抱きしめたいな、ガンプラ!【完結】   作:高々鷹々

4 / 25
作中に出て来たガンプラバー、あれいいですよね。普段普通に働いているオッサン達が、実は凄腕のファイター! みたいなの。
ラルさんも最初は弱いのかと思っていたら、凄い強い人でしたし・・・・・・。


量産型のザクです

 部活の時間と放課後を使ってフラッグの改造を行った私は、日の落ちた商店街を歩いていた。

 向かう場所はバー『アフターファイブ』。その場所でガンプラバトルが生まれる前からガンダムを、ガンプラを愛した男達が、夜な夜なコスプレをしながらバトルしているのは、商店街の大人達なら誰でも知っていることだ。

 

 狭い階段を下り、唾を飲み込んでその店の扉を開く。店内の光景が、視界に入ってくる。

 

 ガンプラバトルの筐体が二つ。どちらも稼働しており、今もバトルが行われている最中だ。彼らは皆ジオン軍の軍服に身を包み、バトルをしていない者は飲み物を飲みながら語り合っている。

 

「む? 君は、確かエイカ中尉の・・・・・・」

 

「夜の挨拶、即ち『こんばんは』という言葉を、謹んで贈らせてもらいます。八百屋のおじさん」

 

 こちらに気付いたドレンによく似たおじさんに、私は挨拶をする。彼は席を立ち、こちらへ歩いてきた。

 

「ここは君のような子供が来る場所じゃないぞ。親御さんが心配するだろう、早く帰りなさい」

 

「いえ、父ならそこでバトルしていますので」

 

 私が視線を向けた先にいるのは、和風な軍服のような形容しがたい服を着こなし、仮面を身につけてバトルに興じる男が。私の父、エイカ・ハムマンだ。アメリカ人とのハーフであり、私と共にガンダム00にハマり、ミスター・ブシドーにのめり込んだ男。

 

「そうだったな・・・・・・おーい、エイカ中尉! 息子さんが来ているぞ!」

 

「何!? それは(まこと)か!?」

 

 バトルを中断し、格好だけ見れば不審者な私の父がこちらへやってくる。

 

「どうした息子よ。私に会いたくなったのか?」

 

「寝言は寝て言うんだな、父よ。私はバトルをしに来たのだ」

 

 私の回答に、父は仮面越しに目を細める。右目の辺りに傷跡が見えるが、ただのボディペイント。ファッションだ。

 

「どういうつもりだ」

 

「勝ちたい人がいる。そのために、私は強くならなければならない」

 

 父が更に顔を険しくする。恐らく、自分のことを棚に上げて夜遊びは危ないとか気にしているのだろう。よく似た声だけあって、なんとなく読める。

 

「それは、ガンダムか?」

 

 真剣な瞳で父が私に問う。結果は見えていたが、素直に答えることにした。

 

「いや、ザクだ」

 

「ならば駄目だ!」

 

 想像通りの答えだった。父は普通の人とは違った方向性のガンダム馬鹿であり、『ガンダムに勝つため』と言えば大体納得してくれる。昔はそれでお小遣いを貰おうとして、母に怒られたものだ。

 

「まあまあ、もう少し話を聞いてみてはどうだ? エイカ中尉」

 

「今の私はミスター・ブシドーだ。エイカ中尉などではない!」

 

 八百屋のおじさんが取りなしてくれるも、父は腕を組んでそっぽを向いたままだ。頑固なのだ、この男は。そしてしれっとセリフを入れてくる辺り、つくづく抜け目がない。

 

「ここは子供の遊び場ではない!」

 

「熟知している。だがそんな道理、私の無理でこじ開ける!」

 

 私の説得も聞かず、父は譲らない。この分からず屋め。

 

「どうしてそんなに頑ななんだ、ハムm、おっと、その姿の時はミスター・ブシドーだったかな?」

 

「勝手にそう呼ぶ。迷惑千万だな」

 

 口ではそう言いつつ、劇中再現が出来たためかにやける父。他人(ひと)のことは言えないが、筋金入りだな。

 

「カタギリ、どうしてここに?」

 

「うん、君は僕のことを『さん』付けするべきじゃないのかな?」

 

 先ほど父に話しかけたのは、近所の電気屋に務めるカタギリ・ジュンだ。白衣を着用し長髪で眼鏡という外見とその名前から基本呼び捨てにされている。

 因みに父は塾の講師をしている。生徒には『ハム先生』と呼ばれているらしい。

 

「彼はここでガンプラを売っているのだよ。バトルでガンプラが傷つくことを視野に入れた、賢い商売だと言っておこう」

 

 何故か父が自慢げに説明する。カタギリもおじさんも苦笑したきりだ。

 

「君達はファイターだ。そういったことは、バトルで決めるべきじゃぁないかい?」

 

 カタギリの提案に、思案顔でうむと頷く父。むしろ何故それを思いつかなかったのか。

 

「いい案だカタギリ。だが、興が乗らん!」

 

「ああ、さっきスサノオは大破したんだったね。これはすまない」

 

 キメ顔でセリフを使った父だが、カタギリの言葉が図星だったのか再びそっぽを向いた。

 しかし、父はこんなナリだが元フラッグファイター。彼が負けるほどの相手がいるのであれば、やはりここは修業にふさわしい場所のようだ。

 

「それなら、ボクが相手するよ」

 

 店の奥から、再び人影がやってくる。聞いたことのない声だ。

 

「た、隊長!? 御出陣なられるのですか!?」

 

 八百屋のおじさんが驚いた顔向けるその人物は、この集団の中で唯一コスプレをしていなかった。スーツ姿で特徴のない顔立ちだが、私の勘が言っている。この男は、できると。

 

「隊長! わざわざ貴方の手を借りるわけには・・・・・・」

 

「いや、これはボクがやりたいことだよ。キミの息子なら、実力を見ておきたいしね」

 

 隊長と呼ばれた男はニコリと笑うと、私へ目を向けた。

 

「キミもそれでいいかい?」

 

「ええ。望むところだと言わせてもらいましょう」

 

 私は首筋に冷たいものを感じながら、精一杯不敵に微笑んで見せた。

 

 

 バトルが始まり、私のGNフラッグが宇宙を進む。この機体は以前展示用に作ったものをフラッグのパーツとミキシングしてバトル用に作り替えたもので、武装は疑似太陽炉とケーブルで繋がったビームサーベル、右腕のディフェンスロッドと胸部のバルカン。変形機構を失ったため、人型のままだ。

 今回のステージはジオンの軍事要塞、ソロモンのある宙域。

 

 私が上がった機動性を確かめながら進んでいると、視界に隊長のものと思わしきガンプラが見えた。ザクだ。

 

「あれは、隊長のザク(さん)!」

 

「あの機体のバトルを、また見ることができるとはな」

 

 八百屋のおじさんと父が何か言っているが、そちらに気を取られてはいられない。

 そのザクは緑色の量産型だが、角が付いていた。隊長機である証だ。そしてその身体はいくつもの傷が付いている。武装はザクバズーカを三つ合わせたような銃器と腰部にマウントされた巨大なヒートホーク。

 

「刮目させてもらおうか、ザク!」

 

 私はバーニアをふかし、ザクへ迫る。ザクはバズーカを構え、こちらへ撃ってきた。

 

「そんなもの!」

 

 上がった機動性にものを言わせて回避。その直後、機体が衝撃を受けた。

 

「何だと!?」

 

 ザクが、フラッグに蹴りを入れたのだ。撃ってこちらが躱すまでの僅かな時間に、ここまで移動したというのか。何という機動力!

 

 蹴られて吹き飛ぶこちらに、容赦なく放たれるバズーカ。それをサーベルで切り裂き、爆発した紫煙に突っ込む。そのまま斬りかかろうとサーベルを構えるが、ザクの姿がない。

 

「くっ、何なのだ、このザクは!」

 

『いえ、普通のザクですよ。何の変哲もない、ありふれた、量産型のザク』

 

 声に反応して咄嗟に振り返ると、そこにはヒートホークを構えたザクがいた。次いで横薙ぎに振るわれたそれを、サーベルで受け止める。

 鍔迫り合いの最中(さなか)、ザクは斧から片手を離し、その手でこちらの左腕を掴んだ。

 

「何を!?」

 

 そのままミシミシと悲鳴を上げ、左腕が握り潰された。

 

「馬鹿な!?」

 

 ガンプラに、これほどの握力を持たせるとは!

 

 普通、ガンプラの指は武器の取り回しやすさ、器用さを優先して改造を施す。世界レベルのビルダーでさえ、指の間接部は弱くなってしまうものだ。

 だというのに、このザクはフラッグの腕を握り潰した。速度を上げるために装甲を薄くしていたとは言え、どれほど作り込めばこれほどの力が出るのだろうか。

 

「だが、まだだ!」

 

 胸部のバルカンに操縦桿のスロットを動かし、選択。この至近距離ならば多少はダメージを与えられるだろうと思ったが、

 

「無傷だと!?」

 

 そのまま強引に左腕を引っ張られ、蹴飛ばされる。疑似太陽炉から伸びたケーブルごと左腕が千切れる。

 

「武器を失ったか・・・・・・それでも!」

 

 まだ諦めるわけにはいかない。体勢を立て直し、再びこちらからザクに向かう。

 

『ふん!』

 

 迎撃するように振るわれたヒートホークをギリギリで回避し、ザクの背中にマウントされたザクバズーカに手を伸ばす。

 

 直後。フラッグが吹き飛んだ。

 

「ぐぅ!?」

 

 ソロモンにぶつかり、ザクを見ると、ヒートホークの側面で殴られたのだとわかった。なるほど、ただ大きいだけではないというわけか。

 

 しかし、参った。今の攻撃とソロモンとの激突で、関節のほとんどがイカれてしまった。ついでに衝撃で首が取れている。眼前にイケメンなフラッグフェイスが漂っているので、恐らくそういうことだろう。

 

『キミの実力は、見せてもらった』

 

 隊長がそう言うと、ステージが消えていく。バトルが終わったのだ。

 

「私の完敗、か・・・・・・」

 

 傷一つ負わせることができなかった。

 

 格が違う。次元が違う。隊長と呼ばれるこの男は、確実にユウキ・タツヤよりも強い。

 

「お疲れ様。いいバトルだったよ」

 

 彼がこちらへ近づき、右手を差し出した。私は左利きなのだが、こういう時は相手に合わせるものだ。

 

「完敗でした。それ以外、言葉が見つかりません」

 

 そう言って、両手で差し出された手を握る。格が違い過ぎて、語彙力を失ってしまったようだ。やはり国語は苦手だなと場違いに思う。

 

「それでも、キミは才能があるよ。少し戦っただけでもわかる」

 

 そう笑いかけてくれる隊長に、私は恐縮です、と返すことしかできない。

 

「善戦していたぞ、息子よ」

 

「ああ。隊長相手に、三分も保ったのだ。上出来だろう」

 

 父と八百屋のおじさんが彼に敬意を払うのも、今となってはよくわかる。

 

「エイカ中尉。この子、ボクが鍛えてもいいかな?」

 

「隊長!? それは望んでもみなかったことですが、しかしよろしいので?」

 

 父が念押しするように確認すると、彼は勿論と頷いた。

 

「ボクと違って才能のある子には、その才能を伸ばして欲しいから」

 

 その言葉は謙遜が過ぎるというものだ。しかし、何故これほどのファイターが世界大会に出ていないのだろうか。

 

「じゃあ早速、明日、同じ時間に来れる?」

 

「ええ、勿論! なんなら、今すぐにでも!」

 

 私の返事に、隊長は笑ってバトルの準備を始めた。




エイカ・ハムマン
コウスケの父親。ミスター・ブシドーにハマり、歪んでしまった人物。
普段は塾の講師をしているが、『アフターファイブ』では仮面を付け和風の衣装を身に纏いミスター・ブシドーを名乗る。
ブシドー衣装の時は気づきにくいが、運動をあまりしていないため小太りな体型。ドラマCDへのリスペクトである。

隊長
ダメージモデルのザクを使う中年。その正体は、ラルさんや珍庵と同じく大会出場停止組。
普段は冴えない中間管理職だが、ガンプラバトルの業界ではラルさんと同レベルの有名人。
呼び方は『隊長』『司令』など、場合によって異なる。


ガンダムさんの『隊長のザクさん』、あれ凄い好きなんです。量産型でガンダムを狩る、やっぱり最高です。一時期、そのためだけにガンダムさんを買ったくらいです。
ただ、戦闘シーンでは無口なのであんまり小説には向いていないという・・・・・・orz
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。