しかし、彼の口調難しいですorz
コウビコウさん、評価ありがとうございます。
夏休みが始まり、早数週間。
イオリ・セイはガンプラバトル選手権世界大会出場者を集めたレセプション・パーティに参加していた。彼と同い年で関西出身のビルダー、ヤサカ・マオと共にパーティ会場の隅にいるのは、周囲は大人達ばかりで、彼らの居場所は少ないからだ。
話しかけてくれたリカルド・フェリーニも、今は酔っ払ってナンパをしている。幻滅ですわぁ、というマオの言葉に、苦笑を返すしかない。相棒レイジの恩人のため、あまり悪く言いたくないのだろう。
「おお、見つけたぞ!」
その二人に、話しかける人物がいた。各部屋に配られたパーティ衣装ではなく自前の和服を着込み、ミスター・ブシドーの付ける仮面に酷似したもので目の周りを隠した、金髪の青年だ。
「あんさん、何ですの?」
その不振極まりない出で立ちにマオが訝しげな視線を向けるが、彼はどこ吹く風で受け流す。
「初めましてだな、少年。私はハム仮面。日本第二ブロックの優勝者だ」
日本はガンプラ、ガンダムを生み出した土地というのもあって、六カ所の地区から選手が出場できるのだ。イオリ・セイ&レイジ組は第三ブロック、ヤサカ・マオは第五ブロックの優勝者である。
「なるほど、同じ日本の選手として、挨拶に来たっちゅーことです?」
腕を組んで頷く彼は、とても予選を勝ち上がってきた猛者には見えない。マオは不信感を強める。
そして、セイは別のことを思っていた。
(この人、絶対エイカ先輩だよね・・・・・・)
以前、『イオリ模型店』にも来たことのある高等部の先輩で、模型部所属だったはずだ。金髪とグラハム・エーカーのセリフをよく言っているということで生徒の間では有名なのだ。当人は気にしていないだろうが。
「あの、エイカ先輩、ですよね?」
「言ったはずだ。私はハム仮面、エイカ・コウスケなどではない!」
こちらもドラマCDでグラハム・エーカーが放ったセリフだ。あ、あはは・・・・・・とセイは苦笑する他ない。
「セイはん、こんな変人と知り合いなんです?」
マオの耳打ちに、セイは頷きたくなかったが肯定した。変人と知り合いに思われるのは、誰だって嫌だろう。
「でも、エイカ先輩は予選で敗退したはず・・・・・・」
「えぇい、何度も言わせるな! 私はハム仮面だ! 聖鳳学園の生徒でもなければ、模型部所属でもない!」
セイの口元が更に引き攣った。ほぼ自白に近い、と。
「そちらは、ヤサカ少年と言ったか。ガンプラ心形流の噂は聞いている」
「師匠を知っとるんですか! これはますます頑張らないといけませんね」
彼の場合、『ヤサカ・マオ』としてよりも、『心形流の弟子』としての知名度が高い。そのことに不満はあるが、同時に師匠の顔を汚すわけにはいかないとやる気も出てくる。
「では私はこれで失礼しよう」
そうして言いたいことだけ言って、彼は会場を後にした。なんとも自分勝手な男だ。
謎の男(笑)ハム仮面が自室に戻ると、紫髪をポニーテールにした少女がベットで雑誌を読んでいた。『選手権出場者にインタビュー!』というコーナーで彼も取材を受けたものだ。
「早かったですね。正体はバレましたか?」
「フッ、まさか」
ハム仮面が自信満々に微笑んだので、彼女はえ、とその不審者を二度見した。まさか、本気でバレていないと思っているのか、と。
「彼らも、私がエイカ・コウスケであるとは露程も思っていないだろう」
仮面を外し、その素顔を晒す。なんとビックリ、ハム仮面の正体はエイカ・コウスケであったのだ! ここまでわかりやすい変装、彼の他には
「・・・・・・そうでした、先輩はこういう人でした」
呆れた声を出したのは彼の後輩、シグレ・アサヒだ。『夏休みの間バトルを教える』という約束を実行させるため、近くにホテルをとって付いてきたのだ。彼がパーティを早く抜けてきたのも、彼女に教鞭を振るうためである。
尚、それが建前であることなどこの男が気付くはずもない。
「では出かけようか。この時間帯の模型店ならば、すいているだろう」
と、彼女の練習相手として作ったフラッグを手に取る。しかし、アサヒは待ったをかけた。
「え、先輩。まさかとは思いますが、その格好で出かけるつもりですか?」
「何かおかしいか?」
振り返る彼が着ているのは和服。それも式典用のため装飾なども付いている。これで夜の町に繰り出せば、目立つこと間違いなしだ。
「薄々察していましたが、先輩の感性はおかしいですよね。私は外に出てるんで、着替えてください」
と、アサヒが言い切る前に、コウスケはすでに和服を脱ぎ始めていた。
「って、何でもう脱いでるんです!?」
「逆ならともかく、私が見られて困ることは何もないだろう」
私の身体に恥じるような部分はない、というコウスケに、アサヒは思わず手元にあった雑誌を投げつけた。スコーンという音と共に、コウスケの額に直撃する。
「わ・た・し・が、困るんです! 先輩の裸なんて見たら、目が腐ります!」
額を抑えうずくまる半裸の彼の横を通り、アサヒは部屋を出た。無論、ただのツンデレである。
痛むデコを擦りながら、シグレと並んで歩く。私の裸を見たくないのはわかったが、何故雑誌を投げつけられねばならんのか。そこだけは腑に落ちん。
「全く、先輩はどうしてたまにズレてるんでしょうか。やはりどこかに頭のネジを落として・・・・・・」
「む、言っていなかったか?」
何がです? と返す彼女にやはり話していなかったのだなと思い出す。別段隠すことでもないので、そのまま続ける。
「私は幼い頃、アメリカに住んでいたのだ。価値観や倫理観がズレているとすれば、その影響だろう」
思えば、ガンダム00を見たのも日本語勉強の一環だったか。父が元々ガンダムオタクだったのもあるが、私が表紙のエクシアに心奪われたため、見ることにしたのだ。
「へぇー。先輩、帰国子女だったんですね」
「そういうことになるな」
雑談をしているうちに、模型店に到着した。大きなショッピングモールの中にある、それなりに広い店だ。品揃えもよく、かなり前のガンプラや旧キットの物も取り扱っている。
「すみません、今バトルシステムって使えますか?」
「少々お待ちください」
シグレが店員に声をかけると、彼はバトルルームに入り筐体を稼働させる。
「当店では、練習用の無人機も取り扱っておりますが・・・・・・」
「そちらは遠慮しておこう」
ガンプラを借りるのもタダではない。無人機を使うと追加料金が発生するのだ。完全な初心者ならともかく、シグレには必要ないだろう。
「先輩、早くしましょうよ」
すでにバトルルームに入っているシグレに呼ばれ、私は店員に失礼、と言ってから彼女の対面に向かう。
「では、ごゆっくり」
それは挨拶として適しているのか、という疑問は放置し、ほとんど改造していないフラッグを筐体へ乗せる。
「フラッグ、出るぞ」
カタパルトから発進。飛行形態を久しぶりに感じるのは、GNフラッグばかり使っていたからか。
デブリの少ない宇宙を進むと、シグレのナドレが見えてきた。
今回は簡単な模擬戦をすることにした。お互い武器はペイントライフルだ。機体にダメージは与えない仕様で、プラフスキー粒子を変換して弾にしているのでガンプラも汚さない。
製作技術に乏しい私は、これを作るのにも苦労したものだ。
『またフラッグですか・・・・・・たまには別の機体も使ってくださいよ、このフラッグ馬鹿!』
「ありがとう。最高の褒め言葉だ」
罵倒と共に放たれたペイント弾を回避し、感謝を述べる。作中の刹那・F・セイエイもこんな気持ちだったのだろうか。
お返しにと回避できる程度の位置に数発弾を放つ。ナドレはそれを盾で受け止めると、旋回するこちらに弾を連射した。
「盾ばかり使っているとすぐ壊れるぞ! 衝撃で機体にも細かなダメージは入る!」
『そんなこと、言われても!』
バク転をしてみせながら回避。今度はギリギリでないと避けられないように撃つ。
『くぅ!』
五発中二発命中、一発は盾で防いだか。ナドレの白いボディが緑に染まる。
『こんの!』
再びナドレが発砲。今度はフラッグとその軌道上に撃った。なるほど、言われてないことも試したか。
「しかし、甘い!」
一発目を避け、二発目は変形することで機体を反らし躱す。可変機ならではの動きだ。
『そんなことまで、できるんですねッ!』
再び撃たれるペイント弾をスラスターをふかして回避。やはりライフルの威力がこれでは微妙だな。
「可変機はいいぞ。シグレも作るといい。オススメはやはりフラッグだ!」
『お断りです!』
布教には失敗したか。しかしこれ以上強いペイントライフルとなると、私には難しいな。それこそウルフ・エニアクルが使っていたような機体にダメージが入るものになってしまう。
『ああもう、どうして当たらないんです!』
「狙いは悪くないが、距離が遠い! そんな位置からでは、当たるものも当たらんよ」
初心者にありがちなことだが、銃の射程距離に対して機体が遠いのだ。それでは発射から着弾までのタイムラグで避けられてしまう。
『そうは言われても!』
まあ、近づけないようにこちらからも撃っているからなのだが。しかし、その攻撃をかいくぐって接近できないと、勝負にならない。シグレが遠距離戦重視でバトルするならそれでもいいが・・・・・・。
『こうなったら!』
シグレの攻撃が止む。つまり、操縦桿を別のことに使っているということだ。
「ッ、シグレ、トランザムは使うなよ!」
『トランザム!』
私の静止よりも一瞬早く、ナドレの身体が赤く輝く。しかしその輝きはどこか不安定で危なっかしい。
『これなら!』
上昇した速度でナドレがフラッグに迫る。そのままライフルのトリガーを引く、が。
『うわっ!?』
ボン、とシグレのライフルが煙を上げた。そして機体にもスパークが走り、太陽炉が火を噴くとトランザムが終了する。
「だから言ったのだ・・・・・・」
まず、太陽炉およびGNコンデンサーの作り込みが甘いと機体が耐えきれず最悪爆発する。作中でトランザムをオーバーロードさせ自爆するシーンがあったが、あれに近い。常にオーバーロード状態になってしまうのだ。
次に、武器もGN武器でないと支障をきたす場合がある。アストレアTIPE-FのNGNバズーカなど例外はあるが、圧縮された粒子量に武器が耐えきれず最悪爆発する。
その上で、上がった機体性能を把握し、操縦しなければならない。原作のように三倍とまではいかないものの、バトルで使うまでどれだけ性能が上がるか正確にはわからないのだ。
そのため、初心者がトランザムを使うのは難しい。という旨を、帰り道でシグレに話した。
「なんですか、それ・・・・・・もっと早く言ってくださいよ」
トランザム失敗でペイントライフルが壊れたらめ、今日はあのまま終わりにしたのだ。修理するにも、私は大会があるのでそちらはシグレに任せることになった。
「いや、最初に『トランザムは使うな』と言ってあっただろう」
詳しい説明はかえって混乱するだろうと思って省いたのだ。彼女はガンダム00を見始めたのだが、まだトランザムを使うシーンに到達していない。原理もわからないのに教えても理解できないだろう。
劇中の設定からガンプラバトルでのシステムを作っているので、前者を知らないとどうにもできないのだ。
「バトルしている人たちはポンポン使っているのに・・・・・・そんなに危ないものだったんですね、トランザム」
あと爆発多くないですか? という問いはさておき、危ない、というのには同意する。素組みでは劇中再現できないとは、中々にシビアだ。
「ガンプラへのダメージをバトルシステム側で設定できれば、機体がトランザムに耐えられて初心者でも使えるようになるのだが・・・・・・」
そうすれば、ペイントライフルなんて作らなくてもバトルできるというのに。システムの仕組みについては詳しくないので、言っても仕方ないか。
「あ、先輩。私の泊まっているホテル、ここです」
シグレが足を止めたのは、そこそこ高級な宿だった。料金とかよく払えるな、と思ったが、失礼に当たるため口には出さない。親しき仲にも礼儀あり、と言うだろう。私たちが親しいと言えるかはわからないが。
「そうか。ではまた明日」
「はい。また明日」
軽く手を振って、シグレが中に入るのを確認してから宿舎に戻った。
明日は選手権の第一ピリオドがある。早めに寝なくては。
ビルドダイバーズで00ダイバーがトランザム失敗していましたが、ああいう描写は好きでした。ビルダーとしての力量不足がよく表現されているな、と。
そう考えると、未完成のままトランザムを使ったユウキ先輩、結構ギリギリだったんだと思います。まあジュリアン・マッケンジーが相手でしたし・・・・・・。
作中でバトルシステムを使った後料金払う描写はありませんが、カットされてるだけの筈。小説にも漫画にも何故かそんな描写ないけど、タダはないと思います(マシタ会長がもうかっているし、大会とかも開催できているので)。