少年は聞く、伝説の話を
少年が思考する。自分の目的を
そして人は憎悪と欲望に満ちた戦争へと歴史を戻していく。
天秤は罪の重さを測るが、人の罪は、生きているよりも価値が重い。
――授業後――
お昼の時間になって俺たちは食堂まで来ていた。
「せんぱーい!あーんって!」
「近づけるな鬱陶しい。御門!どうにかしてくれ!」
「可愛い後輩がいていいな」
近くに座ってるのは御門、そして後輩の鈴鹿だ。鈴鹿が隣で、御門が対面だ。それぞれ違う料理を食べている。先程から鈴鹿がおかずを押し付けてくる。御門は呆れながらも箸を進めていた。
嫌々、彼女が差し出してくるおかずを口に含むと彼女は「これで私は先輩の旦那さんですね!」とか言ってくるが俺は涼しい顔でご飯を食べ進める。
「・・・で?御門は午後の授業はとるのか?」
「いや?このまま帰るつもりだ」
「そうか・・・」
「お前は?」
「俺は再び歴史かな?次はライネス先生の」
「ご愁傷さま。頑張れよ?」
「せんぱーい、勉強教えてください〜」とすり着いてくる鈴鹿を引き剥がしながら俺たちは食器を返し、食堂を後にする。御門はそのまま荷物をまとめて帰っていった。
鈴鹿は俺より下の学年のクラスへと戻る。彼女は最後にウインクをして去っていくが、俺は気にすることなく、自分のクラスへと戻っていく。
「じゃあな」
「おう」
――御門side――
「ただいま」
家に帰って一声。しかし返事はない。
それもそのはず。もうこの家には誰もいないのだ。御門は荷物を玄関先で放ると直ぐに奥の部屋へと向かう。
奥の部屋には祭壇・・・それと召喚陣みたいなのが部屋一体に敷かれていた。
黒魔術のような陣に真ん中に置かれた生け贄のようなモノ。それと所々光っている蝋燭が不気味を醸し出していた。
「・・・よし。そろそろか・・・今日は予想外だったな」
夕方。日が落ちきる頃。それは彼の目の前の陣が意味を成すその時であった。
右手を前に出し、小声で魔術詠唱を開始する。始まりと同時に周りには霧が発生し、魔術陣が光を伴う。
「
降り立つ風には壁を。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる
――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この
誓いを此処に。
我は
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!
――御門 自室――
「・・・やったか」
魔術詠唱のあと。彼の目の前には黒い霊衣を身にまとった黒髪の女性が紅き槍を背にして跪いていた。赤い瞳から出される視線に少し後ずさってしまう。
彼女のことは知っている。現代文書では「アルスター物語群」の「エメルの求婚」で読んだことがあり、さらには独自でも調べたことがある。ルーン魔術の継承者にして「神殺し」の異名、さらには影の国の女王など、いくつもの名を持った女性。かつての英雄、クー・フーリンの師匠でもあるこの女性。クラスはランサー、名はスカサハだ。
「・・・サーヴァント・ランサー。召喚に応じて参上した」
「来たか・・・」
「なんだ小僧、貴様が召喚したのか」
「小僧で悪いっすね。どう見ても他にはいないでしようが」
「なるほどな。いやすまなかった。それで?私が呼ばれたと言うことは
この女性の言うことは間違ってはいない。俺がコイツを呼んだのはそういうことだからだ。しかし、召喚はできた。これで俺も
「そうだ。せいぜい俺を勝たせて見せろよ?ランサー」
「ふっ。私を倒せるものなど、この世界にいるのか?」
「ここまで強いお前だといないだろ。せいぜい頑張ってもバーサーカーぐらいだ」
このランサーは正直アタリだ。下手な強いヤツを引くよりもアタリだ。スカサハは万能故に魔術も使える、さらには「神殺し」の異名があるからそれなりに戦えるだろう。
それに彼女の持っている魔槍、「
「それで?私を召喚して終わりと言う訳では無いだろう?」
「まずは教会だ。お清めをしないとな」
「・・・戦いでは無いのか」
「戦いも連れて行ってやるよ。その後でな」
俺は少し大きめのコートを羽織り、その中にいくつかナイフを仕込ませる。俺の使う魔術は操作系、小規模な物質なら問題なく操作できるものだ。しょぼい。
まぁ、現代に置いて魔術はそう簡単にぱーぱー使えるものでは無いからな。こればっかりは仕方ない。
「よし・・・夜になったら出るぞ」
「それまで何をするんだ?」
「・・・現代の暇つぶしを教えてやる」
――大阪 大阪市 市街地――
「ほう。ここら辺はまだ明るいな」
時間は丁度夜、俺たちは早速教会に向かうべく外を歩いていた。
ちなみに召喚の後、俺たちはチェスをしたりお茶を飲んだり、お菓子を食べたりとまさに現代チックな過ごし方をしていた。
駅周辺はまだ街灯が付いていて明るいところが多い。俺たちはなるべく光を避けてくらい所を歩いていた。
「さて・・・教会というのは?」
「すぐそこだ・・・ほら」
たどり着いたのは少し古い教会、レンガ造りなのが歴史を感じさせてくれる。重い扉を開けると、明るい光が差し込んでくる。奥には神父らしき人が立っていた。
彼のことはあまり知らないが言峰の姓を名乗っていた。つまりは魔術教会系列の人なのだろう。恐らくこの人が今回の戦争の管理人でもある。
「来ましたか」
「頼みますよ・・・」
スカサハ・・・ランサーの清めが始まる。その間。俺は教会の端で腕を組みながら椅子にもたれかかる。
召喚されるサーヴァントは7騎、伝承ならセイバー、そしてバーサーカーが当たり枠と言われているが、今回ばかりは負ける気がしない。
手持ちの小説で時間を潰す。内容は猟奇的な物だが、俺は個人的には好きだ。殺人鬼の悲しい心を考えるということが最近の楽しみだ。文章を読むことも。
これを勧めてくれたのは慧だった。アイツは「これの方が心情はわかるだろ」とか言いながら、俺にゆっくりと勧めてきた。
「終わったぞ」
気がつけば、スカサハが目の前にいた。服はライダーズスーツみたいな感じになっていて、召喚した時に背負っていた
「じゃあ行くか」
「わかった」
俺たちは教会を後にする。
外の街灯はほとんど消えていて、駅周辺ですら暗く見える。俺たちはとりあえず手当り次第街を歩いていく。
微かに魔力は感じる。しかし、誰かのなんて細かく気にしている暇はない。サーヴァントの魔力は通常の人間の魔力より遥かに大きいのだ。外に出歩いていれば大体わかる。
このスカサハもそうだ。コイツの隣にいるだけでそうとうの圧を感じる。
「どうしたのだ」
「なんでもねぇよ」
サーヴァントっていうのはこうも鈍感なのか。あるいは自分の力を自覚してないからなのか。キョトンとした顔でこちらを向いている。
「これだから女は・・・」
――月夜 学園周辺――
「ここら辺にも何も無いか」
「ハズレだな。次」
俺たちは魔力の赴くままに、街のあらゆる所を行き来していた。これで4箇所目、ハズレばかりだ。
スカサハも「どうする?」と言わんばかりの顔をしている。いや、この顔はただ、戦いたいだけだろ、こいつは。
そんなことはどうでもいい。ここを後にしようとするが、校門から出るところでスカサハに止められる。左手が俺の前に差し出される。
スカサハの視線の先にはタバコが捨ててあった。この学校でタバコを吸うやつは教師だろうといないはずだ。なのに何故・・・
その疑問は一瞬にして答えに変わる。そのタバコに火が着いた途端、あたりが大きく燃える。
俺はスカサハに抱えられ、何とか校舎の入口まで運ばれる。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。誰が!」
その直後、俺はスカサハに思いっきり蹴られる。無防備な俺の体は校舎の中に容赦なく叩き込まれる。
「何やって・・・!?」
意識が晴れて目の前がクリアになると、そこには黒衣の狩人が、赤髪の、ランサーに比べたら少し露出の多いサーヴァントらしき人物と対峙していた。魔力量は常人のじゃないから恐らくサーヴァントだろう。
問題はそのクラスと英雄の名前だ・・・バーサーカーだけは避けたい。
「ランサー!そのまま押し返せ!俺たちの有利なところまで下がるぞ!」
「マスターがそういうのなら任せよう!」
鍔迫り合いを弾き、そのまま
「急ぐぞ!」
「逃がすなライダー!追うぞ!」
どこからか低い男の声が聞こえる。なるほど、相手はライダーだな。バーサーカー出なければなんでもいいや。しかしあの赤髪・・・そして西洋式の盾と剣、間違いではなければあの英霊は「ブーディカ」、本の内容が確かなら彼女もケルトの女王の名を持つ女性だ。そして、ローマ帝国に対して反乱を起こしたロンドンを破壊したこともあるとかないとか。
しかし、広いところにいればどの道、他のサーヴァントがやってくるかもしれない。ならば好都合だ。この学校は俺の方が詳しい、狭い場所に持ち込んだらこっちが有利だ。槍は広いところより狭い場所の方が有利だろ。
「三階まで行く。俺の教室を荒らすぞ」
「よいのか?」
「当たり前だ。戦いに犠牲は付き物だろ?」
後ろから追撃の音が聞こえる。向こうも激しいのを望んではいないようだが、どうせ1on1の時には派手になるんだ。
俺たちは初めに教室に入る。後から続いてブーディカ、そしてそのマスターらしき人物が後からゆっくり入ってくる。
マスターの男は口元にタバコがあった。なるほど、あの男が魔術師で間違いないようだ。
「ほう・・・ここを死に場所に選んだか?」
「いや?死ぬのはお前だろ・・・っ」
「死なせないよ?なんだって私がいるからねっ!」
盾を前に、地を蹴ってライダーは突撃してくる。ランサーは俺の前に出て槍で突くが盾を貫通することはなく、むしろ弾かれ、外側に吸い出される。
魔力で強化されたのか、まさに全てを護る堅牢な盾だ。
「どうすればいい・・・」
俺は頭の中で作を広げながら、目の前の敵を睨んでいた。