな、また会おう弟子よ!」
「はいはい。お元気で」
予鈴のチャイムが鳴り響き、俺はライネス先生の元を後にする。別れ際になでなでされたが気にはしない。授業が行われる教室まで移動する。
歴史の授業。今日の担当はキアラさんだから内容は地味ーに分からない。まぁ聞いてれば終わる授業だから時間まで真面目にやるか。
授業を受ける教室には今日は俺を含め2人だった。例の御門だ。先に席に座ってこちらに手を振っていた。俺はバイク彼の隣の席に着席する。
「今日は2人だな」
「まぁいつもの光景だろ?俺らは人がいないところを責めてくからな」
「サイコーだな!」
「はいはい。授業を始めますよ?」
俺たちが談笑で盛り上がってる時、キアラさんがちょうどよく教室に入ってくる。教壇へ上がるとこちらに笑顔を向ける。さて・・・歴史の授業の始まりだ。
「今日は2人なのでちょっと難しい話・・・そうですね。古代の遺物について勉強しましょう」
――数分後――
「・・・以上が、この日本の遺物、三種の神器ですわ」
「うへぇ・・・なげぇ・・・」
授業の半分が過ぎ、俺たちは既に充分すぎる情報量を得ていた。しかし彼女は趣味のことを話し始めると止まらない。俺たちの情報整理が終わる前に彼女は次の話をしだす。
俺は次々と流れてくる情報をノートに書き込んでいくが、隣に座っている御門は既にダウンしていた、疲れからか、机に屈している。
まぁ無理もない、この授業は本来なら流してもいい内容だ。しかし単位を取るためにどの道出なければならない。が、隣の御門は最初こそ盛り上がっていたものの、今はこのザマだ。
キアラさんもキアラさんで大概だ。少しぐらいこちらに配慮して話しやすい話題をしてくれてもいいのに。それすらも無視してしまう。まぁ、彼女らしいから放っておくが。
「最後に聖杯の話ですわ」
「ん?聖杯・・・?」
聞きなれない言葉が入ってくる。てか、最後って言ったから隣の御門も息を吹き返したように起き上がってくる。そのまま倒れてくれればいいのに。
聖杯・・・架空の遺物であり、実際に実在したかどうか分からないものだ。俺が聞いた話ではあらゆる傷を癒し、美味な食事をもたらしたりする神の持ち物。だが。
「聖杯は架空の遺物でしょ?わざわざ授業するほどじゃないと思うが」
「いえ・・・聖杯は実在したのです。数年前に数回ほど」
俺たちは驚きを隠せなかった。あれほど架空の遺物と言われていた程の伝説が存在しただって?俺は隣の御門に視線を向けるが何故か彼は真面目な表情でキアラの次の言葉を待っていた。
「数年前に起こった事件を・・・貴方たちは知っていますか?」
「それは・・・」
「・・・」
「
俺たちはこの時、この話が本当に存在するなんて考えてもいなかった。