抱きしめたいな、ガンプラ!【完結】   作:高々鷹々

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一人称(主人公視点)で書くのが少し大変だったので、三人称視点です。

Miteaさん、評価ありがとうございます。


よもや君に出会えようとは

 『隊長』と呼ばれる男との修業を始めてから、約一週間。

 

 コウスケのフラッグは作っては壊し、また作ってを繰り返し、確実に完成度を上げていた。

 細かなディテールアップが施され、そのボディは戦闘機のように飛行に適したフォルムへ。なおかつ水中戦や宇宙戦など空中以外での戦闘も考慮し、関節部の強化など、外見に大きな変化はないものの細部に手が加えられている。

 

 武装は新たに作ったリニアライフル、『クロスファイア』。これはカスタムフラッグのライフルを改良したもので、キットこそ存在しないものの資料は存在しており、コウスケのガンプラ制作技術でも再現することができた。無論塗装やつや消しもされており、元のリニアライフルより威力も連射性能も上がっている。『やはりフラッグにはコレだ』というコウスケの拘りにより、ビームライフルは撤去された。

 

 次に、GNビームサーベル。左肩の疑似太陽炉とケーブルで繋げられたその武器は劇中再現のためスローネアインのもの。疑似太陽炉からの粒子供給により威力やリーチは元のものより上がっている他、予備として両腕部に一本ずつ収納されている。

 

 ディフェンスロッドは特殊な塗料を使い、角度によってはビームを弾くだけでなく切り裂くことも可能になった。あのニルス・ニールセンが使ったのと同じ塗料である。しかしそれにより以前よりも求められる技術が大きくなり扱いづらい代物になった。

 

 そして胸部のバルカン。こちらはあくまで牽制用と割り切り、スモーク弾やペイント弾などの特殊な弾を撃てるようにしてある。コウスケの技術では制作が難しかったために隊長を始めとした大人の力も借りて改造が施された。

 

 更に追加装備としてヒートホークを改良したヒートダガーが腰部にマウントされている。これは鉄血機体などの『ビームが通じない相手』を想定した武器で、機体の動きを妨げないために短刀として作られた。こちらは隊長との合作だ。

 

 コウスケ自身の操縦技術も向上し、今となっては隊長のザク(さん)と十回に一回は引き分けられるまでに成長していた。初めの頃は全敗だったことを鑑みれば、大きな進歩だ。

 

 ガンプラバトル選手権地区予選まで、あと三日──

 

 

 夜も遅い時間、『アフターファイブ』にて、二人のファイターが戦っていた。

 

 一人はイタリアチャンプのナイスガイ、リカルド・フェリーニ。愛機ウイングガンダムフェニーチェを操る腕前は、『イタリアの伊達男』の名に恥じない。

 

 もう一人は赤髪にサングラスを引っ掛けた少年、レイジ。イオリ・セイとタッグを組み、打倒ユウキ・タツヤを掲げるアリアン第一王子だ。

 

『オラオラ、どうしたぁ! 地形に苦しめられてんじゃねぇ、利用しろ!』

 

『ンなコト、言われなくてもッ!』

 

 フェニーチェのバスターライフルを避けたレイジのインパルスガンダムが森林に墜落し、土煙が上がる。その隙を逃さずビームレイピアを抜刀し接近するフェニーチェ。インパルスは悔し紛れにビームライフルを放つが、あっさり避けられ首もとにサーベルが突きつけられた。

 

『勝負あったな』

 

 彼の相棒が作ったガンプラならここから反撃することも可能だが、このインパルスは店のレンタル品。先ほどの墜落でバックパックが破損し、すでに左腕とシールド、右足を失っている。勝敗は明確だった。

 

「クソッ、もう一回だ!」

 

 粒子が霧散し、二体のガンプラのみとなった筐体を挟んで、レイジがフェリーニに吠える。だが彼はバーの椅子に腰掛け、休憩状態に入っていた。

 

「勘弁してくれ・・・・・・もう何回目だよ」

 

 イタリアチャンプと言えど、まだまだ成長期のレイジとは体力に差があった。彼もまだ24と若いが、一戦でもかなり消耗するガンプラバトルを50回以上行っているのだ。休憩を要求したくなるのは当然だろう。店主に酒の注文を始めてしまった。

 

「なんだよ、情けねぇな」

 

 むしろここまで連戦して未だに戦えるレイジが異常なのだ。底なしかよ、とフェリーニは疲れた顔で言う。

 

「ならば、私が相手になろう、少年!」

 

 コツコツ、と酒場の階段から足が響く。誰だ、と構えるレイジの目に映ったのは、金髪の青年だった。

 

「私はエイカ・コウスケ。君のバトルの才能に、心奪われた男だ!」

 

「は?」

 

 脈絡のないセリフに、思わず気の抜けた声を出してしまうレイジ。その男は決まった、とドヤ顔をしている。一目でわかる残念っぷりだ。

 

「・・・・・・まあいいか。お前が相手してくれんのか?」

 

「無論だ。こんな所で会えるとは、正に僥倖! この機会を逃す手はない」

 

 コウスケはそう言いながら、予備で持っていたガンプラ──フラッグを取り出す。GNフラッグは先ほどまでの特訓で中破しているため、こちらを使うことにしたのだ。

 

「ならさっさとおっ(ぱじ)めようぜ!」

 

「望むところだと言わせてもらおう!」

 

 フェリーニがいた位置にコウスケは立ち、筐体にGPベースをセット。粒子が戦場を満たしていく。

 

「あの少年は・・・・・・」

 

「ボクの教え子ですよ、大尉」

 

 レイジの付き添いで来ていたラルがその聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはスーツ姿の平凡な男がいた。

 

「君は、隊長!? 弟子をとっていたのか!」

 

 ラルの驚きに、隊長は首を振って否定した。

 

「そんな大層なものじゃないですよ。ただ、才能があると思ったので鍛えただけです」

 

 そうか、と納得とまではいかないものの了解したラルは、それよりもバトルだと筐体へ身体を向ける。隊長もそこに並ぶと、ちょうど二つのガンプラが出撃したところだった。

 

「見せてもらおうか! 君の腕前をッ!」

 

 峡谷ステージの空を飛翔するコウスケのフラッグ。対するレイジはインパルスから変えてエールストライクガンダムだ。レンタルなので破損すれば料金を払う必要があるが、恐らくラルが支払ってくれるだろう。

 

『ハッ、吠え面かかせてやるぜ!』

 

 峡谷の隙間からエールストライクのビームが飛んでくる。それをフラッグは躱すと、機体を傾け谷間へ入った。

 

『どこへ隠れやがった!』

 

 レイジはエールストライクを移動させフラッグを探すが、見つからない。と、彼の耳に発砲音が届いた。

 

『そこかッ!』

 

 弾丸を回避しながら振り向きざまに射撃。しかしフラッグは避けた。

 

「ぬぅ、やはりそう簡単にはいかないか!」

 

 次いで放たれるビームを躱しながら、コウスケは考える。この狭い空間ではグラハムスペシャルは使えず、機体の性能差で押し切られる。

 

「ならば!」

 

 フラッグを上昇させ、谷間を出る。エネルギーが尽きたのかライフルを捨てて背中からサーベルを抜刀し飛翔するエールストライクを確認すると、コウスケは機体に宙返りを打たせエールストライクへリニアライフルを放つ。

 

『なッ、クソ!』

 

 四発放たれたそれらは全てシールドで防がれたが、それにより勢いを削ぐことに成功した。そのままプラズマブレードを抜き、上空から落下しながら振りかぶる。そしてバーニアを全開にし、更に速度を高めた。

 

「もらった!」

 

『くっ、その程度の攻撃でっ!』

 

 レイジは逆光に目を細めながら、ビームサーベルで落ちてきた影を切り裂いた。だが手応えが小さい。感じた違和感の正体は、エールストライクを覆うもう一つの影にあった。

 

「かかったな!」

 

『な、身体が分離した!?』

 

 上半身と下半身の分離。フラッグにあるギミックの一つだ。それを使い、コウスケは下半身を囮にして本命の攻撃を通そうとしたのだ。

 ガンダム作品への知識。レイジの相棒がいればフォロー出来た部分が、浮き彫りになってしまった。

 

『オレが、負けるかぁ!!』

 

 エールストライクはシールドをパージし、左腰のアーマーシュナイダーを射出。左手でそれを構えると、フラッグのコックピットに向けて突き出した。そして右肩から胸元まで食い込むプラズマソード。一瞬の空白の後、両機共に爆発した。

 

《Battle Ended》

 

 バトルの結果は──ドロー。引き分けだ。

 

「素晴らしい戦いだった。感謝するぞ、少年」

 

 コウスケは特訓の後更にバトルをしたというのに、まるで疲労を感じさせない笑顔でレイジへ右腕を差し出す。

 

「へっ、お前も中々だったぜ。ま、セイのガンプラがありゃ勝つのはオレだったけどな」

 

 生意気ともとれる言葉と共に、右腕を握り返す。フッ、とコウスケは軽く笑ってみせた。

 

「そうか。尚更選手権が楽しみになったな」

 

 彼はそれだけ言うと、筐体からフラッグを回収して店を出た。もちろん、隊長への挨拶をしてから、だが。

 

「ラルのオッサン、アイツは?」

 

「うむ、ユウキ君やゴンダ君と同じ模型部の部員、エイカ・コウスケ君だ」

 

 ゴンダって誰だ? とレイジは首を捻ったが、気にしないことにした。彼の脳にはゴリラとしか記憶されていないのだ。

 

「エイカ・コウスケねぇ・・・・・・まだあんなのがいるのか」

 

 フェリーニやユウキ・タツヤほどではないが、確かな強者だ。レイジは再び燃え上がったバトル熱を解放するべく、フェリーニへ振り返る。

 

「おいフェリーニ、休憩は終わったろ、もう一回バトルだ!」

 

「・・・・・・ZZz」

 

 しかし彼の視界に映ったのはイタリアの伊達男ならぬ駄目男。酔い潰れてカウンターに突っ伏している。

 

「レイジ君、今日はここまでにしてはどうかね? 君の方も、そろそろ限界のようだ」

 

 ラルにそう言われて気付くが、彼の指は痙攣しており、まともに戦える状況ではない。うっすらとだが血が滲んでいる箇所もある。

 

「この程度のことで、音を上げられるかよ。そんなんじゃ、アイツに、ユウキ・タツヤに勝てない」

 

 しかし尚闘争心を燃やすレイジに、ラルはやれやれとため息を付いた。ならばと隣にいた隊長が前に出る。

 

「それなら、しばらくボクが相手をしよう。そこのイタリアチャンプが起きるまで、だけどね」

 

 そう言いながら、愛機のザクを筐体にセットする。レイジは次のガンプラを借りると、血の滲んだ手で操縦桿を握った。




レイジ
イオリ・セイの相棒でありアリアン王国第一王子。ガンプラバトルの才能はあるが、ガンダムへの知識はなくガンプラを作ったことさえない。
ユウキ・タツヤに敗北したことで彼へのリベンジをめざし、バトルにのめり込んでいく。


アフターファイブで修業しているんだから、やっぱりレイジ君と戦わせたいですよね。
強くなっても流石にレイジ君には勝てないよな、ということで引き分けです。
三人称だと書きづらいですが、主人公視点だと周囲のこととか書けない描写が多くて・・・・・・どうすればorz
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