もがなさん、わけみたまさん、評価ありがとうございます。
第八ピリオドの内容は一対一でのバトル。そして彼の対戦相手は──
「ようやくだ・・・・・・ようやく戦える、メイジン!」
「うるさい上にキモいですよ、先輩」
感情の高ぶりにコウスケが彼の名前を呼ぶと、ベットに転がって雑誌を呼んでいたシグレ・アサヒから文句を言われる。すまない、と返したが、気にした様子はない。
「そんなにバトルしたかったなら、普通に頼めばよかったじゃないですか。『バトルしてください』って」
『ガンプラバトル選手権世界大会 本戦に残るのは誰だ!?』などと書かれた雑誌を放り投げ、面倒くさそうにアサヒは言う。今更だが尤もな発言だ。
しかし、ファイターという生き物にその理屈は通じないのだ。
「シグレ。ただ戦うだけでは足りないから、私はここにいるのだ」
カチリ、とスサノオを置き、コウスケは選手権という舞台を選んだ理由を話し出す。
「
バトルの経験を積むにも、彼とだけ戦っては意味がない。無論、隊長に紹介されたファイター達ともバトルをしたが、それでも足りない。
「なので、この選手権で私は自分を鍛えることにした。世界大会に出場するほどの選手とのバトルであれば、私はより高みに行ける」
そう、この選手権という場所はユウキ先輩と決着を付けるための場所でもあり、コウスケが自分を磨くための場所でもあるのだ。
「へぇー。で、実際のところどうなんです?」
「私は強者との戦いを望んでいた。それだけだ」
要は、『強いファイターと戦いたいから参加した』と。やっぱりですか、とアサヒは嘆息した。選手権での彼のバトルを見ていてわかったことだが、コウスケはかなりのバトルマニアだ。
「それと、シグレ。もう夜も遅い、そろそろ宿に戻ってはどうだ?」
スサノオに夢中で気付かなかったが、すでに空は真っ暗だ。そうですね、とアサヒは頷き、雑誌など荷物を纏める。
「では、送ってください」
シグレと並んで、街灯のついた道を歩く。バトルの練習も、今日はない。私が明日メイジンと戦うということで、遠慮してくれたのだ。それには感謝と申し訳なさがある。
「・・・・・・すまないな、シグレ」
本当なら、私はあの商店街でシグレにバトルを教えて、テレビで大会を見てこの夏休みを過ごす予定だった。けれど、私が選手権に出場したことで、彼女をここまで付き合わせてしまった。
その旨を伝えると、シグレはあっけにとられた表情をしていた。
「随分と今更なことを言いますね、先輩」
でもまあ、とシグレは続ける。
「謝る必要はないですよ。私は好きで付いてきたんですから」
「・・・・・・そうか」
気にするなと言ってくれるのか。いい後輩を持てたことを嬉しく思う。
と、シグレの顔が若干赤く染まっていた。熱でもあるのだろうか。
「・・・・・・コホン。先輩、何か私に訊きたいことはありますか?」
「? 特にないが」
私がむしろ今の質問がどういう意味か訊きたいと言うと、シグレははあ、とため息を一つ。
「ですよね・・・・・・どうしてこうも
「鈍い?」
まさか後輩にそのようなことを言われるとは。何か察してやるべきなのだろうか。
「・・・・・・やっぱりバトルの練習がしたくなったとか?」
「違います。もういいです、ここまでで」
気がつけば、彼女の借りた宿に辿り着いていた。彼女は玄関に向かって数歩進んで、足を止めた私を振り返った。
「明日の試合、頑張ってください」
「ああ。無論だ」
言われずとも、最善を尽くすとも。
《Please Set Your GPBase》
歓声に包まれながら、筐体に端末をセット。正面にいるのは、メイジン・カワグチだ。
《Bigininng Plavsky Particle Dispersal》
周囲に青いスクリーンが浮かび、メイジンとの相対が終わる。後は、バトルで語るのみ。
《Field1 Space》
フィールドは宇宙。ガンダム00に登場した宙域ラグランジュ
《Please Set Your GUNPLA》
各部に改造を施したスサノオを筐体に置く。粒子が取り込まれ、瞳に光が宿る。
操縦桿を握りしめる。開始までの数瞬が、とても長く感じられた。
《Battle Start》
「ハム仮面。スサノオ、出陣する!」
興奮に身を任せ、
「どこだ、どこにいる・・・・・・」
ああ、もどかしい。開始位置をもっと近づけてはくれないだろうか、運営。
そんな思いを持ちながら進んでいると、視界に緑光が飛び込んでくる。ビームだ。回転して回避する。
「そこか!」
目を向けた先にいるのはケンプファーアメイジング。バインダーを四つに増やし機動性を上げた、メイジンの機体。
「会いたかった・・・・・・会いたかったぞ、メイジン!」
認めよう。彼が選手権を棄権した怒りもフラッグファイターとしての矜持も、行動の源であってもしょせんは建前でしかなかった。この感情はごまかしようもない。
私エイカ・コウスケは、この機体、この場所をもってメイジンと戦えることに、これ以上なく――悦びを感じているッ・・・・・・!
ロングライフルが再び火を吹く。それを左手に持つサーベル『シラヌイ』で弾き、接近する。
『粒子変容塗料か・・・・・・』
「わかりきったことを!」
私の技術不足でニルス・ニールセンのようにビームを切り裂くことは困難だが、弾くことはできる。
そのまま接近し両刀を振るうが、躱される。
「逃がさん!」
両腰のスラスターに装備したアンカーフックを射出。GNクローから変更したものだ。トライパニッシャー? あんなもの、棄てた!
『くっ』
ワイヤーを引っ張りながら加速。再び斬りかかる。ケンプファーはライフルを捨て、ビームサーベルを二本抜刀した。
両者二振りの刃が鍔迫り合う。今は拮抗しているが、このままでは出力の差で押し切られるだろう。
「だが甘いぞ、メイジン!」
スサノオの後頭部から伸びたケーブルが、二本の刀に接続される。コンデンサーから粒子が供給され、その刃は切れ味を増す。
「ハァ!」
ビームを叩っ切り、蹴りを一発。離れていくケンプファーにビームチャクラムを出現させ飛ばす。
『フン』
ケンプファーは避けると、その機動性を活かして距離を取る。それを追尾しスサノオが駆ける。
『カワグチ! このしつこさ、尋常じゃないぞ!』
回線からメイジンの隣にいた金髪の声が入ってくる。私以外の金髪などッ!
メイジンはバインダーから射出したライフルで射撃してくるが、全て躱すか弾いた。しかし、機体性能の差で追いつけない。
『このままでは・・・・・・』
「埒が明かん!」
メイジンが反転、頭部マシンガンで牽制しながらヒートナイフを抜刀し近づいてくる。
それを回避しながら間合いを図り、迎撃の構えを取る。シラヌイで受け止め、ウンリュウで反撃、というオーソドックスなやり方だ。
『そこ!』
と、ケンプファーが旋回しスサノオを通り越して後ろへ。
「くっ、不覚!」
スラスターをふかし、強引に反転し振るわれたヒートナイフにウンリュウを間に合わせる。しかし熱を帯びた刃が刀身を溶解させ始める。武器が少ないこの機体にとって、ウンリュウを失うのは致命傷。
「然らば!」
胸部バルカンから閃光弾を放つ。光が私の視界も奪うが、そこは愛でどうにかする!
『その技はもう見切った!』
しかし、ケンプファーは動いた。スサノオを蹴り飛ばし、ライフルを撃ってくる。
「くっ、あのサングラスか!」
メイジンのコスチュームであるサングラス。あれで閃光弾の光を防いだのだろう。まさかそこまで対策済みとは!
ビームを躱しながら、シラヌイ、ウンリュウを連結させ『ソウテン』とする。ケーブルも接続。
そうして、ケンプファーに斬りかかった。
『同じ手をッ!』
ヒートナイフで受け止められる。しかし、ソウテンが傷つく様子はない。刃の表面にビームを纏わせ、保護しているためだ。
「まだまだ!」
押し切り、再び斬り合う。離れ、近づき、宇宙に弧を描きながら、衝撃と火花を散らす。
「オオォォ!」
『ハァァア!』
もはや、剣戟を何合重ねたのかわからぬほど。正確には、37回と言わせてもらおう!
「もはや感情を抑えることなどできぬ! トランザム!」
昂ぶった衝動のままカーソルを操作すれば、スサノオの機体が紅蓮を纏う。一度使えば止まらず、使用後は疑似太陽炉が壊れるが、もうどうでもいい!
『トランザムを使ったか・・・・・・
ならばそ本気、私の本気で応えよう!』
ケンプファーが両腰のウェポンバインダーをパージする。推進剤を使い切ったため、少しでも機体を軽くしようとしたのだろう。
「斬り捨て、ゴメェェェン!」
通常の二倍ほどのスピードで、スサノオが飛翔する。あまりの速さに機体に負荷がかかるが、無視した。
『燃え上がれ、ガンプラァァァア!』
ケンプファーもまた加速し、斬り結ぶ。両者ともに右腕を失った。
「なんの!」
振り向き様にビームチャクラムを飛ばす。バインダーの一つを破壊した。
『ハァッ!』
再び接近、鍔迫り合い。
ケンプファーの頭部バルカンによってケーブルが千切れた。弱点を晒す機体設計は相変わらずだ。ソウテンの切れ味が落ち、ナイフの刃が食い込む。
「ならば!」
腕を振るい、ナイフごと剣を投げ飛ばす。しかしソウテンは分離し、ウンリュウが手元に残る。
『武器を失った程度!』
ケンプファーの拳がスサノオのイケメンフェイスを殴る。同時に、ウンリュウをケンプファーの頭部に突き立てる。
「ぐうぅ!」
たかがメインカメラをやられただけ、愛があればどうにでもなる!
「そうだ、もはや愛を超え、憎しみを超越し、宿命となった!」
『宿命でバトルに望むなどッ!』
言いたかっただけなのは、
ケンプファーの手がウンリュウを掴み、握り砕く。スサノオの拳が、ケンプファーの胴体を捉える。もはやお互い武器はなく、残るは拳のみ。
「メイジィィィイン!」
『ハムカメェェェン!』
互いの拳が、振り抜かれる。しかし、スサノオの腕は砕け散り、ケンプファーの腕のみが胴体を貫く。
圧縮された粒子に、この細腕では耐えられなかったらしい。
直後、両腰のスラスターが爆発し、機体が黒く戻る。トランザムが終了し、疑似太陽炉が壊れたのだ。
それに連動するように、スサノオのフェイスパーツが弾け、中からフラッグの顔が現れた。
《Battle Ended》
ジオラマが解け、筐体には傷ついた二機のみが残る。
歓声、拍手。そういったものが、私達へ向けられていた。
「また負けた、か・・・・・・」
その場に座り込んでしまいたいが、その欲求を抑える。公衆の面前だ、我慢しなくては。
「引き分けに近い勝利だった。私も、どうやら未熟だったらしい」
声に顔を向ければ、メイジンがそこに立っていた。仮面こそ外して外していないが、雰囲気は限りなくユウキ先輩に近い。
「それでも、貴方の勝利だ。三代目メイジン・カワグチ」
なので、あえてその名前で呼ぶ。まさか彼も私がエイカ・コウスケだとは知らないだろうし、この場では他人で通すべきだ。
私達が握手すると、歓声はより一層強くなった。
かくして、彼の選手権は幕を閉じた。第八ピリオド開始時では16位だったハム仮面は、イオリ・セイ&レイジ組が引き分けの2ポイントを得たことで17位へと落ち、本戦への出場を逃したのだ。
しかし、彼がメイジンとのバトル後に見せた笑顔は、とても晴れやかだったという。
原作では、オマーン代表のハリファという選手がメイジンの対戦相手でした。まあ、変えちゃいましたが。どんなファイターだったんだろうか。
最終回のノリですが、もう少し続きます。