久しぶりの休日。それは誰も知らない日になる。
姫ちゃんの家訪問を終え、お昼頃、俺たちは大阪の市街まで出てきていた。時間はそろそろご飯を食べる時間なので今日は外食にしようと食べれる場所を探していた。
沖田さんはこういうのは初めてらしく、店を見る度見る度に俺に話しかけてきて大分鬱陶しい。だが、たまにはこういうのも悪くないと言う俺もいる。
「・・・沖田さん」
「はい!沖田さんです!」
「なんでもないや」
呼び方もいつの間にか「沖田総司」とフルネームから「沖田さん」に変わっている。というのも、彼女が「私の名前呼びにくくないです?そうだ!マスターがお好きにお呼びください!」と言われたから仕方なくそう呼んでいるだけ。少し子どもっぽいからこの呼び方は嫌いだが喜ばれているならまぁいいか。
少し歩いていると沖田さんが腕を引っ張ってくる。彼女の視線の先、そこには・・・俗に言うスィーツが並んでいるお店だった。和、洋問わず取り扱っているお店だ。
「目がキラキラしてやがる・・・」
「お!?せんぱーい!」
と、沖田さんが食品サンプルに目を取られている時、俺の後ろに重みがのしかかる。学校の後輩。
「来てたんだ」
「当たり前です☆ここはJKにもお気に入りのスポットなんですよ?」
「へぇ・・・」
生憎。俺は女子ではない。だから女の子の気持ちは分からないが・・・まぁ鈴鹿が言うなら間違いないんだろう。それに彼女の息抜きにも出来そうだしな。
「ならついてきてくれないか?」
「えー!?しょうがない!先輩が久しぶりにデレちゃったからね!」
「ありがと。沖田さん。行くよ」
「え!いいんですか!」
「置いてくよ」
沖田さんの手が俺の腕を掴んでくる。三人揃って鈴鹿オススメのお店へと入店する。そこは不思議と落ち着く場所でログハウスみたいな雰囲気を漂わせる店内を見せてくれた。
「いらっしゃい」と出てくる店員さん。この人は「メディア」さん。ここの店長の奥さんで歳とは裏腹に幼女の見た目をしている何とも不思議な人である。一部の人からは魔女と呼ばれるぐらい美しい人なのだ。
「あら、鈴鹿ちゃんまた来たの?」
「そんそん!今日は先輩も一緒っちょ☆」
「久しぶりね、慧くん♪」
「お久しぶりです。お店には久しぶりに来ましたが・・・結構変わりましたね」
ここに来たての頃、俺はここにお世話になっていた。居候させてもらい、メディアさんに料理を教わったり、夫の「イアソン」さんにDIYを教えてもらったりした。そしてそこから数年。お店がここまで変わっていたのには驚いた。しかし、メディアさんの見た目は全くと言っていいほど変わっていない。不思議なもんだな。
奥のキッチンではイアソンさんが優しく手を振っているのが見える。この二人は両方料理できるからこれから産まれてくるお子さんは困らなさそうだな。
「あら、私も?」
「メディアさんはいつも通り綺麗ですね」
「むぅ・・・」
「ふふっ。ありがとね」
メディアさんの笑顔は普通の人とは違う何かを感じる。なんと言うか、惹かれるものがあると言うか。まぁ、とにかく普通の人とは全然違う人だ。言葉では説明できない。
俺たちは角の席を取る。俺の対面に鈴鹿が、そして俺の隣には沖田さんが座る。
メニューは前のから大幅に変わっている。あの人たちは日本人じゃないから洋スィーツが多いが日本の甘味にも挑戦しているらしく。メニューも甘味が多くなっている。
「あんみつとパフェください」
「あたしはパンケーキ」
「はーい。ちょっと待っててね♪」
メディアさんがキッチンの方へと消えていく。ここは基本は二人、たまにバイトの人も見るがそれでも二人でやってることが多い。
イアソンさんもなんだかんだ優しい人だ。が、ちょっと性格が難しい人で背伸びをしているというか・・・頭が高いと言うが・・・。
「お待たせ♪」
「先輩先輩!パフェ凄くない!?」
「・・・わぁ」
パンケーキとパフェとあんみつが運ばれてくるがパンケーキは四段積んであってさらにパフェに至ってはなんだろう。装飾品が凄い。まるでパフェというよりは・・・芸術品なのではないだろうかと思ってしまう程だ。程よく刺さったビターチョコ、そしてトロトロと流れるイチゴソース。そしてアイス、フルーツ、そしてクルミ、チョコクリームと何段も積み重なっていた。
そして何より一番目を引いたのが・・・一番上に刺さった謎の剣だった。神話にでも出てきそうな聖剣の形をしていた。それも七本。
「どうかしら♪今日は張り切ってみたわ!」
「いや・・・これ・・・」
「嫌だったかしら?」
「・・・嫌じゃないです」
しゅんとした顔は心に直接苦痛を与えに来るはっきり分かるんだね。正直こんな凄いものを作ってくるなんて思っても無かった。てか、俺頼んだのパフェだよね?なんでこれが?
「俺からのサービスだ!それに久しぶりに来たんだ!新作食ってけよ!」
奥からイアソンさんの雄叫びが聞こえる。久しぶりに会う相手にこれをやるのは・・・そう考えたが、ここまでやってくれて言い訳はできない。覚悟を決めて食べることを決意する。
ちなみに隣の沖田さんはあんみつに夢中で団子を食べて幸せそうな顔をしていたり、鈴鹿はこのパフェを色んな角度から撮って写真を上げていたり・・・ほんとに、凄いです。
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「ご馳走さまです」
「は〜い♪よく食べたね♪」
「味はどうだった!」
数時間の死闘の末、俺たちは目の前のパフェを完食した。その前にパンケーキと言う試練があったが。鈴鹿はパンケーキを食しているうちにダウン。結局パンケーキの半分以上は俺が食して問題のパフェへ。三分の一食べたところでダウンしたが目を輝かせていた沖田さんが結局全て食してしまった。なので味と聞かれても・・・ほとんど語れないのである。
メディアさんとイアソンさんの目の輝きが痛い。感想を待ってるワクワク顔だけどごめん。食べすぎて語れそうにないんだ。鈴鹿も同様で彼女は机に倒れている。
「お、美味しかったですよ」
「良かった♪ね?あなた」
「そうだな!今度からこれを看板メニューにしようか!」
止めて上げてください。というかやめて。そのまま行くとこのお店が大食い選手権の定番のお店みたいに周りが定着させちゃうから二人には悪いけどやめて欲しいです。でもこの笑顔には何も言えない。
「先輩・・・お会計・・・」
「俺がやるよ。鈴鹿。今日はありがとね」
たまにはこういう所で先輩のいい所を見せないとな。俺は伝票を手に取り、レジまでゆっくり、歩いていった。
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「・・・もう夕方か?」
「早いものですねぇ・・・あっ。夕日ですよマスター!」
家のベランダ。布団を取り込んでいると雲ひとつない空の端に落ちていく夕日が見える。それを見る沖田さんもなかなかに様になっていて見とれてしまう。手にある団子されなければ完璧なのになぁ・・・。
あれからちょっとずつ買い物をした。和服を買いに行ったり、和菓子を買いに行って試食もしたり、沖田さん用の寝間着、普段着を買ったり、下着を買ったりした(鈴鹿同行の上)・・・Fぐらいあるって聞いたがFってなんだ。Fって。
「ところでマスター、夜はどうするんです?」
「・・・戦いに行くとでも?」
「聖杯戦争は始まってるんです。いつどこから敵が来るか・・・」
その時、家のベルが鳴る。マルタさんかと俺は思ったがあと人はベルは嫌いだ。近所迷惑と言いながら入り口を思いっきり叩きながら大声で叫んでくる人だ。そんな人が今更ベルなんか使うものか。
沖田さんが構える。それもそのはず、この部屋の入り口の向こうには大きな魔力を感じるからだ。沖田さんと同じぐらいか・・・それ以上の強大な魔力を感じる。
扉に手をかける。不思議と開ける手は重たい。
「・・・いない?」
が、扉をゆっくり開ける。しかし、開けた先には誰もいなかった。外へ出て改めて周りを確認する。しかしこれといった人は見当たらず、部屋へ戻ろうとしたその時、俺の身体は沖田さんに引っ張られる。
壁に思いっきり叩きつけられ、一瞬意識が落ちかけるが、目を開けた次の瞬間、俺の視界に入ったのは刀を振るう沖田さんの姿、相手はこの前の黒衣の槍使いだった。
「沖田っ!」
「マスターはそのまま隠れててください!ここは私が!」
沖田が部屋の前のロケーションで槍と打ち合う。しかし、リーチは槍の方が長く、沖田がじりじりと後退させられる。飛んでくるような槍捌きが沖田を襲う。紅い槍は確実に彼女を捉えていた。
身体の位置と刀を駆使してなんとか耐える。しかし、このままではいつか押されてしまう。
沖田は槍の先を地面に叩きつけると刀を滑らせ目の前の女性―――ランサーに向けて切りかかるが、ランサーは姿勢を落とすとスレスレで回避、そのまま脚で沖田の身体を捉え、蹴り飛ばす。強めの蹴りが当たり、沖田の身体はさらに後退させられる。
「ふふふ・・・逃げ切れるか」
「くっ!場所を変えなければ!」
沖田は手すりを超え、下に降りる。幸いここは二階。着地の衝撃、硬直なく動ける。ランサーもそれを見て追撃してくるように降りてくる。
しかし、この戦場・・・時に広い場所では、沖田の力が真に発揮される。
瞬間、沖田の姿が消える。彼女が居た位置には多少の砂埃があるだけで、彼女の姿はランサーの視界には映っていなかった。そして次の瞬間、ランサーは槍を横一閃に振るう、その槍の先に何かが当たった完食がする。
槍を振るったランサーの後ろ、そこには刀を振り終えた沖田がいた。彼女もランサーと同様に横一閃に振るったようだ。
彼女の能力、縮地法だ。膝の力を抜き、前に身体が倒れる力を利用した、所謂「滑り足」だ。大きな筋肉運動がなく、動き出しが分からない上に、気を抜けば「一瞬」で距離を縮める技である。
一歩で距離を縮めるのは「二歩一撃」だ。これだけは間違えては行けない。
「・・・消えたか。厄介な」
「ランサー。あなたでもこの速度は追えないでしょう」
黒衣の槍使いと沖田さんの戦いは凄かった。だが・・・それ以上に俺の心に残ったのはそれだけじゃない。
「久しぶりだな。慧」
「!?」
声のする方向。そこには俺の親友・・・天月 御門が見たことの無い服に身を包んで立っていた。