もちろんそれは他人にも聞こえるわけで・・・
――月夜 学園 校内――
(なんだよアイツら!正気かよ!)
俺たちの教室の中では、紅い槍をもった黒衣の狩人と、盾と剣を構えた赤髪の女性が対峙していた、その後ろには二人の男が見える。
片方はタバコを口に・・・もう片方は・・・!?
「御門!?」
その直後、俺の身体に冷たい空気が流れる。身体はすくみ上がり、瞼は大きく開いていた。
そんな俺とは反対に後ろからは凄い熱量を感じた、触れただけでも火傷しそうな、まるで炎が後ろにいるようだった。
「すいません。あなたは
彼女は白く・・・だがその瞳は獲物を見るかのように鋭い目をしていた・・・。
その直後、俺は返答する暇もなく身体が吹き飛ばされる。教室内にいた4人も即座に反応してお互いに距離をとる。御門は俺の姿を見て大きく目を広げていた。
「なっ!?一般人!?」
「慧っ!?」
「あら、
俺の口から赤い液体が出る。意識は朦朧としていて、身体は地に打ち付けられたように重たかった。白い着物の女性はさらに俺の目の前まで来るがその直後に黒衣の女性に吹き飛ばされる。空中で体勢を直して次はその人に攻撃しようとするが、次は赤髪の女性に盾で飛ばされる。
御門の声と、野太い男の人の声が聞こえる。御門たちは俺の方に来る気配は無く、場所を移動しながら指揮をしているようだった。
身体が痛い。どこか骨が折れたのか、もう自分では分からなかった。手を地面に貼り付け這いずるようにして地面を張っていく。今の俺がどれだけ情けなくてもいい。それでも俺の身体が生きたがっている・・・。
俺は小声で詠唱を始める。かつて、姉さんの姉さんの部屋にあった本に書いてあった魔術と呼ばれるものだ。
~~~~~
素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総すべての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷しく者。
汝 三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!
~~~~~
――???side――
目の前には死にかけのマスター。そして広がるのは戦場。私はとにかくマスターの救出へと向かっていた。
「マスター!?大丈夫ですか!マスター!」
これを2回、3回やる。マスターの意識の回復予兆はなし、しかし脈はあり、マスターの生命機能はほぼ正常、しかし異常はあり。
背中部分に近い壁に打撃跡あり、マスターはここにぶつけられた可能性・・・と、考えてる場合じゃないですね。
私はマスターの耳元に「ちょっと離れますね」と小声をかけるとそのまま建物を駆ける。
強力な魔力を三つ検知、この上層階で戦闘している模様、その中には人間、マスターと思われる魔力も検知、ひとつはランサー、もうひとつはライダー、最後はバーサーカー。
段差の多い場所を登り終え、主戦場となっている場所へと到着する。私は刀を腰から抜き、目にも見えない速度で間へと割入る。
ライダー、ランサーの武器を刀で弾き、バーサーカーの扇を足であしらっていく。
大きくバーサーカーの身体がのけぞるが空中で、しっかりと体勢を立て直しゆっくりと着地する。
「何っ!?」
「あら・・・また毒蛾が・・・」
「誰が毒蛾ですか!私は・・・っ!?」
「邪魔をしに来たのか知らんが丁度いいな。マスター潰せばよいのか?」
「まぁまずはバーサーカーの処理だ。頼むぞ」
「ライダーは正面から受け止めてくれ」
「了解したよ、マスター」
ライダーとランサーはバーサーカーから処理するようですね。ならわたしもそれに乗って差し上げましょうか。
ライダーが正面を突破する。バーサーカーから火球が飛んでくるがライダーの盾で防ぐ、ランサーが横から詰めるのが見える。なら私は逆からでも適当に詰めましょうか。
ランサーの槍を素手で、私の刀を扇で受け流すとそのまま私たちの足元に炎を発生させる。私たちは受け身を取って被害を減らす。
「ライダー!」
「ランサー!」
「旦那様がお呼びなので・・・これで失礼しますね?」
「待てっ!ランサー!逃がすなよ!」
「っ!?炎か!」
ランサーが追撃しようとするが置き手紙するように炎をバーサーカーは置いていく。ランサーの追撃はそこでとまってしまう。
そう言えばマスターはだうなつたのでしょう。私は急いで戻ろうとするが、目の前にはライダーとそのマスターが立ちはだかる。
「どこに行く気だい?」
「悪いけど・・・マスターと離れてる今がチャンスかな?」
「・・・やりますか?私は構いませんが」
「やめろオッサン。時間だ」
後ろにいる少年はそう言うと外を見る。ふむ、どうやら日差しが差してきてるみたいですね。これは早く退散しましょうか。
「・・・潮時だな」
「行こう?マスター」
ライダーとそのマスターが、先に窓を突き破って逃げていく。追おうとしたが、ランサーがこちらに槍を向けていたのを見て、私は即座に警戒態勢を取る。
「・・・どうする?マスター」
「こっちも引こう。こうなっては、対策を練るしかあるまいよ」
ランサーとそのマスターも退却する。私は一息つくと、マスターがまだ倒れているであろう場所まで急いで向かうのであった。
―――慧 side―――
声が聞こえる。女性の声が。
「・・・マスター!マスター!大丈夫ですか!」
うるせぇって言いたいの声がぐらい耳に響いてくる。身体は未だに満足には動かないが生きてるのを示す程度には動く。
ピクピクしながら腕を動かす。伸ばすように出した手は声の主に握られる。
「・・・うるせぇ・・・」
「マスター!?ご無事でしたか!」
「君は・・・?」
時代で言う羽織りと腰に刀を背負った少女が目の前にいた。この水色と白の羽織りは、江戸時代に発足した新撰組のものだ。
彼女はもしかしたら・・・いや、もしかしなくても幕末の天才、沖田総司かもしれない。
「ぐっ・・・がっ!?」
「わわわ!?まだ動かないでください!」
立とうとするが身体の痛みが酷く、ふらついてしまうが、彼女が慌てながらも支えてくれる。
彼女の手は暖かった。もう死んでいる人間とか関係なく、それは生きている人間の手だった。
彼女は過去で死んだ・・・つまり今彼女は生きているのだ。
「・・・大丈夫・・・」
「ダメです!私が支えながらお供します!」
「家の場所言うから送ってくれ」
◇
「・・・それで?君はあの
部屋に戻り、俺は彼女から一通りの説明を受けていた。彼女は英霊と言う存在であること、サーヴァントクラスはセイバー。剣を操る英霊。
・・・しかし、彼女を何故召喚できたのか、なぜ俺の口から詠唱がでたのか謎である。この疑問に答えてくれる人はここにはいなかった。
「はい!新撰組1番隊隊長!沖田総司です!」
「・・・そう」
とりあえず俺はまだ開けてないダンボールの山を漁る。凛、凛・・・あった、凛姉の荷物だ。
前にもちょっとだけ言っていたと思うが。俺には姉がいる。二人の。1人は姓は違うものの血は俺の姉さんと同じ人だ。大姉さんと呼べばいいだろうか。
そんな凛姉が送ってきた荷物は本類だ。
その中に・・・あった。姉さんの古い本、所謂魔術書だ。
「それは?」
「姉さんの荷物さ。俺が欲しいって言って無理やり詰め込んだものだ」
その他には姉さんの日記やメモが。そのとなりのダンボールには桜姉さんの荷物が入っていた。主に料理本だが。
姉さんの持っていた魔術書を読んでいくと、やはりそこには聖杯戦争に関しての記述があった。
令呪による強制命令。勝ち残った勝者の行方・・・。
聖杯戦争とは基本、七騎の
しかし、姉さんの手記には聖杯戦争は無くなったと書かれているが・・・。
「・・・もしかして誰かが蘇らせたのか」
その時、誰かの腹の音が鳴る。安心していたせいで、その音で余計にビビるが、音の張本人はビクともしない顔で「ご飯ありますか?」と俺に尋ねてきた。
「・・・マルタさん」
「この時間まで・・・って!あなた!怪我してるの!?」
俺の服に残っている微かに赤い血。彼女はそれを見た瞬間慌てて近寄ってくる。
服は帰って着替えたし、傷はほっとけば治るものだと思っていたが・・・やはりこの人の観察眼はスゴすぎる。小さい痕跡すら見逃さないとは。
俺の言い分を無視してマルタさんは俺を椅子まで担いで行く上着だけを脱がし、テキパキと消毒してくれる。まるで慣れてる。
「・・・何があったの」
「あなたに言う必要が?」
「力になれるかも」
「ダメです。マルタさんは関わるべきじゃない」
「・・・もしかしてその娘関係?」
マルタさんの鋭い視線の先には、沖田さんがお腹を空かしてゴロゴロしていた。
しかし、マルタさんは一般人だ。聖杯戦争の記述には
(・・・最悪。存在を抹消されて事故として処理される)
魔術教会と言う記述もある。故にこの戦争の管理者はもしかしたらそうするかもしれないという俺の考えだ。もし合っているのなら・・・この件にマルタさんを関わらせふ訳にはいかない。
「・・・言えないことなの?」
心配している顔でマルタさんは俺の瞳を見てくる。こういう時のマルタさんは手伝ってくれる。俺が困った時も、悲しかった時も一緒に考えてくれた。しかし。
「これは俺の中で解決することです。マルタさんは関係ありませんよ」
「・・・そう。でも何かあったら呼ぶのよ」
今は・・・その言葉だけが俺の心を締め付けた。