「ここで……終わるのか……」
1181年弧月の節、士官学校の教師ベレトは帝国兵の凶刃に倒れた。時を戻す「天刻の拍動」も使い果たし、最早生き延びる術はなかった。彼の意識は暗闇へ沈んでいった…。
─ ─ ─
「おぬし!」
…!
「おぬしおぬしおぬし!疾く目を覚ますのじゃ!」
ゆっくりと目を開ける。見紛うこともない、緑の髪の少女。ソティスが目の前に立っていた。
「消えたと思っていた」
「消えてなどおらぬわ!『ひとつになる』と言ったじゃろう」
「何故ここに?」
「そうじゃ!おぬしが開口一番消えたなどと言うから忘れておったわ」
ソティスはいつもの玉座に座って、すうと息を吸い──
「この大馬鹿者っ!時を戻す力が枯れるほどまでに乱用して、そこまでして死ぬとは何事じゃ!」
「すまなかった」
「言い訳はきいてやろう。いったい何の為にこんなことをしたのじゃ?」
少し考えてから口を開く。
「生徒たちが誰も死なない、平和な世界にしたかった」
「おぬしのことじゃからな、そんなことじゃと思っておった…。じゃが、三国の主たちの師たるおぬしが死んでしまった今、この世界の未来には闇しかないじゃろう。犠牲の上に成り立つ平和すらも、おぬし無しには実現しないじゃろうな」
「…!」
自分の存在がそこまで大きなものだとは思っていなかった。
「そこでじゃ。おぬしに生き返るチャンスをやろう」
!?
「そんなことができるのか」
「忘れておるかもしれんが、わしは『はじまりの者』神祖ソティスじゃ。容易くとはいかんが蘇生くらいできるわ」
なるほど、そういうことか。
「さて、その方法なのじゃが…、厳しいぞ。その覚悟はあるか?」
「もちろんだ」
迷うこともなく即答する。
「そうか…。では、説明するぞ」
「生物を蘇生させるには、それ相応の代償が必要じゃ。今からおぬしには、他の世界を救うことで代償として貰う。おぬしが望んだ、『誰も死なない世界』をひとつ、作るのじゃ」
「その世界は、今のところほとんどおぬしが居る世界と同じじゃ。違うところはまずひとつ、世界の未来の鍵を握る、その世界のおぬしは女性じゃ。名はベレス。そしてもうひとつ、おぬしが干渉するということじゃ」
「ベレスや生徒たちの選択を助け、或いは否定し、戦乱を起こさぬよう導くのがおぬしの役目じゃ。人の決意を曲げるのは厳しいじゃろうが…、おぬしなら出来ると信じておるぞ」
ソティスは話し終え、ほうと息を吐いた。
「さて、おぬしはこれから帝国歴1180年、大樹の節、19の日のルミール村近くの森に送られる。翌朝には級長たちが村を訪れる。それまでにベレスに会うのじゃぞ」
「わかった」
「おぬしとは、しばしお別れじゃ。この世界と、もうひとつの世界を救うため、おぬしの全てを尽くすのじゃ!」
ソティスが両手を広げる。
辺りに光が満ち、そして───。
「誰も死なない世界」を目指したベレトが、挑戦を続ける為、他の世界線のフォドラを戦乱から救うことになります。
処女作なので及ばぬところも多々あると思いますが、よろしくお願いします。
内容の補足
ベレトは平和な世界の実現の為に色々な選択を一からやり直しているので、「天刻の拍動」の回数は使い果たしています。自分の担当学級を選ぶ前まで戻ったりもしているので、「白雲の章」にあたる部分は4ルート全てを経験しています。