レコニングさん、評価ありがとうございます。
ガンプラバトル選手権世界大会会場でもある静岡では、決勝戦の前夜祭が行われていた。ちなみに『前夜』とあるが一週間前である。
「先輩、あの『ハロクッキー』って美味しそうですね。貰ってきてください」
「承知した」
国旗の代わりにガンダムに登場する組織のマークが描かれた万国旗のぶら下がる道を、エイカ・コウスケとシグレ・アサヒは並んで歩いていた。何故わざわざ二人で回っているかといえば、アサヒが『選手権出場選手は屋台の品物が全部タダになるそうです。ちょっと仮面付けて買ってきてください』と言ったからだ。もちろん建前である。
それを言葉通りに受け取りっている彼も彼だが。
「む、あのスペースは何をしているんだ? なにやら盛り上がっているが」
ハロクッキーを入手し、仮面を外しながらコウスケが指したのは黄色いテント。アサヒがパンフレットで確認すると、フリーバトルスペースのようだ。
「行ってみますか?」
「ああ」
と、テントに入ってみれば、そこでは彼の見知った面々がバトルしていた。
「ゴンダとサザキ少年か!」
コウスケと同じクラスの模型部員、ゴンダ・モンタとイオリ模型店の常連客、サザキ・ススムだ。モンタが駆るは金色に塗装されたターンX、ススムが操るはギャンを改造したギャンバルカンだ。
(あの機体、バックパックのバルカンで火力を上げるだけでなく、シールドも二つに増えたことでかなりの弾幕を敷けるようだな。サーベルも抜刀しやすいよう両肩に懸架され、機動性も上がっている・・・・・・)
コウスケは軽く冷や汗をかく。今も月光蝶を使うターンXにシールドのミサイルを放っているが、あの弾幕をかいくぐった上で盾の防御を突破しなければならないなど、フラッグやスサノオとの相性はかなり悪い。
「エイカ先輩、あのギャンめっちゃ強くなってないですか・・・・・・」
「ああ・・・・・・今の私でも勝率は三割あるかどうか」
選手権出場を逃した彼のガンプラ製作技術、及び操縦テクニックは、この短期間でかなり上がっていた。さすがは未来の選手権ベスト16である。
『これがボクの考えた、究極のギャンの力だ!』
ターンXを撃破し、ドヤ顔をキメる。しかし、彼の栄光は長く続かなかった。
「先輩、あの人・・・・・・!」
「リカルド・フェリーニ!」
そう、『イタリアの伊達男』ことフェリーニが新たな愛機『ガンダムフェニーチェリナーシタ』と共にバトルに乱入したのである。
そして左右対照になったことにより安定した機体バランス、機動性によりギャンバルカンを瞬殺した。なんて大人げない。
『ギャンバルカァァァァァァアアン!』
ススム少年の悲鳴も尤もである。リカルド・フェリーニの登場により、バトルに挑戦しようろしていたファイター達に躊躇いが生まれる。
しかし、彼に挑まんとするバトル
「挑ませていただこう、ガンダム!」
赤い尾を引きながら、
『お前は!』
「敢えて言わせてもらおう、エイカ・コウスケであると!」
彼と愛機GNフラッグである。スサノオは改修してあるが、ハム仮面でない今のコウスケが使うのは、やはりフラッグなのだ。
「え、エイカ先輩!? さっきまでここにいたのに!?」
アサヒはあまりに唐突なコウスケの参戦に先ほどまで彼がいた場所とバトルシステムで視線を往復させる。それから、はあ、と一つため息をついた。恐らくイタリアチャンプには勝てないだろうから、待つことにしたのだ。
フェリーニとのバトルの後。私とシグレは、ガンプラ製作スペースにいた。彼とのバトルにあっさり負け、大破したフラッグを修復するため、というのもあるが。
「HGブレイヴ指揮官用試験機・・・・・・よもやこのような場所で出会えようとは!」
新たなガンプラを作るため、でもある。選手権も終わったので心機一転、新しく機体を作り直すことにしたのだ。
「こんなところで興奮しないでください、先輩。キモいです」
そう私に半眼を向けるシグレの前には『
「しかし、その機体はアリオスガンダムと合体してこそ真価を発揮する機体だが・・・・・・」
「なら、先輩のそのガンプラと合体できるようにします。あ、太陽炉はこっちで乗せるんで、先輩は疑似太陽炉のままでも問題ないですよ」
まるで数日前から考えてあったようにスラスラとそう言った。しかし、ブレイヴとGNアーチャーの合体か。私の製作技術で作れるかは怪しいが、折角なのでやるだけやってみることにしよう。
「そうなると、変形機構の見直しが必要だな・・・・・・アリオスのパーツも一部使うか」
「え、本当にやるんですか・・・・・・」
それって私と先輩が合体するってことで・・・・・・と小声で言うシグレ。何か問題があるのだろうか。
「私との合体は嫌か?」
「せ、先輩!? 言い方、言い方!」
赤面し動揺するシグレに、私は首を傾げるのだった。
それから、会場に来ていた父やカタギリ、隊長らと挨拶を交わしたり、シグレと共にガンプラを作ったりしながら、数日経った。
「お久しぶりです、ユウキ先輩」
前夜祭の会場を見下ろせる高台。そこで、私はユウキ先輩と再会した。ハム仮面としてバトルしたりしていたが、私として会うのはかなり久しぶりのはずだ。
「ああ。久しぶりだね、エイカ君。いや、ハム仮面、だったかな?」
「ッ!? な、なんのことやら・・・・・・」
バレていた、だとッ!? 馬鹿な、私の変装は完璧だった筈・・・・・・。
「ははは、相変わらずみたいだね」
そう軽快に笑うユウキ先輩。しかし、彼とは雑談しに来たのではない。手短に要件を言おう。
「ユウキ先輩。エクシアを・・・・・・ガンダムを、使いましたね」
「ああ、使ったさ」
彼は自分がメイジンであることを隠すことなく肯定した。私がハム仮面だと見抜いたことに対する意趣返しのようなものだ。全く動揺しないとは、流石ユウキ先輩といったところか。
「ならば、私の要求はただ一つ! 一対一での決闘を申し込む!」
そう言い放ち、フェリーニとのバトルから改良したGNフラッグを突き出す。彼は目の色を
「その挑戦、受けて立とう! ・・・・・・とはいえ、選手権が終わった後なら、だけどね」
「無論だ。私は全力を望む」
決勝戦を控えた状態では、全力でバトルすることは難しいだろう。私は頷いて、高台を去った。
そして、決勝戦当日。バトルシステムを挟み、二組のファイターが相対していた。
一方はイオリ・セイ、レイジ。中学生とは思えないガンプラ製作技術と、バトルを始めて半年も経っていないとは思えない操縦技術の合わさったコンビ。使用ガンプラはスタービルドストライクガンダム。
もう一方は、ガンダム00に登場する刹那・F・セイエイをオマージュしたようなマフラーを巻き、オレンジに怪しく発光するフレームのサングラスを身につけた絶対王者、メイジン・カワグチ。使用ガンプラはガンダムエクシアダークマター。
メイジンの衣装には会場中の全員が驚いて──否、そのセンスのなさに引いていた。
しかし、ここには一人、変人がいた。
(あの衣装・・・・・・なんて格好良い! 闇落ちした
そう、何を隠そうこの変態、エイカ・コウスケである。彼が子供のように目をキラキラさせる中、決勝戦は始まった。
この主人公なら、あの格好気に入るだろうな、と思いまして。本当、どうしてこんな変態になってしまったのだろうか。