フラッグセブンソード・・・・・・なんだその格好よさそうな機体は・・・・・・
むう、と第二ピリオドのバトルを見ていた中年が唸る。この試合で、気になったことがあったのだ。
「久しぶりだな、隊長」
「ラル大尉! アフターファイブ以来ですね」
観客達が席を立つ中、中年が振り返ると、そこには初代ガンダムに登場するランバ・ラルによく似た──というか、そっくりな男性がいた。ラルさんである。
「うむ。して──あのザク。君の目にはどう映った?」
挨拶もほどほどに、ラルは目を細めて本題に入る。
あのザク──もちろん、バトルに乱入したメガサイズザクのことだろう。アナウンスでは運営からのサプライズ、とのことだったが・・・・・・。
「やはり、大尉にもそう見えましたか」
隊長、と呼ばれた彼は、一度バトルシステムを振り返り一組のビルドファイターへと視線を向ける。
イオリ・セイ、レイジ組。あのザクは、明らかに彼らを狙っていた。近くにいたヤサカ・マオやリカルド・フェリーニにも攻撃はしていたが、それはあくまで牽制に過ぎない。集中的に攻撃を受けていたのは、スタービルドストライクのみ。
「君から見てもそうだと言うなら、気のせいではないようだな」
ラルは神妙な顔で腕を組むと、どうしたものかと思案する。彼らはガンプラ界隈ではかなり名前を知られているが、だからと言って運営に介入できるほどの権限はない。このまま何もなければいいが。
「一応、セイ君達に注意するように言うつもりだが・・・・・・」
「ええ。今のボク達にできることは、それくらいかと」
運営側に乗り込む手も考えたが、それで彼らが選手権を退場させられても困る。ラルは大会中、周囲への警戒を強めることにした。
すでにメイジンが会長にもの申しに行ったことを、彼らが知ったらどんな顔をするのだろうか。
日付は変わり、第三ピリオドが行われる日になった。
その内容は、『オリジナルウェポンバトル』。くじ引きをし、引き当てた武器のみを使って戦うという競技だ。徒手空拳で戦われては困るため、指定された武器でしかダメージを与えられないようにシステムを調整しているらしい。それができるならダメージレベルを設定してくれ。
「日本第二ブロック代表、ハム仮面選手! ウェポンナンバー86!」
その後、全ファイターの抽選が終わり、番号順に試合が行われると伝えられる。このくじ引きは武器だけでなく、対戦相手も決めるためのものだったらしい。
「貴方がハム仮面だな」
と、彼に声をかける者がいた。金髪にどこかの制服。その服は、ガンダムEXAのジュピターXのものにそっくりだ。
「君は、確かレオス・カラックスだったか。先日はガンダムファイトに横入りしてしまって済まない」
そう、第二ピリオドでゴッドガンダムと戦っていたエクストリームガンダムのファイターだ。二人がバトルに熱中していたことと、不意打ちだったために一度は倒せたが、強力なファイターだ。
「それについて、オレからは何もないさ。そういうバトルだったんだし」
「感謝する。お互い、全力を尽くそう」
「ああ」
どちらともなく握手し、いいバトルをしようと微笑む。二人とも、バトルジャンキーなのだ。
バトルシステムに私の新たな機体、マスラオをセットする。武装は今回のレギュレーションに則り何も装備していないが、細かなディテールアップやスラスター周りの調整をしてある。スサノオではなく改良前のこちらなのは、私なりのこだわりだ。
「マスラオ、初陣だ! 出撃する!」
そうして、粒子によって作り出された空へ飛び立つ。
フィールドは草原。コンテナはすぐに見つかった。
「バスターソードか・・・・・・」
少々困った。マスラオは速度重視の機体だ。重い武器では機体制御の妨げになる上、両手でないと振るうこともままならないだろう。もっと高性能な機体だったならこの剣をたやすく扱うのだろうが、私の製作技術ではまだ足りない。
「やるしかない、か」
両手で持ち手をつかみ、持ち上げる。やはり、重い。これでは奥の手を使わねばマトモに戦えないのでは・・・・・・。
そして、センサーに敵機の反応。顔を向ければ、カラックスのエクストリームだ。カタナを片手に、妙な構えを取っている。言うなれば、牙突を真似しようとしてうろ覚えで上手くできていない、とそんなところだろうか。
『くっ、そっちはバスターソードか・・・・・・』
「そちらはカタナのようだな」
お互い近接武器。だが私はこの剣を扱えず、構えを見る限りあちらもカタナの使い方はわからない。
そこで、私にある妙案が浮かんだ。スプレーガンを引いたヤサカ・マオは相手の武器を使っていた。ならば、こういったこともできるだろう。
「カラックス。私は純粋に戦いを望む!」
『それはこちらも同じだ、ハム仮面』
私の言葉に、カラックスは頷いた。まだお互い攻撃をしていない今ならば、まだ話が通じるだろう。
「見たところ、君はカタナの扱い方をわかっていない。そして私のマスラオには、この剣は重すぎる」
私の言葉に、カラックスはこちらの言わんとすることを察したらしい。妙な構えを解き、マスラオも剣を下ろす。とても重かった。
「この私、ハム仮面は武器の交換を所望する!」
まるで、ガンダムとの果たし合いを挑むミスター・ブシドーのように、そう申し出た。
『それは、こちらも望むところだ』
合図するでもなくその場に武器を手放し、歩み寄る。そしてすれ違い、先ほど互いがいた場所へ辿り着き。
「いざ尋常に!」
『勝負!』
マスラオがカタナを左手に持ち、エクストリームがバスターソードを盾のように構える。
操縦桿を押し込み、前へ出る。速度ならばこちらが上、バスターソードが振るわれるよりも速く攻撃するのが狙いだ。
「ハァ!」
斬りかかる。しかしエクストリームは体勢を崩さず、剣で攻撃を受け止めるのみ。
ならばと連続で斬りつける。バスターソードごと切り裂くつもりだった。
『そこだ!』
しかし、攻撃と攻撃の合間で、エクストリームが動いた。構えていた剣を翻し、最小限の動きで斬撃を放つ。
「ぐぅ!」
強化したスラスターで強引に後退し、回避。装甲一枚を掠める。そして無理な動きをした機体に負荷がかかり、振るわれた剣が起こす剣風でマスラオにダメージが入る。
「これは・・・・・・」
ガンダムEXAにて叢雲・劾が放ち、レオス・アロイが学んだ技! しかし、問題はそこではない。
コンパクトな動きで、これほどの威力。粒子変容塗料ではなく、純粋な技量のみで剣風を起こしたのだ、ガンプラもファイターも、私より上だ。
『今度はこっちからだ!』
エクストリームが踏み込む。バスターソードを脇構えに持ち、スラスターをふかして突進してくる。予想される軌道は上段、横薙ぎ、斬り上げ。
「然らば!」
両手でカタナを持って八相の構えを取り、迎え撃たんとする。
『ッらあ!』
バスターソードが横薙ぎに振るわれる。私はマスラオを後退させると、剣が空を斬った。
「そこ!」
がら空きの胴体に、カタナを振るう。バスターソードはかなり質量のある武器だ、この体勢なら迎撃は間に合わない。
『くぅ、なんの!』
咄嗟に剣を手放したことで、エクストリームはダメージを右腕のみに留めていた。仕留めきれなかったか。
この至近距離ではお互いの得物を振るえない。ステップで移動し、距離を取る。
『腕を持って行かれたか・・・・・・だが!』
エクストリームが地面に突き刺さったバスターソードを抜く。手放した際に飛んでいったらしい。
そうして、土を払うように大きく振るう。片腕であの質量を支えるとは、なんという機体性能・・・・・・さすがはガンダム!
「そうこなくては!」
互いに武器を構え、間合いを詰める。あちらの剣の方が、カタナよりも間合いは広い。とはいえかなりの質量、更には片手だ。先ほどのように攻撃させ、その隙にカタナをたたき込む。
「
突撃し、カタナを振りかぶる。そして狙った通り、エクストリームが横薙ぎにバスターソードを振り抜いた。
「もらった!」
カタナを振り下ろす。直撃コースだ、回避はできまい。
『それは、どうかな!』
慣性に従い、剣が眼前を通過する。そのままエクストリームは各部スタスタ-を使い強引に一回転した。
「何!?」
腕がスパークを上げている。だが、再びバスターソードは振り抜かれる。もう攻撃の姿勢に入っているため、避けられない。
『おおおお!』
「くっ、ハアアァ!」
バスターソードが、マスラオの胴体を分断する。カタナが、エクストリームを切り裂く。
《Battle Ended》
表示されたのは──ドロー。引き分けだ。
「カラックス。武器の交換に応じてくれたこと、感謝する」
ガンプラを回収する際に、彼に礼を言った。彼ならば応じてくれるとは思ったが、それでも礼節はわきまえるべきだ。
「どういてしまして。というか、むしろこっちからお礼を言わせてくれ。オレにその発想はなかった」
まあ、真剣勝負で得物の交換なんて、どうかしている。だが私たちは全力でのバトルを望み、そしてお互い不得手とする武器を引いてしまった。偶然が重なった結果だ。
いいバトルができたのだ、私はかなり満足している。
「欲を言うと、君とはこういった戦いではなく、ノーマルなバトルで戦いたかったな。この試合形式では、エクストリームの本領を発揮できないだろう」
エクストリームは本来様々な外装パーツを持つ機体。しかし、今回のルールではできる限りの武装解除が求められていた。
「なら、選手権が終わった後にでも、またファイトしよう」
そう言ってカラックスが携帯端末を取り出す。連絡先を交換しようということだろう。私は喜んで応じるのだった。