BF、小説版だとユウキ先輩って一回戦で棄権しているんですよね。尺の都合でしょうか。
他にも差異があるので、比べると面白いです。
第七回ガンプラバトル選手権世界大会の地区予選。私がいるのはその会場となった体育館だ。
発表された組み合わせによれば、私は二回戦でユウキ先輩と戦える。
「何という僥倖! 生き恥を晒した甲斐があったというものだ」
・・・・・・思えば、私はこれから何回生き恥を晒すのだろうか。ふと冷静になった思考を頭の隅に追いやり、一回戦の相手を確認する。
「『アマダ・シロウ』、か。聞いたことのない名前だが・・・・・・」
油断していい理由にはならない。
ガンプラを入れたポーチに触れながら、08小隊の主人公と似た名前だなと少し遅れて気付いた。
『ただいまより ガンプラバトル選手権 地区予選を開始いたします』
アナウンスに従い、私は筐体へ。GPベースとGNフラッグをセットする。相手のアマダ選手も同じく。
《Field3 Forest》
ステージは森林。アマゾン川流域にある、地下に鍾乳洞がいくつもある連邦軍の基地、ジャブロー。
フラッグでは森に隠れるなどできないため、上空から索敵し撃破、というのが理想の流れだが、上手くいくかどうか。
《Battle Start》
「エイカ・コウスケ。GNフラッグ、出撃する!」
私のフラッグが射出され、ジャブローの空へ。今のところ、敵機は視認できない。
と、遠くから発砲音が聞こえた。機体を翻し回避して、音源へカメラアイを向ける。
「Ez8! それもヘビー・アームド・カスタムか!」
この機体はEz8改を砲撃用に改造した機体で、両腰にはサラミスの主砲を流用したビームキャノンを装備し、機動性などを犠牲に砲戦に特化した機体だ。Gジェネレーションの機体だが、ガンプラで再現とは。これもガンプラの醍醐味だろう。
『見つかったか! それなら!』
Ez8は膝立ちから起立し、腰の砲門と構えていた銃とでこちらを狙う。リニアライフルを構える隙もないな。放たれる銃弾を全力で回避しながら大きく弧を描き、Ez8に接近する。
「貰った!」
『クソォ!』
こちらが左腕のサーベルを振るうも、捉えたのはバックパックのみ。それをパージし盾にしてこちらの攻撃を防いだのか。
『これなら!』
と、Ez8が顔をこちらへ向け、頭部バルカンを連射。とっさに後退したが間に合わず、数発被弾してしまう。
胸部と左腕部から小さく紫煙が上がる。
『倍返しだぁぁぁあ!』
追い打ちとして構えられた三つの砲身。私は歯を食いしばりながらスロットを回し、胸部からバルカンを放つ。
『なっ、スモーク!?』
煙幕弾だ。長くは持たないが、これで追撃は防いだ。距離を取って、森林へ入る。
『どこだ! どこに行った!』
周囲を見渡すEz8。しかしあちらは陸戦用、地形への適応度ならあちらが上だ。索敵されて見つかるのも時間の問題だろう。
フラッグの損傷は微々たるもので、サーベルを振るうのに問題はない。しかしバルカンで受けたダメージと、先ほど煙幕を使ったことでもう胸部のバルカンは使えなくなった。閃光弾が使えれば奇襲をかけられたのだが、仕方ない。
「・・・・・・ならば」
森から飛び出し、右手のリニアライフルを連射する。躱されたが問題ない。そのままライフルを捨て、サーベルを起動し急接近する。
「この距離なら、自慢のキャノンも使えまい!」
『クッソォ!』
Ez8はライフルを手放し、ビームサーベルを抜刀。こちらの斬撃に合わせるように振るわれたそれを、
「見切った!」
私はサーベルの軌道を変え、サーベルを持つ手を斬り裂いた。
隊長殿との特訓のおかげで、私の動体視力はかなり鍛えられている。そのため、こんな芸当も可能となったのだ。
『畜生!』
悔し紛れに放たれたビームキャノンをディフェンスロッドで弾き、サーベルを切り返しもう一度振り抜く。
「ガンダム! 引導を渡す!」
粒子量を増やしたことで威力の高まったサーベルが、Ez8の装甲を切断した。
《Battle Ended》
収束していくプラフスキー粒子と、『アイナァァァア!』と叫ぶアマダ選手を視界から外し、私は隣でバトルしているユウキ先輩へ目を向ける。
あっさりとザクウォーリアを戦闘不能にし降参させた彼は、こちらに気付いたのか髪を下ろしながら私を見る。
交わす言葉はなく、ただにらみ合うだけだ。だが私には彼の声がなんとなく聞こえていた俗に言う、ニュータイプ式会話というヤツだ。私は隊長との特訓で身につけたが、三代目メイジン・カワグチ候補である彼ができないはずがない。
『腕前を上げたようだな、エイカ君』
『貴方も、ザクを更にチューンしたようだな』
『ああ、君に負けてはいられないからな』
『・・・・・・だが、次の試合、勝つのは私だ』
『その言葉、そっくりそのまま返させてもらおう』
視線を外し、それぞれ観客席へ向かう。そこにいた隊長に敬礼し、会場を見下ろす。
「中々のバトルだったね。特に、あの威力のビームキャノンを弾けるようになったんだから、成長を感じるよ」
「ありがとうございます」
ボクもすぐ追い越されちゃうな、と言う彼に、謙遜し過ぎです、と返す。ユウキ先輩のバトル以外で、めぼしいファイターはいない。見るだけ無駄だろう、と隊長に挨拶しようとしたところで、入口から人影が入ってきた。
「あれは、少年!」
赤髪にサングラスの少年。そうだ、彼がいた。あのファイターと、イオリ・タケシの息子のタッグが。
彼の指には痛々しく包帯が巻かれているが、彼なら問題ないだろう。その程度のハンデで負ける男ではない。
彼らはいくつか言葉を交わすと、イオリ少年は腰のケースからガンプラを取り出す。
「! あれは!」
「・・・・・・すごいな」
隊長も気付いたらしく、感嘆の声を漏らす。
彼らの機体、ビルドストライクガンダムは機体の完成度が上がっており、間接周りの補強など、バトル向きの改修がされている。そしてライフルとシールドもオリジナルデザイン。展示用ならともかく、バトル用の武器を1から作るなど、とても労力と時間がいることなのだ。
そして、バックパック。恐らく、ストライクルージュのI.W.S.P.をベースに作られたもの。元々優れている機動性を更に高めるだけでなく、二問のビーム砲による火力増強。未完成だったあの機体に足りないものが全て補われたと言っても過言ではない。
バトルが始まった。翼を得た彼らの機体は目を見張るほどのスピードで
バトルは少年らの勝利で終わった。
その後いくつかバトルを見て、トイレに寄った後帰ろうと扉を開けたところで、見慣れた人物に遭遇した。
「シグレ? 来ていたのか」
「うぇ!? せ、先輩・・・・・・」
驚かすとは趣味が悪いですね、と軽口が続く。どうしてこんなところにいるのだろうか。
「ゆ、ユウキ先輩のバトルを見に来ただけです。部員として」
シグレの慌てたような言葉に、そうか、と頷く。真面目な彼女らしい理由だ。
「今帰りか? 家まで送るが」
「・・・・・・そうですね。私、可愛いので襲われるかもしれませんし」
少し間を空けてそう言った彼女の顔は、赤かった。自分で『可愛い』と口にして、恥ずかしがっているのか。
そのまま玄関を出て、商店街で向かう。彼女の家の方向は、なんとなくわかっているからだ。
「・・・・・・先輩。先輩も、バトルしたんですよね。どうでしたか?」
しばらく歩いて、シグレがそう訊いてきた。私は今日のバトルを思い出しながら口を開く。
「なんとか勝利した。ジャブローが昼ではなく夜だったなら、危なかったな」
私のフラッグには遠距離武器がないため、隠れながら砲撃されるとかなり不利だ。今回は相手を視認できたので戦えたが、ゲリラ戦となっていたら勝ち目がなかった。
「そうなんですか。でもガンプラ、傷ついたんですよね」
シグレの疑問に首肯する。わずかだが、ダメージを受けたのは確かだ。
「何で、自分のガンプラが傷つくってわかっているのにバトルするんですか?」
ふむ。ファイターではないシグレだが、バトルに興味を持ってくれたのか。ならば私も正直に答えよう。
「そんなもの、決まっている」
私は少しもったいぶって、そこで一度区切る。格好付けられるときに格好付けるのが私だ。
「私の憧れに、理想に近づくためだ」
ガンダムに魅了され、ガンダムを愛し、憎み、宿命となり、そしてガンダムマイスターとなった男。
私は、彼のようになりたい。彼のように自分が正しいと思うことを為す男になりたいのだ。
「往来で格好付けるとか、ダサいですよ、先輩」
「む、そうか。気をつけよう」
私はともかく、シグレまで変人扱いされては問題だ。
「あ、私ここまででいいです。ユウキ先輩とのバトル、精々頑張ってくださいね」
「ああ、ありがとう」
軽く手を振ってシグレの背中を見送る。彼女は商店街の隣の通りに住んでいるようだ。意外と近かったんだな、とわかっていたことながら驚く。
二回戦の相手はユウキ先輩。彼に勝てるかどうかはわからないが、そんなことは関係ない。持てる力の全てをぶつけるだけだ。
彼女の背中が見えなくなってから、私は帰路についた。
アマダ・シロウ
ガンプラバトル選手権出場者。08小隊のファンであり、主人公シロー・アマダには強く感情移入している。
Ez8を始めとした08小隊のガンプラを好んで作り、Gジェネのヘビー・アームド・カスタム、ハイ・モビリティ・カスタムをガンプラで再現するなどその愛は強い。
いい加減タイトルネタがなくなってきた・・・・・・どうしましょう。
因みにこの主人公、作中初勝利です。弱い訳じゃないんだ・・・・・・周りが強すぎるんだ・・・・・・。