抱きしめたいな、ガンプラ!【完結】   作:高々鷹々

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明けましておめでとうございます。

完結した作品故にどれほどの方が見てくださるかはわかりませんが、ネタを思いついたので深夜テンションのまま執筆、投稿するに至りました。

タイトルからわかる通り、グラハム成分はちょっと少なめです。


隊長のザク(さん)

 彼、隊長は悩んでいた。毎日仕事をしながらガンプラバトルへと時間をつぎ込んできた彼だが、ここ最近身体が思うように動かない。肩は上がらなくなったし、階段の上り下りも辛い。何より、バトルの最中に指が震える。

 

(これは・・・・・・ボクも歳かな)

 

 コウスケにバトルを教えてから、約七年。その間アフターファイブでバトルしたり、お酒で失敗して北海道に左遷(トバ)されたり、その先で新しく弟子を取ったり、戻ってきてからは三代目メイジンとバトルする機会もあった。

 バトルを始めて、大会を出禁になってから、それなりの年月が経っていたのだ。老いるのも当然と言えよう。

 

(なら・・・・・・ボクに出来ることをやっておかないと)

 

 『自分の全てを弟子に教えよう』などという大それた考えではない。ただ、『自分にできる限り鍛えておこう』という、師としての義務感を果たすためだ。

 

 そう決意した隊長は、まず会社に有休届を提出した。

 

 

 飛来する巨大なヒートホークを躱し、右腕に構えたGNベイオネットを撃つ。しかし命中することはなく、ブーメランのように返ってきた背後からの斧を必死に避ける。

 

『甘いよ』

 

 そして回避した先には、両拳を合わせて振り上げた隊長のザク(さん)がいる。くっ、と声を漏らしながら右肩のシールドを構えGNフィールドを展開するが、振り下ろされた一撃はフィールドを砕き、機体を吹き飛ばす。

 

「ぐっ、ぬぅ!」

 

 私は現在、隊長とバトル中だ。こちらが駆るのはガンダムエクシアリペアⅣ、通称グラハムガンダム。私の人生で一番の出来と言っても過言ではないこのガンプラだが、隊長のザクを前に防戦一方の状況にある。

 

「まだまだぁ!」

 

 追ってくる斧をGNタチで斬り払い、ザクへ向けて再度突撃。迎撃として放たれる三連ザク・バズーカをタチとベイオネットの二刀で斬り裂いて突き進む。

 

「うおおおお!」

 

『ッ!』

 

 間合いまで接近した私はGNタチを横薙ぎに振るうが、ザクは腰にマウントしていたもう一振りのヒートホークに持ち替えて受け止める。

 そこへ更にベイオネットの剣撃を加え、左腕に粒子を纏わせる。

 

「チョリィッッス!」

 

 気合いを入れた叫びと共に、一瞬のみのトランザム。それによって、斧を叩き斬った。が、攻撃の瞬間、ザクは高速で回避している。何故トランザムの攻撃を避けられるのだ!

 しかし、この程度で一々憤っていては憤死してしまう。隊長のデタラメぶりは、今に始まったことではないのだ。先程も首を斬ったというのに頭と身体でそれぞれ動いて、しかも再び合体していたのだ。全く、どういう仕組みだ!

 

 これで武器を一つ破壊したが、本体は無傷。いや、ダメージモデルのため実際には傷が付いているが、言葉の綾だ。それに、あのザクは素手でガンプラを千切れるほどにはパワーがある。何一つ安心出来る要素はない。

 

「飛べ、グラハム・ファング!」

 

 シールドに懸架されているGNバトルブレイド、GNバトルソードを起動する。改造によってファンネルとしての機能を有するそれらを飛来する斧へ向けて放ち、私はザクへと向かっていった。

 

 

 宇宙空間で繰り広げられる隊長とコウスケのバトルを見ながら、レオス・カラックスはため息をついた。

 彼もまた隊長から呼び出しを受けた一人だ。まさか選手権で戦ったハム仮面が自分の弟弟子だと知った時には、かなり驚いた。

 ここは競技用のバトル会場。だが今日は隊長が貸し切りにしていた。

 

「やっぱり、コウスケのバトルは凄いな・・・・・・」

 

 その手の中にあるのは、エクストリームガンダムtypeレオス ヴァリアント・サーフェイスだ。派手な武器と見た目のそのガンプラはしかし、いくつもの傷が付いていた。先程までの隊長とのバトルによるもの。

 ダメージレベルは最低値のE、だというのにこうもボロボロにされたのだから、やはり自分と隊長の実力差が激しいのだろう。

 

「だよね・・・・・・でも、大隊長の方が強いよ」

 

 そう言うのは、レオスの隣に座る一人の少年だ。まだ中学生でありながら隊長の弟子としてここにいる彼の名前はキタミ・アガタだと聞いている。アッガイに強いこだわりを持ち、宇宙だろうと火星だろうと森林だろうと、アッガイを使って戦うファイターだ。隊長のことは、敬意を込めて『大隊長』と読んでいる。なんでも、姉と妹がいるらしい。

 

 彼は耳当てをした顔をバトルシステムへと向けたまま、レオスと言葉を交わす。

 

「そうだね。けど、コウスケはバトルの中で成長──進化している」

 

 視線の先では、エクシアが右腕のビーム・ワイヤーを使ってザクに取り付き、高速移動する機体から引き離されんとしていた。ザクのビームコーティングによって装甲へのダメージはほとんど無いが、距離を取らせないことには成功している。

 

「カラックスさんは、どっちが勝つと思う?」

 

 まだ幼いアガタの、純粋な疑問。レオスはうーんと唸り、答えに窮する。

 

「多分、まだ隊長が勝つ、と思う」

 

「『まだ』?」

 

 そう、『まだ』だ。選手権に出場したばかりの頃と比べて、コウスケは遙かに強くなっている。だが、積み重ねた年月は隊長も同じだ。

 けれども、その伸びしろには確かな『差』があった。若いコウスケの方が成長スピードは早く、隊長に追いつかんとしているのだ。

 

 故に、『まだ』隊長が勝つ。けれども、それはじきに逆転するものだ。もちろん、このままコウスケが成長──レオスの言い方で進化──するなら、の話だが。

 

 フィールドでは、二つの色が交錯していた。隊長のザクの緑色と、エクシアの青。周囲に散らばる粒子の緑も相まって、その空間は戦場でありながら美しさがあった。

 

 このバトルが終われば、次はアガタが戦う番だ。彼は二人のバトルを少しでも自分の糧にするべく、意識を筐体へと集中させた。

 

 

(相変わらず、凄い才能だな、コウスケ君は)

 

 思いながら、隊長は巨大な斧を振るう。躱されるのは想定済みだ。そのまま斧を手放し擬似的なファンネル機構によって回転しながらエクシアへと迫る。

 内部にサイコミュを搭載しているため、ある程度は軌道を操作できるのだ。それでも、ここまで扱えているのは隊長の投擲技術によるものだが。

 

『くっ、うおおおおお!』

 

 エクシアがGNベイオネットをヒートホークにぶつけ、威力を相殺する。剣は砕けたが、斧は弾かれた。

 

 その動きを視界に留めながら、ザクは高速でガンダムへ接近し、蹴りを入れる。

 

『ぐぅ!?』

 

 咄嗟にGNタチで防いだが、今の攻撃で左腕にヒビが入ったのを隊長は見逃さない。

 

 コウスケのエクシアリペアⅣの左腕は、一瞬のみのトランザムを再現するために内部にクリアパーツが使われている。そのため、他の部位と比べると耐久度が落ちるのだ。それでも世界で通じるレベルの硬さではあるのだが、隊長含む殿堂入りファイター相手では足りない。

 

「これでもう左手のトランザムは使えない」

 

『だが私はしつこく諦めも悪い、俗に言う嫌われるタイプだ!』

 

 こちらの言葉を斬り捨て、エクシアが剣を振るう。既にGNバトルブレイドとGNバトルソードは破壊され、ベイオネットも二振り目だ。タチの刀身にも傷が付いている。

 

(ああ、懐かしいな)

 

 拳を振るい、ベイオネットを砕く。GNタチによる追撃を弾の切れたバズーカを身代わりにし、爆風が更なるダメージを与える。

 

 思い出す。今までのバトルを。

 

 友人に誘われて何となくで始めたバトル。量産型の、ありふれたやられ役な姿が自分に似ている気がして手に取ったザクⅡ。その後、オカマなガンダム使いと戦ったり、上司のビグ・ザムと戦ったり、大会に出てラルや珍庵、イオリ・タケシと戦ったり。そして、弟子を取るまでになった。

 

 彼は自分を凡庸だと称するが、それは事実だった。

 他の殿堂入り組と比べれば戦いは派手じゃないし、殲滅力も劣っている。格下相手ならば圧倒できる機体スペックも、互角以上が相手になれば決め手に欠ける。

 

 それでも、ただひたすらに、気の遠くなるほどにバトルを積み重ねたのが彼だ。

 

『ハアアアアアア!』

 

「フン!」

 

 剣と斧が打ち合う。どちらも刃にヒビが入り、もう少しで壊れるような状態だ。

 

 だがエクシアはGN粒子で強度を補い、ザクは経験から負担の少ない扱い方で斧を振るう。それによって保たれた拮抗だった。

 

(そろそろスラスターの燃料が切れる。けど)

 

 ガキン、と斧を打ち付ける。破砕音が鳴り、GNタチが刀身半ばで砕けた。GN兵器はかなり精密な武器だ。粒子を扱う関係上、少し欠けただけでも出力が落ちる。長さが半分ほどまでになってしまった今では、もう(なまくら)同然の切れ味しかない。

 

「これで勝負あったね」

 

 確信を持って、隊長は告げた。

 

 

『これで勝負あったね』

 

 隊長の言葉に、私は俯いた。

 確かに、剣は全て破壊され、機体もかなりボロボロだ。まだ五体満足なのが奇跡的ですらある。

 

「だが、まだだ!」

 

 私のエクシアに肉弾戦を行えるほどの性能はない。ならば、剣を作ればいいだけの話。もっと簡単な解決方法は、

 

「私自身が剣になることだ!!」

 

 シールドを背中側に回し、太陽炉を連結させる。ダブルオークアンタのパーツを使ったこの機体には、そのギミックも搭載されている。

 しかし、粒子を使った空間移動などは出来ない。そもそも、やるにしてもプラフスキー粒子の残量が足りない。

 

「故に、グランザム!」

 

 ガンダムの白と青の身体が赤熱し、粒子が周囲に溢れ出す。だが、それだけでは終わらない。

 

「うおおおおおおおお!」

 

 左腕を天高く掲げ、そこに粒子を圧縮する。膨大な粒子量に左腕が砕け散ったが、それでいい。

 

『これは・・・・・・粒子の剣?』

 

 そう、剣だ。圧縮された粒子が左腕の破壊により解放され、巨大な剣として顕現している。

 

 ガンプラバトルに『必殺技』のシステムは無いが、それが存在する世界線もあると愛で察知した私が編み出した技。言わば、コストパフォーマンスの悪いトランザムライザーソードだ。

 そう、名付けるならば!

 

「必殺! グラハム・ソードッ!!」

 

 叫びと共に、腕を振り下ろす。回避されれば粒子切れでこちらの負けだが、武器を失った時点でそれは決まったような物。ならば、賭に出る!

 

『くっ、視界が!』

 

 幸運なことに、粒子の過剰放出によって視界を奪えているらしい。何という僥倖!

 

「オォォォォォオオオオ!」

 

 粒子の剣が、直撃した。その奔流にザクは飲まれ、私にも姿が見えなくなる。

 

 そして、粒子の切れたエクシアは機能を停止した。

 

《Battle Ended》

 

システム音声が流れ、コンソールに勝敗が示される。そこに記された内容は、

 

「なっ、私の負けだと!?」

 

「うん、そうみたいだね」

 

 馬鹿な!? グラハム・ソードは当たったはず!?

 

「多分だけど、あの剣はビームじゃなくてGN粒子の塊だよね? だから、攻撃力が設定されてなかったんじゃないかな?」

 

「な、そんなことが・・・・・・」

 

 私が愛で感じ取った限りでは、アレで必殺技になるはずだったのだが・・・・・・ええい、『必殺技』がシステムとして存在していないからこうなるのだ!

 

「ヤジマ少年! 今すぐ『必殺技』の実装を求める!」

 

「コウスケ、ここにヤジマ・ニルスはいないぞ」

 

 レオスの言葉に私はぐぬぬと唸る。ええい、だからこちらが廃れてオンラインゲームが流行(はや)るのだ! 必殺技があればもっとグラハムできるというのに!

 

「こうなっては仕方ない、今からアサヒと共にダイバーズの世界へ行くしか! 私に残された道はそれだけだ!」

 

「メタい! 発言がメタいぞコウスケ!」

 

 私を止めようと必死になるレオスと、こちらを放置してバトルの準備を始めるアガタ少年、苦笑しながら筐体にザクを乗せる隊長。

 

 我々が隊長を超える日は、もう少し先らしい。




エイカ・コウスケ
七年前から成長し、エクシアリペアⅣも必殺技(モドキ)を使えるまでに強化されている。
そして持ち前の愛も進化し、とうとう他作品の電波をキャッチするまでに至った。コイツはどこまで行くのか。
アサヒとは結婚しており、たまに聖オデッサ女子学園でギャン子達にバトルを教えたりもしている。夫婦仲は良好で、一年前に第一子が産まれた。

レオス・カラックス
こちらも成長し、エクストリームガンダムもヴァリアント・サーフェイスにまで強化された。
妻もガンプラバトルを始めたとかで、タッグバトル大会などにも出場している。
四つ子の娘達もガンプラを始めたようで、全員揃ってエクストリームガンダムを使っている。

キタミ・アガタ
今回初登場のアッガイ大好きファイター。『隊長のザクさん』に登場するアガ太が元ネタ。
アッガイに限らずベアッガイやプチッガイも好きで、姉や妹と一緒に作ったりしている。
隊長のことを『大隊長』と呼んで尊敬している。

隊長
老いを自覚して弟子達を鍛えることにした人。
戦い方は地味だし決め手が足りないしで自分のことを平凡な人間だと思っているが、実際はそんなことなかったりする。
一時期ザクの目を二つ以上にしたり首から下をZガンダムにしたりと迷走していたが、今はキチンと元のザクに戻している。


今回、書きたいものを書いたので、あんまり大衆受けしなそうだなーと思っていますが、まあ書いてて楽しかったので満足です。
気が向いたら『抱きしめたいな、GBNッ!』って題名でダイバーズの二次創作を書くかもしれませんが、暫くそんなこと無いと思います。
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