抱きしめたいな、ガンプラ!【完結】   作:高々鷹々

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ゴンダ君、ユウキ先輩がいなくなった生徒会を運営していたと思うと、大変ですよね・・・・・・。
ゴリラ顔だなんだと言われてるけど、影で頑張っていたのです。そりゃユウキ先輩と再会したら号泣しますよ。

一天地六さん、yardyaplog!さん、評価ありがとうございます。


堪忍袋の緒が切れた! 許さんぞ、ユウキ・タツヤ!

 時は流れ、ガンプラバトル選手権地区予選も大詰め。準々決勝まで進んだ。

 

 私は待ち合わせていたシグレと共に、イオリ・セイ、レイジ組のバトルを見ていた。隊長は用事があって来られないそうだ。

 

「バトルについて色々わかった今だから言えますけど・・・・・・バケモノですね、あの機体。何であんな速度出るんです? 出せたとしても機体への負荷が大きくて木っ端み微塵になりますよ? それを操縦するファイターもバケモノ級ですけど・・・・・・」

 

 シグレはブツブツと毒舌を交えながら彼らの機体、ビルドストライクを分析する。ついこの前までバトルに関しては素人だった彼女だが、この数日間バトルを教えていたのであの機体がどれだけ規格外かわかってきたらしい。

 

 今もビームライフルとは思えないほど強力な攻撃で緑色の試作二号機(サイサリス)を破壊してみせた。私のサーベルと同じように出力調整型か、と一瞬思ったが、構造はまるで別物だ。

 

 あのライフル、上下二つの銃口で威力を使い分けている。以前使っていたライフルは私のものと同じように出力を変更するのにタイムラグがあったように見えたが、あれは違う。銃口一つか二つかで威力を調整し、切り替えにかかる時間を最小限に抑えている。チャージにかかる時間も少ない。彼は本当に中学生なのだろうか、と疑いたくなる出来映えだ。

 

「先輩、あの緑の、別に弱くないですよね。多分先輩とバトルしても勝てるレベルで」

 

「些か悪意を感じる質問だが、そうだな。勝率は四割ないだろう」

 

 まずあのアトミックバズーカが避けられるか怪しい。いや、避けることは可能なのだが機体にダメージがない範囲にまで逃げることが難しい、とした方がわかりやすいか。機動性を重視し装甲を減らした私のGNフラッグでは余波だけでもやられかねない。

 それを突破した上でサイサリス本体と戦わなければならない。ユウキ先輩が前回大会で使った『ザクアメイジング・ラピッド』のように重装甲・高機動な機体ならともかく、紙装甲のフラッグでは厳しいだろう。

 

「っと、ユウキ先輩の姿が見えないな」

 

 イオリ少年達のバトルが終わった会場には、彼の対戦相手であるサザキ少年が怯えた表情でユウキ先輩を待っている。

 

「トイレですかね? まさか寝坊なんてする人には思えませんし」

 

 シグレの言葉を聞きながら、私の脳裏に嫌な予感が浮かぶ。

 

『準々決勝第四試合は、ユウキ・タツヤ選手が出場辞退を申し出たため、サザキ・ススム選手の不戦勝となります』

 

 そのアナウンスに私は呼吸することを忘れたように息が詰まった。出場辞退? あのユウキ先輩が?

 

「・・・・・・どういう」

 

「や、やったー! 僕の勝ちだー! 絶対負けると思っていたけど!」

 

 歓声を上げているのはサザキ少年だけで、彼の声がやたらと響く。うるさい、と言ったのは誰だったのか。

 

「先輩? その、顔がドン引きするぐらい怖くなってますけど・・・・・・」

 

 どうやら、それは私だったらしい。まずいな、このままでは喜んでいるサザキ少年につかみかかってしまいそうだ。

 

「・・・・・・失礼する」

 

 私はそれだけ言って、席を離れる。行き先は聖鳳学園。確かゴンダが生徒会の仕事で学校にいるはずだ。

 

「え、先輩!?」

 

「失礼だと言った!」

 

 シグレには申し訳ないが、今の私では彼女にも暴言を吐きかねない。この行き場のない感情をぶつけるべく携帯端末を取り出しユウキ先輩にかけるが、返ってきたのは無機質な機械音声だけだ。

 舌打ちを一つして、足を早めた。

 

 

 学園に辿り着き、そのまま生徒会室へ直行する。怒りのままに扉を開けると、ゴンダが窓の外を見つめていた。

 

「ゴンダ! どういうことだ、ユウキ先輩が選手権を辞退など!」

 

「・・・・・・エイカか」

 

 振り返ったゴンダの顔に、私は言葉を失った。彼はとても疲れた顔をしていたのだ。机の上には大量の書類が積まれている。

 

「会長は、無期限の休学届を提出なされた」

 

「休学届、だとッ!?」

 

 どういうつもりだ、と私は拳を握り、そのまま扉に叩きつけようとして、踏みとどまる。ゴンダは部長でも会長でもあった彼を尊敬していた。だから彼が去った後に残った仕事を、こうして片付けているのだろう。

 だというのに、私がここで怒りを撒き散らすわけにはいかない。なんとか自分を鎮め、拳を解く。

 

「・・・・・・そうか。邪魔をした」

 

 何か手伝うことはあるか、と問うが、ゴンダはただ首を振って書類作業に戻った。それもそうか。生徒会でもない私が、彼の仕事を手伝うなどと。余計な手出しは足を引っ張るだけだ。

 私はどうしようもない怒りを抱えたまま、家に帰ることにした。

 

 

 夜。私は『アフター(ファイブ)』にいた。

 

『うおおおお、ハァァァァァア!』

 

『なんのォ!』

 

 目の前の筐体では、父とジオン軍服の中年―――確か、文房具屋の店主―――がバトルを繰り広げている。

 

 けれども、それが私の糧になるかと問われれば、否だ。隊長との特訓を通してわかったことだが、ここにいるファイター達は原作(作品)を愛しすぎている。そのため、作中の機体を再現することにばかり注力しているから、バトルでも原作通りのスペックで、原作通りの武装なのだ。バトルで勝ち上がるための創意工夫がない。

 だからこうやって集まってバトルしているのだろう。彼らが選手権に出ないのも納得ではある。実力はあっても彼らの機体では予選すら勝ち抜けない。

 

「フッ、その予選落ちした私が何を偉そうに」

 

 そう自重して、手元のグラスを煽る。因みに中身はウーロン茶だ。未成年だし炭酸は好かん。コーラサワーは嫌いではないのだが。

 

「何をブツブツ言っているのだ息子よ。私とバトルでもするか?」

 

「冗談は顔と格好だけにしてくれ父よ」

 

 自慢でも驕りでもなく、この男では私の相手にならない。それこそサザキ少年やレイジ少年、ユウキ先輩でなければ。

 

「なっ、実の息子にそこまで言われるとは・・・・・・」

 

「うーん、コウスケ君は気付いてないかもだけど、全部口に出ていたからね今の」

 

 そうだったのかカタギリ。どうにもやってられんのだよ。全く、ユウキ先輩は何を考えているのか。

 

「どうして逃げるような真似を・・・・・・!」

 

 ガン、とグラスをテーブルに叩きつける。壊さない程度に力加減するくらいには冷静だった。

 

「知りたいかい?」

 

「ッ、隊長!」

 

 音も気配もなく現れた隊長に、私はとっさに起立し敬礼する。父も同じく。隊長はいつものように微笑んで敬礼を返すと、私を見る。

 

「ユウキ・タツヤについて話すよ。それと、彼が今どうしているかも」

 

「本当ですか!?」

 

 それは思ってもみなかったことだ。先輩がどこでナニをしているのか、私は知らなければならない。

 ただし、と隊長は付け加える。

 

「ボクとバトルすることが条件だ。それで、君がどうしたいのかを見せて欲しい」

 

 

 二階に上がり、二人だけの部屋で隊長がシステムを稼働させた。

 

《Please Set Your GUNPLA》

 

 ユウキ先輩とのバトルの後改修したGNフラッグを筐体に乗せる。粒子によるスキャンによって機体が読み込まれ、フラッグのバイザー下の眼に光が宿る。

 ステージは砂漠。砂が間接などに詰まって動きが鈍くなるなどの弊害が起きるフィールド。だが当然、砂漠用の改造を間接やスラスターには施してある。

 

《Battle Start》

 

「エイカ・コウスケ。GNフラッグ、出撃する!」

 

 カタパルトからフラッグが飛び出し、砂風舞う戦場へ降り立つ。操縦桿を操作しホバーモードを選択。視界が悪いが、太陽は出ている。接敵すれば影でわかるだろう。

 と、砂以外の音が聞こえた。フラッグのホバー音でもない。《COUTION》という表示にフラッグをその場から逃がすと、遙か上空から何かが降ってきた。

 

 ザクだ。先ほどまで私がいた場所に着地し、そこから円形に砂が吹き飛ぶ。私は視界を塞がれまいとリニアライフルを連射し砂壁に穴を開ける。

 そしてサーベルを起動しザクへと飛ぶ。モノアイが動き、こちらを視認した。

 

 隊長のザク(さん)の武装はいたってシンプル。巨大なヒートホークが二つ、ただそれだけ。その片方を重さを感じさせない動きでこちらに投擲する。

 

「くっ!」

 

 ホバリングで回避。何故かはわからないがあの斧はブーメランのように帰ってくるため位置に気をつけながら再度接近。牽制にライフルを放つが、斧で防がれる。その隙にサーベルの出力を最大まで上げ、斬りかかる。

 

「はぁ!」

 

 こちらも当然防がれる。戦斧とビームの刃は拮抗していたが、ザクが斧の角度を少しズラすと、サーベルに斧が食い込んだ。

 

「何!?」

 

『粒子変容塗料・・・・・・粒子の波長に角度を合わせることでビームを切り裂くこの塗料、ボクが使わないとでも?』

 

 失念していた。GNフラッグのディフェンスロッドにも使っているそれは、隊長が教えてくれたもの。実体剣を使わないため、刃に塗るという初歩的な発想を忘れようとは。

 

「戦いの中で戦いを忘れるというのは、こういうことかッ!」

 

 サーベルの刃が中程まで斬られている。ヒュンヒュンと帰ってきた戦斧の音が聞こえた。

 私はフラッグの身を引かせると、その巨大な斧を足場に跳んだ。そして帰ってきた斧を回転して躱し、リニアライフルを撃つ。追撃を封じる意図もあってヒートホークを踏んだのだが、ザクはライフルの弾を斧を振るっただけで吹き飛ばした。そして空いている手に帰ってきた斧が収まる。

 

『そして、こういうこともできる』

 

 ブオン、とヒートホークが振るわれる。その風切り刃がそのまま飛んできた。

 

「真空刃とは!」

 

 スラスターで機体を反転させ回避。そして砂に着地すると、投げられた斧が眼前にあった。

 

「くぅッ!?」

 

 急旋回すると、またも斧。それを跳ねて回避した先には、両手を合わせて振り上げたザクがいた。

 

「一機でジェットストリームアタックだと!?」

 

 これ以上躱すのは無理だ。そのまま振り下ろされた拳を、せめてもの抵抗で右手を伸ばし受ける。

 

 地面に叩きつけられ、背部スラスターがきしむ。右腕はヒビが入り、ガラス細工のように割れた。原型が残っているのはポリキャップパーツくらいだ。

 

 ザクは少し離れた場所に着地すると、両手に斧が帰ってくる。悲鳴を上げる身体を無視し、左手を使って立ち上がる。衝撃で壊れたサーベルを捨て、腕部から新しいサーベルを抜刀。

 

「まだだ!」

 

 まだ、負けていない。出力を最大まで引き上げ、スラスターを全開にする。残存粒子を全て込めて、飛ぶ。

 

「うおおおおおお!」

 

 ザクは斧を回転させながら投げる。それを踏み台にしてさらに加速する。蹴った左足が砕けた。

 

「おおおおお!」

 

 サーベルを振るう。残った斧が軌道上に置かれるが鍔迫り合うことなく、叩っ斬った。

 

「オォ!」

 

 そしてそのままサーベルをザクに。ボクン、と疑似太陽炉が煙を吹いたが、無視。

 

『ッ!』

 

 ザクの手が、フラッグの左腕を掴んだ。バキン、と限界だった腕が弾ける。スラスターが焼き切れた。

 

 ガツン、とそのままザクに頭突きを食らわせる。そして、エネルギーを使い切ったフラッグはザクに倒れかかり、機能を停止した。

 

《Battle Ended》

 

 ジオラマが消え、ザクとそれに寄りかかった状態のフラッグが残った。

 

「また、完敗でした」

 

 ヒートホークを一つ破壊できた。それだけでも十分な成果だが、ここまでボロボロになるのではまだ足りない。ザク本体は無傷のままだ。

 

「いや、そうでもないよ」

 

 隊長の言葉に反応するように、ピシッとプラスチックが割れる音がする。筐体上の二機に目を向けると、ザクの頭部の一部が欠けていた。最後にフラッグが頭突いた部分だ。

 ほんの少し。十分もかからずに直せるような傷。けれど、始めて隊長のザク(さん)に与えた傷だった。

 

「合格だ。いいバトルだったよ」

 

「・・・・・・ありがとうございます」

 

 そう返すのが精一杯だった。気が抜けて、その場に尻をついてしまう。

 

「コウスケ君? コウスケ君!?」

 

 珍しく慌てた隊長の声を聞きながら、私は意識を手放した。




またも敗北する主人公。まあ、一矢報いたので・・・・・・。
主人公気絶してますが、アシムレイトではないです。アレは好きになれない。徒手空拳は奥の手でこの輝くと思っているので。
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