転生サーヴァント(?)の日常   作:黒夢羊

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どうも皆様、黒夢羊です。

読んでくださった方、本当にありがとうございます。
今回は主人公回です。

色々と読みにくいところはあると思いますがどうかご了承ください。


では、本編へどうぞ。






第2話 呼び顕れる無害

 

 

 

 唐突だが自己紹介をさせもらうよ。

僕の名前は藤原(ふじわら) 輝久(てるひさ)、何処にでもいる普通の高校2年の男子生徒だ。

 

 僕の今までの人生についてはまた述べる機会を用意するとして、一先ず今この状況に至るまでの解説をさせてもらおう。

 

 

 

 

 

 僕は自称進学校と言われるまぁまぁの高校に入学し、まぁまぁの高校生活を過ごしてきた。そんな中である日を境にウチの生徒が次々に行方不明になる事件が起きた。

 次々……といってもその時は1ヶ月で2名。因みにどっちも僕と同じ学年の2年生だ。

 

 学校も流石に2人行方不明になったのにちょっと焦ったのか、部活等を出来る限り早めに切り上げて帰宅するように注意するなどの処置を行った。

 それで僕も用事を早めに切り上げて家に帰っていたんだ……僕の家は山を少し上った所にあって、夕方であっても背を伸ばした木々が日を隠して辺りは物語に魔女の森として出てきそうな位に不気味で暗い。

 

 

 高校生になってもその雰囲気にはまだ完全に慣れた訳ではなくて、特に先程のような話題が頭の中に残っている時に通るのはちょっと勇気が必要だったりする。

 まぁ、その後その道を通ったんだが……僕の意識はそこからいきなりテレビの電源が切れたように途絶えた。

 

 

 次に僕が目を覚ました時には海外の有名なよくわからん建築家やデザイナーが関わったような教会と図書館が合わさったかのような巨大な空間の中に佇んでいた。

そこに真っ白な修道服を着たシスターさんが現れて、俺にここの説明をしてくれた。

 どうやらここは他の世界に人を向かわせる中継地点の様な所らしく、自分が選んだ本の世界に向かうらしい。なお、本は表紙以外は全て真っ白で、どの世界かってのは説明されておらず、どれを選ぶかは本人の意思でどうぞ……と言うことになっている。

 

 そこで僕は本を選ぶと、シスターさんが現れて早速連れていってくれることに。

向こうでどんな姿で生まれるのか、能力なんかは全部ランダムで、その上でどんな生活をするかは自由とのことで、一応特典として何かしらの優遇措置はしてくれるらしい。また、一度そこでの人生が終わってもその世界の輪廻の輪に加わることも出来るし、他の世界にいくことも出来るようだ。

 

 

 

 

 その説明を終えると、シスターさんは指を鳴らす。

 

 すると段々と眠気が襲ってきて、そのまま目を閉じて僕はその世界に向かうことになったんだ。

 

 

 

 なったんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び目が覚めると、視界の先には前世……で合ってるのかはちょっと怪しいが、見たことのある真紅の槍を持った青い槍兵の姿が。

 

 

 

……え、えええええええええええ!?

 

 

 

 

 え、ここFateの世界なんです!?

いや、確かに色々とランダムだとはあのシスターさんも言ってたけどさ!

 いきなりクー・フーリンさんの目の前だとは思わないでしょ!!

 

 そうして自分が慌てて居ると、いきなり兄貴が後ろに飛び下がり、かなり警戒した感じの目付きをしながら体を低く屈め始めた。

 ……うん、やっぱりいきなり目の前に人が現れたらビックリするよな。僕も絶対する。

 

 

 自分が勝手に納得していると、自分の背後に人の気配がした。

 クー・フーリンさんはあんな感じだから話しかけても無意味だろうし、取り敢えず後ろの人に聞いてみるか……。

 そう思い降り代えると、そこには地べたに尻餅をついてガタガタと震えている薄い青色がかかった美少女が居た……うん、可愛い。

 思わずにやけてしまった。すると、その美少女の震え具合が更に増した……いかんいかん、今の自分完全に不審者じゃないか。

 

 と、取り敢えず、今の状況を聞くとしよう……。

 

 

 

 

「急に呼ばれてみれば……なんだ、この状況は?」

 

 ……ん?なんかちょっと僕の声怖くない?

しかも妙に威圧的になっちゃってるし。

 

 それにこの声どっかで聞き覚えがあるような?

 

 

 

 

 というか……あーほら、怖がってるよ。

そりゃそうだよね。いきなり見下ろされてニヤニヤした怖い声の人から威圧的に喋り掛けられたら余計怖くなっちゃうよね……。

 

 そんな自分の意思を無視して自分の口は勝手に開き、言葉を紡ぎ続ける。

 

「無視か……まぁ、良い」

 

 いや、だから……なんで勝手に喋ってるの僕!?

え、ちょっと口が無理矢理開かれて……って、また勝手に!!

 

 

 そうやって自分の意思は関係なく、無理矢理何かの力で開かれた口から飛び出たのは僕の予想外の言葉だった。

 

「我はアヴェンジャー。問おう、貴様が我のマスターか」

 

 

 

 

 

 ……え?僕、サーヴァントなんですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

──はッ!?一瞬思考が止まってしまった。

え、僕がサーヴァント?マジで?え?うそん?

 

 目の前の少女の手を見ると確かに赤い三日月が3つ絡まったかのようなマスターである印……令呪が刻まれていた。

 

 

 自分の両腕を見てみると、そこには以前の自分の腕とは真反対な筋肉質の黒い腕に、手首辺りに緑色の目のようなモノが刻まれた少し薄めの灰色の籠手。

 

 ……これは、もしかして?

自分の顔に触れてみる。アヴィケブロンさんの様な仮面に口が付いており、横にはピンと小さいながらも天に伸びる2本の角。

そして顔の横から覗かせるフサフサとした籠手と同じ色の歌舞伎役者が付ける獅子の頭と同じような髪。

 

 

 自分の中で知りうる限りだと、この姿をしたキャラは一人しかいない。

Fateの世界とはまた別の世界──対戦格闘ゲームとして有名な『BLAZBLUE』……その作中に出てくるスサノオというキャラ。

 

 色々と説明を省くんだけど、作中での悪役である人が『スサノオユニット』って言うのに乗り移ったのがさっき言ったスサノオっていう存在。

 おそらく……本当におそらくだけど、自分はそのキャラになっているんだろう。

 

 

 そりゃあ声に聞き覚えがあるわけだよ。

スサノオは好きなキャラだったから、友達との対戦でも結構使っていたんだから。

因みにCVは三宅健太さん……他の作品で知ってるのだとジョ●ョの奇妙な冒険に出てくるモハメド・ア●ドゥルさんとかかな?

 

 まぁあの人とは似ても似つかないくらい威圧感あるんだけどねこの声。

 

 

 

 

 まぁ、それよりも……この状況をどうするか、だよね?

パターン的には2パターン思い付いているんだけど……1つ目は目の前のこの人がクー・フーリンのマスターで、何かしら合流をしようとした2人の間に僕が突如出現したパターン。

2つ目は何らかの事情で彼から狙われていたこの人が僕を召喚したってパターン。

 

 

 背後のクー・フーリンさんの態度から考えてみても、自分が彼に協力的な存在だとは思われてないのは明白だからこの2つのどっちかだと思うんだけど……。

 そんな風に考えていた僕の思考を塞いだのは、先程から震えて押し黙っていた目の前の美少女だった。

 

「だ、誰が分からないけどお願い!助けて!」

 

 ……うん、ならば2つ目のパターンかな。

正直、いきなりこっちに呼ばれたら戦闘ってのは無いでしょう……でも、やるしかない。

 振り替えると、律儀に待ってくれていた兄貴が臨戦体制のまま、僕に鋭い視線を向けていた。

 ……兄貴の性格を考えると、自分が殺られたら確実に次の標的は僕のマスター(多分)だ。

 

 

──なら、やるしかない。

 ぶっちゃけると物凄く怖い。

 

 一応此方もサーヴァント(?)とは言え、かたやケルト神話とアレスター神話に名を残し、高い白兵戦の技術とサーヴァント中でも最速とされる敏捷性を持つ『槍兵』のクラスでも選りすぐりとされる英雄と、先程召喚されたばかりな上に戦闘経験はおろか、自分の身体能力さえ把握できていないド素人。

 

 真っ向から戦えば勝敗は分かりきっているが、確かクー・フーリンさんは初見のサーヴァントとは偵察をメインに、必ず撤退することを命じられていた筈。

だから、自分が今彼に活路を見いだすならソコだろう……いや、そこしかないって方が正しいか。

 

 

 自分が見よう見まねで取った構えを見て、戦闘の意思があることを理解したのか、クー・フーリンさん……いや、ランサーさんが口を開いた。

 

「ほう……やる気か?お嬢ちゃんを助けるんじゃないのか」

 

え、えーと……なるべくそれっぽい口調で喋らないと……。

 

「我が契約者を連れ逃げ仰せた所で、貴様がそれを逃す道理はあるまい……ならばここで貴様を物言わぬ骸へと変えた方が良かろう」

 

 うん!なんかそれっぽいことを言えた気がする……なんかちょっと言い過ぎた気がスッゴいするけど。

するとランサーさんは構えを取りながらアッハッハと笑う。笑いすぎて若干目に涙が浮かんでいるのは気のせいだろうか?

 

「……何が可笑しい」

「いや、見た目のわりに確りと命令は守るんだな、アンタ」

 

 ……うん、多分本来のスサノオだったらしないと思う……いや絶対にしない。寧ろ掛けても良い。

だけど、まぁ何回も言うけどやるしかないんだ。次の僕にこの記憶があるのか分からないけど、ここで彼女を見殺しにしたら確実に後悔する。

 

「言いたいことはそれだけか?……ならば行くぞ!!」

 

 そう叫び、眼前の槍兵に向かって飛ぶ。

槍を構えるランサーさんの直前で止まり、右拳を放つ。それを右に体をそらして避けた相手に体を強引に回転させて避けた彼の横腹に向け、回し蹴りを入れようとする。

 

 それを槍で防いだランサーは後方に吹き飛んで行く。それを追撃するために地面を蹴り、接近する。

相手は槍を降り下ろし、迎撃してこようとするのでそれを左腕でガードしながらしゃがみ、足払いをかける。それを飛んで避けたランサー。

籠手で防いでいたランサーの真紅の槍を両腕で持ち、空中に浮かんでいる彼ごと振り回して叩きつける。

 

「うぉっ!っと……ッ!」

 

 地面に叩き付けられたのにも関わらず、その勢いを利用して立ち上がり体勢を立て直す。

相変わらず化け物だな……生き残ることに関してはトップクラスとか言われるだけある。

 

 

 …それよりも、自分が思ったよりも動けてる。

いや、僕が動けているというよりも何らかの補助システム的なのが僕の動作を理解して動かしてくれてる感じか?

これがシスターさんの言った特典なのかな……?もし補助システム的なのが特典だとしても、嬉しいのは嬉しいが、これ貰うくらいだったらもうちょっと平穏な生活をしたかった。

 

 

 

 

 さて、ここで少しスサノオの力について説明をさせて欲しい。

スサノオは体躯が大きいぶん技の小回りは効かないが、技のリーチは自体は長くダメージも高いものが多い上に種類も豊富なんだけど……それらの技がラウンド開始時はほぼ全てが使用できない。

 

 スサノオは通常の攻撃や投げ攻撃などを当てるか、または相手にガードさせることでそれぞれの技を解放するために必要なゲージへカーソルが移動する。

自分が解放したいカーソルへ移動させた後に特定の攻撃を加えるとその技が解放される……って仕組みだ。

 

 

 正直スッゴい面倒くさい仕様だと思う。

 まぁなんでこんな話をしたかというと、今回の自分もそういう縛り状態にあるんじゃないかなと思ったから。

だから試しにこの後解放してみようと思う。

もしあるんだとしたら、回し蹴りと掴み叩き落としの2回攻撃が当たってるから現在は『参式』の筈。

 

 

 

 僕がそんな事を考えていると今度は仕返しとばかりにランサーが此方に向かってきた。

 

 

──早い!

 

 

 体を守るためにガードを取ろうと思ったが、それよりも相手の方が一手早く、真紅の槍が左肩から胴体に掛けて斜めに切り裂く。

 

 まず前世で普通に生きていたら体験できないような痛みが全身に走り、その後切り裂かれた部位が激しい熱を持ち始める。

 続けざまにランサーの刺突が僕の胸部に向けて放たれ、貫く──

 

「ムンッ!」

「何っ!?」

 

 ──前に体が勝手に動き、左手でランサーの槍を掴み、自身の元へ引き寄せる。相手が此方に少しでも近づいたのを確認し、こちらからも大きく右足で踏み込み距離の縮まったランサーの腹へ拳を叩き込み、怯んだ所に槍を掴んでいた左手を離し、相手の横腹に拳を入れる……2発追加、これで何もなければ使えるはずだ。

 

「伍式!」

 

 相手の体に再び右の拳が決まり、僕の体が淡い光に包まれ『伍』と書かれた印が浮かぶ。

そして『伍式』を解放したことで使えるようになった技を発動する。

腰を低く屈め、その姿勢のまま前方のランサーへ向けて突進し、そのまま巻き込んで進む。

 

「ぬぅッ!?」

 

 槍を用いて突進を防ぐが、その勢いまでは殺すことができなかったようでそのまま後ろへ押されていく。そして、最初にいた地点から10m程進んだ所で体を捻り、槍を蹴り上げる。

槍が蹴り上げられたことで両腕が上がり、無防備になった胴体へタックルを決める。

 

 ランサーは後方へと吹き飛ぶが、猫のように数回の着地で衝撃を殺すと、何事もなかったかのように立ち上がった。

 

 

 うーん……全然ダメージが入っている気配がないし、こっちしかまともなダメージを受けてないみたいだし……やっぱりスゴいな。

まだまだ油断出来ない、元々解放されている壱式とさっき解放された伍式しか使える技がない。同じ攻撃をそう何度も相手が食らう訳がないしな……。

 

 

 

 

 すると、立ち上がり槍を構えていたランサーさん……いや、クー・フーリンさんが構えを解き、槍を方に乗せながら口を開いた。

 

「なぁ、アンタ」

「……なんだ」

 

……これはまさか。

 

「互いに初見ってことだしよ、ここらで手を引かねぇか?」

 

 来た……!

 意外と早く来たのには驚いたけど、ここはその提案に大賛成だ。なんせ、断ったら間違いなく宝具を撃たれるだろう……自分に心臓があるのかはちょっと怪しいけど。

これ人間の体じゃないし。

 

 けど、ここで喜んでその提案に乗ったら間違いなくこちらが不利だと思われるかもしれない。

そうなれば相手の考えが変わって、攻められるかもしれない……相手がこちらの実力を図りかねている状態だからこそこの提案が出た……と思う。

 

 

 少しだけ勿体ぶるようにその提案に乗る。

 

「フン……貴様の提案、気は進まんが乗ってやろう……我もこの世界をまだ楽しめておらんからな」

 

 あくまでも自分が負けそうだからって理由じゃないし、嘘はついてない。この世界を……っていうか冬木市だけど、見て回りたいのは本当だ。

それに他のサーヴァントや人をこの目で見たいってのもあるし。

 

 そんな自分の発言をどう思ったのかは分からないが、「そうかい……そんじゃあな」とクー・フーリンさんは消えていった。

 

 

 

 

 

 あー……緊張した。

この世界に来て早々にエンカウントするとか何事ですか……。確率的にどうなんだろうねこれ、ガチャ運とかは良くない方なんだけれども。

 

 その事は置いておくとして、取り敢えず……

 

 

 未だにへたり込んでいる自分のマスターであろう人物の元へと戻る。

近づくと未だに怯えているようで、その体は見て分かるほどに震えている。

 

 そりゃそうだ、殺されかけた上に目の前でいつ自分のところへ飛び火するか分からない化け物同士の戦いが繰り広げられてたんだから。

 

 

 

 

 僕は出来る限り優しい声を出しながら、その手マスターに向けてを伸ばす。

 

 

 

 

「……立てるか?我がマスターよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も最後まで読んで頂き、本当に有り難う御座います

主人公の特典を少しここで説明しておきます。
・英霊スサノオとして転生
・戦闘時に本人が解除を望まない限り補助システム搭載。
・追加のスキル(技関連)

と、言う感じです。
あと、ヒロイン(仮)の紗夜さんは見た目は『Prototype』の玲瓏館さんを薄い青色の髪色にした感じです。


という訳でまた、次のお話で。

主人公の宝具は幾つが良いですか?

  • 3つ
  • 4つ
  • 5つ

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